サムライ榊原氏×創業手帳大久保| 起業大国イスラエルと日本の創業事情
世界を相手に戦うイスラエルと、日本企業の本質的違いとは
(2016/09/08更新)
サムライインキュベートCEO(最高経営責任者)榊原健太郎さんと創業手帳の大久保の対談。
前回は、イスラエルと日本の文化的な違いや、なぜイスラエルで優秀な人材・起業が次々と生まれているのかを教えていただきました。
世界的な起業大国と言われるイスラエルですが、どうしてイスラエルのベンチャー企業は世界を相手に戦えるのでしょうか。今回は、イスラエルにおけるスタートアップの現状や、そこから日本企業が学ぶべきこと、これからのサムライインキュベートの目指すものについて伺いました。
インタビュアー:創業手帳(株) 創業者 大久保 幸世
世界を舞台に動くイスラエルのスタートアップ
榊原:地理的に言うとイスラエルは四国くらいの大きさしか無いんですが、ベンチャーへの投資額は、日本の投資額の5倍にのぼります。一人あたりの投資額で言うと、世界でナンバーワン。それだけでなく、技術者や科学者の数も、M&Aも一人あたりで世界ナンバーワンです。また、世界中の企業がR&Dセンター(研究開発機関)を置いている場所でもあります。データで見ても、ビジネスにおいてのイスラエルの強さは圧倒的だと思います。
榊原:技術力があっても、国内ではあまり使っていないところでしょうか。日本は、どうしても国内市場で満足しているとことがありますね。一方、イスラエルはマーケットが小さいので、外に出ていかざるをえないんです。
榊原:そうですね。起業の時も、特許技術を作って、それを外国企業に売却するという流れがほとんどです。
榊原:日本のスタートアップは、ほぼ特許の話がありませんもんね。逆にイスラエルでは、既に特許を取得済みの状態や、申請中の段階で始めるのがほとんどです。いわゆるBtoBが多いのも特徴かもしれません。
10年先を見てイノベーションを起こせるか
榊原:革新性というか、イノベーションを起こすような先見性が、やや不足しているように感じます。イスラエルは、ちょっと先を読み過ぎているくらいです。市場があるかどうかを考える前に、まず技術を開発してしまうんですよ。
榊原:例えば、目が見えない人にリアルの風景を見せるような技術を作るとか。20年くらい先のことをやっているかもしれませんね。敵対する国々に囲まれたイスラエルは、常に周りが敵だらけなので、いつ死ぬかわからないという気持ちが根底にあります。
それでいて全員エンジニアですから、目の前の問題をすぐ解決しようという動きが生まれるんです。他にも、20年前には既にチャットアプリを作っていますし、自動運転車の画像認識の仕組みも、イスラエルの会社がほぼ7割のシェアを占めているんですよ。
榊原:マーケットに出たら、いつまでたってもイノベーションは起こせませんからね。これは、日本とイスラエルの大きな違いかもしれません。ちなみに、イスラエルにはほとんど雨が降らないのですが、自給自足率ってどのくらいだと思いますか?
榊原:それが、100%に近いんですよ。水をどうしているのかと思ったら、海水を飲料水にしているんですよね。その技術も世界一。結局、周りに敵しかいないので、自分たちで解決しようという意識、つまり危機感が相当強いんです。だから、イノベーションが起きるんだと思います。
サムライはさらに世界を目指す
榊原:今と同じように、「世界中の優秀な人達が集まっている場所」「世界中のお金がつながっている人たちが集まっている場所」をブランチとして作って、そこをおさえるというビジネスをとことんやっていこうと思います。そうすれば、世界は取れるかなと思うので。
榊原:結局、日本の企業は海外を全く意識しないのがダメだと思います。日本で儲かるから、それはそれで良いんですけど。ただ、国内しか見ていなさすぎです。私も世界を変えると言って日本にいたままで、これはダメだと思って英語もしゃべれないままに世界に乗り込みました。それが、今に繋がっています。
榊原:おっしゃるとおりです。シリコンバレーの人達は、日本のことに企業としても市場としてもあまり興味が無い印象ですが、イスラエルの人たちは日本企業のことがとても好きなんです。だから、大切なのは向こうの人が日本にどれくらい興味があって、日本と、その企業と何がしたいと思っているかではないかと思います。私のこれからの拠点選びも、この点は大切にするかな。
成功する起業家に共通する”巻き込み力”
榊原:ウチのサムライ軍団の中でも、成功している人は周りを巻き込む力があります。自分だけでいけるとか思っている人は成功しないですね。
榊原:できないときにできないと言ったり、教えて欲しいと言ったりすれば、皆助けてくれますから。そういう人の方が成功するでしょうね。
起業家へのメッセージ
榊原:まず、本質的に世の中の問題をしっかり理解すること。そして”0から1を産む”視点でどうすれば問題を解決できるのかを考えること。「できるできない」ではなくて、「やるかやらないか」で世界を変えて欲しいですね。日本は、できないと思っている方が多すぎるので。英語ができないから海外進出できないとか。でも、できる手段をちゃんと考えて欲しいです。
榊原:はい。今も日本で毎月2、3社投資していますが、地方の起業家はまだ少なくて。地方から東京じゃなくて、地方から世界へという挑戦も作っていきたいですね。日本はもっともっと、日本のサムライを出さないといけないと思います。
(取材協力:サムライインキュベート代表 榊原健太郎) (編集:創業手帳編集部)
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