サムライインキュベート 榊原 健太郎|起業大国・イスラエルに学ぶ “天才起業家が育つ”10の習慣

創業手帳
※このインタビュー内容は2016年09月に行われた取材時点のものです。

サムライインキュベート代表・榊原氏インタビュー

(2016/09/08更新)

サムライインキュベートCEO(最高経営責任者)榊原健太郎さんと創業手帳を運営する ビズシード株式会社 代表取締役社長・大久保幸世の対談をお届けします。

2008年に榊原さんが設立したサムライインキュベートは、“サムライファンド”を立ち上げ多くのスタートアップに投資。2014年には、日本を飛び出し“第二のシリコンバレー”と言われるイスラエルに事務所を開設。世界進出を狙うベンチャー企業を育成しています。

サムライは、どうしてイスラエルを戦場に選んだのか?お話を聞いていくと、「イスラエルでビジネスを行う上で見えてきた日本ビジネスのダメなところ」、そして「イスラエルで天才が生まれる理由」が分かってきました。 samurai_1

榊原 健太郎(さかきばら けんたろう) 1974年生まれ。関西大学卒業。大手医療機器メーカーを経て、2000年にアクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)に入社。インリッピック電通(現電通ワンダーマン)でダイレクトマーケティング戦略に従事後、アクシブドットコムに復帰。西日本広告販売ブランチの立ち上げや、営業本部の再構築、モバイルサイトの立ち上げを担当。2008年に株式会社サムライインキュベートを設立、代表に就任。2014年には先進的ベンチャー支援のため、イスラエルに事務所を開設。IT起業家の創業を支援している。

社会的に意義のあるビジネスは成功する

ー大久保:イスラエルで多くのベンチャー育成に成功されていますよね。そもそも、なぜイスラエルで投資活動を始めようと思ったんですか?

榊原:最初は、日本からGoogleやFacebookみたいな世界的インターネット企業を作りたいと思っていたんです。でも、やっぱり作れない。なぜなら、天才的なエンジニアや世界中にコネクションがある資産家とのつながりを作ることが難しかったからです。

ー大久保:世界的な起業を目指すところが始まりだったんですね。でも、なぜシリコンバレーではなく、イスラエルを選んだのですか?

榊原:世界的に成功している創業者=Google、Facebook、ゴールドマンサックス、JPモルガンの創業者達はみなユダヤ人なんです。そのルーツはどこかというと、イスラエル。そこに行くのが、世界を取る最短距離だと考えました。そして今、ユダヤ人のネットワークを活用すると、世界中のすごい人達との繋がりができる、ということを実感しています。

ー大久保:すごい!それって、日本人としては第一人者じゃないですか?

榊原:そうですね。ウチみたいに起業家のアイデアに投資するビジネスは、かなりのブルーオーシャンでした。

ー大久保:誰もやっていないことを始めるのは、怖くはありませんでしたか?

榊原:いいえ。逆に、誰もやっていないビジネスでも、それが社会的に意義のあることであれば、成功する確率が高くなることがよく分かりましたね。

日本の起業家にないものを持つイスラエル

ー大久保:ビジネス面でイスラエルと日本を比べると、どんな違いを感じますか。

榊原:そもそも、文化的・習慣的な違いが大きいですね。

ビジネスの考え方におけるイスラエルの文化を10個挙げましょうか。

イスラエルの”天才が育つ”10の習慣

  • 「たくさんの問題(アイデアの元)を発見する」
  • 「問題(アイデアの元)を楽しむ」
  • 「問題解決のための議論が大好き」
  • 「常に本音、建前無しで話をする(上司であっても)」
  • 「すぐに行動をする(今すぐ、今日レベル)」
  • 「テクノロジーで解決する」
  • 「失敗を高く評価する(失敗すればするほど高評価)」
  • 「家族で起業を褒める(大企業に入るよりも)」
  • 「家族のプライオリティが最も高い(毎日午後6時には帰り、毎週金曜全員集合)」
  • 「一日一生の考え方(いつ死んでも悔いのない生き方」
ー大久保:どれも、日本の起業家に足りないと言われている部分ですね。

あたりまえを疑い、ルールを変える

ー大久保:上記の「10の習慣」の中でも、一番日本との違いを感じるのはどこですか?

榊原日本人は、「なぜなのか」という疑問をもたないという点でしょうか。日本では、ルールになっていると、もう“あたりまえ”になってしまうんですよね。例えば、なんでパチンコの景品はパチンコ屋さんで交換できないのかとか、警察と自衛隊って一緒にやった方が良くなるんじゃないかとか、政治家にもちゃんと休みをあげた方がパフォーマンスを出せるんじゃないかとか。日本では、根本的におかしい部分があっても、ルールはルールとあたりまえに飲み込んで、見直すことはないですよね。でも、イスラエルの人にとって、ルールは常にアップデートするもの。だから、常にディスカッションが生まれるんです。

ー大久保:なんだか、日本のダメなところの真逆ですよね。日本ではぜんぜん議論が起こりませんし。

榊原:そうですね。イスラエルの人は「いつ死ぬかわからない」と考えているので、常に時間がない。建前で喋ったら遅いから、常に本音で喋っているんです。ミーティング中の彼らは、ケンカみたいに議論してますよ。でも、仕事から離れると普通に友達。日本はそこをやや引きずるじゃないですか。このメンタルの違いはすごいと思います。

ー大久保:意見の違いと、人としての好き嫌いを切り離せるんですね。日本だとそれがイコールになりますから、なかなか議論が深まりません。

”現在思考”から生まれるスピード感

ー大久保:他に、仕事をしていて驚いたことはありますか?

榊原:おもしろいのが、「ミーティングしましょう」というと、日本では「来週や再来週どうですか」となるじゃないですか。でも、イスラエルでは必ず当日、遅くても翌日の朝というスピード感ですね。今から電話するから、みたいな。

やっぱり、「来週どうなるかわからない」という意識があるんだと思います。情勢は常に変わりますから、計画やマイルストーンを立てるのも好みません。結局は、「ユダヤ人という民族を守るために、常にいかに早く物事を解決できるか」という考えがベースにあるんですよね。

ー大久保:そのスピード感は、なかなか日本人の感覚には馴染みのないものかもしれません。本当に、日本人が考えないことばかりですね。

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日本人も「一日一生」を見習おう

榊原:日本は、ほぼ仕事で人生が終わっていませんか。イスラエルの人たちがどうしてそんなに急ぐかというと、プライベートの時間を早く作りたいからというのもあるみたいです。

ー大久保:イスラエルにかぎらず、ヨーロッパもそんな感じですよね。

榊原:「一日一生」ですね。一日を一生と考えると、仕事だけで終わっちゃう人生と、仕事とプライベートどちらも全力で終える人生とどちらが良いかという考えが根付いているんです。

ー大久保:素晴らしい!「一日一生」。印刷して壁に貼っておきたいですね。

天才が生まれる秘密は、教育現場にあった

ー大久保:イスラエルには、優秀な人材が多いんですよね。人材も、企業も基礎レベルが高い印象があります。優秀な人材が生まれる背景には、どんな秘密があるんでしょうか。

榊原:どうして頭が良い人が集まっているかというと、小学校くらいから義務教育でエンジニア育成する体制だからです。最近日本も始めていますけど。義務教育でC言語とC++、高校からはPythonも学んで。高校卒業した段階で、みんながプロフェッショナルレベルのサイバーセキュリティの技術を持っているんです。

サイバーセキュリティの技術を持っていれば、どんなサービスも作り出せるんですよね。そして、サイバーセキュリティとは人の動きを予測する技術ですから、自ずとAI(人工知能)関係の技術も高いという状況が生まれています。

ー大久保:日本はロジックよりも感情を重視する面もありますね。間違えたプログラミングをして「動いてくれないですか」といってもしょうがないけれども、日本的なウェットな感情の世界もある。でも、イスラエルではプログラミングの考え方が根付いていて、それがロジカルシンキングの基本になっているのかもしれませんね。

榊原:そもそもの教育制度が優れた国なんです。

ー大久保:それに比べて日本は、ワークライフバランスや、女性の働き方、日本の会社自体減っていることなど様々な課題があると考えています。中でも、一人あたりの生産性についての教育などが遅れているんじゃないかと思っていて。私もMBAのビジネスマン向けの講座に通ったりもしましたが、こういう実践的な教育をしなければ、日本は世界で生き残れないのではないかと。イスラエルの教育を日本で、個人レベルで活かそうとしたらどうすれば良いんでしょうか。どこに問題点があると思われますか?

榊原:やっぱり、最大の原因は危機感がないことだと思います。危機感があれば、「自分で解決しよう、できるようにならなくちゃいけない」という状況になりますから。どれだけ現状への危機感を持てるかというところに本質があると思います。「今は、何のためにやっているか」というのが紐付いていればいいんですけど、そうではないことが多い気がしますね。まずは、考え方を変えていくことでしょうか。

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(取材協力:サムライインキュベート代表 榊原健太郎) (編集:創業手帳編集部)

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