起業初期の成功は“一点集中”にあり!売上を生む仕組みの作り方

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“全部やる”は失敗のもと──初期に本当に必要な優先順位とは?

起業初期の最大の壁は、「やるべきことが多すぎて、どこに力を割くべきかわからない」ことです。

開発・PR・採用など魅力的な選択肢はありますが、限られた時間と資金で最も優先すべきは“売上を生む仕組みづくり”

顧客との対話を通じて市場の反応をつかみ、再現性ある営業プロセスを構築できるかが、その後の成長スピードを決めます。

本記事では、起業初期に陥りやすい落とし穴と、成果につながる一点集中の実践方法を営業支援・コンサルティング事業を展開する株式会社エッジコネクションの代表大村氏に解説していただきます。

大村 康雄(おおむら やすお)株式会社エッジコネクション 代表取締役
延岡高校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、米系金融機関であるシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、現在は人事・財務課題も対応する「営業・人事・財務課題伴走型支援企業」として展開。経営危機を乗り越えた経験を生かし、コンサルティング業や、ラジオYouTubeコラムInstagramなど、各種メディアで発信中。

これまでに1600社以上を支援し、継続顧客割合は平均75%台。地元宮崎でも地域振興に尽力し、延岡市立地促進コーディネーターや延岡デジタルクロス協議会人材支援委員長を務める。
2024年7月、「24歳での創業から19期 8期連続増収 13期連続黒字を達成した黒字持続化経営の仕組み」を出版。

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最初の一歩で迷うのが“スタートアップの壁”


起業直後の経営者は、想像以上に多くの意思決定を同時に迫られます。
事業アイデアの磨き込み、資金調達、チーム採用、プロダクト開発、広報・営業活動──どれもが会社の未来を左右する重要課題です。その一方で、リソースは限られており、すべてに手を出せば時間も資金もすぐに枯渇してしまいます。

創業初期に直面する最大の壁は「やるべきことが多すぎて、何を最優先にすべきかわからない」という状況にあります。

この段階では、完璧を目指すよりも“何を優先するか”を決めることが成功への第一歩です。

多くの起業家は、プロダクトやブランディングといった目に見える活動に時間を割きがちですが、最も早く成果に直結するのは「売上を生み出す仕組み」をつくることです。売上がなければ、採用も開発も継続できません。

スタートアップの壁を越える鍵は、リソースを分散せず、限られたエネルギーを一点に集中させる意思決定力にあります。

「全部やる」は「どれも進まない」──起業初期に陥る3つの落とし穴

起業した当初は、定型の業務が少ないことから、好きなことをいろいろできる状態でもあります。しかし、このような自由な状態が、事業が軌道に乗るのを妨げてしまいます。
具体的には、3つの落とし穴があります。

1.開発ばかりで顧客の声を聞かない

起業初期に最も多い失敗の一つが、サービス開発に時間をかけすぎて顧客接点を持たないことです。どれだけ完成度の高いプロダクトでも、顧客の課題とズレていれば市場に受け入れられません。

そのようなズレを防ぐ手段が、テストマーケティングを行い、サービスコンセプトとマーケットのニーズのズレが発生していないかこまめに確認することです。

これを怠り、顧客との対話を後回しにした結果、開発コストばかりが増え、売上が立たないケースは少なくありません。

2.PRや採用など“見える活動”に時間を奪われる

SNS発信やメディア露出は注目を集めやすく、モチベーションも上がります。しかし、売上が安定しない段階でPRに偏ると「話題はあるが収益がない企業」になりかねません。

採用も同様で、まだ営業基盤が整っていない状態で人を増やすと、組織コストだけが膨らみます。

話題になったからといって、売上が上がるかというとそうではありません。

結局のところ、売上を上げるための活動にフォーカスしてしっかり取り組まなければ、売上は増えることはありません。

3.営業を後回しにして資金ショートする

起業初期の最も致命的なミスは、このように開発やPRに注力しすぎるあまり、営業活動を後回しにして資金が尽きることです。

資金調達や補助金に頼るのは一時的な解決でしかなく、自力で売上を生み出す力を持たない限り、持続的な経営は成り立ちません。

また、話題になったからと言ってそれが売上に転換するとは限りません。営業を最優先で設計することが、すべての活動を支える土台になります。

成長の基盤は“営業力”にあり!最優先で取り組むべきは「売上の再現性」

起業初期の落とし穴に落ちないために重要なことは、しっかりとした営業力を身に着け、売上が安定的に入ってくる仕組みを構築することです。
その際に常に頭に入れておいてほしいポイントを紹介します。

資金の流れを生む

営業は、資金を直接的に生み出す唯一の行為です。

どれほど優れたプロダクトを開発しても、顧客に届かなければ売上にはつながりません。営業基盤をつくることは、資金繰りの安定化と事業継続の基盤整備そのものです。

SNS上でのインプレッションやイイネの数、VCを始めとした投資家からの評価などに惑わされることなく、「お金が入ってくる仕組みができあがっているか」という点にまずは注目しましょう。

どのように新規顧客との接点を作るのか、接点ができたらどのようなプレゼンをするのか、その後、どのようにして成約を迫るのかという風にお金が入ってくる流れを具体的にイメージしながら設計します。

顧客との接点が最大の学び

初期の営業活動は、市場調査を兼ねた“仮説検証の場”でもあります。

実際に顧客と会話することで、サービスの価値や課題がリアルに見えます。

営業活動は、経営者が市場を理解し、事業の方向性を磨くための最速の学習プロセス。だからこそ、早い段階から取り組み、貴重なマーケットデータを収集していきましょう。

商談などでの相手の反応をしっかり記録し、見返していくことで仮説検証のスピードが上がり、プロダクティビティも上がっていきます。

事業の方向性を検証する

 
どのようにしてお金を生んでいくのか、またマーケットからどんな反応が得られるのかを検証することで、事業全体の方向性が見えてきます。

仮に、資金の流れを生む施策があまりに手間やコストがかかるのであれば、ターゲットとする業界を変えるといった判断も必要になるかもしれません。

同様に、営業活動からの反応次第では、プロダクトを全面的に見直す必要も出てきます。

このように、資金の流れの構築とマーケットからの反応の両方をかけ合わせて分析、事業そのもののあるべき姿をイメージしましょう。

営業基盤を構成する3つのステップ


実際に、売上が安定的に生まれる営業基盤をどう作れば良いのか、3ステップで解説します。

1.ターゲットを明確にする

誰に、どんな価値を提供するのかを具体的に定義します。

自社の強みに対して、最も好意的に受け取ってくれるのは、どのようなターゲットなのか「業界・企業規模・担当者属性」を細かく想定していきます。

ターゲットを明確に定義することで、限られたリソースで無駄の少ない営業活動を展開できるようになります。

さらに、同じ属性の企業から反応やデータが集まりやすくなるので、営業活動やプロダクトの改善のためのヒントがどんどん蓄積していきます。

2.営業プロセスを仕組み化する

「アプローチ→商談→提案→契約」という流れを明文化し、誰が担当しても同じ結果が出せる状態を目指します。

営業活動がうまくいかない理由の一つが、成約を左右する重要なプロセスを“個人のセンス”に委ねている側面が大きいことです。

たとえば、「初回商談ではヒアリングに徹し、提案書提出を名目に2回目のアポイントを取得する」「2回目で提案を行い、見積もりの詳細を詰め、3回目で金額を提示して成約を迫る。」という形で、初回商談から成約までのステップを全営業スタッフで共通化します。

このプロセスを元に、より効率的に進めるための議論を重ねることで、売上の再現性が高まります。

さらに、属人性が排除されることで戦力化がスピーディーになり、採用・育成コストの削減にもつながります。

3.検証サイクルを回す

ターゲットも営業プロセスも一度決めたらずっと有効というわけではありません。

経済状況などの変化により、ターゲットが抱えるニーズも変わりますし、新しく入社してきた営業スタッフが新しい提案手法を見つけるかもしれません。

よって、営業施策を定期的に振り返り、常に完成形は無いという意識で改善を重ねることが重要です。

リードの質、成約率、顧客満足度など、定点観測すべき指標を設定し、PDCAを回すことで、売上の安定化と持続的成長が実現します。

まとめ:最初の“一点集中”が未来を決める

起業初期の限られた時間と資金をどこに投じるかで、その後の成長曲線は大きく変わります。

開発や採用、広報活動など華々しい業務に注力する前に、まず「売上を生む仕組み」を確立すること。

それが会社を存続させ、次の挑戦を可能にする唯一の道です。最初の“一点集中”こそが、長期的な成功を左右します。

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(執筆: 株式会社エッジコネクション 代表取締役 大村 康雄(おおむら やすお)
(編集: 創業手帳編集部)

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