融資審査に向けた事業計画書作成のポイントとコツ|銀行が注目する評価項目を解説
審査の着眼点を正しく理解し、実現可能性の高い計画を練るためのコツ

「融資を受けたいが、数字が苦手で面談が怖い」
「銀行からは、事業計画書のどこを見られているのだろうか」
融資を申し込む際、審査への不安を感じる経営者は少なくありません。設備投資や運転資金の確保は、事業成長に不可欠なステップです。
融資担当者が審査で見ているのは、事業計画書の見た目の美しさではありません。重視されるのは、事業計画書に記載された数字の根拠や整合性、そして経営者の「事業を成功させたい」という強い思いです。
この記事では、融資審査を通過するために欠かせない評価基準や計画の立て方を、元銀行員の視点で詳しく解説します。
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この記事の目次
融資の審査でチェックされる事業計画書のポイント4つ

銀行が事業計画書で最も重視する点は、事業が持続可能であり、計画通りに返済されるかどうかです。審査で重要なポイントは、以下の4つになります。
- 根拠のある数字で「返済可能」と証明できるか
- 根拠のある数字で「返済可能」と証明できるか
- 事業内容は経営者自身の「経験」を活かせるか
- 将来性や持続力を判断する「事業性評価」の考え方
それぞれのポイントについて見ていきましょう。
根拠のある数字で「返済可能」と証明できるか
融資担当者が審査で最も重視するのは、売上規模ではなく「貸したお金を確実に回収できるかどうか」です。
どんなに売上が大きくても、支払いを終えた後に「返済原資」が残らなければ、返済能力は認められません。
返済原資とは、一般的に以下の考え方が基本となります。
- 法人の場合:税引後当期純利益+減価償却費
- 個人事業主の場合:(申告所得+減価償却費)-生活費
返済原資の範囲内で借入金を毎月返済し、手元資金がなくならない余裕のある収支計画の作成が不可欠です。
数字の説得力を高めるには、「なんとなくこれくらい」ではなく、前年の受注実績や直近の市場調査結果といった根拠のある数値を添えましょう。裏付けのあるデータが、計画の実現性に対する評価を高めます。
市場ニーズに合った「強み」であるか
「自社が提供したいこと」が「顧客が求めていること」と一致しているか、という視点が事業継続において大切です。融資担当者は、その事業が長く続いていくかどうかを、市場のニーズから評価します。
どれほど熱意があっても需要がなければ売上にならず、事業は継続できません。売上を伸ばすには、顧客のどの不満を自社が解決できるのか、客観的に整理することが不可欠です。競合他社と差別化した強みが、安定した収入につながるでしょう。
事業内容は経営者自身の「経験」を活かせるか
融資審査では、経営者のキャリアで培った「経験」が事業に活かされるかをチェックしています。
- 実績
- 専門技術
- 仕事のノウハウ
- 業界内の人脈
もし未経験の分野への挑戦であっても、不足している経験をどう補うかが重要です。スキルを補えるパートナーの存在やスキルの習得状況などの説明で、事業への取組姿勢に対する本気度を伝えられます。
将来性や持続力を判断する「事業性評価」の考え方
近年の融資審査では、担保や保証に頼りすぎず、将来性や成長力を評価する「事業性評価」が重視されています。商工中金をはじめ多くの金融機関で採り入れられている評価制度です。
事業性評価で評価される主な項目は、次のとおりです。
- 独自性のある技術
- 顧客基盤
- 経営者の資質
今の財務状況が厳しくても、これらの点を評価されると、融資審査を通過できる可能性があります。そのため、中長期的な経営目線での計画作成が欠かせません。
実績だけでなく、将来性のある持続可能な事業見通しを伝えましょう。
事業性評価の詳しい内容や、事業性評価に積極的な商工中金については以下の記事でも解説していますので、ご確認ください。
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創業動機と経営者経歴|人物評価で信頼を得るポイント

融資の審査では、「経営者」についても評価されます。主なポイントは、次の3つです。
- 創業動機に説得力がある
- これまでの経歴が事業に活用できる
- 事業計画と経営者の思いがズレていない
それぞれのポイントを解説します。
創業動機に説得力がある
なぜ事業を始めるのかという「きっかけ」と「熱意」を伝えることが大切です。「稼ぎたい」という理由だけでなく、事業で解決したい課題を具体的に伝えることで、事業への思いを示せるでしょう。
創業動機の強さは、事業の経営状況が苦しいときでも投げ出さないという、経営者個人の事業に対する覚悟を伝えられます。
これまでの経歴が事業に活用できる
経営者の経歴を記載する際には、単なる事実の羅列ではなく、経営に直結する「スキルの棚卸し」を書くのがコツです。
- 売上管理
- 原価管理(飲食業)
- 部下の育成
- 店舗立ち上げ
- 施工実績(建設業)
このような経営に直結する具体的な成果を盛り込みます。過去の成功体験が事業経営で抱えるリスクを減らせる根拠として伝われば、融資担当者に事業への安心感を与えられます。
事業計画と経営者の思いがズレていない
創業動機の「思い」と、実際のターゲット選定や価格設定といった「事業計画」に矛盾がないかを確認しましょう。
例えば「地域密着」を掲げながらも、商圏の人口を無視した過大な売上や、オペレーション能力を超える客数を設定するようなズレをなくすことが大切です。事業の一貫性を保つには、次の内容がポイントです。
- 創業動機のビジョン
- 事業の投資額
- 収支予測
これらが同じ方向を向いて計画にブレがない姿勢こそが、誠実な経営者であるという高い評価につながるでしょう。
融資通過を高める「コンセプト・差別化・集客」の事業戦略

融資担当者は事業計画書を通じて具体的な事業戦略を確認します。事業戦略が曖昧だと、数字の計画も信頼してもらえないため、3つの要素を明確にする必要があります。
- 事業の軸となるコンセプトとターゲット選定
- 競合他社と比べて選ばれる差別化戦略
- 安定した収益を生むための集客の仕組み
それぞれの要素について見ていきましょう。
事業の軸となるコンセプトとターゲット選定
融資担当者が最初に確認するのは、「この事業は誰に向けて、どんな価値を提供し、どうやって収益を上げるのか」が明確になっているかどうかです。
そのため、事業計画書では次の3点を軸にコンセプトを整理する必要があります。
- 誰に(ターゲット顧客)
- 何を(提供する商品・サービス)
- どのように(提供方法・強み)
この3点が明確であれば、事業の方向性が一目で伝わり、計画全体の説得力が高まります。
コンセプトをもとにターゲット顧客を具体的に絞り込むことで、「なぜその事業が必要とされるのか」「どのように売上が立つのか」を論理的に説明できます。
一方で、ターゲットが曖昧なままだと、販売戦略や資金計画も根拠の薄いものと判断され、融資審査では不利になりがちです。
事業の軸となる顧客像とニーズを整理し、それにどう応えるのかを明確に示すことが、融資通過に向けた重要なポイントとなります。
競合他社と比べて選ばれる差別化戦略
他社と差別化した独自のセールスポイントを明確にし、顧客に選ばれる戦略を提示することが重要です。
飲食店であれば、「味が良い」「丁寧な接客」といった主観的な表現ではなく、営業時間や価格、独自技術など他社にない強みを書き出しましょう。
差別化できた部分は、価格競争に巻き込まれずに利益を確保できる「強み」と判断されます。SWOT分析などを活用して、自社の強みを言語化して戦略に落とし込みましょう。
SWOT分析などについては、以下の記事を参考にしてみてください。
安定した収益を生むための集客の仕組み
「開業すれば自然に顧客が来る」という楽観的な予測は避けましょう。具体的な受注経路が不明だと売上の実現性が低いと判断されるためです。
SNSやWeb広告、紹介営業などターゲット層に届ける集客方法と広告コストを明確に示すことが欠かせません。さらに販売先が法人向けなら取引先候補、個人向けならリピーター施策を盛り込み、売上確保の可能性を高めることもポイントです。
実現性のある集客プランを提示できれば、事業の持続性と収支確保による返済能力の証明につながります。
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融資審査で評価される資金計画・返済計画の考え方

融資審査において、資金計画と返済計画は「事業の安全性」を評価する重要な指標と言えます。経営者の思いが強くても、借りたお金の使い道や返し方が曖昧では審査を通過できません。
ここでは、元銀行員の視点から、融資審査の評価を高めるために必要な考え方を解説します。
実績ある数字から算出する売上予測
売上予測で最も避けるべきは、希望的観測です。融資審査では、説得力のある具体的な根拠を求めているためです。
具体的には、売上を要素ごとに分解して算出します。例えば、実店舗を構える事業であれば、以下のように算出しましょう。
- 売上の計算式:客単価×客数
- 客単価の根拠:前年の平均実績や業界平均など
- 客数の根拠:前年の平均実績や通常期の平均実績など
直近の実績や業界調査の結果などを、予測の根拠として示します。また、業種によっては、季節による変動や時期ごとの稼働率の変化も考慮しましょう。
事実に基づいたシミュレーションは計画のリアリティが増し、説得力の高い計画になります。
また、融資担当者が自社の業種に詳しいとは限らないため、算出根拠は第三者が客観的に判断できるよう具体的に明記することが重要です。
自己資金の確保と比率の目安
自己資金を準備している事実は、審査での評価に直結します。重要なのは、一時的な「見せ金」ではなく、出所が明確な資金であると示すことです。
また、日本政策金融公庫(以下、公庫)の担当者へヒアリングした際には、自己資金の比率に厳格なルールはないとのことでした。ただ、実際の現場では「3割の確保」を案内しているとのことです。
自己資金があれば借入総額を抑えられ、返済開始後の資金繰りが安定するためです。自己資金の準備は、無理のない事業経営として審査を有利にできるでしょう。
借入金の返済が始まっても資金繰りが安定する計画を作る
利益が出ていても、手元の現金がなくなれば事業は続けられません。融資の返済が始まったあとも、手元資金が残るような「資金繰り」の作成が重要です。
帳簿上の利益と、手元に残るお金の動きは別物です。例えば、売上の入金よりも先に支払いや返済が重なると、利益が出ていてもお金が底をつく「黒字倒産」に陥る恐れがあります。
常に一定の資金を確保できる資金繰りを示し、どんな状況でも返済を続けられる経営の安定感を証明しましょう。
黒字倒産については、以下の記事で詳しく解説しています。
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実現可能性のある事業計画を作成する4つのコツ

事業計画は実現可能な内容が欠かせません。作成するうえで評価を高める4つのコツを紹介します。
- 通帳から判断される資金繰りの整合性
- 収支計画がブレた際の代替案を盛り込む
- 融資による現状の改善見込みを具体的に提示する
- 自分の言葉で事業計画を説明できるまで言語化を徹底する
それぞれの内容を見ていきましょう。
通帳から判断される資金繰りの整合性
通帳に記録されている「事業資金の支払い実績」と、資金繰り表の数字を正確に一致させることが重要です。融資担当者は事業に必要な経費が資金繰りに漏れなく計上されているか、実際の入出金と乖離がないかを確認します。
もし支払相当額が計画に反映されていなければ、資金繰りの見通しが甘いと判断され、審査での評価を失いかねません。
事業に関わる資金の動きを正しく資金繰り表に落とし込むことで、計画の信ぴょう性を証明しましょう。
収支計画がブレた際の代替案を盛り込む
売上が計画を下回った場合に備えて、代替案を盛り込んでおきましょう。事業は必ずしも予想通りには進まないため、不測の事態にどう対処するかというリスク管理能力も審査の重要なポイントです。
例えば、売上が目標の8割になった場合を想定し、以下のような対策を記載します。
- 優先的に削減する経費
- 取り崩しできる個人資産の記載
- 借入などの再調達予定先
リスクを想定した計画は、事業に対する取組姿勢や責任感が融資担当者からの評価につながります。
融資による現状の改善見込みを具体的に提示する
今回の融資により、事業がどのように改善する見込みがあるかを数値で具体化しましょう。単なる支払資金ではなく、中長期的に事業の収益性や安定性が向上することを証明する必要があります。
- 設備資金:生産性が上がり受注枠が20%増える
- 運転資金:十分な仕入資金の確保で、受注を逃さず受けられる体制が整う
融資による具体的な改善効果を数字や言葉で示しましょう。事業がより盤石な状態になるという効果を提示できれば、持続性のある企業として融資審査を通過できる可能性が高まります。
自分の言葉で事業計画を説明できるまで言語化を徹底する
事業計画書の内容は、経営者自身の言葉で語れるまで理解を深めておきましょう。融資担当者との面談において、書類の信ぴょう性は経営者の受け答えで決まるといっても過言ではありません。
実際に公庫の担当者と面談した際も、「必ず経営者と1対1の面談をします。その際には、経営者が自ら数字の根拠や戦略を理解しているかをチェックしています。」との回答がありました。
もし「数字の根拠」や「今後の戦略」を自分の言葉で説明できなければ、事業計画通りに進められず、達成の可能性も低くなります。銀行からも、第三者からの支援を受けて作っただけの実現性が低い計画と見なされてしまうでしょう。
一つひとつの項目を言語化し、担当者へ伝えられる説明が信頼されるために不可欠です。
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融資審査で評価を下げてしまう事業計画書の共通点

事業計画書を審査するなかで評価を下げてしまう共通点があります。評価を下げないために、避けるべきポイントを確認しましょう。
自分にとって都合のいいデータだけの事業計画
市場の成長性や自社の強みばかりを強調し、競合の脅威やリスク要因を無視した計画は、SWOT分析などの現状分析ができていないと見なされかねません。
楽観的な予測は、融資担当者から「調査不足」と判断される大きな要因です。実際、こうした計画を提出する経営者は、面談時の突っ込んだ質問に答えられない傾向にあります。
良い面だけでなく、直面する困難な状況についても冷静に分析し、地に足のついた事業であると印象づける必要があります。
融資を繰り返す自転車操業の資金計画
すぐに再融資が必要になる計画は、支払不能による資金ショートが予想されるため、審査では不利になります。新たな借入で資金をつなぐ状態は、破綻のリスクが高い自転車操業とみなされるでしょう。
ただし、事業の回復や成長に伴って必要となる運転資金への対応は、事業の継続に不可欠です。返済した分の一部を再び借り入れて資金繰りを安定させる「反復資金(はんぷくしきん)」は、前向きな融資であり、自転車操業とは明確に区別されます。
単なる支払資金の穴埋めではなく、成長を見据えた健全な資金計画であることを正しく伝えましょう。
リスクへの備えができていない
原材料の高騰や流行の終わり、経営者の病気など事業を脅かす不測の事態への対策が欠けている事業計画は評価を下げます。融資審査では「計画通りにいかなかった時にどう動くか」というリスク対応の姿勢もチェックしているからです。
保険金の解約や余裕資金の確保、さらには撤退ラインの判断基準まで具体化しておくことが重要です。リスクに対する具体的な防衛策の提示は、審査を通す安心材料の一つとなります。
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まとめ:銀行が納得する事業計画書で融資を通過しよう
事業計画書は単なる融資書類ではなく、事業の持続的な経営に必要な計画です。根拠ある数字や経歴の活用、通帳の整合性を揃えて銀行の信頼を得ることが、事業計画の評価を大きく高めます。
慣れない計画書作成のため、専門家と作成する手段も効果的ですが、自分自身の言葉で語れる主体性が重要です。
自信をもって作成した事業計画書とわかりやすい説明により融資審査を通過し、事業を成長させましょう。
創業手帳では、資金調達に関する情報だけをまとめたはじめての資金調達手帳(無料)を発行しています。
日本政策金融公庫の担当者やベンチャーキャピタリストなど、専門家のインタビューを掲載しています。資金調達について具体的に語っていただいているので、ぜひ参考にしてみてください。
また、事業計画シート作成ツールを創業手帳アプリ版(無料)にて、ご用意しています。慣れない事業計画書の作成をサポートできますので、ぜひお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)
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