企業版ふるさと納税とは?仕組みや企業側のメリット・デメリットを解説
企業版ふるさと納税とは最大9割控除できるお得な制度
地域の特産品を受け取れる、税額控除が受けられると注目のふるさと納税ですが、実は企業版ふるさと納税ともいわれる制度があります。
企業版ふるさと納税は個人向けと異なる点は多いものの、最大9割の税額控除が受けられるなどメリットも豊富です。
この記事では、企業版ふるさと納税とはどのようなものなのか、仕組みをはじめ、メリット・デメリットを解説します。
また、企業版ふるさと納税のやり方もご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
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この記事の目次
企業版ふるさと納税とは?
企業版ふるさと納税は、地方公共団体が行っている地方創生に関する取組みに対し、寄付をした企業は税制優遇を受けられる制度です。
正式名称は地方創生応援税制といい、個人向けふるさと納税とは異なり返礼品などはありません。
しかし、国が認定した取組みであれば法人関係税から税額控除を受けられることから、寄付金額や参加企業数は年々大きく増加しています。
ここでは、起業版ふるさと納税の適用期限やこれまでの実績、納税方法をご紹介します。
企業版ふるさと納税の適用期限
税額控除の特別措置を受けられるのは2024年度(2025年3月)までです。
2016年に内閣府主導により創設された起業版ふるさと納税制度は、地方創生をさらに強化・充実させることを目的に2020年4月に税制改正が行われました。
これにより、税額控除の特別措置の適用期限は5年間延長され、2024年度までとなりました。
なお、税制改正では適用期限延長のほか、税額控除割合も拡充され、これまで最大約6割だった税額軽減が約9割まで増加しています。
企業版ふるさと納税のこれまでの実績
2016年の創設以降、順調な広がりを見せている企業版ふるさと納税は、税制改正が行われた2020年以降の寄付金額・寄付件数がいずれも大きく増加しています。
創設間もない2016年から2019年にかけて、寄付金額は約4.5倍に増えています。
その後税制改正が行われたことにより、市場規模はさらに広がりを見せ、2022年度の寄付金額は約341.1億円、件数は8390件でした。
この金額は、2019年度に比べて約10倍です。
前年度比でも約1.5倍、件数にいたっては約1.7倍となっており、活用する企業は年々増え、寄付実績も右肩上がりであることがわかります。
企業版ふるさと納税の方法
企業版ふるさと納税では、金銭を寄付する方法のほか、専門的な知識やノウハウを持つ人材を派遣する方法があります。
また、現金以外の物納による寄付も可能です。実際に1,000万円分の防災用品を物納した企業の事例もあります。
どの方法であっても、企業が税額控除を受けられる点は同じです。
しかし、物納による寄付の場合、支出時に価値を算出できるものでなければならず、内閣府としては推奨していない方法であることを理解しておく必要があります。
企業版ふるさと納税の9割控除とは?
2020年の税制改正により、企業版ふるさと納税では最大9割の税額控除が受けられます。ここでは、企業版ふるさと納税の仕組みや控除の増減額を詳しく解説します。
9割控除の仕組み
企業版ふるさと納税では、国が認定した「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に寄付した金額の約9割の税制優遇を受けられます。
9割控除の内訳は、3割が税務上「損金」となり、税額控除が最大6割です。
もともと税額控除は寄付金額の最大3割でしたが、2020年度の税制改正によって最大6割まで拡充されました。
企業版ふるさと納税を活用し1,000万円の寄付を行った場合、最大約900万円の法人関係税が軽減となり、企業負担割合は1割となります。
控除の上限額
法人関係税を軽減できる企業版ふるさと納税ですが、控除には上限が設けられており、それぞれの基準にあわせて最大6割の税額控除を受けられます。
① 法人住民税 | 寄付額の4割を税額控除。 (法人住民税法人税割額の20%が上限) |
② 法人税 | 法人住民税で4割に達しない場合、その残額を税額控除。 ただし、寄付額の1割を限度。(法人税額の5%が上限) |
③ 法人事業税 | 寄付額の2割を税額控除。 (法人事業税額の20%が上限) |
引用元:企業版ふるさと納税
企業版ふるさと納税のメリット
企業版ふるさと納税では、税額控除を受けられる以外にも、様々なメリットが期待できます。ここでは、企業版ふるさと納税をすることで受けられる恩恵をご紹介します。
自社のイメージアップを図れる
企業版ふるさと納税は、自社のイメージアップや認知度向上効果が得られる点がメリットのひとつです。
企業版ふるさと納税の対象プロジェクトは、環境保全や子育て支援を目的としたものが多くあります。
そのため、寄付を通じ、SDGs(持続可能な開発目標)支援やESG(環境・社会・ガバナンスを考慮した投資活動や経営活動)の実現に向けた取組みを行っている企業であると、地域住民や消費者から評価されます。
地域社会に貢献できる
企業版ふるさと納税は、地域社会に貢献できる点もメリットです。企業版ふるさと納税では個人向け同様、寄付する自治体を自分で選べます。
出身地や創業地など縁のある地域を選ぶことで、例え現在住んでいる地域ではなくても、寄付という行為を通して貢献することが可能です。
実際に、地震で被災した地域や子育て支援策に賛同した自治体に、企業版ふるさと納税を通して貢献した例は数多くあります。
自治体と関係を構築できる
寄付を通し、地方自治体との交流が増えることで、新たなサービスや商品開発のきっかけとなる可能性があります。
また、地方ならではのニーズから、新しい働き方の仕組みやアイディアが生まれ、ビジネスチャンスにつながることも期待できます。
さらに、寄付先の自治体とやり取りをする中で信頼関係ができ、良好な関係を築けるのも、企業版ふるさと納税ならではのメリットといえます。
取引先・金融機関から信頼を得られる
企業版ふるさと納税の実績を積むと、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなる点もメリットです。
企業版ふるさと納税を通じ地方創生やSDGs活動に取組む姿勢は、取引先や金融機関に対して「クリーンな企業」や「CSR(企業の社会的責任)の高い企業」といった印象を与え、イメージアップにつながります。
取引先や金融機関から信頼を得られれば、取引きを円滑に進めるのはもちろん、融資などの場面でも有利となる可能性があります。
企業版ふるさと納税のデメリット
イメージアップを図れたり地域社会に貢献できたりする企業版ふるさと納税にデメリットはあるのでしょうか。
ここでは、企業版ふるさと納税のデメリットについて見ていきます。
1回10万円以上の寄附を要する
寄付1回につき、最低でも10万円かかる点はデメリットといえます。企業版ふるさと納税では、寄付金額は10万円からと下限が定められています。
10万円以上寄付しなければ税額控除は受けられないため、企業版ふるさと納税は余裕のある状態で行うことが望ましいです。
キャッシュアウトが発生する
企業版ふるさと納税を利用する場合、寄付金は企業のキャッシュからする必要があります。
まとまった金額を寄付する場合、企業の資金繰りや予算管理に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
ただし、寄付金は10万円以上であれば自由に設定できます。企業規模や予算に応じて、無理のない範囲で行うことが大切です。
寄附先からの返礼品はない
企業版ふるさと納税は、個人向けとは異なり、寄付をしても寄付先から返礼品はありません。
企業版ふるさと納税は社会貢献や地方創生を目的として考えられているからです。
その代わり、企業版ふるさと納税をすると法人関係税の税額控除を受けられます。さらに、企業のイメージアップや知名度向上が期待できます。
決算期末日までの決済が必要
該当決算期の控除を受けるには、決算期末日までに決済を完了している必要があります。
つまり、決算期が3月末であれば、控除の対象となるのは3月末日までに振込などの寄付決済が完了している分です。
寄付決済を完了すると、自治体から「寄付受領証明書」が発行されます。計理処理を行うにはこの書類が必要です。
ただし、寄付額を計上するタイミングによっては上記に当てはまらないことがあります。その場合は、担当の税理士に確認することをおすすめします。
一部自治体には寄附ができない
すべての自治体が企業版ふるさと納税の対象ではありません。
地方交付税の不交付団体である都道府県など対象外となる地域があるため、寄付する際は事前に確認することが大切です。
本社が所在する地方公共団体への寄付も税制の対象外となるため注意が必要です。
企業版ふるさと納税のやり方
企業版ふるさと納税はどのように手続きを進めれば良いのか、やり方を解説します。
1.寄附する自治体や事業内容を選んで申し込む
まずは、各自治体や事業内容を確認し、寄付先を決定します。企業版ふるさと納税の対象は、国が認定した「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」でなければなりません。
内閣府地方創生推進事務局のホームページをはじめ、ポータルサイトからも確認できます。
自社の事業や目的に合っている、もしくは関心のある地域や取組みを考慮し、寄付先を選んでください。
2.自治体と打ち合わせを行う
寄付先が決まったら、自治体の窓口に連絡し、必要書類の有無や詳細を確認します。問題なければ申し込みを行います。
寄付先によっては、申し込み前に、寄附申込書や寄附意思確認書などの書類の提出を求められることがあるかもしれません。
手続きをスムーズに進めるためにも、事前に確認しておくと安心です。
3.受領証明書を受け取る
必要書類を提出し、自治体の指示に従い寄付金を支払うと、受領証明書が発行されます。
寄付金の受領証には、寄付金の受領日や金額が記載されており、税額控除の申告時に必要です。
寄付の証明となるため、銀行振込や電子決済による納付明細書や領収書ととともに、大切に保管しておいてください。
4.法人税・地方税を申告する
税額の控除を受けるには、確定申告期限内に税務署に書類を提出します。
税金を申告する際は、「法人税等申告書」のほかに、「法人税等申告書別表(地方創生応援税制)」が必要です。
別表には寄付先や寄付金額なども記入する必要があるので、忘れないように注意してください。
必要項目をすべて記入したら、領収書や寄附証明書など必要書類とあわせて提出します。
提出書類に問題なければ手続きは完了です。寄付金額に応じて、最大9割の税額控除が受けられます。
企業版ふるさと納税(人材派遣型)もある
企業版ふるさと納税には、金銭を寄付する方法のほか、専門知識やノウハウを持つ人材を派遣する「人材派遣型」もあります。
人材派遣型の企業ふるさと納税のメリットは、人件費の負担なしに専門知識やノウハウのある優秀な人材を活用できることです。
一方、企業にとっても、派遣した人材にかかる人件費は寄付同様税額控除を受けられる、地域社会の活性化に貢献できるといった点がメリットとして挙げられます。
さらに、自社とは異なる環境に人材を派遣することにより、更なる成長も期待できます。
税額控除を目的とするのであれば、金銭の寄付のほうがお手軽です。
しかし、人材派遣型は人材不足が深刻で有能な人材の確保が難しい地方自治体はもちろん、企業にとっても地域貢献がしやすくなるなどメリットが大きいでしょう。
CSRや社会貢献を目的とするならば、人材派遣型の企業版ふるさと納税を検討してみてください。
まとめ・企業版ふるさと納税に参加して税額軽減を目指そう
企業版ふるさと納税は、最大9割の税額控除を受けられるお得な制度です。
デメリットはありますが、社会貢献でき、イメージアップを図れるなどメリットも豊富にあります。
企業版ふるさと納税の適用期限は、2024年度までです。興味のある方は、ぜひ利用を検討してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)