瞑想でメンタルヘルスを整えてみた 

創業手帳

瞑想でメンタルヘルスを整えてみた

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労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」が、平成27年12月1日に施行された。

起業家にとっても、会社を経営するというのは想像以上に脳に負担を与えるものだ。もちろん、創業期のベンチャー起業家にとって、適度なプレッシャーは良い意味での緊張感につながり、活力をもたらすかもしれない。

しかし、日頃ネアカな経営者であっても、キャッシュフローや社員のマネジメントのことを四六時中考える事で発生する過度な負担は脳の稼働率を下げ、最悪の場合には精神を蝕んでしまう。

そこで、どのような事が脳へ負担になるのかを理解し、余計な負担を減らすことでメンタルヘルスを健全な状態に保ちたい。

マルチタスクを減らす

仕事を進める上で「マルチタスク」が脳に大きな負担を与えると言われている。朝は社員に指示を出しつつ取引先に電話をかけ、昼は営業に出かけつつもサービス企画で頭がいっぱいになり、夜は帳簿と睨めっこをしながら部下の愚痴を聞くなど、経営者に「マルチタスク」は付いて回るものであろう。

しかし、人間の脳は構造上、複数の作業を同時に行える様には出来ていないらしい。具体的なタスクの量としては、最大で2つが限界で、3つを超える量のタスクを同時に行うことは出来ないことがフランス国立保健医学研究所の研究で明らかになっている[1]。

また、その結果として脳内のメモリが不足している状態になる為、ベンチャー企業家に必要な「創造性」までも低下してしまう恐れがある。

「自分は同時にいくつものタスクをこなせるぜ!」という優秀な経営者も、実のところは脳内では各タスクの切り替えを高速で行っているだけであり、脳内でのタスク切り替えの際にはその都度、脳に負担がかかっている。

さらに近年の脳科学の研究では、この負担の蓄積により、脳内に副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾール(ヒドロコルチゾン)が増え、記憶を司る海馬を萎縮させる事が分かっている[2]。



とは言え、現実的には、電話やメール、SNS、部下からの相談、突発的なトラブルなど、ベンチャー企業の経営者がマルチタスク状態を避けることは難しい。

対策として、例えばそれぞれの情報源に「接する時間」を明確に分けて(思い切って時間ごとに遮断して)、緊急なもの・優先度の高いものから「1タスク1タスク順に早く終わらせる」習慣を身に付けるだけで脳の負担を減らす事が出来るかもしれない。

定期的に脳をデフラグする

インターネットの恩恵により、我々は膨大な量の情報を手に入れられる環境にあるが、残念ながら人間の脳の処理量・記憶量には限界があり、情報超過は前述の様に脳に負担をかける。

対策として、例えばコンピュータの場合、ハードディスクの情報を最適化して、空き容量を増やす「デフラグ」によって処理能力を改善することが出来るが、人間の脳にも実はそれに近い機能が備わっているらしい。脳のデフラグの手段として、今「瞑想」が注目されている。

故スティーブ・ジョブズが禅に取り組んでいた事は有名だが、2013年に世界20カ国でベストセラーになったケリー・マクゴニガルの「スタンフォードの自分を変える教室」ではヨガを通じてメンタルコントロールを行う方法を紹介している。

禅もヨガも宗教上の修行を起源としたものであるが、我々ビジネスマン・ウーマンにとっても、日常のストレスを発散し、脳の記憶領域を整理し、ベンチャー経営者に欠かせない創造力を「無料」で高められる貴重な手段かもしれない。

瞑想の脳科学的な説明としては、前頭前皮質の緊張を緩め、セロトニンの意識的な分泌による自律神経の調整だそうだが、専門的な説明はここでは省きたい。PC用語を例にとれば、一旦アプリケーションを終了させてCPUに余裕を持たせ、空いた分でメモリを最適化し、PCの処理能力が高まる、というところだろうか。


瞑想をやってみた

日々、悶々としている創業手帳編集部でも、瞑想の効果を体感する為に、夜の静まり返るオフィスで1ヶ月間に渡る検証を行ってみた。

幾つかの書籍を参考に行ってみたが、残念ながら最初の数日間はなかなかうまくいかない。単にウトウトしてしまったり、時間だけがむなしく過ぎて行く日々が続く。

しかし、一週間、二週間と後述するプロセスを辛抱強く続けるうちに、確かな手応えを感じ始めた。考えれば当然のことだが、どうやら瞑想にはある程度の習熟が必要な様だ。

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粘り強く取り組んだ結果として、瞑想は1日15分程度でも、脳の整理やストレス解消に効果がありそうだということが分かった(編集部員体感値)。

書籍等を参考に我々が試した瞑想の手順は、大きく3つのプロセスに分かれる。

1.呼吸を整える

心が落ち着かないと、呼吸が乱れる。それならば逆に、呼吸を整えることで心が落ち着くというのは分かりやすいところだ。

我々が参考にした書籍や検証によると、むやみに息を止めて呼吸を減らす事が良い訳ではなく、背筋を伸ばして正しい姿勢を保ちながら1分間に数回の呼吸を行う程度が良さそうだ。また、当然ながら瞑想を行う場所は出来る限り暗く静かな所を選んだ方が良い。

2.頭を空っぽにする努力をする

「何も考えない」ことは、現実的には難しい。しかし、何かが頭に浮かんだ時、「これは後で考えよう」と、頭の中の一時保存フォルダに浮かんだ事を次から次へと入れていく。それでも何かしらが頭に思い浮かんでしまうものであるが、躊躇無く「これは今は考えない!」と割り切ってその事をフォルダに入れて忘れる努力をする。

驚く事に、この作業を粘り強く続けることで、ある瞬間、「何も浮かんで来ない≒何も考えない」状態に近づく事が確認出来た。慣れて来ると、10分間程度でこの状態に辿り着くまでになった。この状態になると、心に溜まっていたストレスがスーっと解消し始め、それどころか、ある種の快感さえ感じる様になる。

3.頭が空っぽになって、自動的に考えが整理される

毎回この境地まで辿り着ける訳ではなかったが、何度か「今、何も考えていない、頭が空っぽだ」と感じることが出来た。ブルース・リーの、「Don’t think. Feel」ではないが、考えているのではなく、ただ感覚で「今、自分の頭は空っぽだ」と感じていたのだ。その瞬間はエクスタシーと言っても過言ではない程の爽快感に包まれる。

この様な手順で良質な瞑想を終えると、確かにストレスは軽減され、モヤモヤしていたアイデアも理路整然と整理が出来る事が多かった。1日15分程度であれば負担も少ない。創業手帳編集部では、今後も瞑想の鍛錬を続け、更なる高みに到達した際には改めてレポートする。

プレッシャー、ストレスと闘う創業期の起業家・ベンチャー経営者には、是非オススメしたいリフレッシュ術だ。

(創業手帳編集長:神田真幸)

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