ソーシャルビジネスとは?概要や事例、支援制度まで徹底解説
SDGs時代の今!社会問題をビジネスで解決する「ソーシャルビジネス」に注目が集まっています。
ソーシャルビジネスという言葉を聞いたことがありますでしょうか?
ソーシャルビジネスを一言で表すと「社会問題をビジネスで解決する」ことです。
気候変動やSDGsに注目が集まる今、このソーシャルビジネスにも大きな期待が集まっています。
そこで今回は、ソーシャルビジネスについて、その歴史や事例を詳しく解説していきます。
この記事を最後まで読むと、あなたもソーシャルビジネスの分野で活躍するきっかけになるかもしれません。
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この記事の目次
ソーシャルビジネスとは
ソーシャルビジネスとは「ビジネスで社会問題を解決する」ことです。
しかし、これをと聞くと、「社会問題の解決はボランティアじゃないの?」と思う方も多いかもしれません。
そこで、ここからはソーシャルビジネスの定義やボランティアや一般のビジネスとの違いを含めて解説していきます。
ソーシャルビジネスの定義
世界基準での「ソーシャルビジネスの定義」はなく、各国でその定義は異なります。
日本におけるソーシャルビジネスの定義として、ここでは2007年に経済産業省によって設置された「ソーシャルビジネス研究所」が示した定義をご紹介します。
ソーシャルビジネス研究所(経済産業省)によると「社会性」「事業性」「革新性」の3つの要件を満たす主体をソーシャルビジネスとして捉えています。
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① 社会性:現在解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること。
※解決すべき社会的課題の内容により、活動範囲に地域性が生じる場合もあるが、地域性の有無はソーシャルビジネスの基準には含めない。
② 事業性:①のミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと。
③ 革新性:新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通じて、新しい社会的価値を創出すること。
この3つをまとめると、「新しい商品やサービスを通じて社会問題の解決に取り組み、それをビジネスとして継続させること」をソーシャルビジネスとして定義しています。
ソーシャルビジネスと「一般のビジネス」との違い
それでは、ソーシャルビジネスと一般的なビジネスの違いについて解説していきます。
どちらも同じ「ビジネス」ですが、事業を行う目的に大きな違いがあるのです。
まず一般的なビジネスの目的は、「自社の利益の最大化」です。
一方でソーシャルビジネスは、「社会問題の解決」が最大の目的となっており、社会問題への取り組みを継続するために、その活動資金として「利益」を生み出すという考え方です。
ソーシャルビジネスと「ボランティア」との違い
続いて、ソーシャルビジネスとボランティアの違いについて解説します。
先ほどの一般的なビジネスと違い、ソーシャルビジネスもボランティアも「社会問題の解決に取り組む」という点では共通しています。
しかし、この2つの違いとしては、ソーシャルビジネスは自社の利益を運営資金として活動を続けるのに対し、ボランティアは寄付や助成金などの外部から調達した資金で活動しているという点です。
ソーシャルビジネスとして事業を成長させることができれば、社会問題の解決に使える資金をその分増やせます。
より持続可能な形で社会問題の解決に取り組むために、近年ソーシャルビジネスに注目が集まっているのです。
ソーシャルビジネスの歴史
このソーシャルビジネスはどのように誕生したのでしょうか?その歴史を解説していきます。
ソーシャルビジネスの起源はイギリス
ソーシャルビジネスの原型は1980年代のイギリスで生まれたと言われています。
この当時の政権、マーガレット・サッチャー首相は、歳出を削減するために「小さな政府」への移行を進め、公共サービスの縮小を続けました。
この結果、歳出の削減には成功しましたが、その分、失業者が増え、貧富の差が拡大しました。
この時に縮小された公共サービスを政府に頼らず、民間企業で補おうと事業を立ち上げたことがソーシャルビジネスの起源だと言われています。
ソーシャルビジネスを確立させたユヌス博士
イギリスで生まれたソーシャルビジネスが概念として確立したのは、2006年にグラミン銀行とその創始者であるムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞したことがきっかけとされています。
ユヌス博士が考えるソーシャルビジネスには、3つの特徴があります。
① 社会問題の解決を目的とする事業であること
② ビジネスとして、自立的・継続的であること
③ 事業から生み出された利益は、投資家への配当ではなく、社員の福利厚生や自社への再投資に使うこと
先ほども解説しましたが、ソーシャルビジネスの目的は「利益の最大化」ではなく「社会問題の解決」です。
ソーシャルビジネスで得た利益は、社員や社会のために使う。このユヌス博士の考えが現在のソーシャルビジネスの流れに組み込まれているのです。
ソーシャルビジネスの事業例
ここからはソーシャルビジネスの具体的な事例をご紹介します。
世界のソーシャルビジネスの事例
グラミン銀行(バングラデシュ)
グラミン銀行は、先ほどもご紹介したムハマド・ユヌス博士が設立した金融機関で、ソーシャルビジネスの代表格として知られています。
1日1〜2ドルで暮らしている最貧困層の人たちに、マイクロファイナンスと呼ばれている数ドル程度の小口の事業資金を貸し出し、自立をサポートする小口金融のシステムです。
グラミン銀行が事業で得た利益は、白内障の専門病院の設立や通信サービス、ニット製品の製造など、他のソーシャルビジネスの分野に再投資されています。
この流れを作ることで、外部から資金援助がなくても、次々と社会問題を解決するビジネスを立ち上げ、継続できるのです。
パタゴニア(アメリカ合衆国)
世界的に有名なアウトドア衣料品ブランドのパタゴニアは、商品開発から販売、雇用にまで一貫してサステナブルな仕組みになっています。
衣料品の素材にはオーガニックやリサイクル素材のものを採用するなど、環境にできるだけ負荷が少ない商品開発を徹底しています。
パタゴニアも利益の一部を環境保護活動に投じており、その金額は1億4500万ドル(約160億円)を超えるとも言われています。
サファリコム M-pesa(ケニア)
M-pesaはケニアを代表する携帯電話事業者であるサファリコムが提供しているモバイル送金サービスです。このサービスにより、銀行口座を持たない貧困層の人たちでも、携帯電話のSMSを使って簡単に送金ができるようになりました。
M-pesaの利用者は4000万人にも達し、決済処理件数は月間で10億件を超えています。
ケニアから始まったM-pesaは、現在はアフリカのほとんど全ての国で導入されています。
日本のソーシャルビジネスの事例
株式会社ユーグレナ
株式会社ユーグレナは、藻の一種であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)を活用して、ヘルスケアや美容、環境・エネルギーなど様々な事業を展開しています。
ユーグレナ社は、売り上げの一部を協賛金として「ユーグレナGENKIプログラム」というバングラデシュに栄養豊富なクッキーを無料配布する活動を行っています。
さらに、グラミン財団とユーグレナ社は共同で「グラミンユーグレナ」として、バングラデシュでもやしの原料である緑豆を栽培し、日本とバングラデシュで販売する「緑豆プロジェクト」を行っています。
株式会社ボーダレス・ジャパン
株式会社ボーダレス・ジャパンは、世界15カ国で41の事業を展開する日本のソーシャルビジネスの代表格として知られています。世界中に展開する事業の全てがソーシャルビジネスで、2020年度の売上高は55億円を超えています。
ボーダレス・ジャパン社のグループ企業で発生した余剰利益は共通のポケットに集約され、次のソーシャルビジネスを立ち上げる資金に充てられています。
「恩送りのエコシステム」と呼ばれているこの仕組みで、ソーシャルビジネスを行う社会起業家を増やし、社会を変えるアイデアを世界中に広める事業を展開しています。
ソーシャルビジネスの支援制度
日本でもソーシャルビジネスへの注目が集まっていることもあり、その支援制度も増えてきています。
そこで、ここからはソーシャルビジネスの支援制度の事例をご紹介します。
日本財団のスタートアップ支援事業
日本財団では「ソーシャルチェンジメーカーズ(SCM)」という創業支援プログラムを実施しています。
創業初期(シード期)のスタートアップを対象として、社会的インパクトを最大化するビジネスモデルの確立を、各領域の専門家が講師やメンターとして多角的に支援してくれます。
このプログラムは日英両言語で構成されており、バイリンガルのチームメンバーがいることが推奨されています。このことから、よりグローバルな視点でのビジネスモデルの構築のサポートが受けられるとわかります。
ボーダレスアカデミー
株式会社ボーダレス・ジャパンでは、「ボーダレスアカデミー」という社会変革の担い手を育てるソーシャルビジネススクールが開講されています。
これは3ヶ月間の3ステップでビジネスプランが完成する起業プログラムです。
① ビジネスモデルを学ぶ
② 全16回の起業・教養講座を受講する
③ 事業計画を完成させる
これは単なる座学講義ではなく、社会起業家を目指す人のための本格的な起業プログラムです。
ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京
ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)では、社会的な課題の解決に取り組む革新的な事業に対して、資金の提供と、パートナーによる経営支援を行っています。
具体的には、年間100万円を限度にした資金が提供され、同時にSVP東京のパートナーが組織に対する経営支援を1〜2年に渡って実施しています。
日本政策金融公庫のソーシャルビジネス支援資金
日本政策金融公庫では、「ソーシャルビジネス支援資金」の融資を通じて、社会的課題の解決を目的とする事業者の支援を行っています。
融資の対象は、NPO法人やNPO法人以外でも、保育サービス事業、介護サービス事業、社会的課題の解決を目的とした事業を行う事業者となっています。
融資限度額は7,200万円(うち運転資金は4,800万円)で、資金の使い道は、事業を行うために必要な設備資金及び運転資金とされています。
ソーシャルビジネスの今後の課題
今回ご紹介したようにソーシャルビジネスは世界的にも盛り上がりを見せていますが、まだまだこれからの分野であることには変わりありません。
特に、今後のソーシャルビジネスの課題としては、「認知度の向上」が挙げられます。
事業として、業界としてソーシャルビジネスの認知度が向上しなければ、資金調達や優秀な人材の確保が困難な状況が続きます。
さらに、冒頭でご紹介したソーシャルビジネスの構成要素の「社会性」「事業性」「革新性」の3つのうち、どれかが欠如している事業が多いのも事実です。
社会問題の解決への意欲は高いものの、ビジネスモデルの構築やマーケティングのスキルが不足しているために、事業が継続できないケースもあります。
ソーシャルビジネスの認知度を高めつつ、資金調達と優秀な人材の確保が今後の課題となるでしょう。
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