農業の生産管理を効率化!システム導入のメリットや注意点などを解説
農業の生産管理を効率化すれば、継続的に安定した収益も期待できる!

農業は天候や市場価格の変動など、不確実な要素に大きく左右される産業です。
そのため「生産管理」をいかに徹底するかが、収量の安定やコスト削減、品質の維持につながります。
これまでは生産管理もアナログな方法で行われていましたが、近年はデジタル技術の進化に伴い「生産管理システム」として導入が進んでいます。
この記事では、農業における生産管理システム導入のメリットや注意点について詳しく解説していきます。
農業の生産管理で効率化を図りたい、生産管理システムの導入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
農業における生産管理とは?

農業において生産管理とはどういったものを指すのでしょうか?まずは、生産管理の定義と目的を解説しつつ、農業特有の生産管理について解説します。
生産管理の定義と目的
生産管理とは、生産計画に基づいて製品を製造する際に、品質や納期、コストなどあらゆる項目を管理することを指します。
生産管理は製造業などで用いられていましたが、近年は農業も含め様々な生産現場でも活用されるようになりました。
生産管理を実施する目的として、「QCDの最適化」が挙げられます。
QCDとは、Quality(品質)・Cost(価格)・Delivery(納期)の頭文字を取った言葉で、品質の向上・原価の低減・納期の厳守になります。
QCDの要素はいずれも相互関係にあり、1つだけを意識するのではなく全体的に最適化を図ることが重要です。
QCDの最適化を図り、維持することによって企業の信頼度も向上します。
農業に特有の生産管理の特徴(気候・自然条件の影響など)
農業でも消費者のニーズに合わせて、高品質な農作物をつくることが望まれています。ただし、他の業種とは違って農業特有の生産管理を行っていく必要があります。
例えば、製造業だと基本的に屋内での作業となるため、気候の影響は限定的です。
農業の場合は気温や湿度、降水量など、気候によって農作物の品質や生産量などが変動してしまいます。また、地形や土壌などの自然条件の影響も受けることになります。
農業は、こうした変動しやすい要素も考慮した上で、安定して高品質の農作物がつくれるようにしていかなくてはなりません。
農業生産管理の主な内容

農業生産管理と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。主な内容は以下のとおりです。
作業管理(播種・施肥・収穫など)
農業は播種から施肥、収穫に至るまで、多種多様な作業管理を行っていきます。
例えば播種で床まき(育苗ポットや育苗箱などに種をまき、苗まで育ててから畑に植え付ける)の場合、育てる農作物に応じて適切な発芽温度を維持・管理する必要があります。
施肥も、農作物や環境に応じて適切な肥料が異なり、収穫量にも影響することから、農作物や土壌、収穫目標などに合わせて最適な肥料をつくります。
作業管理を徹底することで収穫量の安定化にもつながるため、農家にとっては重要な取り組みです。
また、作業の標準化により品質のばらつきも抑制でき、安定した農業経営を実現できます。
品質管理(出荷基準・安全性の確保)
消費者により良い農作物を届けるために、品質管理も重要です。品質管理で重要となってくるのが、出荷基準です。
以前は国が全国一律で出荷基準を定めていましたが、現在は廃止され各産地が消費者のニーズなどを踏まえた上で主体的に定めています。
また、農作物の品質管理は安全性を確保するためにも行われています。例えば、出荷前に残留農薬のチェックを行うことで、安全性の高い農作物を届けることが可能です。
在庫・資材管理(肥料・農薬・資材の把握)
農業では肥料や農薬、資材などを活用しますが、これらを計画的に使用・管理ができていないと、コストの増大や無駄な在庫が発生してしまうかもしれません。
使用量や在庫状況などをリアルタイムに把握することで、必要なタイミングに適切な肥料・農薬などを使えるようになります。
また、肥料や農薬などを使った履歴をデータ化しておくことで、堆肥や農薬散布の過不足を防ぐことができ、農作物の品質安定や環境への負荷軽減も期待できます。
人員・労務管理(作業分担・労働時間管理)
季節や天候によって作業内容が左右されやすい農業では、作業分担や労働時間の管理を適切に行うことが求められます。
例えば収穫時期などの繁忙期は人手不足に陥ったり、人によって作業の偏りが発生したりするので、人員配置の最適化が必要です。
また、労働時間の記録・管理をすることで、従業員の過重労働を避けつつ働きやすい環境を整えられます。
働きやすい環境になれば、単純に業務効率を図れるだけでなく、従業員の定着率やモチベーションアップにもつながるでしょう。
農業の現場における生産管理の問題点

農業経営の効率化と安定化を図るためにも生産管理が必要となってきますが、なかなか取り入れられていない農家がいることも事実です。
農業の現場においてどのような生産管理の問題点が浮上しているのか、解説します。
農業人口の高齢化と後継者不足
生産管理の導入が進まない問題点として、農業人口の高齢化と後継者不足が挙げられます。
農業は気候や市場の変動などから収益が安定しにくく、また業務内容も力仕事を基本とするため、農家になりたいという若者は多くありません。
その結果、農業人口の高齢化が進んでおり、なおかつ後継者不足に悩む農業経営者も増えています。
また、生産管理を取り入れることで安定した収益の確保も可能ですが、そこに至るまでに初期投資が必要です。
これから農業を始めようと考える人にとっては、採算が取れるのか不安な部分が大きいことも要因となっています。
病害虫による影響
農業にとって気候や自然条件などの影響を受けやすいですが、病害虫の発生も問題視される部分です。
病害虫の発生によって収穫量が減少するだけでなく、収穫できたとしても品質の低下から出荷基準を満たさず、出荷できなくなる可能性もあります。
病害虫の発生を防ぐために農薬を使用することもありますが、過剰に使いすぎてしまうと農作物や環境に悪影響を与える恐れもあります。
せっかく生産プロセスを構築して管理していても、病害虫の発生によりうまく管理できなくなる可能性もあるでしょう。
情報の管理・システム化ができていない
農業人口の高齢化にもつながりますが、多くの農業経営者は紙媒体で情報やノウハウの記録を行っており、整理・管理ができていないケースも少なくありません。
例えば過去の情報を調べたいのに、紙媒体で記録されていると、どこに何の情報があるかがわからず、必要な情報を調べるのに時間がかかってしまいます。
また、高齢の農業経営者になると、今から管理方法を紙媒体からシステムに移行することに対して、使いこなせるか不安に感じる人も多いです。
農業の課題解決につながる生産管理システムとは?

農業の現場で生産管理を構築していくためには、様々な課題をクリアしていかなくてはなりません。
しかし、生産管理システムを導入することで、課題解決と共に生産管理の構築も可能となります。
生産管理システムは、生産プロセスを管理・効率化を図るためのツールです。
農業は気候や自然条件の影響を受けやすいことや、農業人口の高齢化によってシステム化に対する抵抗感が強い傾向にあります。
しかし、生産管理システムにも様々な種類があり、初心者でも直感的に操作しやすいシステムも増えているため、システムの操作に慣れていない人も安心して使用できます。
農業経営に生産管理システムを導入するメリット

農業経営に生産管理システムを導入すると得られる、様々なメリットを紹介します。どのようなメリットがあるのでしょうか。
人手不足を解消できる
農業経営に生産管理システムを導入するメリットとして、人手不足の解消につながる点が挙げられます。
これまではすべて手作業で行ってきたものが、生産管理システムによって自動化が可能になります。
例えば、肥料や農薬の使用履歴を生産管理システムに記録しておけば、自動的にデータを抽出し、グラフ化させることも可能です。
事務作業を中心に自動化が図れれば、作業効率もアップして人手不足の解消につながります。
また、センサーやカメラなどを活用すれば、生産者が遠方にいてもスマホやタブレットなどの端末を使って、農場の状態を監視できます。
わざわざ現地まで移動する時間もなくなり、効率的に農業経営が行えるようになります。
農業の技術が継承しやすくなる
生産管理システムを活用すれば、農業の技術も継承しやすくなります。
これまで紙媒体に記録していたものをデータ化し、生産管理システムに集約することで、そのデータを活用して農業に取り組むことが可能です。
農作物はその種類ごとに適切な育て方・管理方法も異なりますが、データ化をすることで欲しい情報がすぐに抽出でき、実際の農業に活かすことができます。
農業はこれまで長年の経験と勘に頼る部分が多く、新たに農業を始めた人は効率的なノウハウの集約が難しい状況にありました。
しかし、生産管理システム導入により効率良くノウハウを習得できるようになり、後継者の育成もしやすくなります。
経営方針や戦略が立てやすくなる
生産管理システムを導入すると、農業の生産に関するあらゆるデータを効率的に得られることから、経営方針や戦略なども立てやすくなります。
例えば農作物ごとに毎月どれくらいの収穫量があり、売上がどれくらいになったのかをグラフ化することで分析しやすくなり、強化すべき部分・改善すべき部分なども見えてきます。
また、従業員の作業履歴などもリアルタイムで把握できるようになれば、適切な人員配置や育成の方針も立てやすくなるでしょう。
データやノウハウを効率的に蓄積できる
アナログな生産管理だと、業務の属人化が発生しやすいというリスクがあります。
特に農業は、これまでの経験や勘からどうすればいいか判断するケースが多く、その人しかできない業務も増えてしまいます。
こうした農業の属人化を防ぐためにも、生産管理システムの導入がおすすめです。
生産管理システムを活用すれば、現場における様々なデータ・ノウハウを集約でき、蓄積していくことが可能です。
作業する人が変わったとしても、そのデータやノウハウを元に作業をすれば誰でも同じように取り組むことができ、質の違いも出にくくなります。
さらに、ベテラン農家の経験や勘といった暗黙知も体系化して共有することが可能になります。
病害虫の早期発見も可能になる
生産管理システムの中にはセンサーやカメラと連動できるタイプもあります。
このシステムを活用すれば、いつでもどこでも農作物の状態をチェックできるようになるため、病害虫の早期発見にも活躍します。
また、日々のデータを蓄積することで、いち早く被害に気付くことも可能です。特に新規就農者やまだ経験が浅い農業経営者にとっては、魅力的な機能と言えます。
農業向け生産管理システムの導入時における注意点

農業向け生産管理システムの導入により、人手不足の解消や病害虫リスクの抑制、データ・ノウハウの効率的な蓄積など、様々なメリットが得られます。
しかし、その一方で導入時に注意しなくてはならないポイントもあります。ここで、導入時における注意点も把握しておきましょう。
コストが発生する
生産管理システムは無料で導入できるものではありません。クラウドタイプであれば初期費用を抑えられますが、毎月数千円~数万円程度のランニングコストが発生します。
そのため、生産管理システムの導入を検討する際には、機能面だけでなくかかったコスト分をいつ回収できるのか、見通しを立てておくことも大切です。
また、生産管理システムだけであればそこまでコストはかからなくても、システムを運用するためのPCやタブレット、スマホなどの端末も用意する必要があります。
さらに、農場をリアルタイムで監視するためには、センサーやカメラなども購入しなくてはなりません。
総合的にどれくらいのコストがかかるのか把握した上で、予算的に問題ないシステムの導入を検討してください。
使うのに慣れるまでの負担が大きい
生産管理システムには経営に役立つ便利な機能が多数搭載されていますが、操作に慣れるまでに時間がかかってしまう場合もあります。
せっかくシステムを導入しても使いこなすことができなければ、十分な導入効果も期待できません。
また、システムの操作に慣れたとしても、蓄積されたデータを分析し、経営に活用するためには知識も必要となってきます。
まとめ・農業経営に役立つ生産管理システムを導入しよう
農業経営に生産管理システムを導入すると、作業の効率化から生産性の向上、データ・ノウハウの蓄積など、多くのメリットが得られるようになります。
生産管理システムによる恩恵を最大限に受け取るためには、予算なども考慮した上で最適なシステムを導入することが大切です。
農業経営の課題を解決するためにも、生産管理システムを導入すべきか検討してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)





