年末調整を簡単に!経理担当も従業員も「年調ソフト」で効率化
年末調整手続きを電子化して創業時の貴重な人的リソースを確保しよう
国税庁が年末調整手続きの電子化を推進するために、本年度から無料で「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」を提供しはじめたのをご存じでしょうか。
年末調整手続きを電子化すると、従業員・起業双方にメリットがあり、計算ミスや提出漏れを防げるだけではなく事務工数を減らすことができます。
今回は、年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)の特徴やメリット、そして導入の仕方などをご紹介します。
創業手帳では、「確定申告ガイド」を無料で提供しています。このガイドには、最新の確定申告情報や手続きの流れがわかりやすく解説されており、確定申告の要点が簡単に理解できます。どなたでも無料ですので、この機会にぜひご覧ください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
国税庁が提供する「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」とは?
画像出典:国税庁「年末調整手続の電子化に向けた取組について」
年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)は、国税庁が無償で提供している年末調整申告書の作成ソフトです。
従業員が控除証明書等データを活用して簡便に作成し、勤務先に提出する電子データもしくは書面を作成することができます。
従来の年末調整手続き
従来の年末調整の手続きは以下の流れで行われていました。
1)給料などの支払いを受ける従業員が、保険会社や金融機関、税務署等から控除証明書等を書面(ハガキ等)で受領する。
2)従業員が、保険料控除申告書もしくは住宅ローン控除申告書に、受領した書面(ハガキ等)に記載された内容を転記し控除額を計算して記入する。
3)従業員が保険料控除申告書や住宅ローン控除申告書など、年末調整の際に作成する各種申告書(年末調整申告書)を作成し、控除証明書等と一緒に勤務先に提出。
4)勤務先が、従業員から提出された年末調整申告書に記載されている控除額の検算や控除証明書等の確認を行い年税額を計算する。
年末調整手続きの電子化をした場合のフロー
年末調整手続きを電子化した場合、以下のような手順になります。
1)従業員が、保険会社等から控除証明書等を「電子データ」で受領する。
2)従業員が、国税庁ホームページ等からダウンロードした年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)に、住所・氏名等の基礎項目を入力して、受領した電子データをインポート(自動入力と控除額の自動計算)を行い、年末調整申告書の電子データを作成する。
3)従業員が、年末調整申告書データ・控除証明書等データを勤務先に提出。
4)勤務先が、電子データを給与システム等にインポートし、年税額を計算する。
年調ソフトで作成できる書類
年調ソフトでは、各種控除申告書の作成を行うことができます。
作成の順番は以下の通りです。
・ 扶養控除等(異動)申告書(当年分)
・ 扶養控除等(異動)申告書(翌年分)
・ 所得金額調整控除申告書
・ 基礎控除申告書
・ 配偶者控除等申告書
・保険料控除申告書
・ 住宅借入金等特別控除申告書
「所得金額調整控除申告書」と「基礎控除申告書」は、手前の申告書への入力内容を基に自動作成されるので、通常は確認を行うだけで先に進めます。
提出用のデータを保存しておくことで、翌年はデータを取り込めば基本情報などが自動入力されます。
一部導入だけでも年末調整手続きを簡単にできる
画像出典元:国税庁「年末調整手続きの電子化及び年調ソフト等に関するFAQ(令和3年10月改訂)」
上手の様に、年調ソフトで作成を行うことで、印刷して書面提出をする場合でも、テータ提出をする場合でも、従業員・勤務先双方の工数を減らすことができメリットがあります。
年調ソフトの恩恵を最大限受けるためには、マイナポータルを連携し書類をデータで取得し年調ソフトを使用して書類作成を行いデータで提出しましょう。
年調ソフトを使用するメリット
従業員一人ひとりがアプリを使って年末調整の書類を作成することで、従業員は手書きによる手続きを省略し年末調整申告書の作成がスムーズになります。
氏名や住所などを何度も記載する手間が省けますし、保険料控除証明書をなくす心配がないだけではなく、保存場所が分からなくなってしまった場合にも再取得が可能です。
そのうえ、勤務先の給与担当者の事務を効率化できるだけではなく、書面による年末調整を行う場合の書類保管コストなども削減可能です。
事務工数が削減できる
従来の年末調整手続きでは、従業員に対して勤務先が沢山の書類を準備・配布する必要がありました。
書類の準備に人的リソースを裂く必要があっただけではなく、送付に掛かる郵送料金などのコスト面の負担もありました。
年調ソフトを導入することで、PCやスマホから従業員が自分で必要な書類をダウンロードすることができます。
また、作成した書類は電子メールで提出が可能です。
さらに、年調ソフトは自動入力に対応しており、控除額も自動計算です。
そのため記載事項の誤りなどが減少し、問い合わせ事務などの減少も見込まれています。
控除証明書などのデータには、発行者である保険会社などの電子証明が付与されています。
そのため、データの改ざんがあればシステムで検知できます。
さらに、年調ソフトでは自動入力をした後に記載内容を修正した場合、修正したことが分かるような仕組みを導入しています。
結果として、データの発行から提出までの改ざんがある場合には分かるようになっているので、控除証明書等のデータから自動入力されたものはチェックする必要がありません。
情報をデータ化して管理することで、人的リソースを他の事務業務に充てることができるだけではなく、コストカットも実現できるのは嬉しいポイントです。
年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)で作成したデータを利用して、年税額の計算などを行うためには、給与システムなどが年末調整申告書データの取り込みに対応している必要があります。
詳しくは、ご利用になっている給与システム等のホームページや担当者にご確認ください。
「控除ナビ」で提出漏れを防げる
年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)には、「控除ナビ」が搭載されています。
年末調整は、毎年状況が変わるので作成が必要な書類も都度変わります。
控除申告書の提出漏れをしてしまうと大変です。
「控除ナビ」を使えば提出漏れを防ぐことができます。
書類の記載方法などの説明の手間が省ける
年調ソフトは、手順に沿って入力することで自動的に申告書が作成されます。
また、控除判定機能があるので、従業員からの質問が減るのも嬉しいポイントです。
さらに年調ソフトを使用することで、一度入力した情報が複数の書類に横展開されます。
そのため、名前や住所を何度も入力する必要はありません。
昨年のデータをインポートで氏名などが反映されるので便利です。
保険料控除証明書などが自動で入力される
年末調整で最も手間が掛かるのが、保険料控除証明書などの転記です。
年調ソフトでは、毎年9月から10月ごろに保険会社から従業員に郵送されている書類を、データ習得してアプリにインポートすることができます。
また、保険会社からインポートを行うこともできます。
手入力が不要で、自動で正しく入力されるのでチェックが不要です。
控除額の入力
給与システムに年調ソフトで作成したデータをインポートする機能が実装されていれば、年税額の自動計算をすることが可能になります。
計算ミス防止のためのWチェックが不要になり、人的ミスを軽減できます。
マイナポータル連携でより便利に
マイナポータルと連携を行うことで、従業員はマイナポータルから控除証明書類を一括で取得することができるようになります。
従業員のマイナポータル連携方法
従業員のマイナポータルの連携には、事前にマイナンバーカードの取得と、マイナポータルの開設が必要です。
マイナカードの取得には申請から約1ヶ月程度掛かるので、事前に準備をしておくように呼びかけることが大切です。
マイナポータルの連携の手順は以下の通りです。
1)マイナンバーカードを取得する
2)マイナポータルサービストップから、マイナポータルの利用者登録を行う
3)マイナポータルの「もっとつながる」で、「保険料控除証明書・年末残高証明書」(e-私書箱もしくはMyPost)および「住宅ローン控除証明書」(e-Tax)のサービスと繋がる設定をする
4)マイナポータルと連携したサービスと、保険会社などの連携設定を行う
連携設定を実施した後に、「年調ソフト」での年末調整書類作成の際に「マイナポータル連携」を選択することで控除証明書データを取得できるようになります。
「保険料控除証明書・年末残高証明書」に関しては、e-私書箱もしくはMyPostどちらのサービスと連携する必要があるか保険会社によって異なるので、必ず確認しましょう。
年調ソフト導入時の注意点
年調ソフト導入時に注意したいことをご紹介します。
セキュリティレベルに応じたフローの制定が必要
年末調整手続の電子化をする際には、会社側が年調ソフトを導入し、マイナポータル連携のための環境を整備する必要があります。
セキュリティレベルは会社によって異なりますが、従業員が控除申告書の作成を行う機器の所有者や、作成のためのソフトウェア、控除証明書等データの取得方法によっていくつかのパターンに分けられます。
例えば、従業員にインターネット上のアプリケーションのダウンロードを禁止している場合には、給与担当者などがダウンロードを行い従業員に配布しましょう。
また、従業員のPCのインターネットの接続制限などを設定変更したり、私物のUSBメモリ等の使用を禁止している場合には取得した控除証明書などのデータをメールなどで送信できるようにするなどの対応が必要です。
従業員が自己のパソコン・スマートフォン等で作成する場合には、セキュリティ上の問題点は特にありませんが、申告書をメール等で提出する場合、控除申告書データは電子署名を付すもしくはパスワードをかける必要があるので注意しましょう。
従業員に対する周知が必要
年調ソフトを利用する際には、使い方だけではなく事前準備などの周知を行いましょう。
マイナンバーカードを取得しておくように周知する
先ほど触れたように、マイナンバーカードは申請から受け取りまで約1ヶ月程度の時間が掛かってしまいます。
以前実施されたマイナポイント付与時や繁忙期には、発行までさらに時間が掛かることもありました。
従業員にマイナンバーカードを取得しておくように周知しておくことが大切です。
保険料控除証明書等をデータで受領するよう周知する
画像出典元:国税庁「従業員の方への配付用資料」
保険料控除証明書等をデータで取得できる保険会社には、「マイナポータル連携で取得」と「保険会社のWebサイトから取得」の2つのパターンがあります。
令和3年10月現在、保険料控除証明書等をデータで受領できる保険会社は上記の通りです。
マイナンバーの取得と共に、保険料控除証明書等をデータで受領するように周知しておきましょう。
年調ソフトを活用して年末調整をスムーズに進めよう
年末調整関係書類は、必ずしもデータで提出を行う必要はありません。
しかし、ご紹介したように年調ソフトを駆使することで、従業員・雇用主双方にメリットがあり、計算ミスや入力ミスなどの人為的なミスを防ぐことができます。
この機会に年調ソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
事業計画書の書き方や採用・人事のポイントだけではなく資金調達など、創業時に知っておきたいノウハウがギュッと詰まった一冊です。興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。
また、「確定申告ガイド」では、書類作成の方法から、申告・納付方法、電子申告まで幅広くご紹介しています。ぜひこの機会にご活用ください。こちらも無料でのご提供です。
(編集:創業手帳編集部)