海外インターンで次世代リーダーを増やしたい タイガーモブ創業者インタビュー
CEOの菊地恵理子氏に話に創業ストーリーを聞きました
(2018/12/14更新)
「タイガーモブ」はアジアやアフリカ、南米諸国など、急成長している国を狙って海外インターンの機会を提供するサービスです。2016年4月の立ち上げから約2年半で、世界35カ国約250件のオファーを提供する規模に成長しました。
留学や海外インターンシップ、バックパックなど、自身の多彩でユニークな経験を活かしてタイガーモブを立ち上げた、菊地恵理子CEOに話を聞きました。
関西学院大学に在学中、中国、蘇州大学へ半年間留学し、その後上海外資系5つ星ホテルにて通訳・翻訳・VIP対応として半年間インターンシップを経験。また、韓国~中国~東南アジアをバックパッカーとして、3ヶ月で8カ国を周る一人旅kikutripを実施。新卒で株式会社ジョブウェブへ入社後、2年目で国際事業開発部を起ち上げ海外インターン事業「AJITORA」を始動。約600名の海外送り出し実績を経て、独立し、タイガーモブ株式会社を立ち上げる。EY新日本監査法人主催 EY Winning Women2018ファイナリスト選出。
事業独立→会社立ち上げへの方向転換
菊地:急成長するアジア新興国を中心に、アフリカや南米などで実践経験を積むことが出来る海外インターンシップの機会を提供しています。受け入れ先企業の規模や分野は多種多様。裁量権の大きいスタートアップやベンチャー企業を中心に、例えば事業そのものがユニークだったり、経営者の経歴が多様だったり、多国籍で構成されている企業でしたり、面白い!と判断したインターンのみを掲載しており、他国でのアウェイな環境で失敗・成功体験を積んで頂いています。
実際のインターン例としては
- ベトナム最大手、社員数500名の多国籍な人材企業でのインターンシップ
- シンガポールと日本、東南アジアを繋ぐ!海外進出支援を担うインターンシップ
- ケニアにて開始3ヶ月で単月100万円売上を達成した精鋭チームでのインターンシップ
などがあります。
また、世界最速で急成長した中国・深センや人口一人あたりのスタートアップ数世界一のイスラエル等、世界最先端都市を短期間で巡る海外研修も実施しています。
菊地:前職は人材会社のベンチャーに勤めていたのですが、2年目で海外事業部を立ち上げる機会をいただき、今の事業のもととなる海外インターン事業を始めました。既存の事業とは異なり、ビジネスモデルやウェブサイト、営業先の開拓やユーザーの確保など、右も左もわからないままではありましたが、少しずつユーザー数・売上が右肩上がりになっていき、良いユーザーさんたちも集まり、自分としては「なんて最高なんだ!」と満足をしていました。
ただ、ある日、“いけいけスタートアップ”と呼ばれるようなベンチャーの社長達が対談するイベントの運営に関わっていた時、スピード感もって事業を急成長させ、更に社会にインパクトを与えながら事業を発展させている姿を見て、純粋に「かっこいい!!」と衝撃を受けました。ふと、自分を振り返ると全然だな、と思いました。自分が携わっている事業について、なんて最高なんだろうと満足していたのは、自分の枠の中だけでの満足であって、全然まだまだだ、とそう痛感しました。
それをきっかけに、事業をスピーディに発展させていきたい、と思うようになり、“独立“という選択肢が芽生えました。
ただ、既存の事業を独立させることは、前職の企業も私も経験したことがありません。一体いくらで事業を買い取れば良いのか。買い取るとしても数億の資金は持ち合わせていないのでレベニューシェア(※1)か、プロフィットシェア(※2)にすればいいのか。するとしたら何%の利益なのか、といった交渉で約1年が経とうとしていました。
※1
レベニューシェア:支払い枠が固定されている委託契約ではなく、パートナーとして提携し、リスクを共有しながら、相互の協力で生み出した利益をあらかじめ決めておいた配分率で分け合うこと。
※2
プロフィットシェア:収入を得る窓口の参加者が事業にかかった費用を差し引いて、利益が残った場合にこれを一定の割合で分配すること。
そんなある日、タイガーモブの顧問であり元ソニーマーケティングやトイザらスの代表を務めていた小寺圭さんが「そんな長い交渉、もうやめてしまいなさい」と言って携帯電話をとり、いろんな方々に「安くウェブサイトを作れる会社はないか」、「法務関連手伝ってくれないか」など熱心に電話をかけて聞いてくれました。その姿を見て覚悟が決まり、既存の事業を独立させるのではなく、一刻も早く会社を立ち上げ、もう一度ゼロから創ろうと決意しました。ウェブサイトも顧客開拓も、ユーザー獲得も一からやろう、もう一度海外バックパッカー営業で開拓しまくろうと決意しました。
その思いを前職に伝えたところ、事業独立から方向転換して会社立ち上げへと向かう話が3日で進み、最終的にはウェブサイトやサービス名、システムは前職の企業に残し、そしてサービスも運営者が不在となるため、前職のサイト経由で成約に至った場合のみ、成果報酬でバックするという条件のもと、資本も株も全て独自でやらせてもらえることになりました。
顧客に関しては、ありがたいことに先方が良いとおっしゃって頂けたのであればもっていって良いと言ってくださいました。おかげで創業直後も売り上げが上がり、スムーズに立ち上げることができたので、前職の会社には本当に感謝をしています。
「コミュニティづくり」で他社と差異化
菊地:ミッションは「次世代リーダーの創出」です。人材のインバウンド・アウトバウンドを担うことにより、ユーザーにとって価値ある繋がり と機会を提供し、 激流の時代に即した人材・企業・国のグローバル化を促進します。
顧客のターゲットは、個人でご応募頂く中学・高校・大学生など学生中心ですが、最近は人生100年時代で大人も学び直しをすべきだという考えも出てきたことで「大人のインターン」として社会人の方々のご応募も増えています。
また、人材育成の一環として大手企業様や中堅企業様を中心に、内定者研修、新人研修、若手育成研修、役員合宿、学びある褒賞旅行等の企業研修もニーズが高まっています。
菊地:「コミュニティ」を重要視していることです。海外インターンや研修に行ったらそれで終わりなのではなく、海外インターン/海外研修経験者限定のコミュニティを運営しています。現在は中学生から社会人まで約800名の方が参加しており、海外インターンに行く前、インターン中、インターン後など様々な方が集結しています。挑戦の一歩を踏み出せるよう、心理的安心・安全の場を提供しています。
少し年が離れた人にアドバイスをもらうより、同世代の同じ境遇の人の実際の行動や言葉のほうが時に説得力がある時があります。
ベトナムでどれだけ頑張っても成果が出ない・・・、そんな時に「インドではこうしていますよ!」、「ガーナではこうしてますよ!」等とアドバイスを送り合い、切磋琢磨する、そんなコミュニティとして皆さんにはご活用頂いています。
最近は深センに行った方々を中心にドローン部が立ち上がり、参加者企画でドローン合宿などを実施していたりします(笑)。
コミュニティに終わりはなく、人生フルサポートのような感じなので、彼らの人生の適切なタイミングに適切な機会を提供できるようにサービスを拡大していければと考えています。
菊地:インターンシップが終わった後は帰国報告会というイベントが毎月5のつく平日に行われているため、そこにお越しいただき(遠隔の方はオンラインで参加可能です)、海外インターンで得たこと、参加前後の変化や今後のキャリアややりたいことについてプレゼンする機会を提供しています。そこで自分の行動や考えを振り返り、今後のことを改めて考え、必要あらば国内でのインターンの機会やその方にマッチする就職先の企業さん等を紹介しています。
また、2018年12月1日には海外に積極的に進出したり海外経験者を採用したいと思っている企業様6社をご招待して海外インターン経験者限定の就活イベントを実施しました。そこでも1人5分のプレゼンをして、横の繋がりや企業さんとの繋がりを作って頂いたりしています。
海外インターンは帰ってきてからが勝負です。
海外インターンでは、アウェイな環境でできないことが多い為、自分とは何なのか、なぜこう考えるのかなど、アイデンティティに向き合わざるを得ないことが多く、その葛藤や成功体験を通して、【自分はこれだ!!】という分野を見つけて輝く人を増やしたい。だからこそ、海外インターン後の繋がり=コミュニティ化に力を入れています。
社長の役割は「よりカオスな状況」を生み出すこと
菊地:思考の幅を広げ続けること、固定観念に囚われないことです。「え?!」や「は?!」、ハプニング=面白いこと、自分たちのキャパシティを広げていることなので、いつどんな状況でもプロセスを楽しむようにしています。
菊地:データの管理や文化作り、倍々成長です。
私たちが行っている海外インターンや研修は様々なデータを扱います。何かあってからでは大変なので、危機管理を含め、利用者がいつ渡航していつ帰国するのか、もともと何を考えていて、帰国後はその人の考えや価値観、スキルにどういう変化があったのか などをシステムで一元管理しています。データ一つの小さな漏れが大きな事故やトラブルに繋がりかねないので創業時から顧客管理システムを導入し、自動化・効率化を図っています。
また、組織の文化作りも意識をして進めています。事業の特性上、自分たちが挑戦していなければ説得力がないので、タイガーモブのチームメンバーも、常に妥協することなく挑戦し続けよう、という文化が醸成されています。
ガンジーの言葉に「あなたの見たいと思う変化にあなた自身がなりなさい」という言葉があるように、スタートアップなので事業や文化を作るのもメンバーの行動や発言次第。皆で一緒に会社創りをしながら、ユーザーと共に、虎のように勢いよく、未来に向かって突き進んでいます。
あとは売上の倍々成長です。「ベンチャーは倍々成長が当たり前」と先輩経営者にご助言頂いたので、そこは最低限やっていこうと皆で意識しています。
菊地:自分で創り出すプログラムもありますが、基本的にはメンバーに任せています。自ら機会を創れば、自分自身もそしてユーザーへの価値も拡大出来るので、やりたい!と思ったことが出来る余地があるようであれば、積極的に自ら機会を作り出しています。
また、「自由の裏には責任がある」ので、自ら機会を創り出したのであればそこに責任をもって最後まで取り組んでもらうように伝えています。
菊地:起業してから、「こんなに楽しいことが人生であったんだ!!」と思う日々なので、特に苦労した経験はないです。(苦労をしていないというか、苦労すること=面白い、楽しい)なので、苦労の記憶がありません・・・。例え報酬がなくてもやり続けられること、やること自体が報酬なのがこの仕事です。
菊地:No time for hesitation!(迷っている暇なんかない!)です。
考えたり悩んだりしているくらいなら行動します。
菊地:海外拠点をもつことなく、日本で海外に関連した事業を実施することと認識してお答えします。問題点としては、現地に実際行ってみないと真実が掴めないことがあることです。例えば、この企業を信頼して良いのか、というのもウェブ上の情報だけだと分からないことがあるのですが、現地のネットワークによる“うわさ”など、リアルな声を聞いたり、実際にお会いしたり訪問したりして受け入れ先として適切なのか等見極めが必要です。
一方、一度ネットワークを築くと、いろいろなところからいろいろな情報を掴むことができるので、サービスに満足頂いた企業の経営者様(現地企業だけでなく、日系企業の場合もあります)からインターンをご紹介頂けることも多く、その点はとても有難いです。
菊地:起業家(社長)の役目は「よりカオスな状況を創り出すこと」と教えてもらったことがあります。普通にしていると、無意識的に組織はより安定を目指して動いていくので、トップの役目としては組織変革や新しいことを作り出したり、状況に応じて組織に変化を起こしてよりカオスな状況にし 、良いこと悪いことでも危機感や好奇心、向上心をゆさぶるか、現状維持を打破する必要があります。ゴールは常に、枠(記憶)の外。だからこそトップが率先して脱皮し続ける必要があると思っています。私もまだまだ未熟者ですが、少しでも人として、そして組織として発展していけるよう精進します!
(取材協力:Tiger Mov/菊地恵理子)
(編集:創業手帳編集部)