iPaaSとは?導入するメリットや主要製品をわかりやすく解説!
iPaaS(アイパース)はビジネスにおけるツール同士を統合するプラットフォーム。どのようなものかを解説します。
ビジネスにおけるデータ管理のツールには、自社で運営するシステムであるオンプレミス型と、共用サーバー上で利用するクラウド型があります。
複数のツールを利用していると、データが分散し一元管理が難しくなります。そこで注目されているプラットフォームが、iPaaS(アイパース)です。
今回は、iPaaSとはどのようなものか、利用する際のメリット・デメリットや実際の製品例を解説します。
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この記事の目次
iPaaSとは何か
こちらでは、iPaaSがどのようなものかについて説明します。
iPaaSの概要
iPaaSとは、英語で「Integration Platform as a Service」と称され、これを略したものです。
ビジネスにおける意味合いでは、複数のサービスを統合し管理するクラウド上のプラットフォーム全般を指します。
つまり、オンプレミス型とクラウド型含む様々なツールの連携により、それぞれのデータを一元化するサービスといえます。
iPaaSは、クラウド上で運用するプラットフォームであり、多様なツールを連携させることが可能です。
iPaaSと似た言葉との違い
・SaaSとの違い
SaaSとは「Software as a Service」で、インターネットを介して利用できるソフトウェア全般を指します。
・PaaSとの違い
PaaSは「Platform as a Service」で、インターネット上においてアプリケーションを動かすためのプラットフォームです。
・IaaSとの違い
IaaSとは「Infrastructure as a Service」で、インターネット上でシステム稼働のために用いるインフラ提供サービスです。
混同されがちなiPaaSとRPA
iPaaSと似た仕組みを持つツールとして、RPAが挙げられることがあります。
RPAとは「Robotic Process Automation」の略であり、PC内における一定の作業について、ソフトウェア(ロボット)によって自動化を図るものです。
RPAにより、作業の大幅な効率化や人的ミスの防止が可能になります。
ちなみに、iPaaSではAPI(Application Programming Interface)が公開されているツールにしか適用されませんが、RPAはAPIにとらわれず稼働できます。
・iPaaSとRPAの使い分け
iPaaSは、ツール間のデータの統合を自動的に行うために利用します。例えば、オンプレミス型システムの人事情報とクラウド型の給与計算システムの連携などです。
ただし、連携においては人的な設定作業が必要です。
一方、RPAは決まった単純作業を自動的に行うものであり、マンパワーの削減に役立ちます。
また、作業を反復する中で学習し、さらに効率を上げる機能を持ったものもあります。
作業効率の向上も自動的に行われるため、稼働に関して人的作業を行う必要もほぼありません。
iPaaSのニーズと役割について
ここからは、iPaaSがビジネスにおいてどのようなニーズに応えられるか、その役割について紹介します。
ビジネス業務の現状
では、現状においてビジネス業務に起こっている問題とは何でしょうか。
オンプレミス型とクラウド型のビジネスツールの並行
もともと、自社内サーバーでオンプレミス型のシステムを構築していた企業でも、クラウド型システムの利便性やセキュリティ性向上により、双方の利用を並行するケースが多く見られます。
総務省による「令和元年度 情報通信白書」のデータでは、クラウドサービスを導入している企業は全企業の6割以上にのぼり、導入企業は業務効率の向上などに効果を感じているとの結果が出ています。
しかし、クラウドサービスの台頭により、従来使用していたオンプレミス型システムとクラウド型システムに情報データが散らばってしまい、まとめ上げるのが困難になっているのが現状です。
これにより、紐づけるべきデータがうまく連携されず、余計に作業に手間を取ってしまいます。
各ツール連携の必要性
前述のような現状により、各ツールに登録されているデータを移行する作業が新たに加わってしまいます。
人事情報と給与計算システムも同様で、生産工程のデータとスケジュールデータなども別々になっていると、それぞれのデータを移行しなければ機能しません。
データが散乱している場合には、各ツールを連携させて自動的にデータを紐づけることが急務です。
iPaaSが果たすべき役割
ビジネス業務が抱える問題を解決するために、iPaaSが担う役割には以下のようなものがあります。
既存データの有効活用
従来利用していたオンプレミス型システムには、業務に必要な膨大なデータが記憶されています。
しかし、クラウド型システムに移行するにあたり、この膨大なデータをうまく活用できない場面が出てきます。
加えて、クラウド型システムにもデータは蓄積され、双方のデータ量を合わせると計り知れません。
このような事情から、せっかく記憶させたデータを放置して新しいシステムに移行するケースもよくあります。
そこで、システム間で蓄積されているデータの有効活用を行うのが、iPaaSの役割のひとつです。
SaaS双方のデータ共有、連携
インターネット上で稼働するソフトウェア、すなわちSaaSは、場所やデバイスなどを問わず操作・編集が行えるため、導入する企業は増加しています。
そして、導入するSaaSが多くなればなるほど、双方のデータ共有の必要性も出てくるはずです。
iPaaSは、複数のSaaSとの連携も可能にし、新たなデータ登録もiPaaSで行えば複数のSaaSに反映されます。
スマートなコミュニケーションの実現
例えば、メールアプリに届いた情報を共有したい場合、即座にチャットツールに反映できれば、コミュニケーションのスピード化を図れます。
また、作業報告をクラウド型ツールにアップロードし、完了報告をチャットツールに送信すれば、逐一進捗を確認する作業もなくなるでしょう。
これらのようなコミュニケーションを円滑かつ密にすることも、iPaaSを利用すればスムーズに実現します。
データの一元管理
取引先が複数に及ぶと、発注に利用されているツールもバラバラになり、受注データをまとめるのが困難になるケースがあるかもしれません。
バラバラになった受注データを一元化するのにも、iPaaSが役に立ちます。
そして、発注ツールと連携して受注データをまとめ、在庫管理や会計システムと連携し、それぞれに的確なデータを送ることも可能です。
テキストファイルを自動的に連携する
送付された発注書などのデータについて、テキストファイルとして保存し管理するケースもあります。ただし、この場合データを登録するには手動の作業が必要です。
しかし、iPaaSの利用によりテキストファイルを他のツールに自動的に連携させて登録できます。
また、発注書などの原本をそのまま帳票ツールに保存するような活用法もあります。
iPaaSのメリット・デメリット
こちらでは、iPaaSのメリットやデメリットについてあげていきます。
メリット3つ
1.様々な業務の効率化を図れる
自社で扱っているツールが複数に及ぶ場合、分散しているデータを自動的に一元化できることは、それぞれのチームや部署での業務を素早く効率化します。
ひとつのチームに限らず、複数のチームや部署でデータを共有でき、また、データの手入力のリソースを割くこともないため、余計な業務に手間取らずに済むでしょう。
2.各方面からの情報分析ができる
複数のチームや部署の枠を超えたデータ共有が可能になれば、それぞれの方面からデータ情報の分析も行えます。
統合されたデータの中から、他チームや部署でまとめられたデータを用いて、自チームや部署で別の角度から分析・比較を行うことも簡単であり、双方のスムーズな連携にもつながります。
3.新たなSaaSの導入・連携ができる
APIを公開しているSaaSであれば、すぐにiPaaSと連携させられるため、今後新たなSaaSを導入する時も安心です。
近年、ビジネスをより快適にするためのツールは次々にリリースされており、自社に必要な機能を持ったものも登場するかもしれません。
そのような時も、iPaaSを利用すれば既存のツールと新しいツールの特性を生かしながら、一元化されたデータを有効活用できます。
デメリットはひとつ
1.APIが公開されていないツールには使用できない
iPaaSは、それぞれのツールのAPIを連携させることで機能します。つまり、APIを公開していないツールは連携できません。
また、APIを公開しているツール同士でも、連携がうまく行えないケースも見られます。連携の可否は実際に利用しなければ判明しないため、iPaaS導入の際は試用期間があるものを選ぶのが良いです。
iPaaSの市場規模などの現状について
業務を格段に効率化させられるiPaaSが、ビジネスシーンにおいて利用されている市場規模の現状について見ていきます。
日本ではさらなる普及が必要
海外に目を向けると、日本に先んじてクラウドサービスが発展している国が多く、ビジネスにおけるiPaaSの導入率は高いほか、今後も普及が広まっていくとされています。
一方、日本では近年の社会情勢におけるテレワークの増加で、ようやくiPaaSが注目されるようになったため、まだビジネスシーンでの導入率は高くありません。
さらに、国内におけるiPaaS開発が発展途上である状態で、海外製品に頼るにしても日本語のツールに対応できないなどの問題もあります。
ただし、日本製のiPaaS製品も徐々にリリースされているため、今後はビジネスシーンでの積極的な普及が求められるでしょう。
iPaaSを扱う専門家の必要性
iPaaSは新たな形態のツールであることから、API連携などの既存の知識以外に、iPaaS専門の知識を備えたエンジニアが必要となる場合もあるかもしれません。
さらに、iPaaSを導入したそれぞれの企業では、活用方法も全く異なることがあり、マニュアル通りの技術では対応できない可能性があります。
そのため、専門のエンジニアは導入した各企業のニーズや業務の最適化を理解し、的確なコンサルティングを行う技術の需要も考えられます。
iPaaS導入の際のポイント4つ
iPaaSを導入する際は、以下にあげるような4つのポイントを押さえておくと良いです。
1.連携できるツールの数を確認する
iPaaSは、無限にツールを連携できるわけではなく、制限数が製品ごとに設定されています。そのため、まずは製品の連携可能なツールの数を確認します。
連携できるツールが多ければ使い勝手が良いことは確かですが、自社の規模や利用しているツール数によって、最小限で済むのであればその数に対応していれば十分です。
2.直感的な操作ができるかをチェックする
iPaaSを操作するにあたり、難しくわかりにくい操作では使い勝手が悪く、思うような効率化が図れません。
そのため、利用する時はできるだけ直感的な操作でスムーズに業務を行えるものを選びます。
さらに、操作性がITに疎い従業員にもわかりやすいものであることが必要です。
製品によっては、試用期間を設けているものもあるため、複数をお試しで使ってみて決めると良いでしょう。
3.日本でどのように導入されているのかを確認する
日本では、iPaaSの導入率がまだ低く、日本製のプラットフォームもこれから増えていく状態です。
海外製のiPaaSを導入する際は、日本の企業がどのように利用しているかの例を参照してください。
海外と日本では、ビジネスのシステムや習慣が異なるため、海外製品では自社のニーズと合わない可能性があります。
そのため、日本での導入事例を事前に確認するようにします。
4.使いやすいタイプを選ぶ
iPaaSには、主に以下のようなタイプに分けられます。そのため、製品が自社で使いやすいものかどうかを吟味することが大切です。
・テンプレートが存在するレシピ型
ツールの連携において、いくつかのテンプレート=レシピが用意されているタイプで、自社に合ったレシピを選べば難しい操作は必要なくそのまま活用できます。
・データ変換や抽出が可能な/ELT型、EAI型
連携するツール間で、データファイルの変換や抽出が行えるタイプをETL/ELT型、各データの連携のスピードや多様性に長けているのがEAI型です。
これらのタイプは、膨大なデータを素早く処理したい時に役立ちます。
・SOA(サービス指向アーキテクチャ)を使用するESB型
SOA(サービス指向アーキテクチャ)とは、独立したアプリケーション(サービス)を連携させることで、大きなシステムを構築するものです。
SOAによってそれぞれのアプリケーションをひとつのシステムとして利用できるのが、ESB型です。
主なiPaaS製品の例
以下では、リリースされているiPaaS製品の中で主なものを紹介します。
幅広いサービス対応で簡単な操作性
海外製品ではありますが、簡単な操作性で数多くのサービスと連携させられる有名な製品があります。
対応するサービスも、各種業務システムやコミュニケーションツールなどジャンルも多様です。
また、テンプレートが用意されているレシピ型であるため、難しい知識がなくとも連携設定ができます。
世界中で大きなシェアを占める代表格
世界各国において、iPaaSのシェアを大きく伸ばしている製品は、利用したい目的に応じて機能を選ぶことが可能です。
サービス連携やデータ統合のような機能を総合的に利用できることから、幅広いシェアを獲得しています。さらに、AIの搭載で大規模なデータをも一元管理できます。
日本初の製品で国内ツール連携に強い
日本で初めて開発された製品は、国内でのiPaaS普及に貢献しており、メリットは国内での利用率が高いツールを数多く連携できることです。
さらに、日本語の操作で簡単にツール連携を行えるため、使い勝手についても安心です。
直感的な操作とカスタム性がある
自分自身でツール連携を構築する製品ですが、連携設定はクリックを繰り返すだけで、直感的な操作で必要なツールだけを連携させられます。
また、自社に必要なツールだけをカスタムして組み合わせられるため、より効率的なシステムを構築できるのがメリットです。
高いセキュリティ性でサポートも充実
数あるiPaaS製品の中で、特にセキュリティが堅牢とされているものがあります。高いセキュリティ性により、金融機関での導入実績もあります。
また、最適なツール連携や使用方法のレクチャーなどのサポートが充実しており、安心して利用できるようです。
財務業務に長けたツール連携が可能
iPaaSの中でも、特に財務業務ツールに特化した製品があり、給与計算ツールや電子帳票ツール、会計ソフトなどとの連携で、財務業務を格段に効率化します。
さらに、豊富なレシピがあることから設定も簡単で、iPaaSを財務業務だけに取り入れたい企業にはおすすめです。
各種データを適宜変換して統合可能
ETL/ELT型の中でも、特に機能性が高いといわれている製品では、データ変換や統合がスピーディに行えて便利です。
各種クラウドサービスツールのほか、検索エンジンや分析ツールとの連携が可能で、多角的にデータを参照できます。
まとめ
iPaaSとは、ツール間のデータ連携によりビジネスをより効率化させるプラットフォームです。しかし、日本国内ではまだ普及率が低く、これからの成長が見込まれています。
比較的新しいサービスであるため、概要から理解する必要もありますが、実際に導入すると簡単な操作でデータの一元化などが実現するでしょう。
今回紹介したサービスも踏まえ、自社の業務にどのように役立てるか検討してください。
(編集:創業手帳編集部)