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2022年7月11日はなはなみかん合同会社 久保みどり|発達段階や感覚が多様な子どもたちの多様な個性を伸ばす「視覚学習みるみるカード」の事業展開で注目の企業
発達段階や感覚が多様な子どもたちの多様な個性を伸ばす「視覚学習みるみるカード」を開発して注目されているのが、久保みどりさんが2021年9月に創業したはなはなみかん合同会社です。
ダイバーシティやインクルージョンといった、多様性を受け入れ合う社会創りに意識が高まりつつある昨今、あらゆる人たちがありのままの自分自身を受け入れ、ありのまま他者を受け入れ、個性や特長を活かし合い、支え合って生きていける社会、その真の実現に向けた様々な取り組みやチャレンジが各所で行われています。
教育現場においてもそうです。しかし現実には、いまだに ‶コミュニケーション障害”(※) や ‶発達障害”(※) といった言葉だけで括られてしまい、従来の画一的な教育システムでは対応が難しい子どもたちとして「おいてけぼり」にされがちな児童が、各学校機関には少なからず存在しています。
そうした子どもたちは、ほんの少しだけ接触方法を工夫したり、その子の側に立ったコミュニケーション方法を取り入れたりするだけで、意思疎通がとても滑らかに進められるようになったり、お互いが笑顔で対応できるようになったりするのです。
(※)文章内では障害はその人にではなく環境の側にあるという考えの基、環境に害のあるものが存在するということを意識するために、障害という表記を用いています。
子どもたち一人一人の個性を尊重し、その可能性に寄り添い、大きく拡張していくサポートツールの開発にいそしむある起業家の取り組みに、今注目が集まっています。
はなはなみかん合同会社の久保みどりさんに、事業の特徴や今後の課題などについてお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
まずは開発背景からお話します。
私自身が「共感覚(※1)」をもっていたことで、幼児期・学童期には友達の電話番号や車のナンバーなどを一度見たら記憶できていました。共感覚が薄くなり始めた高校生の頃には、簡単に記憶できなくなっていました。このことから「感覚」と「学習」は密接につながっているということに気づき、この「視覚学習みるみるメソッド」を開発しました。
メソッドのベースとなったのは、10年間の親子教室で使うために手作りしてきた教材でした。これを用いて香川大学教育学部坂井・宮﨑研究室監修、香川県立聾学校に手話監修のもと1年間の共同研究を行いました。また、実際の幼稚園・保育園、小学校や特別支援学校などの教室で使っていただいた実践研究では、多くの先生方から好意的なフィードバックを頂き、それを反映して教育効果を高める教材「視覚学習みるみるカード」を制作し、発売する運びとなりました。
※1 共感覚とは単語や数字に対して「色」を感じたり、音や音階に対して「色」や「形」が見えたり、連想したりすること。通常は成長にともなって神経の分化が進み、いずれ消失する。しかし成長後も、一部の感覚が未分化なために、数字や言葉や音などに、色を感じることがあり、「共感覚」をもつ人となる。
みるみるカードは、目で見てパッとわかることで、“はないろキッズ(※2)” とのコミュニケーションを促します。
※2「はないろキッズ」とは
発達段階や感覚が多様な子どもたちは、その子の特性を見つけ、必要な支援と適切な指導に出会うことで、その個性をみるみる伸ばすことができます。はなはな*みかんでは、こうした子どもたちを「はないろキッズ」と呼び、多様な個性を伸ばしてほしいという思いをこめています。
【商品特徴】
みるみるカードは、音声・色・体の動きなどの感覚と、数・ひらがななどの学習を組わせることで、「はないろキッズ」がみるみる成長するツールです。
色をはじめとする視覚支援とハンドサインを使って、コミュニケーションしながら、子どもの言葉の理解を促します。
視覚学習みるみるカードは、どんな子どもでも使えます。
幼稚園・保育園、学校、特別支援学校、家庭を問わず、どこでもどなたでも、使うことができます。
みるみるカード×ハンドサイン×動画(音楽)を組み合わせて、自由な使い方で指導できます。
通常の絵カードとここが違います!
・ルールにのっとった色がついていることで、感覚的に覚えられます。
・ハンドサインと組み合わせているので、コミュニケーションが スムーズにいかない子どもも一緒に学ぶことができます。
・音楽があることで、音に載せて記憶を定着させやすい工夫がいっぱい。
・指文字や簡単な手話を学びたい人にも活用できます。
視覚学習みるみるカードを使うことで、子どもはこんなふうに成長します!
・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?
発達障害の診断があってもなくても、行動がちょっと気になるところがあったり、コミュニケーションがちょっとうまくいかなかったりする子どもたち「はないろキッズ」に使ってほしいです。
「はないろキッズ」は、物事に対する感覚に個性がある子どもたちでもあります。「視覚学習みるみるメソッド」は、それぞれの個性の花を咲かせたいすべての子どもたちと、その子の支援者(教育関係者)、保護者に使ってほしいサービスです。
・このサービスの解決する社会課題はなんですか?
“学びのおいてきぼり” をなくしたいと考えています。
SDGsの4つ目の目標は「質の高い教育をみんなに」です。貧富の差や環境、ジェンダーに関係なく、誰でも教育を受けることができる世界を目指します。
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)など発達障害のある子どもたちへの学習支援や発達支援もその1つです。
日本の公立小中学校において、何らかの特別な配慮を必要とする子どもたちの割合は約6.5%と言われています。35人学級ならクラスに2~3人、支援が必要な子どもがいることになります。はなはな*みかんは、 “学びのおいてきぼり” をなくすために、小学校入学前の “はないろキッズ” のコミュニケーションがスムーズにいくように教材研究をしています。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
大変なことでもあり転機となったのは、2016年に夫の転勤で香川県に移住してきたときでした。
2011年から個人事業主として親子教室などを運営してきましたが、東京から誰も知り合いがいない香川に移り、途方に暮れてしまったのです。土地勘もなく、SNSでも香川にはほとんど知り合いがいなくて、なかなか集客できません。それでも、なんとか1人、2人とだんだんに知り合いが増えていきました。
最初のお客さんとなってくれたのは、香川に来る前からSNSでつながりがあった方でした。その方は元教員で、移住者としての先輩でもあったので、モニターという形でお迎えしました。そこを手掛かりに、自分自身もほかの講座を受けたりするうちに、だんだんと応援してくれる人も増えてゆき、コミュニティ・センターで親子教室をするときには、手伝ってくれる方もいるというところまできました。
香川に来て、出かけたりする友だちもいないのでたっぷりと時間ができたことが、「視覚学習みるみるカード」ができるきっかけとなりました。
それまで展開していたのは民間の資格を取得したベビー系のお教室でした。細々と手づくりのオリジナル教材を使ったりもしていましたが、時間がある間に何かしたいと思うようになったのです。どこか働きに出たくても、末っ子は当時2歳で保育園には入れない…じゃあ自分で仕事をつくろう!と思ったのです。
そこで、2018年に香川ビジネス&パブリックコンペに出ました。
Facebookの広告で見かけ、検索して、「これだ!」と思ったのです。どうせ誰も知らないし恥ずかしいことも何もない…と思ってのびのびとプレゼンしたのがよかったのでしょうか。初参加でグランプリをいただきました。今見返すと、スライドもしゃべり方もつたないものでしたが、その後いくつもコンペには出ているけれどグランプリはそのとき限りです。勢いってすごい思います(笑)。
グランプリはとったけれど、それだけではもちろんすぐには応援してくれる企業もないし、自治体に掛け合ってみても反応はなく、泣きながら帰ったこともありました。それでも、百十四銀行さんやセーラー広告さんに顔を覚えていただいたこともあり、またいろいろなところから、「次、このコンペ出ませんか?」とお誘いいただくことも多くなりました。2020年に再度ビジネス・コンテストに出たときには、ずいぶん顔見知りも増えていました。そのときに、セーラー広告さんが「一度話にいらっしゃい」声をかけてくださったのです。
研究助成金にも応募して、香川大学の坂井・宮﨑研究室から監修と共同研究をすることができました。
正直なところ、視覚学習みるみるカードは商品化まで考えていませんでした。出版社に見積をとってもらったら、1000万といった金額で、売れるかどうかもわからない、ということがわかっていたからです。商品化しなくても、今自分の足元の親子教室で使うことができればいいかと、カラーコピーしてパウチして、という形でつくっていました。
そんなときに背中を押してくれたのが、セーラー広告さんでした。ビジネスパートナーとしてだけでなく、話を聞いてくださり、モチベーションが下がらないように応援してくれる。もちろんそれは、売れないと困るからでもあるわけですが、ひとりだと心折れるところを救ってくれました。
毎日のように連絡して、いろいろ相談に乗っていただきました。ほんとうに助かりました。
もし、私が香川に来ることなく東京にずっといたら、きっと、心の奥でやりたい学びを封印していたと思います。当時、カフェでの出店したりマルシェをしたりと、楽しかったし夢中でした。でも、夢中な分、じっくり考えて開発していく時間はありませんでした。香川に来られてよかったです。
・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?
私はこの「みるみるメソッド」のサービスを、保護者の方々には家庭内で自由に使って頂きたいですし、指導者の方々には現場でどんどん使って頂きたいと思っています。
実は、自分自身が窮屈な思いをした経験があるのです。教室を始める前までは小学校の特別支援学校で講師をしていたことから、この子にはどういう教材やメソッドを使ったらいいか、ということはわかるのだけれど、それぞれの協会の規定があるから組み合わせもできなかった、という背景があります。
もっとも、勝手に使って別の教室を立ち上げたり、勝手にコピーして使われることは厳禁ですが、ご縁あってご購入いただいた教材は、自由に使ってほしい!そう思っています。
・今の課題はなんですか?
使い方がわからない人には個別にコンサルする、という形にして、親子教室、幼児教室で導入する場合は、まずはご相談くださいということにしていきたいです。誰もが自由に使える教材を、私自身がほしかったから作ったのです。協会ビジネスに踏み切らないのは、そこがスタート地点だからです。
ただ、どうしても時間に限界があるので、動画制作など次のステップも考えていきたいです。
・読者にメッセージをお願いします。
主婦からの起業、大学院挑戦!人はいつからでもどこからでもなんにでも挑戦できると私は、思っています。
「視覚学習みるみるカード」の販売に至るまで、自分の想いを人に話すこと、そしてその想いの継続することの大切さを実感しています。私は、幸せなことに応援者や支援企業が現れ、たくさん支えていただきました。
また、私は今、大学院で学んでいます。44歳の社会人大学院生です。社会人2年目に大学院を受験しましたが、東京での一人暮らしと学費と仕事の両立が無理だと判断。ずっと、心にモヤモヤがありました。20年近い想いが叶ったのです。やりたい研究があります。しっかり学びたいと思っています。
人はいつからでもどこからでもなんにでも挑戦できます!
会社名 | はなはなみかん合同会社 |
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代表者名 | 久保みどり(くぼ みどり) |
創業年 | 2021年9月1日 |
社員数 | 1名 |
所在地 | 760-0019 香川県高松市サンポート高松シンボルタワータワー棟4・5階 |
サービス名 | 視覚学習みるみるカード |
事業内容 | ありのままの感性と個性を活かせるように、発達段階や感覚が多様な「はないろキッズ」の理解をサポートする研究事業 ・視覚学習みるみるメソッドの教育現場への導入及び講師育成、視覚学習みるみるカード販売 |
代表者プロフィール | −子どもが本来もっている感覚や個性を見つけて生かす幼児教育の専門家− 「視覚学習みるみるメソッド」を用いて、保護者や指導者の理解を深めるための研究事業を展開し、発達段階や感覚が多様な子ども「はないろキッズ」が、ありのままの感性で個性を伸ばせる教育現場をつくることをビジョンとしている。2000年に福岡・中村学園大学(児童学科)を卒業後、東京都の小学校や特別支援学校の講師をしながら教員を目指す。枠にはまらない子ども達と出会い「共感覚」はじめ、その子の気質を早期に知ることの大切さに気づく。2011年から未就学児の親子教室を10年間、1000組を越える親子と向き合い、教育アドバイザーとして運営。この間、2005年長男、2007年次男、2014年長女を出産し、2016年に香川県に移住。すべて子育てをしながらの経験を積んできた。現在は、香川大学大学院創発科学研究科に在籍し「共感覚」を研究する社会人大学院生、また2021年法人化、起業家としても活動中である。 【受賞歴】 ・2018年12月香川ビジネス&パブリックコンペ2018 地域公共部門グランプリ ・2019年2月かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ2019優秀賞 ・2019年5月 セミナーコンテスト高松11回大会準優勝 ・2020年2月第3回四国アライアンスビジネスコンテスト奨励賞 ・2020年2月第1回日本経済新聞スタ★アトピッチJAPAN四国ブロック優秀賞、野村ホールディングス賞 ・2020年12月香川ビジネス&パブリックコンペ2020地域公共部門審査員特別賞 ・2020年12月 プログラミング制作コンテストにてSUNABACO TAKAMATSU OF THE YEAR賞 ・2021年3月瀬戸内チャレンジャーアワード2021ファイナリスト ・2022年1月第3回日本経済新聞社スタ★アトピッチJAPAN中国・四国ブロック大会オーディエンス賞 ・2022年2月セミナーコンテスト2022ファイナリスト |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | はないろキッズ はなはなみかん 久保みどり 共感覚 手話 視覚支援 |
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