TDnetとは?仕組みや内容・必要性をチェック

創業手帳

TDnetの意義と目的は何か?株主に会社情報を開示できるシステムとは


TDnetとは、東京証券取引所が運営するシステムで、株主に会社情報を伝えるために使われます。
TDnetを使うことにより、効率的に会社情報が開示できるだけでなく、報道機関や公衆への開示、資料のデータベース化など、総合的に行うことが可能となります。
投資家に重視されている仕組みなので、企業でIR業務を行う際には外すことができません。

株式会社の経営者は、TDnetの仕組みや必要性、使い方を把握し、IRに生かしましょう。

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TDnetとは

TDnetとは、東京証券取引所が運営する適時開示情報伝達システムです。「Timely Disclosure network」の略で、上場企業が適時開示を行う際に利用します。
上場会社が「有価証券上場規程」に基づいて開示を行う場合には、TDnetを使うことが義務付けられており、任意で行う際にも使用することが推奨されています。

上場企業の経営陣やIR関連の担当者は、TDnetの役割や使い方を理解しておくことが必要です。
また、株主の求めていることを知ることでより効果的な使い方につなげていきましょう。

適時開示とは

TDnetで行われている「適時開示」とは、タイムリー・ディスクロージャーと呼ばれる証券取引のルールです。
株式上場した企業が求められることで、有価証券の投資判断に大きく影響を与える重要な情報を公表することを示します。
情報の公表には正確性と速報性が重要です。この二つを重視して適時適切に公表することを「適時開示」と言います。

適時開示は以下の3つの項目があり、上場企業はこれらの情報の開示を適時行っていくことが必要です。

・決定情報
企業が意思決定した情報

・発生情報
企業の意思とは関係なく発生した火災や大株主の移動など

・決算情報
売上げや利益などの決算内容

適時開示情報閲覧サービスとは

適時開示情報閲覧サービスとは、TDnetで開示された企業の重要情報を閲覧できるサービスのことです。
東京証券取引所が構築したサービスで、企業に重要な変化が起こっていないかタイムリーにチェックできるようになっています。情報の掲載期間は土日祝日を含む31日です。

EDINETとTDnet の違い

TDnetと少し似ているシステムにEDINETというものがあります。どちらも会社の業績や活動内容を見れるもので、株主・投資家にとって重要な情報を開示するものです。

ただし、この二つのシステムはそれぞれ独自に運営されており、運営者や開示する書類が異なります。

運営者

TDnetは東京証券取引所の運営しているシステムですが、EDINETは金融庁のものです。EDINETは金商法を根拠として法定開示するために作られています。

開示書類

開示書類は、EDINETが有価証券報告書、TDnetは決算短信などです。有価証券報告書は、金商法の規定によって金融庁へ提出することが必要とされています。
一方、決算短信は東京証券取引所が投資家への開示のために提出を要請している書類です。

速報性

TDnetとEDINETでは、どちらかと言うとTDINETの方が「細かい情報でもいいから少しでも早く提供する」といったイメージがあります。
ただし、二つの差はそれほど大きいものではありません。また、開示スピードは提出者にもよって異なります。

閲覧できるタイミング

TDnetの情報がアップロードされ、閲覧できるようになるタイミングは、企業が指定できます。
EDINETの場合には企業が掲載し、ボタンを押したタイミングで即自的に公開することが可能です。

保管期間

TDnetの情報の保管期間は、5年となっています。EDINETの情報は、書類に応じてそれぞれに金商法で定められた期間を保管する決まりです。
決算書ならば5年ですが、四半期報告書の場合は3年と、書類によってばらつきがあります。

株価に影響を与える情報をいち早く見られる

EDINETの有価証券報告書も株主にとって重要な情報となりますが、どちらかと言えばTDnetの扱う情報の方が速報性が高く、投資判断に影響を与えるのに必要最低限の内容を得られると言えます。
適時開示で得られる情報は決算短信と呼ばれるもので、これは情所企業が決算後、初めに開示する情報です。
また、それ以外にも業績予想の修正や増資、損害の発生など、様々な重要情報が速報的に開示されます。

英文資料配信サービス

TDnetでは、海外投資家へ向けての英文資料配信サービスの取り扱いも行っています。上場企業と海外投資家のとコミュニケーションを強化するためのものです。
英文資料を登録することで、情報ベンダーを通して海外投資家への情報提供を行いやすくなります。

TDnetで掲載される情報


TDnetで公開、掲載されている情報の種類について解説します。上場企業が決算のタイミングや経営状況の変化に応じて開示することの多い情報を理解しておきましょう。

決算説明資料

TDnetの公開情報として、どの企業でも必ず定期的に掲載するのが決算説明会資料です。
決算説明会資料は、決算内容や事業の状況を説明する資料であり、決算説明会などで投資家向けに説明するために作成されます。

決算の概要と結果、反省点が書かれ、経費や利益の構成、売上げの推移、前年比などの数字が記載された資料です。
また、次年度の見通しや今後の中期経営計画といった、将来の予測や計画なども提示されます。

これらの情報からは、今期の経営成績を振り返り、今後の展望を知ることができます。投資家が知りたい情報を網羅しており、投資判断に役立つ内容です。

定款の一部変更に関するお知らせ

定款の一部変更に関するお知らせも、企業の経営を大きく揺るがす可能性のある重要な情報です。

定款は企業のルールブックのようなもので、企業の根本的な決まりを定めた書類です。
簡単に変更することはできませんが、途中で大きく経営方針を変える必要があった場合には、株主総会での承認決議といった手順を踏み、一部を変更することもあります。

定款の変更内容には、取締役の任期変更、事業目的の追加、変更といった、企業経営に関わる変更や追加などがあります。

組織変更及び人事異動に関するお知らせ

組織変更と人事異動のお知らせも、企業の経営に影響があり、投資家の関心を集める情報です。
事業展開に合わせて、組織構造を変えることで、企業は大きな転換期を迎えることもあります。
また、人事異動も新しい経営方針などが生まれる可能性を秘めており、今後の事業の方向性に影響を与えると考えられます。

お知らせは、新しい事業部の発足や新会社の設立、事業部の統合や廃止、移管などが記載される資料です。

役員人事に関するお知らせ

役員人事のお知らせは、役員の人事異動について簡単に報告するための資料です。
役員名と役職の変更が書かれています。新任の取締役候補については、略歴などが記されます。

執行役員の選任に関するお知らせ

選任された執行役員の情報が記されたお知らせです。執行役員とは、経営陣の決定した方針に市が従って事業の運営を担うポジションです。
取締役ではありませんが、事業運営のトップとして責任があります。

公認会計士などの異動に関するお知らせ

公認会計士の就退任の情報を記載したお知らせです。就任する公認会計士の概要と退任する公認会計士の概要が記されます。

当社社員の不正行為について

社員の不正行為は、コンプライアンス違反にあたり、企業のイメージダウンを避けられない事態となります。
不正行為が発覚した企業は、不正行為の内容を明らかにして、その社員への処分・対応を記した文書を出します。
誠意を持った報告を行うのはもちろんのこと、今後の不正行為予防の対策を打ち出すことが必要です。

剰余金の配当に関するお知らせ

株主総会の決議を経て、利益剰余金を配当する際にもお知らせを出します。お知らせには、配当金の決定額だけでなく、前期の実績や配当金額の理由などを掲載します。

資本準備金の額の減少及び剰余金の処分に関するお知らせ

資本準備金や資本剰余金の額も、資本金と同様に経営に影響を及ぼすものです。減少や処分の理由や目的、金額や振替先などの処分方法を記載し、投資家に広く伝えます。

株式分割及び株式分割に伴う定款の一部変更に関するお知らせ

株式の分割とそれに伴って必要となる定款の一部変更についての報告です。株式分割の目的や分割の日程、分割前後の発行株式の総数の推移といった、詳しい情報を掲載します。
株式を分割し、株式総数が変わると、定款に記された発行株数も変更が必要です。そのため、同時に定款の一部変更のお知らせも行います。

新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ

新株式発行及び株式の売出しは、増資を目的に行うことが多いものです。分割では新しい資金の流入は見込めませんが、新株式を発行することで資金を増やすことができます。
新株式発行によって増資することで、企業の成長を進めることができますが、株式が希薄化して株価が下落する恐れもあります。

ストック・オプション(新株予約権)発行内容確定のお知らせ

取締役や従業員が、あらかじめ定められた金額で会社の株式を購入できるのがストックオプションです。
株価にも少なからず影響を与えるもので、発行株数の増加によって下落する可能性もあり、反対に上昇することもあります。

企業が行うTDnet掲載作業


企業がTDnetでIR活動を行う際には、掲載作業が必要です。
TDnetへの資料掲載は難しいものではありませんが、掲載ミスを防ぐ体制づくりも行わなければいけません。
正しい手順を理解し、安全に資料の共有やアップロードを行いましょう。

スケジュールの確認

開示項目の必要性を検討し、開示が決まったら、TDnetへの掲載と開示時期などのスケジュールを確認します。TDnetでは、指定した日時で開示が可能です。

開示資料の作成

TDnetへ掲載する資料を作成します。様式例を利用して作成し、登録用のPDFファイルにしておくことが必要です。
公開前の資料は機密情報でありながらも、社内外での共有や連携が必要なため、ミスに注意しましょう。

適時開示の手続き

資料を適時開示する手続きを行います。TDnetへ登録し、さらに適時開示資料閲覧サービスへ掲載することが必要です。

また、IR担当部署以外がサイト更新を行う場合、情報の取違いが起こらないように責任者が公開まで見届け、誤りがないことを確認することも必要となります。

自社IRサイトへの掲載

TDnetへ掲載した情報は、平行して自社サイトへも掲載することが必要です。

TDnet開示状況を確認できるサービス


TDnetで開示された情報を確認するには、以下のサービスが利用できます。それぞれのサイトで閲覧ができますが、利便性の面から使い分けを行うことも可能です。

東証ホームページ上場会社情報サービス

東証ホームページ上場会社情報サービスでは、開示日を含めた31日分の情報を見られます。

報道機関・情報ベンダー

報道機関・情報ベンダーでも情報を閲覧可能です。ロイターやブルームバーグといった世界的に有名な報道機関や日本のアイフィスジャパンやフィスコなどがあります。
リアルタイムで金融情報が発信されています。

TDnetDBS(データベースサービス)

保有されている5年分の情報を閲覧するには、有料サービスのTDnetDBSがあります。

配信サービス

メール登録を行っておくと、希望の企業情報を配信してもらえるサービスです。
登録無料のサービスには、IRストリート(IR STREET)や大和IRモニタークラブなどがあります。

まとめ

TDnetは、企業情報を発信するシステムです。投資家に対して企業情報を適時伝えられるため、IR活動に役立ちます。

TDnetへの掲載は、上場企業にとって欠かせない作業であり、決してミスは許されないものです。
公開前の情報は機密情報も多いため、情報共有や運用など、安全な仕組みを作りましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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