働き方改革関連法とは?改正された内容や施行スケジュール、対応方法を解説!

創業手帳

働き方改革関連法によって見直された主な法律の中で、注目すべきポイント11個を紹介します


テレワークやフレックスタイム制など、企業の働き方改革が推進される中、「働き方改革関連法」への社会的な注目度が高まっています。改正された内容を知らないと罰則などのペナルティを受ける可能性もあるため、早めに把握・対応しましょう。

今回は、働き方改革関連法について、改正された内容や施行スケジュール、中小企業が真っ先に進めた方がいいことなどを、栗城社会保険労務士事務所 代表の栗城氏に伺いました。

栗城 恵(くりき めぐみ)栗城社会保険労務士事務所 代表
2014年に社会保険労務士試験合格。2017年に栗城社会保険労務士事務所を開設。ベンチャー企業の社外人事部として、社会保険の手続きや人事制度の整備等を行う。留学経験を活かし、外資系企業や外国人労働者を雇う企業への対応にも積極的に取り組む。企業や大学での講師を務めるほか、社労士向け専門誌などの執筆活動も行う。プライベートでは2児の母であり、自身も仕事と育児の両立を通して現在進行形で働き方改革中。

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働き方改革関連法とは

働き方改革関連法とは、企業が働き方改革を進めるために「様々な労働法関連の法律を改正すること」を定めた法律です。

正式名称は働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律といい、働き方改革関連法によって改正された法律の数は、約36件になります。

改正された労働法のすべてを把握することは難しくても、以下で紹介する労働法が改正されたことを把握しておくと、おおまかなイメージが掴めるでしょう。

<改正された労働法の例>
  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働時間等設定改善法
  • パートタイム労働法
  • 労働契約法
  • 労働者派遣法

働き方改革関連法の重要なポイントと施行スケジュール

働き方改革関連法により、見直された主な法律のポイントは11個あります。
2019年4月から順次施行されています。

働き方改革関連法で中小企業が真っ先に進めた方がいいこと


働き方改革関連法によって見直された主な法律の中で、注目すべきポイントは11個ありますが、罰則があるもの・罰則がないものに分かれます。

また、罰則があるものの中でも「すぐに取り組めるもの」と「設備投資または社員の同意等が必要になるもの」があるので、働き方改革関連法で中小企業が真っ先に進めた方がいいことの順序について、下記のように整理しました。

<対応が必須で、すぐに取り組めるもの>
    ①年次有給休暇の確実な取得
    ②月60時間超残業に対する割増賃金引上げ
    ※罰則あり。設備投資や社員の同意等は不要
<対応が必須で、比較的に時間がかかるもの>
    ③労働時間状況の客観的な把握
    ④時間外労働の上限規制
    ⑤雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
    ⑥労働条件の説明義務
    ※罰則あり。設備投資や社員の同意等が必要
<企業の状況によって対応するもの>
    ⑦フレックスタイム制の拡充
    ⑧高度プロフェッショナル制度の導入
    ⑨勤務間インターバル制度の導入促進(努力義務)
    ⑩産業医・産業保健強化
    ⑪長時間労働者に対する面接指導対象の拡大

①~⑪について、それぞれ順番に説明していきます。

対応が必須で、すぐに取り組めるもの

最初に紹介するのは、罰則があるため対応は必須のものです。一方で、設備投資や社員の同意は不要のため、すぐに取り組める内容となります。

①年次有給休暇の確実な取得

年次有給休暇の確実な取得は「年10日以上の年次有給休暇がある社員は、1年間のうちに5日は年次有給休暇を取らないといけない」という内容です。2019年4月から施行されています。

具体的な対応の手順は、以下の通りです。
    1.現状の把握
    ※自社の年次有給休暇の付与ルールを確認する

    2.社員が5日以上の年次有給休暇を取得する方法を考える
    ※取得方法によっては社員の同意等が必要

    3.年次有給休暇の取得管理簿を作成する

    4.就業規則に定める

1.のステップで自社の付与ルールを確認した際、年次有給休暇を付与する日が「社員によってバラバラであること」が多くの中小企業で見受けられます。

それぞれの社員が「1年間のうちに年次有給休暇を何日取得しているか」を確認することが必要です。そのため、もし年次有給休暇を付与する日が社員によって違う場合は、付与日を月初1日などに統一することをおすすめします。

②月60時間超残業に対する割増賃金引上げ

月60時間超残業に対する割増賃金引上げは「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、中小企業も50%割増になる」という内容です。2023年4月から施行されます。

具体的な対応は、1カ月60時間を超える時間分の残業代については、50%以上の率で計算し、割増賃金を支払うことです。

1カ月60時間に含まれる時間は法定休日以外の休日に行った残業も含まれます。例えば、法定休日が日曜日の企業において、社員が土曜日に働いた場合、土曜日に働いた分の時間も「1カ月の60時間」の中に含まれるので注意しましょう。

対応が必須で、比較的に時間がかかるもの

次に紹介するのは、罰則があるため対応は必須のものです。さらに、設備投資または社員の同意等が必要となり、比較的に時間がかかるものです。

③労働時間状況の客観的な把握

労働時間状況の客観的な把握とは、個々の社員の労働時間を客観的に記録し、把握できるようにすることです。2019年4月から施行されています。

具体的な対応の手順は、以下の通りです。
    1.現状の把握をする(自社の勤怠管理方法の確認など)
    2.タイムカードやICカード、パソコンのログなどの勤怠管理方法を考える
    3.必要な設備投資をする(勤怠管理システムの導入など)
    4.記録した書類は3年間保存する

単に1日何時間働いたかではなく、始業時刻と終業時刻を確認することが必要です。

④時間外労働の上限規制

時間外労働の上限規制は「時間外労働の上限は原則として月45時間、1年で360時間以内」と時間外労働の上限が決められたという内容です。大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行されています。

臨時的な特別の事情などがあっても、以下のように上限が設定されています。

  • 単月100時間未満(休日労働含める)
  • 複数月平均80時間以内(休日労働含める)
  • 月45時間を超えられるのは年6回以内
  • 年720時間以内
具体的な対応の手順は、以下の通りです。
    1.36協定(※)の見直しを行う
    2.休日労働の実態を把握する
    3.すべての社員の毎月の労働時間を確認する
    4.時間外労働・休日労働を必要最小限に留める工夫をする

時間外労働を削減することは難しく、相応の時間がかかるものですが、時間外労働・休日労働を「必要最小限に留める取り組み」を早急に進める必要があります。

(※)労働基準法第36条にもとづく労使協定のこと

⑤雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)

同一労働同一賃金は「同じ企業で働く正社員・短時間労働者・有期契約労働者との間で、基本給や賞与、手当等の待遇について不合理な差を設けることが禁止された」という内容です。

ここでいう不合理とは、仕事の内容や責任、配置の変更範囲等が同じにもかかわらず、待遇に差があることを指します。大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から施行されています。

⑥労働条件の説明義務

労働条件の説明義務は「非正規労働者から正規労働者との待遇差について説明を求められた際に、その内容・理由について説明しなければならない」という内容です。大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から施行されています。

⑤⑥についての具体的な対応は、以下の通りです。
    1.社員の雇用形態を確認する
    2.待遇(賃金・福利厚生など)の状況を確認する
    3.待遇に違いがある場合は、違いを設けている理由を確認する
    4.不合理ではないと説明できるように文書を作成する
    5.就業規則等、規程類の改定をする

待遇差が不合理か否かは、裁判所の判例を参考に対応することになります。そのため、対応は必須ですが難しく、比較的に時間がかかります。

企業の状況によって対応するもの

最後に、企業の状況に応じて対応するものについて、改正された内容を紹介します。

⑦フレックスタイム制の拡充

フレックスタイム制について、清算期間の上限が1カ月から3カ月に延長されました。2019年4月から施行されています。

⑧高度プロフェッショナル制度の導入

高度の専門的知識を持っており、一定の高年収を得ている社員を対象としています。法律で定められた企業内の手続きを踏まえた上で、労働時間等の規定を適用しない制度です。2019年4月から施行されています。

⑨勤務間インターバル制度の導入促進(努力義務)

1日の勤務終了後から翌日の出社までの間に、9時間以上の休息時間を確保する制度の導入が努力義務となりました。2019年4月から施行されています。

⑩産業医・産業保健強化

産業医が「社員の健康管理等を適切に行うために必要な情報」を提供することが必要になりました。2019年4月から施行されています。

⑪長時間労働者に対する面接指導対象の拡大

医師の面接指導対象者について、「1カ月あたり月80時間を超えており、疲労の蓄積が認められる者」に範囲が拡大されました。2019年4月から施行されています。

助成金も活用して働き方改革を推進しよう


企業が働き方改革を進めるために活用できる助成金があります。
代表的なものは「働き方改革推進支援助成金」「業務改善助成金」「キャリアアップ助成金」です。

働き方改革推進支援助成金は労働時間を減らしたり、有給休暇取得を進めたりするために必要な取り組みの費用を助成します。

今まで紙のタイムカードで勤怠を集計していた企業がICタイムレコーダーを導入し、集計作業を効率化させ、かかった費用の一部を助成された事例があります。

業務改善助成金は、事業場(支社・営業所・店舗・工場など)の中で最も低い賃金の人の賃金を、最低1時間あたり20円以上引き上げて、生産性向上のための設備投資を行った企業に対して費用の一部を助成するものです。

例えば、直接テーブルまで行って注文を取っていた飲食店などが、テーブルごとにお客様自身が注文できるシステムを導入して「注文を受ける時間」を削減しつつ、社員の時間給をアップさせた場合などが該当します。

キャリアアップ助成金は、正社員と正社員以外(契約社員・派遣社員など)がいる企業で、正社員以外の待遇を改善したときに活用できる助成金です。キャリアアップ助成金は、全部で7つのコースがあります。

例えば、「諸手当制度等共通化コース」は、正社員に支給される手当のうち、契約社員に支給されていない手当がある場合において、契約社員にもその手当を支給するようにした際に活用できる助成金です。

このように、働き方改革関連法に対応するための各種助成金もあるため、該当する助成金などを活用しながら自社の働き方改革を推進していきましょう。

創業手帳の冊子版(無料)は、助成金・補助金に関する最新情報や、資金調達方法などを多数掲載しています。起業間もない時期や、各種助成金を利用して働き方改革を進める際のガイドブックとしてご活用ください。
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(監修: 栗城社会保険労務士事務所 代表/栗城 恵(くりき めぐみ)
(編集: 創業手帳編集部)

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