カンブリア宮殿出演「石灰石から新素材」”LIMEX”で世界へ。 40億円調達の超注目企業社長に取材!
株式会社TBM、山﨑敦義社長インタビュー
(2016/07/19更新)
2011年8月に創業した株式会社TBMは、約40億円の出資、国からの補助金を受け、現在急成長中の企業です。紙やプラスチックに替わる、石灰石とポリオレフィン樹脂で作る新素材、LIMEX(ライメックス)で世界と勝負しようとしています。ゼロから大規模な産業を生み出そうとしている山﨑敦義代表に、創業手帳編集部が取材しました。
株式会社TBM代表取締役社長。1973年生まれ。中学卒業後、大工に。20歳で中古車販売業を起業後、複数の事業立ち上げる。2011年8月にTBMを設立し、LIMEX(ライメックス)を開発。2014年ニッポン新事業創出大賞「復興賞」、Job Creation 2015「特別賞」、Japan Venture Awards 2016「東日本大震災復興賞」受賞。
水や木、石油も減らせる革命的素材”LIMEX”
山﨑:石灰石とポリオレフィン樹脂で作るLIMEX(ライメックス)で、紙やプラスチックを作っています。ライメックスからつくる紙は、水も木も使わずに製造することができます。ライメックスからつくるプラスチックは、ポリエチレンやポリプロピレンのフィルムやシートにも代替可能です。
ライメックスを使うことで、 水や木材、石油の使用量を減らすことができます。物凄くエコな素材ということですね。
ライムストーン(LIMESTONE)というのが石灰石で、Xは無限の可能性とかいろいろなアプリケーションに化けますという意味です。この二つをくっつけて、LIMEXと名づけました。
台湾からの輸入事業としてスタート
山﨑:僕は大阪の岸和田というところで育ちました。中学校を出てすぐに大工になり、20歳のときに中古車屋を起業しました。それからいくつかの事業を始めたり譲渡したりといろいろなことがあったのですが、34歳の時にストーンペーパーと出会いました。
山﨑:台湾のメーカーが作っていた石灰石とポリエチレンを原料とする新しい紙ですね。どこにでもある石から紙を作る。
きっかけは、知り合いの人に久しぶりに会ったことですね。石でできた紙の名刺をくれて、「こんなのあるんだけど知ってる?」「なんですか、これ。」というのがスタートです。
当時は世の中的にエコがどうのということが言われ始めていたので、「これは面白い素材だな」と思いました。知り合いを通じて台湾のメーカーに交渉しに行って、日本に輸入させてくれるようにお願いしました。
山﨑:台湾のストーンペーパーは売れませんでした。売れるんじゃないかと思って輸入したら苦戦したというのが実態です。品質と価格と重さがぜんぜんダメだったんです。このままでは、エコフレンドリーでニッチな製品として使われることはあったとしても、広く素材として使われることはないだろうと。
品質向上のため、自社開発を開始
山﨑:自分にとっては大変意義のある素材でしたし、もともと中古車屋をやっていたこともあって、自分は形のあるものを売っていくほうが向いていると思いました。
日本に工場を作ると意志決定したのは2010年です。
山﨑:輸入して数年経って、台湾の紙の品質が上がらなかったからです。日本国内で製造を開始すれば、品質を向上させる工夫も自分たちでできると思い、自社開発をスタートさせました。
山﨑:目処というより、自信があったと言ったほうがいいですね。何年か台湾の紙を取り扱っていく中で、いろいろなことを調べていましたので、たどり着けるだろうという自信がありました。特許も、自分たちで新しく申請しました。
小さく始めて大きく育てる
山﨑:10人に満たない人数で事業をやっていたので、開発に関わるのはうちの会長と、もう2人ほど。他に1人、2人サポートするメンバーがいただけです。そこからスタートしていきました。
山﨑:そうです。大学とかいろいろな施設を借りていました。
紙を作るといってもまずはサンプル作りからです。本格的なプラントを作るためには何十億もの資金が必要ですから。
最初は何度も試作を繰り返して、サンプルを作り、特許を固めます。作れるという自信を持ったら、投資家や資金の出し手に安心してもらうために、最初は小さな機械メーカーと一緒に開発します。そこで実証評価をして、ここまでできたというものを持って今度は大きな機械メーカーに行きます。
そこでいろいろな試験をやって、作れるとなった時に今度は資金調達に動くわけですね。
信用をもとに資金を調達する
山﨑:シンボリックなお墨付きが信用につながりました。具体的には経済産業省から採択された補助金の獲得ですね。
投資も同じです。個人で意志決定ができる目利きの鋭い人、有名な人がおられます。ベンチャーキャピタルもそうですね。こういう人が、あるいはこういう会社がお金を入れていたら、そうとう調査をしているはずだから大丈夫だろうという信用になります。
山﨑:実績もそうですが、とにかく、シンボリックなクライアントや投資家を見つけていくことが大事ですね。そのための準備を整えるほうがあとの展開は早いと思います。
原点回帰したときに踏ん張れる”社会的意義”がある企業に
山﨑:やっていることが、わかりやすく「世の中の役に立っていく」ということですね。LIMEXのインパクトの大きさは、僕の中で勝負をかけるに値するものでした。
僕のバックボーンは中学校を出て大工さんをやっていたことです。そんな僕がグローバルで大きな挑戦ができる、LIMEXが広がり、人の役に立つというのはすごいことです。なんとしても自分でやりたかったという気持ちはあります。
山崎:ありがとうございます。
ポジティブなことばかりではなく、40億円もいろんな方からご出資いただいて、ダメだった時はそれだけ怒りも恨みも買わなければいけない。それはもう恐ろしい責任とプレッシャーです。でも、プレッシャーとか責任とか期待を背負えるような立場になれたというのは、やはり光栄なことですよ。
山﨑:有り難いことです。
うちはまだそのフェーズではありませんが、創業時ほどストイックにやらなくても会社が回っていくようになった時、なんのためにこの事業をしたいと思ったのか、振り返ることが大切じゃないかと思いますね。
僕の場合、やり遂げたときに喜んでもらえる仲間がたくさんいる。そのことをリアルに自分の中で握っておくことが、いざというときに踏ん張る大きなガソリンになると考えています。
今後の展開について
山﨑:とにかく日本の国内で技術開発をしっかりしていきたいです。
日本は水資源も豊富ですし、あまり環境に対して危機感を持っていません。でも、グローバルで見たら、これから人口が増えて産業が進んでいく国がたくさんあるわけです。あるいは、水資源や木材資源に乏しい国もあります。
我々の研究した技術とか素材が、その国、その国で製造されていくことで、そこに産業ができて雇用が生まれる。それが大きくなればなるほど資源の枯渇に貢献していける。世界中に産業と雇用を作る。それをどれだけのスピードで広められるかというのがここ10年の勝負だと思っています。
理想は高く、現実は泥臭く
山﨑:もう20年くらい経つから創業当時の気持ちはわかりませんが、とにかく頑張れ、かな。「理想は高く、現実は泥臭く」というのを大事にしてもらいたいなと思います。
一緒に感動できる仲間や関係者をどれだけ増やせられるかは、会社の人格形成を行っていく上ですごく大事なことです。経営者の方は、そういう人をたくさん増やしていっていただければと思います。
(取材協力:株式会社TBM/山﨑敦義社長)
(編集:創業手帳編集部)