田中駆(現CAMPFIRE Startups取締役)「想い」から始まる仲間集めサービス”tomoshibi”ができるまで

創業手帳
※このインタビュー内容は2018年07月に行われた取材時点のものです。

株式会社TOMOSHIBI 代表取締役CEO(現CAMPFIRE Startups取締役)田中 駆インタビュー

(2018/07/02更新)

起業するうえで必要になってくる資源として、「ヒト・モノ・カネ」が挙げられます。もしかしたら、聞いたことがある方も多いかもしれませんね。

実は、その資源の中でも「ヒト(人材集め)」において、独自の視点からアプローチできるサービスが、2018年7月1日より始まりました。
そのサービスの名前は「tomoshibi」。「何かをやりたい」という「想い」を持つ人がプロジェクトを立ち上げ、その「想い」に共感する仲間を集める、いわば「クラウドファンディングのヒト版」とも言えるサービスです。

今回は、「tomoshibi」を運営する株式会社TOMOSHIBI 代表取締役CEOの田中 駆氏に、このビジネスを始めようと思った経緯や今後のビジョンについて、お話を伺いました。
(編集部・追記2021年4月)また同社は2021年4月にクラウドファンディング・プラットフォーム大手のCAMPFIREに事業売却し株式会社CAMPFIRE Startups取締役に就任しています。

田中 駆(たなか かける)
1992年 神奈川県横浜市生まれ。横浜市立大学起業戦略コースでマーケティングや商品開発について学び、新卒で福利厚生業界最大手である株式会社ベネフィット・ワンに入社。営業、経営企画、DX推進担当を歴任。入社1年目よりパラレルキャリアを実践。フリーのフォトグラファーとしての活動や、学生時代から活動を続けていたカンボジアとの関わりを本格化させる為、一般社団法人を設立、理事に就任。自身のソーシャル領域での活動等で感じた課題感から、仲間集めの自由化、プロジェクト型ワークスタイルの可能性を感じ、2018年より株式会社TOMOSHIBIを創業。2019年4月に株式会社CAMPFIREに事業売却し同プロダクトオーナーに就任。2021年4月より株式会社CAMPFIRE Startups取締役就任。趣味はカメラと海外旅行、特にカンボジア。

何かをやりたいという「想い」で仲間集め

ーまずは、「tomoshibi」の概要について教えてください。

田中私たちは、「tomoshibi」というプロジェクトチーミングプラットフォームを提供しています。これは、「何かをやりたい」という「想い」を持つ人がプロジェクトを立ち上げ、その「想い」に共感する仲間を集める、いわば「クラウドファンディングのヒト版」と思って頂けたらわかりやすいかと思います。

オーナーがプロジェクトを立ち上げ、なぜ、誰のために、何をやるのか。そしてどんな仲間が必要なのかを発信します。それを見て、想いに共感した人が仲間に加わりたいと手をあげることができます。

その他にも、「light」というSNS拡散型アイデアシートも開発中です。深く考えている訳ではないけれど、ちょっとした「思いつき」をシェアし、よりライトな仲間集め、共感集めのニーズに応えるしくみも用意しています。

ーこのビジネスを始めたきっかけはどのようなものでしたか?

田中:私自身、大学時代からNPO法人や社団法人の理事として、社会的な分野で活動を続けてきました。活動していくなかで、「仲間を集める」ことの重要性と大変さを身を持って感じてきました。
なかには、仲間がいない・足りないことで継続が困難になってしまう活動もたくさん見てきました。単純に、それがとても勿体無いと思ったのです。

その人や団体なりの「想い」があって始めた活動が、その「想い」を共有する仲間がいないことで継続できなくなっていく。これは、従来の経済的な報酬ありきの「採用」では解決できない課題だと感じました。

もちろん、提供する価値に見合った適切な報酬は払われて然るべきだと思います。ですが、想いやビジョンへの共感から集まった「仲間」は、経済的な報酬より尊いものです。そんな「想い」を起点にした仲間集めのインフラが、これからの私たちには必要だと感じています。

誰かの心に灯ったちいさな「ともしび」を、より大きくできるのは仲間だけ。その仲間を集めるしくみが「tomoshibi」です。

ー起業する際に、一番大変だったことはなんでしたか?また、それはどうやって乗り越えていきましたか?

田中:やはり、仲間集めです。
私はソーシャルな分野での活動は長く経験を積んできましたが、ビジネスやクリエイティブ、テクノロジーの知見は人並みに毛が生えた程度です。正直、1人で戦えるレベルではありませんでした。

だからこそ、同じ「想い」の元に集まる、それぞれ違うスキルを持つ仲間が必要でした。デザイナー、エンジニア、マーケター、イベンター、プロモーター。
現在ではそれぞれ「一芸」を持った仲間が集い、チームとなっています。

幸い私は人材が集まっている都心を中心に活動していて、積極的にイベントへの登壇等もしていました。そんな出会いの中で、「この人と一緒にやりたい」という人に声をかけて、この「tomoshibi」の構想、実現したい世界を聞いてもらい、仲間集めをしました。

おそらく、運よく共感してくれるメンバーが集まったと思いますが、やはり自分の足で動いて、話して、口説いて、という繰り返しでしたね。

ーこの事業をやっていて、嬉しかったことは何ですか?

田中:リリースしたばかりなので、まだまだこれからではありますが、リリース前の段階から様々な分野で活動する方々からの共感と応援を頂いています。

「こんなしくみが欲しかった」、「本当に仲間集めに困っていた」。
そんな声を聞くたびに、自分たちの向かっている先は間違っていない、きっと人の、社会のためになるしくみに育てていける、とより強く想いを持つことができています。それが一番嬉しい瞬間です。

思うままに挑戦できる環境をつくりたい

ーこの事業を通して、社会にどんな影響を与えていきたいですか?

田中:自分のやりたいことに挑戦する人を増やしたいと思っています。

「やりたい」という想いを、より自由に発信し、共感と仲間を集められるしくみをつくることで、まずは日本中にたくさんのプロジェクトを生み出していきたいですね。

何かを始めるときに必要になる資源として、「ヒト・モノ・カネ・情報」が挙げられます。この中で、おそらく「ヒト」だけが、従来的な報酬ありきのエージェントや広告が介在した、閉鎖的な領域だと感じています。

ここをインターネットの力で解放し、最適化する。それによって、より自由に、「想い」で人を集め、「想い」に人が集まる。そして挑戦する人を増やしていけると思っています。

同時に、「雇用」や「報酬」ありきではない、新しいプロジェクトへの関わり方をつくることで「ちょっとやってみたい、関わってみたい」という小さな一歩を後押しできるとも思っています。

経済的な報酬が発生してしまうからこそ、身構えてしまう。思うままに挑戦することができない。そんな現状も変えていきたいと思います。

ー事業を行っていく上で、大切にしている信念はありますか?

田中私の好きな言葉に、「道徳を忘れた経済は害悪であり、経済を忘れた道徳は寝言である」というものがあります。

私は起業家として、道徳=人のため、社会のためになるものをつくることを大切にしていきたいと思っています。もちろん、起業という選択肢をとった以上、しっかりと経済の伴うかたちをつくるのは大前提として。

ですが、経済的な価値を追い求めるのではなく、誰のために、何のためにやるのか。そこの部分を見失わずに、事業をつくっていきたいと思っています。

ジョインしたいと思ってくれる仲間にも、投資したいと思ってくださる投資家にも、この想いをご理解下さることを前提に、お付き合いをしていきたい。
どんなに経済的な成功を手にしても、そこだけは見失わない起業家でありたいと強く思っています。

起業家は確固たる「なぜ?」を持っていてほしい

ー今後の目標はありますか?

田中:まずは、日本一のプロジェクトチーミングインフラをつくることです。
具体的には、プロジェクト単位で、想いへの共感から働き方をつくっていきたいです。

私たちはその未来を見据え、人の働き方や生き方に大きなインパクトを与えるものに育てていきたいと思っています。

ー最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします!

田中:なぜ自分がやるのか?を自分の心に素直に考えて欲しいと思います。

スキルや経験が足りないなら仲間を集めればいい。経済的に不安なら資金調達をすればいい。ですが、根本の「なぜこれをやりたいのか?」という動機だけは、他人は与えてくれません。逆に言えば、起業家はその「なぜ?」さえ心の底に揺るぎないものとして持っていればいいのだと思います。

私はまだまだ何も成し遂げていませんが、確かに挑戦しています。
挑戦する中で起こる様々な問題にも、自分の中の確固たる「なぜ?」の動機で闘っていけます。
そのあなただけの「なぜ?」を見つけられれば、すぐにでも仲間を集めて行動して欲しいと思います。

何より、自分の想いをカタチにしていく起業家という仕事は本当に楽しいです。
難しいことは一旦置いといて、一緒に挑戦しましょう。

(取材協力:株式会社TOMOSHIBI 代表取締役CEO 田中 駆)
(編集:創業手帳編集部)



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