創業融資を銀行で受けることはできる? 資金調達のポイントを徹底解説
創業融資で資金調達する方法についてメリット・デメリットなどを解説します
起業や独立したばかりの時には、営業を行うための資金が必要です。大きくは運転資金と設備資金に分けられますが、いずれも起業・独立時にはなくてはならないものです。
その時に、創業融資を受けて資金調達をする方法があります。融資といえば銀行が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
今回は、民間の銀行またはそのほかの融資方法や、それぞれのメリット・デメリットなどを解説します。
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この記事の目次
創業融資は民間の銀行で受けられるのか
起業や独立をする際には資金が必要です。その際に利用できる手段のひとつとして、創業融資を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。
しかし、創業融資は、民間の銀行から受けることは難しいとされています。
一般的に、金融機関からの融資を受ける場合は、会社の事業内容や業績の実態が明らかにされた上で、それに基づいた審査が行われます。
起業・独立したばかりではそれらの情報が足りないため、銀行側が融資を渋るケースが少なくありません。
また、大手民間銀行ではそもそも融資をするために、創業から数年経過していなければならないといったルールを制定していることがほとんどです。
創業融資を受けやすい民間銀行とは
上記に示したとおり、民間の大手銀行では創業融資を受けられないと考えたほうが無難です。しかし、民間銀行でも創業融資を受けられるケースはあります。
創業融資を受けやすい銀行がある理由とは
以下に紹介する民間銀行では、起業・独立したばかりの人をサポートする体制を整えているところが多いため、創業融資も受けやすいと考えられます。
地域に密着する地方銀行
大手銀行ではなく、地域に根ざすサービスを行っている民間の地方銀行では、創業融資を受け付けていることがあります。
地方銀行は大手銀行とは異なり、それぞれの地方に本店を構えて、地域のニーズに応えるべく小口取引きも積極的に行っています。
そのため、起業して間もない会社のように大きな担保がない場合でも、門前払いされることは考えにくく、相談に乗ってくれるケースが多いようです。
事業発展を支援する信用金庫
信用金庫は、地方銀行と比べると地域に貢献する特色をより濃く持った金融機関で、地域全体の発展を掲げています。
このような理由から、起業・独立したばかりの人や会社に対しても好意的で、事業発展を後押しするために創業融資を積極的に受け入れてくれます。
一方で、信用金庫の特徴である地域貢献の意味合いから、信用金庫の管轄内に事業所が所在している場合のみの取引きや、会員への登録が必要です。
地方銀行から融資を受けるメリット・デメリット
地方銀行のメリット
大手銀行で審査に落ちても問題ない
もし、民間大手銀行での審査に落ちてしまったとしても、地方銀行でそれを問題視されることはあまりありません。
創業に関して、地域の発展に貢献できる会社であると判断されれば、創業融資も進んで行ってくれることが期待できます。
金利が比較的安い
金利面については、大手銀行よりは劣るものの比較的低金利で融資を受けられます。
金利の目安としては、だいたい年1%強~ですが、地方銀行ごとに金利は異なるため、融資の相談の際に確認するようおすすめします。
ある程度まとまった金額の融資も可能
地方銀行は小規模な金融機関ですが、株式会社であるため資本金は十分に備えています。
そのため、創業融資として数千万~億単位でまとまったお金が必要な時も、相談に応じてくれるケースが見られます。
長期ローンの申込みもできる
地方銀行では、比較的長期の借入期間を設定している金融商品が多く存在します。その期間は数十年単位に設定されていることも多くあります。
これにより、返済計画を立てやすくなり、起業・独立当初の資金繰りもスムーズになる点がメリットといえるでしょう。
地方銀行のデメリット
他地域への事業展開がしづらいことがある
事業の拡大で他地域への展開を考えている時、地方銀行をメインバンクとしていると、信用度が多少落ちることが危惧されます。
また、地方銀行はあくまで地域の事業発展を目的としていることから、他地域での事業までフォローできないことがあります。
すでに事業を行っており、新しい事業を起こす場合は、事業が大きくなってきた頃を見計らって、随時大手銀行との取引きも行いながら経営を行っていくのがおすすめです。
信用金庫から融資を受けるメリット・デメリット
信用金庫のメリット
銀行より融資を受けやすい
信用金庫は、地域の会員とともに相互で支え合う協同組織の形態を取っています。つまり、利益優先の民間銀行とは、基本的に経営の質が異なります。
会員と対等の立場で経営を行う信用金庫は、地域発展をサポートするための創業融資は惜しみません。
そのため、銀行よりも審査基準が厳しくない傾向にあり、融資を受けやすいといわれています。
信用度が低くても長期的に取引きができる
信用金庫は、前述のように利益を追求する組織ではないため、融資先の経営悪化のリスクがある場合でも、支援を続けてくれることがあります。
民間銀行では、融資先の経営リスクが大きいと融資を渋るなどのケースが見られますが、信用金庫では反対にサポートを受けられることがメリットです。
信用金庫のデメリット
地方銀行よりも対応エリアが狭い
信用金庫は、サポートできる地域がかなり限定されています。
そのため、他地域への事業展開への支援は地方銀行よりも厳しく、場合によってはサポートを受けられなくなる場合もあります。
金利が若干高い
地方銀行と比較しても、信用金庫では金利が多少高い傾向にあります。
目安としては、年4%前後は見ておかなければなりません。融資の申込みをする際には、返済計画において金利分も良く検討する必要があります。
まとまった融資を受けにくい
株式会社として資本金を有している民間銀行とは違い、信用金庫は会員からの出資金で経営を行っています。
そのため、融資額も限られており、まとまった額の融資は受けにくいのが現状です。
事業規模の拡大に応じてメインバンクを変えることも視野に入れておくようおすすめします。
民間銀行から融資をより受けやすくするには
民間銀行から融資を受けやすくする方法はあるのでしょうか。
信用保証協会を利用する
民間銀行との取引きは、融資先の信用情報が大きな位置を占めます。
そこで、信用保証協会を利用して保証を受けられれば、それが後ろ盾になって融資を受けるハードルが下がります。
信用保証協会とは、創業間もない会社や中小企業への融資の保証人となり、会社が返済を滞らせた場合に銀行に対して代わりに弁済をしてくれる団体です。
この制度を利用することにより、銀行からの信用度は増しますが、信用保証組合が負担した弁済金は返済の必要があるほか、別途保証料の負担が発生します。
地方自治体と連携している銀行を探す
地方自治体の中には、地域発展を目的として民間銀行と連携を取っているところもあります。
地方自治体が創業融資元をあっせんし、創業者のサポートを行って民間銀行とのパイプを作る形です。
これら地方自治体のサポートはそれぞれの地域で異なるため、事業所がある地方自治体に問い合わせてみることをおすすめします。
融資を受けられる金額の目安
一般的には、民間銀行の場合は自己資金を目安に融資額の上限が決められます。その目安とは、だいたい自己資金の2倍くらいと考えると良いでしょう。
つまり、自己資金の金額によって、返済能力の度合いを問われるということです。
そのため、自己資金がほぼない状態では、融資額の上限もかなり下がります。自己資金は、補助金の利用などで十分に用意し、それから融資を申し込むようにしてください。
創業融資では起業時の状況で銀行選びを
起業・独立・開業時に、融資を申請する人のキャリアによって、融資元となる銀行を選ぶのが得策です。
学校卒業後に起業する時
高校や大学を卒業し、社会経験のない状態で起業する時は、やはり民間銀行からの信用を得づらく、融資を受けられない場合がほとんどです。
そのため、信用金庫を利用し、創業者を支援する金融商品に申し込むことをおすすめします。
また、信用金庫であれば、創業者向けのセミナーや交流会、各種イベントを開催してサポートを行っていることもあります。
会社員から独立する時
会社員として勤務した経験があり、そこから独立する場合には、信用金庫もしくは地方銀行に相談すると良いでしょう。
事業者としての実績がないと、特に大手民間銀行の融資に対する審査は通りづらいのが現状です。
信用金庫や地方銀行は、審査のハードルも比較的低いため、事業実績がなくとも事業計画がしっかりと練られていれば、融資を受けられる確率が高くなります。
経営者が新事業を起ち上げる時
すでに事業を始めていて、新たな事業を起ち上げる際の資金を調達する場合には、大手民間銀行から大口の融資を受けられる可能性があります。
その際、事業実績を証明できる決算書を用意し、事業が好調であることをアピールしてください。
事業拡大が目的であれば、大手民間銀行でも審査に通過する可能性が高まります。
銀行以外から創業資金の融資を受ける方法
ここでは、民間銀行以外から創業資金の融資を受ける方法と、そのメリット・デメリットを併せて紹介します。
創業者をバックアップする日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が経営する金融機関であり、国全体の経済振興や生活の安定を目指して運営を行っています。
そのため、創業にかかる融資プランも多数存在し、創業者をサポートしてくれます。いわば、民間銀行の受け皿として機能している機関です。
また、審査で決まった基準がある民間銀行に対し、日本政策金融公庫では交渉や相談内容次第で、柔軟に対応してくれることが多くあります。
日本政策金融公庫から融資を受ける時のメリット・デメリット
日本政策金融公庫のメリット
・起業したばかりの人を対象にした制度がある
日本政策金融公庫では、創業当初の会社を対象とした融資制度があります。つまり、事業実績がない創業者だからこそ申し込める融資です。
この点は、これから創業する人に対しても優しいものであり、万が一地方銀行や信用金庫の審査に通らなかった場合にも安心です。
・保証や担保がなくても申し込める
民間銀行では、保証人を立てる、もしくは信用保証協会の保証を受けることで融資を受けやすくなりますが、日本政策金融公庫では無保証で融資を受けられる制度があります。
また、民間銀行では万一返済が滞った時のために、担保をつけなければならない場合がありますが、日本政策金融公庫の制度の中には担保なしでも問題ないことがあります。
融資の条件を細部まで調べておくと安心です。
・審査の手間が少ない
例えば、民間銀行での融資で信用保証協会の保証を受ける際には、金融機関と信用保証協会の2カ所からの審査に通過しなければなりません。
その点、無保証で融資を受けられる日本政策金融公庫の制度では、審査は1回で済むため、その分融資までの工程が省かれます。
日本政策金融公庫のデメリット
日本政策金融公庫では、融資を受けるまでの期間が比較的長いとされています。
申し込む制度や諸条件によって異なりますが、目安としては1カ月以上かかると考えておくと良いでしょう。
そのため、融資が急に必要になった場合には、不便な点といえます。
地方自治体が融資をする場合もある
地方自治体によっては、制度融資を設けているところも存在します。
その目的は、主に地域創生や発展であることから、起業・独立したばかりでも融資を受けられることが多くあります。
ただし、制度融資における条件は自治体によって異なるため、事業所のある自治体の制度融資が自身の会社や事業に合っているかどうかを十分に精査してください。
地方自治体から融資を受けるメリット・デメリット
地方自治体のメリット
・金利が低い
地方自治体から融資を受ける時、かかる金利は民間の地方銀行よりも低い場合が多くあります。そのため、返済計画も立てやすくなります。
ただし、金利も自治体ごとに異なるため、地方銀行での融資と照らし合わせてみてください。
・元本の据置期間があることが多い
元本の据置期間とは、一定期間において元本の返済ではなく、金利の返済のみで済む制度です。
起業・独立直後で資金繰りが苦しい時には、ありがたい制度といえます。
・地方自治体が金利を負担してくれることがある
自治体によっては、金利または信用保証協会の保証料を負担してくれるところもあります。
これらの出費は、意外と資金繰りに影響を与えるため、創業当初の資金繰りを余裕のあるものにしてくれます。
地方自治体のデメリット
・手続きが面倒
地方自治体からの制度融資は、自治体に加えて実際に融資を行う金融機関、さらに信用保証協会の審査を通過しなければなりません。
これら3つの機関における審査をそれぞれに受ける必要があり、煩雑であるといえます。
・条件の変更がたびたびある
地方自治体ごとに条件が異なることはもちろんですが、さらにその自治体の中でも条件が変更されることが多々あります。
そのため、いざ申込みを行う時には自社が条件から外れていることもあるかもしれません。この点が多少不便であり、デメリットといえます。
創業融資を受けるためのステップ
ここからは、銀行で創業融資を受けるための流れを紹介します。
1.提出書類を作成する
融資の申込みおよび審査に必要な書類を作成します。
主なものは、以下のとおりです。
-
- 創業計画書、事業計画書
- 信用保証委託申込書
- 自己資金を預けている銀行の通帳
- 確定申告書
- 会社の登記簿謄本
- 定款(写し)
- 事業にかかる許認可証
- 印鑑証明書
など
事業規模や事業開始前後のタイミングで提出する書類は異なります。申込みの際に十分に確認しておくことが大切です。
2.担当者と直接話をする
銀行に指定の書類を提出し、書類の内容を突き合わせるために直接面談を行います。この時点で、書類と実際の事業の齟齬(そご)がなければ、銀行での審査に移ります。
3.融資の審査を受ける
上記の面談後に銀行が融資の審査を行います。信用保証協会の保証を得る場合は、金融機関と同様に面談から審査への過程を踏みます。
4.契約・融資
信用保証協会の審査に通過すると借入保証書が届くので、この借入保証書を銀行に持参して融資の契約を行います。
一般的に、銀行の審査から融資を受けられるまでの期間は、スムーズにいけばおよそ3週間前後といわれています。
創業融資を受けるためのコツ5つ
銀行から創業融資を受けるためのコツとは、どのようなことでしょうか。
1.自己資金は十分に用意する
前述したように、自己資金がいくらあるかによって融資額の上限が決められることが多くあります。
より多額の融資を希望するのであれば、潤沢な自己資金を用意してください。
また、自己資金があまりにも少ないと、銀行や信用保証協会からの信用度も低くなってしまいます。これは、経営にかかる手腕が乏しいと判断されるためです。
2.創業の目的を明確にする
銀行に融資を申し込む際、もともと設けられている審査基準はもちろんのこと、起業・独立の確固たる目的や事業計画を示すことが求められます。
起業前であれば、特になぜ起業するのかといった目的や周囲からの事業へのサポート、経営推進案などをしっかり立て、銀行に説得できるようにしてください。
3.債務はすべて整理する
当たり前のことですが、創業者が抱える債務は、すべて綺麗に整理しておくことが極めて重要です。
ほかの金融機関からの借入れや税金の滞納などがあれば、銀行は創業者の返済能力を認めません。
また、過去にクレジットカードの支払いが滞っていた場合、その時点で審査に通過しないこともあるため、注意が必要です。
4.税務処理は専門家に任せる
起業当初はできるだけ経費を削減するために、税務処理を自身で行う人が多いのではないでしょうか。
しかし、納税に抜け漏れがないようにするには、専門家に依頼するのが一番です。
同じ税務処理の書類でも、税理士に依頼して作成してもらった書類のほうが、銀行からの信用度は上がります。
5.事業計画・資金計画を明確にする
事業計画書により、事業においてどれだけ具体的なビジョンを持っているかを示すことで、銀行への説得につながります。
また、資金計画も同様で、融資の理由や返済計画を明確にし、銀行を説得できるだけの準備をしておくことが大切です。
創業融資がうまくいかないケースについて
十分に準備をしても、創業融資を思ったように受けられない場合もあります。最後に、創業融資がうまくいかないケースをいくつか紹介します。
審査に通過しないことがある
銀行の審査基準は明確にされていませんが、銀行は確固たる事業計画や資金繰りの見通しを立てること、また創業者に経営の才があるかを見ています。
そして、総合的に見て融資にそぐわないと判断されれば、融資は見送りとなります。
融資を受けたい額をそのまま受け取れるわけではない
銀行への融資申込みの際に出した希望融資額は、審査に通ったとしてもそのまま受け取れるわけではありません。
前述した自己資金との兼ね合いの要素で返済能力に欠けると見られれば、融資額の上限は希望より低くなることも十分ありえます。
返済計画により資金繰りに影響が出る
融資後の返済計画は綿密に立てておかなければ、返済額が資金繰りを圧迫することも少なからずあります。
特に、創業間もなくの売上げが少ない時には、返済によって資金が尽きることも考えられるため、余裕のある返済計画を立てるようにしてください。
まとめ
起業や独立してすぐに創業融資を銀行で受けるには、なかなかハードルが高いものです。とはいえ、受けられる可能性もあるため、自身に適した銀行を選んでみてください。
ただし、創業融資を受ける際にはいずれも審査があり、通過しなければ融資は受けられません。
事業計画や返済計画をしっかり詰めて、融資に申し込むよう準備することが大切です。
(編集:創業手帳編集部)
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