税金滞納に要注意!リスクや処分の流れ・対処法などを徹底解説
税金滞納には様々なリスクがある
税金の支払いは、個人にとっても企業にとっても避けて通れない重要な義務です。
しかし、資金繰りが厳しい、うっかり納期限を忘れていたなど、様々な理由で税金を滞納してしまうケースは少なくありません。
税金を滞納すると加算税や延滞税などのペナルティが課されるだけでなく、最悪の場合は財産の差し押さえや信用の失墜といった深刻な影響を招く可能性もあります。
そこで今回は、税金滞納によって生じるリスクやその後の流れ、さらに未然に防ぐための対策までを解説していきます。
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この記事の目次
税金を滞納するとどうなる?主なリスクとペナルティ
税金を滞納した場合、どのようなリスクとペナルティがあるのでしょうか。それぞれ発生原因や対象者、税率などが異なります。
ペナルティ名 | 発生原因 | 主な対象者 | 税率・内容の概要 | ポイント・注意点 |
---|---|---|---|---|
無申告加算税 | 期限内に申告しなかった場合 | 個人・法人共通 | 本来の納税額ごとに税率が異なる 50万円まで:15% 300万円まで:20% 300万円以上:30% |
「申告忘れ」でも課される。期限内申告が大前提 |
延滞税 | 納付が遅れた場合 | 個人・法人共通 | 納期限の翌日から2カ月以内:年率2.4% 2カ月を経過する日の翌日以降:年率8.7% |
利息的な性格。早期納付で軽減 |
重加算税 | 意図的な脱税(隠ぺい・仮装) | 悪質なケース | 申告書を提出している:原則35% 申告書を提出していない:原則40% 隠ぺい・仮装を繰り返している:45%または50% |
追徴課税の最重レベル。場合により刑事告発も |
不納付加算税 | 源泉徴収税(給与・報酬等)を納付しなかった場合 | 主に法人 | 自主的に納付した場合:5% 税務署からの通知を受けて追加納付をした場合:10%(源泉所得税が5万円以上だった場合に適用) |
給与・外注費の源泉所得税が該当 |
刑事罰 | 悪質な脱税行為 | 個人・法人共通 | 懲役・罰金(刑法・国税通則法など) | 実務上は稀だが、告発事例あり(特に重加算税と併用) |
無申告加算税(申告しなかった場合)
毎年確定申告を行い、所得税を納付する必要がありますが、期限内に申告を忘れてしまった場合、無申告加算税が課されます。
無申告加算税は税務調査を受ける前に、自分から確定申告をした場合は5%に軽減されますが、税務調査によって無申告を指摘された場合、納付税額によって税率が変わってきます。
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- 50万円まで:15%
- 300万円まで:20%
- 300万円以上:30%
なお、期限後申告であっても以下の要件を満たしていた場合には、無申告加算税は課されない可能性があるでしょう。
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- 申告期限後1カ月以内に自分から確定申告をしている
- 期限後申告にかかる税額、法定納期限までに全額納付している
- 期限後申告書の提出日前日から過去5年間に、無申告加算税や重加算税を課されたことがない
延滞税(納付が遅れた場合)
法定納期限に間に合わず、後から納税した場合、法定納期限の翌日から納付した日までの日数に応じて延滞税が課されます。延滞税で課される税率は以下のとおりです。
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- 納期限の翌日から2カ月以内:年7.3%と延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い割合
- 2カ月を経過する日の翌日以降:年14.6%と延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合
上記を具体的な割合に直すと、納期限の翌日から2カ月以内は年2.4%、2カ月を経過する日の翌日以降は年8.7%になります。
納付が完了するまでは延滞税が課せられ続けるので、気付いたら早めに納付するようにしてください。
重加算税(隠ぺいや仮装がある場合)
重加算税とは、税務調査を受けて意図的に事実を隠ぺいしたり、申告内容を仮装(わざと事実を変えること)したりすることで課される加算税です。
ほかの加算税に比べて悪質性が高いことから、原則35~40%の重いペナルティが課せられてしまいます。
また、重加算税を5年以内に繰り返した場合、通常の重加算税に加えて10%が加算されることになります。つまり、税率は45~50%まで増えてしまうということです。
さらに重加算税が発覚した場合、通常3年間分の調査で済むところが、最高7年分も遡られることになります。
そのため、延滞税やその他の追徴課税もプラスされてかなりの金額を支払わなくてはいけなくなります。
不納付加算税(源泉徴収税を納めなかった場合)
法人は給与などから天引きされた源泉所得税を、給与支給日の翌月10日までに税務署へ納付する必要があります。
しかし、源泉所得税の納付が遅れてしまった場合には、不納付加算税が課されてしまうので注意が必要です。
不納付加算税の税率は状況によって異なり、未納に気付いて自主的に納付を行った際には5%、税務署から通知が届き追加納付を行った際には10%が課されます。
ただし、この10%が適用されるのは源泉所得税が5万円以上の場合です。不納付加算税学が5,000円未満だと切り捨てルールによって納付が免除されます。
刑事罰(悪質なケース)
刑事罰は、特に悪質な脱税行為があったと判断された場合に科されます。
例えば、税務署職員からの任意調査では基本的に加算税などのペナルティが課されることはあっても、刑事罰まではいかないことがほとんどです。
しかし、調査に非協力的な対応を示したり、脱税の事実を隠したりした場合、国税通則法第128条第2号により1年以下の懲役または50万円以下の罰金となる可能性があります。
また、国税局査察部による強制調査が実施され、有罪判決となった場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金と、重い刑事罰を科される可能性もあるので注意が必要です。
税金滞納で起きる社会的・経済的影響は?
税金を滞納してしまった場合、滞納者には加算税だけでなく様々な影響が及ぶ可能性もあります。主にどのような社会的・経済的影響を受けてしまうのか、解説します。
財産の差し押さえ
税金の納付期限が過ぎると税務署から督促状が送付され、督促状が送られてきてもなお完納できない場合、財産を差し押さえられてしまいます。
所轄税務署の徴収職員により財産の調査が実施され、どの財産を差し押さえるか決定します。
差し押さえが決定した財産を勝手に売却・贈与することはできません。主に預貯金や給与、自動車、不動産、生命保険などが差し押さえの対象です。
また、貸付金などの債権で利息に対しても差し押さえの効力が及びます。
預貯金や給与、生命保険などは取り立てを行い、自動車や不動産は公売にかけて換価され、滞納分として充てられます。
融資・ローン審査の影響
税金を滞納しても個人信用情報に傷がつくことはありません。
しかし、住宅ローンなどのローン審査では納税証明書の提出が求められるため、滞納していたことが発覚してしまいます。
その結果、ローン審査に落ちてしまう可能性もあるでしょう。
また、融資の審査に通らない可能性も高まります。
例えば、新規で創業した人や中小企業に対して低金利の融資を提供している「日本政策金融公庫」では、融資を受ける際に所得税の納付書または法人税の納税証明書を提出する必要があります。
所得税の納付書や納税証明書の提出によって税金を滞納していたことが判明すると、財務管理に問題があるとみなされ、融資を受けられない可能性が高いです。
税金滞納から処分を受けるまでの流れ
税金を滞納してから実際に処分を受けるまで、どのような流れで行われるのか気になる人も多いかもしれません。そこで、税金滞納から財産差し押さえまでの流れを解説します。
1.督促状の送付や電話や訪問などでの催促
税金が納期限までに完納されなかった場合、税務署から督促状が送付されます。
督促状が送付されるまでの期間は各税務署や地方自治体によって異なるものの、国税の場合は50日以内、地方税の場合は20日以内に送られてくるのが一般的です。
本来督促状を送ってから10日経過しても完納されない場合、差し押さえの権利が発生します。しかし、すぐに差し押さえが行われるわけではありません。
督促状の送付後には電話や書面、直接訪問などを行って催促することもあります。
それでも連絡が取れなかったり、納付の意思が一向に見えなかったりする場合は、財産調査が行われます。
2.滞納者の財産調査
差し押さえを行う前に、まずは滞納者の財産調査を実施します。財産調査は官公署や金融機関、勤務先などで調査を実施し、どのような財産を所有しているか調べます。
この財産調査は法律に基づいて行われているため、滞納者本人から事前の了解を得なくても行うことが可能です。
3.差し押さえ
行政から連絡があったにも関わらず、まったく納付がされなかった場合は、財産の差し押さえとなります。
事前の財産調査によって調べた情報をもとに、滞納額に見合った資産を差し押さえていきます。
例えば、金融機関の口座を持っていたら取引停止となって預貯金が差し押さえられたり、勤務先の給料口座から毎月一定額が差し押さえられたりするでしょう。
場合によっては不動産や自動車などの資産を差し押さえられるケースもあります。
4.公売・差し押さえた財産の換価
不動産や自動車などの資産を差し押さえられた場合、国税局または地方公共団体によって公売にかけられます。
公売にかけられた財産は現金に換価され、滞納した税金に充てられます。
なお、公売は市場相場に比べて7~8割程度安い金額で落札されてしまうことが多いです。
自分で売却したほうが高値で売却できるため、差し押さえられる前に売却して未納分に充てたほうが良いでしょう。
税金を滞納しそうになった時の対処法
税金を滞納しそうになった場合、事前の対応によっては財産の差し押さえを回避できる場合もあります。ここで、税金を滞納しそうになった時の対処法を解説します。
税務署や役所に相談する
資金が不足しており、このままだと税金を滞納しそうと感じたら、早めに税務署や役所に相談することが大切です。
相談する際は現在どのような状況にあるのか、仕事をしていなかった場合は今後就職できる見通しはあるのか、などを説明します。
ここで虚偽の内容を話してしまうと、結果として差し押さえや公売になる恐れもあるため、注意が必要です。
延納や猶予制度を検討する
税金は基本的に決められた納付期限までに納める必要がありますが、様々な事情から支払いが困難になるケースもあります。
支払いが困難な人は延納や猶予制度を申請してみてください。
延納や猶予制度を活用することで、支払いの納期限を先延ばしにできます。ただし、一定の要件を満たしていないと利用できない場合もあります。
資金調達をして税金を納める
税金を納める分のお金が足りない場合は、資金調達をするという方法もあります。
融資を受けるのは難しいため、主にファクタリングや不動産売却、リースバックといった方法を使って調達するのがおすすめです。
特に不動産を所有している場合は、公売にかけられるよりも自分で売却したほうが受け取れる金額が多くなる可能性もあります。
事前に税金滞納を防ぐには?納税管理と節税のポイント
事前に税金滞納を防ぐためにも、納税管理を徹底することが大切です。また、節税対策を行うことによって、税負担を軽減することもできます。
そこで、税金滞納を防ぐための納税管理と節税のポイントについて解説します。
納税資金の準備と管理を徹底する
税金滞納を防ぐには、普段から納税資金の準備と管理を徹底することが重要となってきます。
税金ごとに納期限が決まっているため、それぞれいつまでに納めないといけないのかをチェックしておき、それまでに資金を準備して税金のため以外でなるべく使わないよう管理してください。
特に毎月決まった金額を積み立てておくと、滞納を防ぎやすくなります。
節税対策をする
税金滞納に陥ってしまうのは、納付税額の高さも関係しているかもしれません。
そこで、日頃から節税対策をしておくことで、税金の負担が軽減されて納付できるようになります。
節税対策といっても様々な方法があります。
例えば、10万円以上30万円未満の固定資産は、その資産を取得した事業年に全額費用として計上できる「少額減価償却資産の特例」が適用されます。
費用が増えればその分所得額を抑えられるため、節税につながるでしょう。
申告・納税の手続きを早めに行う
納期限の直前になって税金を納めるための手続きを始めると、思っていた以上に準備に時間がかかってしまい、期限内までに間に合わなくなる可能性があります。
このような事態を防ぐためにも、申告・納税の手続きや準備は早めに行っておくことが大切です。
まとめ・税金の滞納を防いで健全な経営を目指そう
税金の滞納は、加算税や延滞税などの金銭的なペナルティだけでなく、財産の差し押さえや社会的信用の低下といった深刻な影響を招きかねません。
悪質な場合には刑事罰に発展する可能性もあります。しかし、早めに税務署へ相談し、延納や猶予制度を活用すれば、リスクを最小限に抑えることも可能です。
日頃から納税資金の管理や節税対策を徹底し、健全な財務運営を心がけることで、税金滞納のリスクを未然に防ぎましょう。
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(編集:創業手帳編集部)