撤退基準を設け、自己資金で起業。レアジョブ代表の経営術を取材!
レアジョブ代表 加藤智久さんインタビュー
(2016/06/16更新)
格安のマンツーマンオンライン英会話サービスを中心に、英語を「話せるようになる」サービスを提供するレアジョブ。前回は代表の加藤氏に起業前から現在に至るまでのお話を伺った。今回はインタビュー第2弾として、創業期の採用、マネタイズ、サービスの拡販方法についても詳しくお話を伺った。
1980年生まれ、千葉県出身。一橋大学商学部卒業。外資系戦略コンサルティングファームに勤務後、2007年に株式会社レアジョブを設立。2014年東京証券取引所マザーズ市場上場を果たす。2015年株式会社レアジョブ代表取締役会長に就任。
信頼できる創業メンバーとFace to Faceのマネジメントが成功のカギ
加藤:最初のメンバーは、副業の時から既に色々と手伝ってもらっていた代表取締役社長の中村です。
大変だったのは、フィリピン側で講師を集めてくれる人を探すことでした。
それは私自身が実際にフィリピンに行き、マニラにあるフィリピン大学のディリマンキャンパスという一番大きなキャンパスで探しました。
加藤:ツテは特にありませんでした。
ただ、どうやったらそういう人を探せるかと大学で色んな人に聞いて回りました。
そうすると、インターナショナルセンターという留学生が集まる会館があるということを教えてもらいました。
そこに行ってみると、沢山貼り紙が貼ってあったので、私も半信半疑で講師募集の貼り紙を出してみました。
結局会えたのは一人だけだったのですが、その一人がフィリピン側の創業パートナーになったシェムです。
大変有能且つ信用できる人で、彼女にフィリピン側を任せられたことは大きなステップでした。
加藤:最初はスカイプで遠隔マネジメントをしましたが、スカイプを使ってマネジメントはできないと実感しました。
スカイプを使って細かい調整はできても、結局現地に行かないとマネジメントはできません。
ですので、実際に日本2週間、フィリピン2週間という生活を7年近く送っています。
マネタイズ方法は創業時に真剣に考えるべし!
加藤:「これ位経ってもお客さんが集まらなかったら撤退しよう」という撤退基準だけ決めておいて、自己資金で起業しました。
当初は、必要な費用を算出すると1年分も無いような状態で始まりました。
ただ、マネタイズのモデルは最初にきちんと設計していました。
当たり前ですけれども、資金調達の一番の手段は、売り上げを上げることだと思います。
正確に言うと、売り上げを上げるというよりは、営業のキャッシュインを起こすということだと思っています。
ですので、このビジネスモデルを組む時に、二つのことを意識して取り入れました。
一つはPayPalを使いました。PayPalを使うと、一ヶ月とか待たずに即日入金が可能になります。
フィリピン人講師たちには、月末で締めて翌月の10日払いにすれば良いので、売上が拡大すればするほどキャッシュとしては多くなるという仕組みを最初に設計しました。
二つ目は、前回もお伝えしたとおり、料金プランの設定を工夫したことです。
副業としてサービスを提供していた時は、30レッスンで幾らというモデルでした。
しかし、起業した時のビジネスモデルは、毎日使っても使わなくても月額5000円。
このモデルの利点は、毎月お客様から頂く料金は、お客様が辞めない限り続きます。
また、以前のプランは、レッスンを受ける度に「これで何百円」と心が痛むのですが、月額の場合は受ければ受けるほど単価が下がる。
そして受ければ受けるほど英語の伸びを実感でき、続けていただける。
そのお金のもらい方を創業直後に変えたことが、上手く行った背景だと思います。
他の多くの企業を見ると、創業時のマネタイズ方法をかなり軽んじているのではないかという印象をもっています。
例えば、最初の部分のフィーをすごく小さく見せながら、結局会社が大きくなった時にしっかりもらえるような組み方など、色々と工夫できますよね。
それなのに、その工夫を真剣にやろうとしている会社がそんなに多くないという印象を持っています。
京セラの稲盛さんがおっしゃる"値決めは経営”は、まさに本質で、私たちは値決めからスタートし、値決めのお陰で良いスタートを切ることができました。
そこにこだわっている点は、今後銀行から資金調達する際や、株式調達する際などにも注目していただきたいです。
口コミの連鎖でバランスを保って拡販する
加藤:うちの場合はマンツーマンなので、フィリピン人講師を増やしていかなければいけません。
色々な方法を試したのですが、一番効果的なのは口コミですね。良い先生の知り合いは良い先生ということです。
メディアが発達していないので「レアジョブで働くと良いよ」ということが自然に口コミで伝わって初めて採用できるという流れです。
例えば、Facebookはハーバードで始まり、東海岸のIBリーグだけで限定して拡大し、今度は西海岸のIBリーグへ行き、その他の全大学に拡散されていったのですね。
10%の学生が使えば、残り90%は自然に任せておけば拡散するという、まさに理想的な口コミの設計です。
でも、10%に達するのが大変で、10%に到達したらそれを元に他のIBリーグでも自然と認知度が高まって行く。
そうすると、他大学でも「IBリーグで使われているサービスを私たちも使いたいのだけれど」となります。
この口コミの連鎖をどう上手く設計していくかというところは、フィリピン側で力を入れました。
日本側は、それにプラスSEOとSEMを組みました。ブログを2005年からずっと書いているのですが、ブログ経由で来た人がそもそもの始まりです。
特に最初の頃は、他に目立ったオンライン英会話のプレイヤーというのはいなかったので、そこである程度のユーザーを集めることができました。
加藤:バランスを常に別数の余り率として見ています。
一定以上の余り率が無いとお客さんは好きな講習が予約できないし、講師は全然稼げない状態になってしまいます。
そこのパーセンテージは上手く調整して、その数字が達成できるようにしています。
お客様の数に合わせて講師を調整するというところですね。
加藤:フィリピン側の社員は、講師あがりから採用している人が多いです。
一番良い大学から選りすぐって採用した講師の中から、さらにスタッフに向いている人たちを採用するという形なので、経験は無いけれどポテンシャルのある人材を採用できていると思います。
一方日本側は、ミッションやビジョンに共感して集まってくれていると感じています。
比較的中途採用でも、良い人材が集まってくれています。
(取材協力:株式会社レアジョブ/加藤 智久)
(編集:創業手帳編集部)