外国人が日本で起業するステップ!必要な在留資格や成功のポイントを解説

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外国人が日本で起業するには準備が大切


外国人が日本で起業する場合、様々な手続きを行う必要があります。
近年は、外国人が起業する際に活用できる支援策や制度なども登場しているので、日本での起業を目指す外国人も増えていくでしょう。
しかし、在留資格の取得だけではなく、起業する手順など、不明な点が多ければスムーズな起業は目指せません。

そこで今回は、外国人が日本で起業するために必要な在留資格の種類や条件、起業までの流れなどを解説していきます。
起業を成功させるポイントについてもご紹介していくので、日本で経営者を目指す外国人は参考にしてください。

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外国人が起業するために必要な在留資格の種類


日本人が会社を設立する際とは違い、外国人が起業する場合は条件があります。その条件のひとつが在留資格の取得です。
日本に滞在する目的によって取得できる在留資格があり、日本での活動は在留資格によって制限されています
そこでまずは、取得すべき在留資格の種類について解説していきます。

経営・管理

在留資格には、医療や研究、介護や技能実習、留学など、様々な種類があります。日本に在留している外国人の中には、これらの資格を取得している場合もあるでしょう。
例えば、就労が認められている在留資格に「芸術家」があります。これは、作曲家や著述家、画家となって活動するために必要な資格です。
弁護士や公認会計士などに従事する際には「法律・会計業務」の資格を取得する必要があります。

日本で就労するために必要となる在留資格ですが、起業するとなれば「経営・管理」の在留資格への変更が必要です。ただし、あくまでも経営者としての資格となります。
飲食店を営む場合、経営者がシェフとして働くケースもあるでしょう。
その場合はシェフとしての活動が多いので、入国管理局は「経営者としての活動が中心ではない」と判断し、経営・管理の在留資格の取得を認めないケースもあります。
この場合、経営者としての役割がメインであることを示す必要があるので注意してください。

取得するための条件

経営・管理の在留資格を取得するためには条件があります。

  • 独立した事業所が日本国内にある
  • 500万円以上の出資、もしくは2名以上日本に居住する常勤職員を雇用する
  • 事業の適正性や安定性、継続性を示せる

以上3つの条件を満たさなければいけません。事業所は独立していなければいけないので、レンタルオフィスや間借りなどでは経営は不可能です。
安定性や継続性に関しては、事業計画書を作成し、入国管理局に説明を行います。赤字を出し続けることが想定される企業は認められません。
厳しい条件がありますが、日本経済新聞によれば2024年度中にも経営・管理ビザの取得の条件が緩和される予定であると報道しています。
在留資格に関しては原則1年でしたが延長され2年になる見込みです。
事業所も共同事務所やシェアオフィスが認められるといわれています。500万円の出資金もなしになるといわれているので、実現すれば外国人の起業がしやすくなるでしょう。

永住者・定住者など

永住者や定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の在留資格があれば、日本での活動に制限がないので起業も可能です。

・永住者
在留期間を制限することなく日本に永住できる権利のある外国人です。
法律や法令違反をしていない素行が善良である人物、独立した生計を営める資産や技能を有している、日本の利益になると認められることで永住者のビザを取得できます。

・日本人の配偶者等
日本人と結婚をした外国人や実子、特別養子などは、在留資格として「日本人の配偶者等」が取得できます。
ただし、5年・3年・1年・6カ月の在留期間があるのでその都度更新が必要です。

・永住者の配偶者等
永住者や特別永住者と結婚した外国人や永住者の子どもとして生まれた人が取得できる資格が「永住者の配偶者等」です。
在留期間は5年・3年・1年・6カ月で審査によって決定されます。

・定住者
日本に定住している外国人で主に日系人が当てはまる「告示定住者」と難民や日本人や永住外国人の配偶者との死別や離婚によって滞在している「告示外定住者」の2種があります。
5年・3年・1年・6カ月の在留期間があるので、更新が必要です。

外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)

外国人起業活動促進事業は、2018年にスタートした事業です。
経営・管理の在留資格の発行数が少なくなったことを受け、外国人の起業家を日本に呼び込み、起業促進を促すために始まりました。

取得するためには、外国人起業活動管理支援計画を策定し、経済産業大臣の認定を受けなければいけません。
1年以内に起業する計画を立てることが前提で、準備期間として最長1年間の特定活動の取得が認められています。
起業する準備が整った段階で経営・管理の在留資格に変更を行えば、日本での起業が可能です。

外国人が日本で起業するまでの流れ


ここからは、外国人が日本で起業する際の流れを解説していきます。スムーズな申請を行うためにも、前もって把握しておくと安心です。

1. ビザや在留資格を取得する

日本に入国する際、滞在する際に必要なものにビザや在留資格があります。
起業する際にはどちらも重要な要素となりますが、ビザと在留資格は異なるものなので注意してください。

在留資格は、外国人が日本に滞在するために必要となる資格で、資格を取得せずに滞在をすれば不法滞在とみなされて罰則や強制送還となってしまいます。
そのため、外国人が日本で起業するためには欠かせない資格です。
現在の資格で起業が可能かを判断し、変更が必要であれば手続きを行ってください。

一方、ビザは日本への入国を審査するためのものです。パスポートの査証欄に押印されて示されています。日本に入国した時点でビザの役割は終了します。
混同されやすいですが、まったく異なるものなのであらかじめ理解してから起業の準備を進めてください。

2. 事業コンセプトを考える

経営・管理の在留資格を取得する際には、事業内容を明記した事業計画書の提出が求められます。
「顧客に何をどのように提供するか」を考え事業コンセプトを検討していきましょう。
その後、考えたコンセプトをもとにして市場調査や競合調査、収益の計画や資金計画、リスク対策なども考え、事業計画書を作成していきます。
入国管理局への提出以外にも、融資の申し込みや助成金の申し込みなどでも必要になる書類なので、綿密に考える必要があります。

また、定款の作成も必要です。会社名や事業の目的などをもとに作成していきます。株式会社を設立する際には公証人から認証を受ける必要もあります。

3. 自己資金を確保する

経営・管理の資格を取得するためにも自己資金を確保しなければいけません。
起業に必要な資金としては、開業資金に加えて運転資金や当面の生活費も確保しておくと安心です。
創業時には担保力もないため融資が困難になるケースも多いです。できる限り多くの資金を準備してください。

確保した資金は出資金として払い込む必要がありますが、起業の発起人が定める口座となります。
しかし、マネーロンダリングを防止するために日本の銀行では日本の住民票を持っていない外国人の口座開設ができません。
そのため、出資金の払い込みをする際には日本に住んでいる日本人や永住者といった協力者が必要になります。
協力者を一時的に共同代表者として設置し、銀行口座を提供してもらって払い込みを行ってください。
出資金の送金元を確認されるケースもあるので、関係する書面や資料があれば残しておき、提出できるよう準備してください。

4. 事業所を確保する

経営・管理の在留資格の認定を受けるためにも国内での事業所の開設を行う必要があります。
自宅とは別の事業所を確保しなければいけないので、賃貸借契約が必要なケースもあります。
しかし、その際には印鑑や身分証明書を提出しなければなりません。
日本に住所がなければ印鑑証明書を取得できず、在留カードもないのでパスポート以外の身分証明書を用意することができないでしょう。
スムーズに契約するためにも口座開設の際に役員に設置した協力者に不動産物件の契約も依頼してください。

また、その際には法人名義での契約のほか、使用目的を事業用とする必要があります。居住用にしてしまうと経営・管理の資格を取得できないので注意してください。
看板の設置や事業に必要な備品が揃っている点も求められます。在留資格を申請するまでに内装工事や準備を完了しておいてください。
会社を設立するためには設立登記も忘れてはいけません。事業所を管轄する法務局で申請し、登記が完了すれば事業所開設となります。

5. 諸官庁に届け出を出す

創業する際に諸官庁に届け出を行う書類は業種によって異なります。

・税務関係

【税務署】
  • 開業届出書(個人・法人)
  • 給与支払事務所等の開設届出書(個人・法人)
  • 青色申告承認申請(個人・法人)
  • 棚卸資産の評価方法の届出書(個人・法人)
  • 減価償却資産の償却方法の届出書(個人・法人)
【都税事務所(23区以外は所轄税務署に届け出)】
  • 事業開始等申請書(個人のみ)
  • 法人設立・設置届出書(法人のみ)

・雇用、社会保険関係

【年金事務所】
  • 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
  • 被扶養者届
【公共職業安定所】
  • 雇用保険 適用事業所設置届
  • 雇用保険 被保険者資格取得届
【労働基準監督署】
  • 労働保険関係成立届
  • 概算保険料申告書
  • 適用事業報告

6. 営業を開始する

すべての準備や申請が完了すれば営業開始です。必要に応じて公式ホームページの作成やSNSやダイレクトメール、チラシなどを活用した広告を活用し宣伝を行います。
また、営業を開始した後には所得に応じて納税する義務が発生します。

【個人事業主】
  • 所得税
  • 個人住民税
  • 個人事業税
【法人】
  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 地方法人特別税

このほかにも消費税や印紙税、固定資産税などを支払わなければいけません。税に関する理解を深めるためにも、商工会議所や税理士に相談するのもおすすめです。

外国人が日本で起業を成功するためのポイント


最後に、外国人が日本で起業を成功するためのポイントをまとめていきます。

協力者・人的ネットワークを充実させる

事業の方向性を定めたら、事業をスムーズに展開するためにも協力者を確保し、人的ネットワークを充実させてください。
協力者は事業に直接関わる人だけではなく、起業関連の情報を提供してくれる人やアドバイスをしてくれる人を見つけると様々なサポートを実施してくれます。

例えば、中小企業の成長をサポートする中小機構では、インキュベーション事業として国内29カ所で常駐するインキュベーションマネージャーによる経営相談や産学官連携、ネットワーク構築のサポートなどを実施しています。
販路開拓の相談にも乗ってくれるので成長期の相談も可能です。

スタートアップカフェは、自治体や自治体から委託を受けた機関による施設で創業に関する様々な相談ができます。
セミナーやイベントも開催されているので、知識の習得にも役立ちます。
いろいろな業種の人たちが集うスペースなので、交流し合いながら仲間を探すことにも役立つでしょう。

日本語で書類を作成できるようにする

事業計画書や定款といった書類は、日本語で作成しなければいけません。
事業計画書は在留資格を得る際にも提出する必要があるため、理解してもらうためにも正しい日本語での作成が必須です。
対策としては日本語に精通した人物を発起人に向かえるほか、翻訳の専門業者に依頼することも可能です。

十分な出資金や本人確認書類を用意する

経営・管理の在留資格を取得するためには、500万円以上の出資が必要になります。
500万円全額を資本金として活用しなくても問題ありませんが、資本金を少なくする場合は事業に出資した事実を証明しなければいけません。
また、資格取得の審査においては事業継続の安定性も確認されるため、資本金が少額であると認証されないケースもあるので注意してください。

銀行口座を開設するためにも、本人確認書類が必要です。外国人の場合は、印鑑や電話番号、本人確認書類や住所が確認できる書類の提出が必要です。
普通口座の開設は日本に6カ月以上滞在していなければ行えません。
住民票を取得していることも要件となるので、当てはまらない場合は前述したように協力者に協力を依頼してください。

まとめ・外国人が日本で起業するには在留資格や手続きの知識をつけよう

外国人の場合、在留資格の変更が必要なケースがあります。取得するための条件もあるので、自分の在留資格を確認し、変更が必要であれば申請を行ってください。
また、事業開始までの流れは複雑なので不明な点があると行き詰ってしまうケースもあります。
スムーズに開業まで進むためにも、協力者や人的ネットワークを確保し、サポートしてもらうと安心です。

創業手帳(冊子版)は、起業に関する役立つ幅広い情報もまとめています。活用できる補助金や助成金についても掲載しているので、起業の際にぜひお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)

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