木村さきの【新米社長のための会計講座】
(2017/1/9更新)
とある大手企業の経理部に勤める木村さきが、起業したての父親に、“知らなきゃヤバい”会計のイロハを教える本シリーズ。今回は、勘定科目の「売掛金」ついてレクチャーします。
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【登場人物】
木村さき(26)
上場企業の経理部に勤務するかたわら、公認会計士を目指して専門学校に通うOL。大学で現代会計のゼミに所属したことをきっかけに、会計の世界にのめり込む。
パパ(55)
出向してきた上司と反りが合わず、長年勤めた県庁を勢いで退職してしまい、妻の父親が経営する会社のサポートを受けて起業。アイデアには富んでいるが、考えるより先に行動するタイプで、なかなか会社経営を軌道に乗せられずにいる。
さき
ただいまー
パパ
おかえり……って、なんだ、さきか。
さき
なんだはないでしょ。時間あるときに寄れって言ったのパパじゃない。
パパ
探してた本、買っといてやったぞ。
さき
ありがとう! でも、お金はちょっと待ってね。今月も何かと物入りなの。
パパ
またか。
さき
今度まとめて払うから。ねっ。
パパ
仕方ない。さきのアドバイスのおかげで、経営も軌道に乗ってきたところだし。
さき
油断は禁物よ。ほら、最近、売掛金が増えてきてるじゃない。
パパ
そりゃあ、売上が順調に伸びてるからな。
さき
ホントにそれだけが原因ならいいんだけど。売掛金で一番注意しなくちゃいけないのは、回収できずに、取りっぱぐれちゃうことなんだからね。
パパ
ないない。わが社に限ってそれはないよ。ウチは、みんないいお客さんだし、営業の連中も事務の子もしっかりしてるから。
さき
パパと違ってね。もちろん、従業員が行う日々の管理も重要なんだけど、決算の時ぐらいパパも自分でチェックしてみてもいいんじゃない。
パパ
パパはこう見えても忙しいんだぞ。
さき
大丈夫大丈夫。私がポイントを教えてあげるから。じゃあ、まずは、回転期間ね。
パパ
回転って、あのクルクル回る回転か?
さき
そう。売掛金の回転期間と言ったら、何ヶ月分の売上が売掛金として未回収で残っているかを表しているの。式を書くとこうよ。
パパ
ということは、例えば、期末の売掛金が200、年間の売上が1200だとすると、200÷(1200÷12)で、回転期間は2ヶ月ということでいいんだな。
さき
そうね。回転期間が2ヶ月というのは、売上の2ヶ月分が未回収、言いかえれば、売上げてから現金が入るまでに、2ヶ月かかるということを意味しているの。
パパ
すると、売掛金の回転期間は、短い方がいいってわけだ。
さき
そうなの。で、決算にあたってのポイントは、回転期間を前期と当期で比べてみるのよ。
パパ
比較して、異常がないかどうかチェックするんだな。
さき
その通り。得意先の回収条件が変わっていないのに、回転期間が前期より大きく延びていれば、回収条件どおりに入金されていない売掛金があるかもしれないというサインなの。
パパ
これなら、忙しくても簡単にできそうだ。
さき
次は、年齢調べね。
パパ
年齢って、パパが55歳で、さきが26歳という?
さき
私の年齢は言わなくていいのよ。売掛金の年齢調べと言ったら、売掛金を発生月別に分類して、回収条件どおりに入金されていないものがないかどうか、確かめることなの。
パパ
ということは、売掛金を発生月別に整理した資料が必要だな。
さき
そう。それを売掛金の年齢表と言うの。例えばこんな感じね。
得意先 |
残高 |
発生月 |
3月 |
2月 |
1月 |
12月以前 |
A社 |
1,000 |
1,000 |
0 |
0 |
0 |
B社 |
800 |
700 |
0 |
100 |
0 |
この年齢表の、A社もB社も回収条件が「月末締め翌月末払」だったとするでしょ。じゃあ、B社の1月に発生した100はどうして入金されずに残っているんだってことになるのよ。
パパ
もし、「月末締め翌々月末払」だったら、3月分と2月分が残っていてもおかしくないと見るわけだな。早速、事務の子に年齢表を作ってもらうとしよう。
さき
そもそも未回収なんて起きないようにする予防策の方が大切なんだけどね。
パパ
転ばぬ先の杖か。
さき
そう。それが、与信管理ね。得意先ごとに、売掛金がいくらまで大丈夫なのか、予め決めておくの。
パパ
クレジットカードの限度額みたいなもんだな。
さき
まさにそうよ。予め決めておいた金額を与信限度額と言うんだけど、売掛金が与信限度額を超えないように取引するのよ。
パパ
今日も、いいこと教えてもらったよ。ところで、年齢表を作ったとすると、何ヶ月も表を横に伸ばさないと書ききれないお得意さんがいてな。
さき
ホントに?
パパ
おまけに与信限度額も決めてないから、未回収額が積み上がる一方なんだ。
さき
それは危ないわよ、パパ。そのお得意さん、早く全額回収して、次からは現金取引にした方がいいわね。
パパ
言ったな、さき。ついさっきも、そのお得意さんから、立替えておいた本の代金を今すぐは払えないと言われたところなんだ。
(監修:監査法人A&Aパートナーズ)
(編集:創業手帳編集部)
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