【売上の仕訳方法】売上計上基準や記帳方法を徹底解説!

創業手帳

売上はルールに従って計上する


売上は、企業によって計上するタイミングや方法が違います。経理担当者によって売上の計上方法を変えてしまえば、会計処理の正確さが失われてします。
売上を計上する時には、売上計上について確認してルールに従って会計処理するようにしてください。売上を計上する時のルールについて知っておくことが大切です。

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仕訳上の「売上」とは


企業が経済活動を続けるために要となるのが「売上」です。多くの企業が、売上の維持や右肩上がりの成長を目指して活動しています。
事業で売上があった時には、その取引きを漏らすことなく帳簿に記録しなければいけません。しかし、そもそも「売上」が何なのか説明できるでしょうか。

ここでは仕訳で使用する勘定科目のひとつである「売上」から説明します。

収入を計上する際に使用する勘定科目

「売上」とは、商品を販売したりサービスを提供したりした場合に使う勘定科目です。収入を計上する勘定科目であり、あくまで本業で得た収入を「売上」と呼びます。

例えば、本業が販売である企業が事業活動以外で利息や株式の配当を受け取った時には売上にはなりません。
売上の勘定科目は、現金で取引きした場合はもちろん、企業のツケ、いわゆる売掛金を計上した場合でも使用できます。
ただし、同じ売上であっても企業によって計上のタイミングや記帳方法が違うことがあります。

自社がどの方法を採用しているかによって仕訳も変わるので、経理担当者は売上の計上方法について把握しておいてください。

売上高との違い

商品を売上げた時には、帳簿には「売上」の勘定科目を使用しますが、損益計算書では「売上高」と表記します。
収入を得るたびに「売上」として処理して、一定の期間での売上の金額合計として「売上高」を損益計算書で使用します。
例年と比較して決算時の売上高が大きければ、その期は売上が好調であったと判断することが可能です。

「売上」と「売上高」は似た意味を持つ言葉ではあっても使用する場面は違うので混同しないように注意してください。

【基準別】売上を計上するタイミング


会計の目的のひとつが、企業の経営状況を正確に把握することです。正確に企業の収入を把握するには、売上を計上するタイミングをそろえなければいけません。
経理担当者によって、処理の都度タイミングを変えてしまうと、売上の算出が正確ではなくなります。
ここでは売上を計上するタイミングについて説明しています。

売上計上基準でタイミングを一定にする

売上計上基準は、売上をどのタイミングで計上するかを判断するための基準です。

例えば、10月29日に電話で注文を受けて10月30日に発送、先方に11月1日に到着して検収、取引きの支払い日が11月末だった場合に売上を計上するタイミングはいつにすればいいのでしょうか。
数日の違いはもちろん、月をまたげば当月の売上か翌月の売上かの違いが生まれます。
そこで会社で売上計上基準を定めて、その基準に沿った運用を行わなければいけません。経理担当者は自社の売上計上基準を把握して処理を行います。

売上計上の基準は3つの「主義」によって方法が異なる

売上計上基準を定めるにあたって、売上を認識するタイミングとして主に発生主義と実現主義、現金主義があります。
これは企業会計原則による認識基準であり、従来は、売上は実現主義、費用は発生主義で認識するのが原則でした。

しかし、売上に関しては「収益認識に関する会計基準」が優先的に適用されます。
「収益認識に関する会計基準」とは、従来の企業会計原則よりも優先される収益の認識基準。契約の履行義務の充足に応じて収益を認識する基準です。
ただし、一部の取引きに関しては収益認識に関する会計基準が適用されません。

実現主義

実現主義は、商品、サービスの提供とそれに対する現金等価物の受け取りを持って売上を認識する基準です。
つまり、①取引相手への商品やサービスの提供と、②取引相手からの現金や売掛員などの受領をもって売上が実現します。

企業の売上計上基準の考え方は実現主義が基本であり、さらに取引きで何をもって実現とするのかについての認識基準として、出荷基準や納品基準、検収基準、役務完了基準があります。
これら基準については後述します。

発生主義

発生主義とは、事実の発生に基づいて売上を認識する基準です。つまり、商品やサービスの注文を受けた時点で、売上が発生します。
しかし、商品が提供できなかったり注文がキャンセルされたりするケースも考えられます。売上の架空計上につながるリスクもあるため、売上には発生基準を適用できません。
発生主義は、費用に適用される認識基準です。具体的には水道光熱費は、消費した時点と支払いの間にズレがあります。

そこで、発生主義に沿って消費した時点で費用を計上します。

現金主義

現金主義は、現金収支に基づいて売上を認識する基準です。商品販売であれば、代金として現金などを受け取った時に売上を計上します。
ただし、現金主義を採用すると取引先に支払いを遅らせてもらえば売上げの計上時期を操作できてしまいます。

また、入金されるまで売上計上できないので、注文は多いのに売上が少ないといった事態も発生するかもしれません。
そのため、基本的には採用できず、例外として所得税の現金主義による青色申告で認められています。

売上計上基準の種類

売上計上基準は、タイミングに応じて発送基準と引渡基準、検収基準、船積基準4つに大きく分けることが可能です。
実現主義にのっとった方法であっても、どの基準を採用するかによって会計処理のタイミングが変わります。

出荷基準

出荷基準では、商品を出荷したタイミングで売上を計上します。
具体的には、倉庫から出庫した時やトラックなどに商品を積み込んだ時、指定場所に商品を搬入した時です。
出荷基準での売上計上は、自社の作業を把握して計上するため、売上の認識と計上がスムーズな点が特徴です。

特に大量の商品を複数の取引先に販売するような企業では発送した時点で計上できるため、効率的に会計処理できます。
ただし、発送したものの宛先不明や受け取り拒否で取引きがキャンセルになってしまう可能性もあるかもしれません。
出荷基準での計上はリスクがともなうものの、返品されることがほとんどない場合などに利用されています。

引渡基準

引き渡し基準は、商品の引き渡しやサービスの提供をおこなったタイミングで売上を計上する基準です。
商品やサービスの提供が完了していれば取引きが実現して、対価を受けとる権利が確定したといえます。引き渡し基準で計上するには、引き渡し日を把握する必要があります。

一般的には、納品書の日付を基準として売上計上するものの、引き渡しのタイミングがあいまいな業種であれば、計上するタイミングを事前に定めておかなければいけません。

検収基準

検収基準は、取引先による商品の検収が完了した時点で売上を計上します。検収は、取引先が受け取った納品物の内容、数量、品質が注文と相違ないか確認する作業です。
すでに検収まで完了した段階であれば、商品不良や不備によるキャンセルは発生しません。より正確に売上を計上する方法として検収基準が使われています。

船積基準

船積基準では、商品が船や飛行機に積み込まれた時点で売上を計上します。
商品を船に積み込むと、船を運行する業者から積み込みを証明する船荷証券が発行されるのです。船積基準では、この船荷証券の日付を基準として売上を計上します。

売上を記帳する4つの方法


事業で売上が出た時には、それを帳簿に記録しなければいけません。記帳の方法は、複数の種類があります。
どういった違いがあるのか特徴をまとめました。

分記法

分記法は、「商品」と「商品売買益(収益)」の2つの勘定科目を使用する記帳方法です。商品数が多いとそれだけ記帳も多くなり、処理の手間が発生します。
そのため、数が少なく単価が高い商品を販売している企業に適した方法です。

〈仕入時〉商品500円を仕入れた。

借方 貸方
商品 500円 買掛金 500円

〈売上時〉仕入れた商品を1,000円で販売した。

借方 貸方
現金 1,000円 商品 500円
商品売買益 500円

上記のように商品を仕入れた時には、商品が増えるため借方に商品を記載します。
商品を販売した時には貸方に記載して、対価との差額が商品売買益となります。分記法は、取引きごとに商品売買益を把握できる点がメリットです。

三分法

三分方は、仕入・売上・繰越商品の3つの勘定を使って売買を記録する方法です。
期末商品残高は、繰り越し商品勘定に振り替えて翌期に繰り越して、期首に再仕訳を行います。

〈仕入時〉商品500円を仕入れた。

借方 貸方
仕入 500円 買掛金 500円

〈売上時〉仕入れた商品を1,000円で販売した。

借方 貸方
売掛金 1,000円 商品 1,000円

〈期末〉期末商品が200円の場合

借方 貸方
繰越商品 200円 仕入 200円

三分法では、商品を販売する時に仕入れた原価を記載する手間がなく販売した金額で記帳できます。そのため売上を記帳する時の手間が少ない点がメリットです。
その一方で決算まで収益の把握ができません。
三分法は記帳の点が少ないことから、大量の商品を扱う多くの企業で採用されています。

総記法

総記法は、商品勘定のみで売上も仕入れも記帳する方法です。

〈仕入時〉商品500円を仕入れた。

借方 貸方
商品 500円 買掛金 500円

〈売上時〉仕入れたうちの400円分を800円で売上げた。

借方 貸方
現金 800円 商品 800円

〈決算〉

借方 貸方
商品 400円 商品販売益 400円

総記法では、、商品を仕入れた時も販売した時も同じ商品勘定で記載します。原価(仕入価格)も売価(販売価)も商品勘定を使っている点が総記法の特徴です。
総記法では、決算時に借方の商品勘定を商品販売益(収益)に振り替えることになります。結果として商品勘定の借方残高が期末商品在庫と一致します。
つまり、仕入れが500円で販売益は400円、そこから売上げた800円を差し引くと期末商品在庫が100円と算出できるのです。

五分法

五分法は、仕入と売上、繰り越し商品に加えて、仕入値引・戻しと売上値引・戻りを使って記帳する方法です。
記載方法は基本的には三分法と同じですが、返品や値引きがあった時に五分法ではそれぞれの勘定科目を使用します。どちらで計算しても利益は同額です。

〈仕入時〉商品500円を仕入れた。

貸方 借方
商品 500円 買掛金 500円

〈仕入値引時〉仕入れた商品のうち100円の値引きを受けた。

貸方 借方
買掛金 100円 仕入値引・戻し 500円

〈売上時〉

借方 貸方
売掛金 1,000円 売上 1,000円

〈売上値引時〉売上商品のうち200円の値引きをした。

借方 貸方
売上値引・戻り 200円 売掛金 200円

値引きや返品が多い企業にとっては、取引きが把握しやすい点がメリットです。

売上の仕訳例


ここからは商品を売上げた時どのように仕訳をすればいいのか仕訳例を紹介します。自社でどのように仕訳すればいいのかイメージしてください。

現金で売上を回収する場合

商品やサービスを提供して、売上げを現金で回収した場合を考えます。
以下では、商品1,000円を販売して現金で回収したケースについて三分法で記帳しています。

〈売上時〉

借方 貸方
現金 1,000円 売上 1,000円

口座振込みで回収する場合

上記のケースで代金が取引差から銀行口座に振り込まれたケースを紹介します。
〈売上時〉

借方 貸方
普通預金 1,000円 売上 1,000円

掛売りで回収する場合

売上に対して後払いにするいわゆる掛け売りの場合には、売掛金の勘定科目を使用します。
〈売上時〉

借方 貸方
売掛金 1,000円 売上 1,000円

〈売掛金回収時〉

借方 貸方
現金 1,000円 売掛金 1,000円

売掛金は、売掛金として計上してから回収時にその仕訳を行います。上記は現金で回収したケースです。
企業の業態や取引先の対応によって同じ売上であっても処理が変わります。どういった記帳方法があるのか理解して自社に合ったものを選択してください。

まとめ・記帳方法の正しい知識を身に付けることが大切

企業の会計処理は、一度定めた会計処理を基本的に変えずに継続する、継続性の原則があります。
これは頻繁に会計処理を変更してしまえば、正確な経営状態の把握が難しくなるためです。
そのため、定めた売上計上のタイミングや仕訳方法は原則変更しません。企業の仕訳はどの方法を採用するかについては企業に判断がゆだねられています。
正しい記帳方法の知識を身につけて自社の事業内容に合った会計処理の方法を選定してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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