開業当初に必要になる創業融資・財務の知識 前編

資金調達手帳

成功している先輩も最初は失敗している

開業当初に必要になる創業融資・財務の知識 前編
(執筆:「飲食店開業融資専門税理士」ITA大野税理士事務所 大野晃)

(更新日:2015/10/26)

飲食店の開業は多く、全ての業種を見ても、飲食店の新規会社立ち上げる数が最も多くなっています。実際に、繁華街などでは長年続いているお店もあれば、入れ替わりが非常に激しいところもあります。

飲食店の開業は、特別な資格を必要としないため、気軽にお店を始められるという理由で人気を集めています。今後も、おそらく飲食店を開業しようという人が減る事はないと思います。

しかし、飲食店は開業件数が多い反面、残念ながら廃業率が最も高い業種でもあります。一説によると、飲食店開業後2年後には半分のお店が廃業しているとも言われています。

なぜ美味しいお店が潰れるのか

飲食店がお客に提供する第一のサービスが料理やお酒です。だから、美味しければ大丈夫という考え方がありますが、実際に美味しいお店なのに潰れてしまうというケースは往々にしております

美味しいお店に限らず飲食店が潰れる理由は、下記にあげたような項目の設定ミスが考えられます。場合によっては、それが複合的にからんできます。

  1. 立地
  2. マーケティング
  3. 広告・販売促進のプロモーション
  4. 財務戦略

飲食店を開業する方で、ど素人の方は少ないと思います。飲食店で働いて料理やお酒のサービスの技術を磨いてきた方が多いです。

しかし、財務を見てきている方は少なく、そこが落とし穴になってしまうことがあります。美味しく、お客の評判も良かったのに、開業して数ヶ月後〜1年で潰れてしまうお店というのは、財務に問題があることが多いのです。

実際に、飲食店に融資を行っている日本政策金融公庫が発行している資料の中にも書いてあります。

「開業時に注意しておけばよかったと感じる事」の第1位は「自己資金が不足していた」です。さらに、開業後軌道に乗り始めた時期は、6割の飲食店が「半年超かかっている」と回答しています。

大半の飲食店が軌道にのるまでに半年以上かかっており、それまでの運転資金となる自己資金が足りずに苦労している上位今日が伺えます。美味しいお店が潰れてしまう理由がここにあるのです。

先輩の失敗から分かる「自己資金はなぜ不足するのか」

オープン当初のキャッシュフローは不確定要素が多いということを頭にいれてください。そのため、自己資金が必要になるのです。

今まで働いていたお店は、ある程度の常連客がいて、安定した収入が計算できていたはずです。それと同じ様に新規オープンのお店を考えていては、確実に資金は尽きてしまいます。そして、そのように考えていて、自己資金がなくなり、失敗する人が多いのです。

私が今まで見てきた飲食店を開業しようとする方の多くは、自己資金のほとんどを不動産の取得費(前家賃、保証金、礼金、仲介手数料)に当て、借入れた多くを設備資金に投資していました。結果、運転資金は1ヶ月あるか、ないか程度で開業することになります。

飲食店は現金商売と言われていて、日銭が稼げます。一方で支払いは一ヶ月単位なので、キャッシュフローという点では、他の業種より非常に恵まれています。

そのため、「飲食店の運転資金は1ヶ月ぐらいでも大丈夫」という考えでいる人が多いのです。私のところに相談に来た方も、多くの人が同じように考えています。ただし、これは常連客がいて、安定した売り上げがあっての話なのです。

開店当初は、知人がお祝いに来て、高いものを頼んでくれます。いわゆるご祝儀相場です。しかし、それは続いても1ヶ月です。勤務時代に自分のブランディングを確立し、豊富な顧客リストを持っていても、なかなか続きません。2ヶ月目、3ヶ月目からは、新規のお客を開拓し、常連になってもらうための本当の戦いとなります。その間は、収入は想定していたものより大きく下がります。坊主(お客がゼロ)という日が続くことも覚悟しないといけません。

この期間を乗り越えるために、自己資金が1ヶ月あるか、ないかというのでは、少なすぎるのです。今まで働いていたお店がそうだったからと思っていると確実に失敗します。

余談ですが、東日本大震災のときに多くの飲食店が潰れました。常連客がいて、売り上げも計算できるお店は、1ヶ月分ぐらいの資金を持っていれば問題なかったからです。それが災いしました。地震の影響で、お酒を飲むという雰囲気ではなくなり、突然売り上げがなくなったため、収入が激減。資金はすぐになくなり、数ヶ月後には家賃が払えなくなり、閉店という状況だったのです。

軌道に乗るのは半年より先と考えて資金計画を立てる

それでは、飲食店の経営がスムーズに行くようになるのは、どのくらいなのでしょうか。

日本政策金融公庫の資料を見ますと、6割が、軌道に載るまでに半年超かかっていたと語っています。これは実体験に基づくものなので、非常に重要な指標です。

ただし、オープン前に半年超の運転資金を用意しないといけないと絶望する必要はありません。

軌道に載るというのは常連客がつき、ある程度安定した収入が見込めるようになった状態です。それまでにも、波はあるものの収入は発生します。

目安として、半年以内に軌道に乗る自信があるという方は3ヶ月程度の運転資金を用意していれば問題ありません。もう少し軌道に乗るのに時間がかかると思っている方は、4ヶ月から半年程度の運転資金を用意しておくことをおすすめします。

もちろん、この金額の中には融資でまかなえる部分もあります。
融資については、次回お話をいたします。

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開業当初に必要になる創業融資・財務の知識 後編

(監修:ITA大野税理士事務所 大野晃 飲食店開業融資専門税理士
(編集:創業手帳編集部)

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