前職リクルートでの後悔が生んだ ”Kaizen Platform”誕生秘話
Kaizen Platform須藤憲司氏インタビュー
(2016/09/16更新)
株式会社リクルートから独立し、Kaizen Platformを立ち上げた須藤憲司さん。Webサービスを手軽に改善できる画期的なサービスは、大手企業からも注目を集めています。
リクルートの最年少執行役員として活躍していた須藤さんが、なぜ独立・起業を志したのか。どのような思いでKaizen Platformを拡大しているのか。さまざまな想いを伺いました。
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須藤憲司氏インタビュー| 「人」を軸にした、Kaizen Platform流 ”オープン経営”
1980年生まれ。2003年に早稲田大学を卒業後、株式会社リクルートに入社し、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室立ち上げに従事。株式会社リクルートマーケティングパートナーズ執行役員に就任。2013年にKaizen Platform Inc.を米国で創業。
須藤:まず、リクルートに10年務めました。そこから独立したわけですが、別にKaizen Platformを創業しようと思ったわけじゃなくて、最初は海外で起業しようと思ったんですよ。
須藤:言い方は悪いですが、会社員として、大企業で偉くなっていくというのは、毎日会議室で10本とか15本ぐらい会議をやることで。そんな中で、「もうこれは、足を洗わないとまずいな」と思うようになったんです。もっと人様の役にたつ仕事とか、サービスの手触りのある仕事したほうがいいなと心から思って。
でも、「降格してくれ」というのも無理ですし、「外部で違う事業を立ち上げたい」って言うと、「それやっていいから、これも見て」みたいな感じになってしまうので、かなり不自由な状態だったんです。
さらに、日本だけではなく、海外に通じるサービスを作りたいっていうのがあったので、「よし、じゃあアメリカで起業しよう」ということだけ決めて、退職意志を2012年の6月くらいに社長に言いました。退職したのは2013年6月ですから、1年かけて退職したということですね。
前職の“後悔”が生んだ新サービス
須藤:実際は、2013年1月くらいから、「自分がやりたいことってなんだろう」と考え始めました。リクルートのときに、インターネット広告とかマーケティングをやっていたので、そこに目をつけたというのが、発端です。
広告って、人をサイトまで連れて行って終わりなんですよね。6~700社くらい取引先があって、全部のお客さんのサイトを見るんですが、正直「こんなサイトに人を送ってもダメだよな」と思っていて。
でも、営業マンが「ホームページをなんとかしたいんですけど」と提案しても、「儲からないし、リスクが大きいからやめよう」というしかなくて。そこに、後悔があったんだと思います。だから、「自分でやるんだから、サイトを改善するサービスがいいかな」って。あとは、「いろんな人と仕事したい」と思ったので、それを実現するKAIZENというサービスを作りました。
須藤:2013年の1月に、いよいよ辞めることをリクルートホールディングス社長の峰岸さんに伝えに行って。正直とても怖い上司だったんですが、「アメリカに行きたい、世界で戦いたい」ということを伝えたら、「日本を売れ」とアドバイスを貰ったんです。今の日本は元気が無いけれど、いいところもいっぱいあって、それが絶対注目される時がくるからと。それで、サービスにも日本語の要素を入れようかということで「Kaizen Platform」という社名にしました。
須藤:サービスとしては、「ツール」と「サポート」と「クリエイティブ」に分けられます。「ツール」は、サイトを改善するためのソフトウェア。「サポート」は、お客さんがサイト改善を成功させられるようサイト改善のエキスパートが支援をします。「クリエイティブ」は、4,000人のグロースハッカー(デザイナーやエンジニア)が、サイトの改善案やデザインを作成します。お客さんは改善案の中から選んでいくだけで、サイト改善ができるというサービスです。
須藤:そうですね。Webサイトは、古くなったら全面リニューアルすることが多かった気がします。ゼネコンみたいな感じですね。そうではなくて、少しずつ変更していけば良いと思っていたので、言わばリフォームみたいなサービスをしています。
ブランディングの一環としての”ロゴ”と“ポーズ”
須藤:当初のロゴは、私がMacで適当に作ったものなんです。でも、ダサかったので、ボリビア人のデザイナーと一緒に考えました。私が考えたものを、彼にキレイにしてもらったんですよ。
ロゴには、「KAIZENだから良くなる」という意味を込めています。最初はピンク色だったのですが、USあたりでは赤信号=止まるというネガティブなイメージになるから、グリーンにしたという背景もあります。
ポーズも、写真取る時とかに使って、それをSNSに上げるとみんな覚えてくれるんですよね。KAIZENは、名前も、マークも、ポーズも覚えやすいから、みんなやってくれます。こども版のTシャツとかも作っていて、小さい子がすごく気に入って幼稚園や学校に着て行ってくれるんですよ。何のお金もかからないけれど、キャッチーですよね。ブランディングの一つですね。
須藤:「KAIZEN」というワード自体、トヨタの影響もあって、知っている人が多いです。MBAに行くと今でも習うそうです。いい名前だって言ってもらえます。
KAIZENが可能にした属人的業務のスケール化
須藤:基本的には、サイト改善にはやらなくてはいけないことが3つあります。
①どこを改善するかという”プランニング”
②どういうデザインにするかという”クリエイティブ”
③その改善に効果があったかを判断する ”テスト”
テストツールだけあっても、サイト改善はできませんよね。だから、プランニングも、クリエイティブも、最後のテストも一緒にやるというフルサービスを提供しているのが大きな特徴です。いわゆる改善の効果を測定するABテストツールを提供している会社や、グラフィックのデザインを依頼できるクラウドソーシングの会社はたくさんありますが、全てを行ってくれるところはあまりないんですよね。
須藤:あと、プラットフォームになっているので、たくさんのデータを集約できるというメリットもあります。データは、大きく2つの種類に分けられます。まずは、ベンチマークの役割を果たすデータ。大企業を中心に、750以上のサイトデータをずっと取っていますから、例えば、「うちのコンバージョン率は、同業界の中で良いのか、悪いのか」という情報を提供できます。「御社のページは、トップページからの会員登録率が、業界平均から30%低い」ということが分かるので、改善する余地がわかります。
あとは、グロースハッカーさんたちのスキル。どのグロースハッカーが、どのサイトを、どれくらい改善したかという実績データを全部持っています。だから、「化粧品のECで月間売上2,000万増やしている」「不動産業のサイトで月間10%問い合わせ増やしている」という、その人の得意分野の見える化ができます。これにより、お客さんのニーズとグロースハッカーのスキルのマッチングの精度が上がっています。
須藤:そうですね。お客さんのサイトを改善してくれるバーチャルチームがいるというイメージです。
須藤:一つ一つのスキルやノウハウはグロースハッカー個人に帰属しているのですが、スキルを持った個人が共通のプラットフォームに集まることで属人的なノウハウがスケール化しているんです。同じプラットフォームに属していることで、どんなスキルも誰かが担保してくれるんですよね。
Kaizen Platformの将来展望
須藤:顧客の業種で行くと、人材・不動産・金融・Eコマースの4業種が多いです。
須藤:サイトの改善がしたいというのが、基本的にこの4業種が多いので、今後もサイトの改善をする顧客はこの領域のお客さまが多いというのは変わらないと思います。今、広告の改善も着手しているのですが、これはもう少し裾野が広くなる気がします。今後は、動画広告の改善とか、いろいろなことをやろうと思っているので、もっと広がるかもしれませんね。
須藤:というより、バナーなど、クリエイティブの改善です。
須藤:我々は、クリエイティブの改善に特化しているんですよね。だから、ページでもサイトでも動画でもメールでも、もちろん広告でもいいんですけど、これらのマーケティングクリエイティブの改善というのが、サービスの本質です。今は、作ったら作りっぱなしのところが多いですから。
第二回インタビューはこちら!
須藤憲司氏インタビュー| 「人」を軸にした、Kaizen Platform流 ”オープン経営”
(取材協力:Kaizen Platform Inc./須藤憲司)
(編集:創業手帳編集部)