社労士に相談できる仕事や業務を解説! 思った以上にたくさんのことを依頼できます!
社労士に相談で、業務効率をアップさせよう!
起業して事業が成長したら、人を雇用し、組織や制度を整えていかなければなりません。その際は、ぜひ社会保険労務士(社労士)に相談したいところです。
「社労士には何を相談できるの?」というベンチャー経営者や起業家の声をよく耳にするので、今回は、社労士を120%使い倒して、大いに活用してもらうために、社労士に相談できることをまとめました。
累計100万部突破の会社の経営に役立つガイドブック創業手帳の冊子版では、社労士の使い方や労務について、専門家のアドバイスをもとに詳しく解説しています。起業後の経営に必要となるノウハウをまとめているので、記事と併せて参考にしてみてください。(創業手帳編集部)
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社会保険労務士(社労士)とは?
社会保険労務士とは、「社労士」や「労務士」などと呼ばれ、一般的な会話では「社労士」と呼ぶことが多いです。
社労士とは、労働関係法令や社会保険法令に基づく各種書類の作成代行や届出等を行い、また会社を経営していく上で労務管理や社会保険に関する相談・指導を行う国家資格を持った専門家です。わかりやすく感覚的な言葉に言い換えると、会社経営の「ヒトに関する管理業務」についてアドバイスをくれたり実務をサポートしてくれる専門家といってよいでしょう。
社会保険労務士に相談できる仕事は、大きくわけて2種類あります。すなわち、「ヒトに関する業務の外注(アウトソーシング)」と「ヒトに関する業務のコンサルティング」です。
社労士への相談①:ヒトに関する業務を外注する
まず、ヒトに関する業務の外注とは、企業の総務部・人事部・労務部などの管理部門の業務のうち、ヒトに関する業務そのものをアウトソーシングして社労士にやってもらうことです。
具体的には、労働保険・社会保険に関する手続き、給与計算などの仕事を依頼することができます。
- 社労士に外注できる主な業務
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- 社員の入社・退職時に雇用保険や健康保険・厚生年金の資格取得や喪失の手続き
- 業務上のケガ・通勤途上のケガ、いわゆる、労働災害(労災)が発生したときの届出
- 社員に扶養家族が増えたり減ったりする場合(結婚・出産・離婚・死亡など)の健康保険証の変更手続き業務
- 社員の住所や姓名か変更された時の雇用保険・健康保険などの変更手続き業務
- 会社が移転したり、支店や拠点が増減した場合の労働・社会保険上の手続き
- 社員の毎月の給与計算や勤怠管理業務
- 労働保険料の1年間分の保険料を計算して申告する業務(年度更新業務)
- 1年一回、社員一人ひとり個別の社会保険料を計算して申告する業務(算定基礎届)( ※4・5・6月の3か月分の給料の平均値を計算する。7月に申告)
- 健康保険関係の給付(出産一時金・傷病手当金)手続き
社労士に外注の相談をするとよいケースは?
では、どういうケースで社労士に業務をアウトソーシングをするとよいのでしょう。
「ヒトに関する業務」を行う専門スタッフを置く余裕がない
まず、人事・労務関連の業務を社長自らがおこなっていて、社長の本来の仕事に支障をきたしているような会社が、困った末に外注先として相談するといったケースがあります。
創業期のベンチャーや中小企業では、人事・労務関連の業務に専任のスタッフがいないことが多いため、社長から専任のスタッフに仕事を引き継ぐことも難しいです。また、たとえ専任のスタッフがいたとしても、毎年改正される保険料率など、人事・労務の分野では常に最新の知識が必要になってきているので、スタッフの継続的な教育が必要になってきます。
事業が急成長して「ヒトに関する業務」が大変になってきた
次に、特にベンチャーや新興企業に多いのだが、急速に事業が成長して社員数が増えすぎ、入退社手続きや給与計算業務量が急増かつ複雑になってきたという企業に、社労士への仕事の外注のニーズがあります。社員数が4~5名に増えたときに、顧問社労士をつけることをおすすめします。
このケースも、業務を行う専門のスタッフを育成するのに手間がかかるため、プロである社労士への外注が検討されることになります。
特定の時期に「ヒトに関する業務」が集中して困っている
続いて、月末に集中する給与計算をするために社員にかなり残業代を支払って仕事をさせているので、なんとかコストダウンしたいと考えているような企業です。このような企業は、一年に一回の業務(「労働保険年度更新」や「社会保険算定基礎届」)についても、普段からコツコツやっておらず、手続きや作業を溜め込んでいること多いです。
単純に繁忙期にあわせて人員を増やしてしまうと、月末や年一回の業務の時期以外は、逆に人員が過剰になってしまいます。そこで社労士に外注を検討することになります。
合理化でヒトに関する業務を外部委託したい
最後に、合理化による人件費削減で、人事・労務業務の外部委託を検討しているような企業です。企業規模にもよるが、人事・労務の業務をすべて自社内で実施するのに比べると、コストは1/3程度になると言われています。
起業直後の創業期のベンチャー企業であれば、合理化は先々の話になりますが、事業が成長して「必要以上に管理部門の規模が膨らんできたな」と感じ始めたら、一度検討するといいでしょう。
また、社労士が担う専門的な領域だけでなく、外部委託したほうが生産性が上がる業務があります。たとえば、定型業務や定期的業務が多い「総務」がそうでしょう。冊子版の創業手帳では、総務などの業務において、アウトソーシングすることのメリットや、ポイントを詳しく解説しています。(創業手帳編集部)
社労士への相談②:ヒトに関する業務のコンサルティングを依頼する
もう一つ、社労士に依頼できる仕事の大きなくくりとして、人事・労務管理に関するコンサルティング業務があります。
具体的には、就業規則・退職金制度・人事制度(賃金制度・評価制度)助成金、高齢者の賃金設計・就業時間管理・行政官庁調査対応、社会保険料適正化などです。いわゆる「ブラック企業」と呼ばれないために、このあたりの制度設計は慎重に行う必要があります。
- 社労士にコンサルティングの相談ができる主な業務
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- 就業規則の作成・見直し・変更のコンサルティング(リスク回避型)
- 変形労働時間制・裁量労働制などの導入コンサルティング
- 社会保険事務所・労働基準監督署の調査指導の対応業務
- 助成金の申請代行コンサルティング
- 人事制度全般にかかる賃金制度設計や評価制度の導入コンサルティング
- 退職金制度のコンサルティング
- 社会保険料の適正化コンサルティング
- 高齢者の定年後の継続雇用に関するコンサルティング
社労士にコンサルティングの相談をするとよいケースは?
では、どういう場合に社労士にコンサルティングの相談をするといいのでしょうか?
社内規則や規定などを整備したい
まず、就業規則のような社内規則・規定をつくりたいというような企業です。
「社員がすぐにやめてしまうので高い離職率を下げる」、「社内の労使間での雰囲気が悪くなんとか関係改善を図る」、「ルールを明確にすることで労働者のモチベーションを上げ、業績アップを目指す」、「助成金の申請に必要なため」など、企業によってさまざまな理由がありますが、そんな社内規則・規定の作成時に社労士に相談し、アドバイスやサポートを受けることができます。
【関連記事】起業家のための就業規則入門
助成金の申請・受給を考えている
次に、起業直後の創業期のために少しでも資金が欲しい、あるいは異業種に進出を考えている等の理由で、何か返済不要の助成金があれば申請・受給したいと考えているような企業です。
雇用促進や社員のキャリアアップを目的とする助成金の受給には、就業規則の作成や運用実績が必要な助成金もあります。
【関連記事】キャリアアップ助成金:「正規雇用等転換コース」の申請・受給の流れ|キャリアアップ助成金「正規雇用等転換コース」のまとめ
よって、助成金の申請をきっかけにして、就業規則の整備を考えるベンチャー企業や中小企業も多いです。就労規則の作成・運用から助成金の申請・受給までの一貫したサポートを社労士から受けることができます。
また、助成金は毎年のように制度が変更されています。最新の情報を把握し、使える助成金をみつけるのは至難の業となっています。創業手帳の別冊、補助金ガイド(無料)では、社労士の監修のもと、創業期に使える最新の補助金・助成金について解説しています。(創業手帳編集部)
賃金制度を設計したい
賃金制度の一般的な考え方や、自社に合った賃金体系とはどんなものか?といったニーズにも社労士は応えてくれます。
社員の採用や、社員のモラル向上のために大切な賃金制度については、会社が独自の考え方に基づいて構築していくものです。よって、基本的な手法や同業他社の水準などをある程度念頭に置いて作らなければ賃金水準が問題となり、人材採用に応募がなかったり、すぐ離職者が出てしまったり、逆に賃金水準を上げすぎて経営を圧迫したりすることがあります。
具体的には、「昇給・昇格・賞与の違いは?」「ベースアップと定期昇給とは?」「同業他社の初任給や賃金水準を知りたい」「賃金体系をつくりたい」「能力給や年俸制、また成果給などを導入したい」などの質問や相談に社労士は答えてくれます。
社会保険を整備をしたい
「社会保険に未加入の社員がいる(特にパート・アルバイト)」、「社会保険事務所から調査が入り対応に困っている」、「毎月の社会保険料負担に苦しんでいる」など、社会保険の導入に関して社労士に相談したりサポートを受けることができます。
ベンチャー企業の中には、起業直後の創業期には社会保険の整備がいい加減である企業も多いです。これはこれで問題ですが、さらにそのようなベンチャー企業が急成長し、社会保険の整備がそのまま放置されて非常に大きな問題に発展するケースもあります。
ヒューマン・リソース・マネジメントについて相談したい
さらに、「定年後の高齢者を効率よく(安く)使えないかと考えている」、「優秀な人材を採用したい」、「あるいは逆にリストラを考えている」など、人材の採用・ヒューマンリソース管理に関して、社労士に相談したりサポートを受けることができます。
起業してすぐのベンチャー企業であれば、資金力に余裕がない場合も多いので、人件費を抑制しながら優秀な人材を採用・活用していくというニーズが高いでしょう。そのような人材の採用・活用に関して、総合的に社労士は具体的なアドバイスをすることができます。
人事労務関連のトレンドが知りたい
最後に、他社の人事労務管理制度や人事労務関連の法改正情報を社労士から得たいというニーズにも社労士は応えてくれます。
すでに人事・労務管理を上手くやっている企業のノウハウは、新たに制度を作っていくベンチャー企業にはとても有用でしょう。また、人事・労務関連の法律の改正情報は、社内の担当者ベースで正しく追っていくのは難しいので、社労士をぜひ活用したいところです。
社労士に裏技系の相談をする
これまでの業務内容以外に、あまり堂々と語る経営者は少ないが、本当に経営者が知りたい内容や相談したい内容、いわゆる裏技系の人事・労務関連の問題に対して、社会保険労務士に相談したりサポートを受けることができます。
離職・退職関連
- 離職・退職関連
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例えば、やめさせたい社員がいる場合でも、法律を守る必要があります。不当解雇をすれば、従業員から逆に訴えられる恐れがあるため注意が必要でしょう。そこで、社労士に相談すると、法的ルールに沿いながら、社員自らが退職を促す、または正当な理由で解雇できるようになります。
また、解雇する場合は、1ヶ月前に告げれば解雇しても問題ないのかという疑問があるでしょう。労働法第20条に定めがあるのは、30日以上前に解雇の予告をする条件です。30日より前に予告できないときは、どのくらいの賃金を払えばいいのか社労士へ相談するのがおすすめです。
やめさせる社員がいる際は、有給休暇の現金の買い取り、退職金の問題もあるかもしれません。有給休暇の現金の買い取りは原則違法ですが、いくつか例外があります。退職金に関しては、就業規則に従います。就業規則で退職金の基準がなければ、会社が退職金を支払う必要はありません。
- やめさせたい社員がいるのですが、いい方法はありますか?
- 早期優遇退職制度の導入はどうすればいいの?
- 成績の悪い社員の給料を下げたいのですがどうしたらいいのですか?
- 辞めた社員が、サービス残業分を請求してきました!どうしたらいいの?
- 1ヶ月前に告げれば誰でも解雇できるのですか?
- 有給休暇を現金で買い取りはできるのですか?
- 退職金は必ず払わなければいけないのですか?
- 社長の退職金を用意したいのですがどうすればいいの?
賃金・労働条件関連
- 賃金・労働条件関連
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賃金の問題は、賃金のカット・ボーナス・退職金・残業代などがあるでしょう。例えば、遅刻や欠勤が多い社員は、賃金をカットしてもいいのか迷うことがあります。賃金は全額支払いが基本ですが、あくまでも労働した場合に対してです。労働していない分の賃金を削るのは問題ありません。遅刻や欠勤を理由にその後も賃金をカットしてもいいかは例外のため、違法にならないよう社労士へ相談するのがおすすめです。
また、ボーナスや退職金制度を途中でやめたい場合もあるでしょう。これらの場合は、終業規則に例外があるか確認しなければなりません。例外の記載がなければ慎重に検討しなければならないため、社労士への相談が安心です。例えば、規定がないときに売上減少を理由でボーナスをカットすることは、違法にあたります。
パートの有給休暇や育児休暇は、要件を満たせば従業員が請求する権利はあります。これらは雇用形態に限らないため、条件を確認しておきましょう。主婦が多い会社では、休暇の取得に関して、社労士に相談できる環境があると安心です。
- 遅刻とか欠勤の場合の賃金はいくらカットしてもいいのですか?
- 負担増なのでボーナスは次からやめたいのですがいいのでしょうか?
- 退職金制度を廃止したいのですがどうすればいいのですか?
- 一般世間の同規模・同業種の給与・ボーナス・退職金はいくらなのかな?
- どの会社も、残業代はきっちり支払っているのかな?
- 合法的にもっと残業させたいのですが?
- パートの有給休暇は与えなくてはいけないのですか?
- パート社員が育児休暇を申請してきたが、どうすればいいの?
労働問題関連
- 労働問題関連
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労働問題が発生しているときは、専門家に相談することをおすすめします。関連する労働法は複雑で改正も多いため、会社がすべてを把握するのは難しいためです。場合によっては、社員から訴えられる、または会社が社員を訴えるケースもあるでしょう。弁護士に相談するほどでもない問題や、早期解決は労務士への相談がおすすめです。
- 労働基準監督署からの呼び出しがありなんとかならないのでしょうか?
- 社会保険事務所から調査のお手紙が届いたのですが、調査を受けたくないのですが?
- 社内でセクハラが発生しているが、公にせず解決する方法はあるの?
- 労災が発生しましたが、届け出はしなくてはいけないの?
- 会社の合併を考えていますが、労働条件の食い違いはどうすればいいのかな?
- 会社の営業秘密が社員より漏洩しているようなのですがどうすればいいのかな?
人材採用・育成関連
- 人材採用・育成関連
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会社の人材に関する問題も、社労士がサポートしてくれます。求人を出しても人材が確保できない、社員の定着が悪いなどの問題に対してのサポートです。人材が集まらないのは、社会保障や給与体制に問題があるのかもしれません。社員の離職率が悪い場合も、待遇の悪さが原因のことがあります。なかなか改善できないときは、社労士に相談してみてください。
- 採用予定人員が確保できないので、どうすればいい人材が採用できるの?
- 社員のモチベーションをUPさせるにはどうすればいいの?
- 社員の離職率が高く、定着しないのはどうしてなの?
- 従業員が急に出勤してこなくなったのですがこういう場合はどう対応?
- 社員同士が就業時間内にケンカをして備品を破損!どう対応したらいいの?
補足|会社設立は社労士に相談できる?
社労士に会社設立について相談するメリットはどのようなことがあるのでしょうか。
法人を設立した場合、おそらく、社会保険・厚生年金・雇用保険などに加入しなければなりません。
そういった手続きも含めて会社設立を依頼できるというメリットが、社労士にはあります。
また、会社設立ができる社労士は助成金の申請を得意としている場合が多いです。
こういった手続きと会社設立を一緒にお願いすることによってコストを抑えられる場合があります。
詳しくは、会社設立は誰に頼む?司法書士・行政書士・社労士・税理士を徹底比較を御覧ください。
「社労士に相談できる仕事や業務のまとめ」のまとめ
ベンチャー起業家であれば、会社創業時、あるいは創業してからしばらく経ってから、人事・労務関連で何らかの疑問を持つようになるのではないでしょうか?
しかし、人事・労務関連は、専門ではない起業家にとっては、わからないことが多すぎるという声が聞こえてきます。人事・労務関連の疑問を解決するために、起業家やベンチャー経営者が費やす労力は計り知れず、経営の足かせにもなりかねません。
資金や税金に関することは税理士に、ヒトに関することは社会保険労務士に。。。といったように、専門家のサポートを受けながら、経営者は会社の経営を第一に考えなければなりません。
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(監修:社会保険労務士事務所ALLROUND東京北 北條利男 社労士)
(編集:創業手帳編集部)