開業当初に必要になる創業融資・財務の知識 後編

資金調達手帳

キャッシュフローを切らさないための有効的な融資活用術

開業当初に必要になる創業融資・財務の知識 後編
(執筆:「飲食店開業融資専門税理士」ITA大野税理士事務所 大野晃)

(更新日:2015/11/11)

前編では、おいしいお店でも潰れてしまうカラクリを説明しました。簡単に言えば、財務に不慣れなために起こってしまう悲劇です。

この悲劇は、開店当初に用意しておく運転資金である程度は回避することができます。今回は、そのなかでも融資を活用して経営が軌道に乗るまでの運転資金を確保する方法を紹介します。

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基本は自己資金+融資

前回も説明しましたが、飲食店が潰れるには様々な理由があります。「料理が美味しくない」「サービスが悪い」「立地が悪い」「コストパフォーマンスが悪い」「マーケティングの失敗」などです。そのなかに、「経営が軌道に乗るまでの運転資金が少なかった」というのがあります。

今回は、他の項目はクリアしているのに、「経営が軌道に乗るまでの運転資金が少なかった」ために潰れてしまわないための方法です。

まず、認識してほしいのが、開店当初に必要になるのは、不動産取得費と設備投資資金、数ヶ月分の運転資金となります。それを自己資金と融資でまかないます。

さて、私が専門家(認定経営革新等支援機関)支援付融資と呼んでいる「中小企業経営強力化資金」があり、コンサルのお客様には、この融資をおすすめすることが多いです。この経験から、融資で確保できる運転資金は通常2ヶ月から3ヶ月分程度と思っていてください。

ここで重要なのが、融資を受ける際には不動産をすでに確定していないといけません。不動産にかかわる取得費は自己資金で行うことになり、融資でまかなうことができるのは運転資金の一部となります。

そのため、不動産取得費と設備投資資金、運転資金4ヶ月分を用意しようとすると、融資では運転資金の2ヶ月分のみがカバーでき、自己資金で不動産取得費+設備資金(内装費用、厨房機器類等)+運転資金2ヶ月が必要になるということになります。

「中小企業経営強力化資金」のメリット

私がコンサルの際に利用を進めている専門家(認定経営革新等支援機関)支援付融資である「中小企業経営強力化資金」について解説します。

簡単に言うと、開業をしようとしている人が自分で日本政策金融公庫へ申請をしにいく融資制度である「新創業融資制度」とほとんど同じです。違いは、「中小企業経営強力化資金」は、認定経営革新等支援機関である専門家が事業計画書をサポートする融資制度という点です。

そして、専門家の事業系計画書のサポートが付くだけで、以下のように融資のメリットがあります。

  • 支払利息が「新創業融資制度」は年2.3%程度で「中小企業経営強力化資金」は年1.3%と利率が年に1%ほど変わっていきます
  • 融資までのスピードが早い。最短で2週間、遅くとも1ヶ月以内に確定できます。

実質の利率に気をつけよう

利息について、具体的な数字で考えてみましょう。

「新創業融資制度」と「中小企業経営強力化資金」を融資額1000万円、融資期間7年で比べると、トータルで支払う利息には約50万円の差がついてしまいます。

他の融資が有利という考え方もあります。よく質問を受けるのが、東京都や市区町村の保証協会付き創業融資制度です。利子などの補助があり、見た目の利率は、「中小企業経営強力化資金」よりも下回るものがあるからです。

ただし、この保証協会付き融資で注意が必要なのが「保証料」です。これは借入の元本に1%とか乗じているもので、実態は利率と変わりません。これを考えると、実質の利率が「中小企業経営強力化資金」より高くなることがあるのです。

なお、日本政策金融公庫の融資には保証料はありません。

融資までのスピード、利用のしやすさも重要

飲食店開業の融資で重要なのが、スピードです。

融資を受ける段階は、すでに不動産を確保している状態です。すぐに開業をしないと家賃というコストだけがかかっていきます。そのため、すぐに運転資金のめどを立てないといけません。

そのために、融資がすぐにおりるという「スピード」は重要な要素です。私の経験では、「中小企業経営強力化資金」を利用すると、最短で私に相談をいただいてから最短で2週間、遅くても1ヶ月以内に結果報告ができます。もちろん、ご相談時点で内装設備などの見積りなどの必要書類がそろっているという条件がつきます。

また、開業をする本人が日本政策金融公庫へ足を一回も運ばなくてよいというのもメリットです。飲食店に勤務をしながら融資の話を進めることができるからです。

この点で言うと、先ほどの利率でメリットがあるように見えた保証協会融資は大きく異なります。

私自身の経験ではかなりスピードが遅いです。保証協会が忙しいと融資面談の設置がかなり遅い日になります。また、申請から融資の結果も遅いです。さらに、区役所などに5回から7回開業をする本人が足を運ばなければなりません。

私の保証協会融資の経験ですが、専門家である私がバックアップしても結果までに3ヶ月かかりました。

3月後半から銀行と打ち合わせを何回もして、4月に計画書を提出したのですが、結果がでるのに6月中旬までかかりました。更に融資実行は営業許可書の提出が条件のため、飲食店OPEN後にしか融資を受け取ることができませんでした。内装工事費用などの支払いが遅れてしまったという苦い思い出があります。

さらに融資確定まで時間がかかり、オープンができなかったため、オープン予定日時が遅れ、その分の機会損失も生じました。例えば、1日5万円の粗利を考えていたとしたら、オープンが20日遅れるだけで100万円の利益を失うことになります。これは開業当初には非常に厳しいことです。

その他にも、いろいろな経験をしました。こちらの記事(【参考記事】【実録】 飲食店開業に向けた融資奮闘記 )では、保証協会付き融資で失敗し、開業ができずに困っている方を日本政策金融公庫で助けた内容を説明しています。

融資申請前のチェックポイント

最後に融資を受ける際に、少なくともクリアしておくべき条件をリストアップいたしました。

この条件をクリアしていなくても融資がおりる可能性はありますが、きわめて低いと考えた方が良いです。すでに、別の記事で書いてはいますが、こちらでも確認ができます。

過去5年以内に破産などの債務整理をしたことがない

5年以内と言うのは絶対的な指針ではないです。過去に破産、債務整理があった方は融資を受けるのはかなり厳しくなります。

過去に消費者金融などの返済の遅滞がない

金融機関は、消費者金融などの利用の情報を持っています。特に、返済の遅滞については厳しくチェックします。自分のお金を貸しても、しっかりと返済されるかという判断の目安になるからです。遅滞している場合は、その返済をしっかりとすることが第一です。また、遅滞があった方はCICで個人の情報を調べてもらうとよいでしょう。

ライフラインの支払い・税金の滞納がない

水道光熱費の支払いについては滞納のリスクが少ない口座振替又はクレジット支払いに切り替えておいてください。家賃について、振込みをされている方は、遅滞は絶対に厳禁です。税金関係の支払いは当たり前ですが全て完了しておいてください。
これらについては「自己管理能力」と言うところが見られていると思って下さい。

自分で貯めたお金が100万円以上ある

飲食店経営・開業の夢を達成するために、自分でコツコツ貯金をしていたというアピールは融資審査にプラスの行為だと経験上、思っています。金額は大きい方が良いですが、100万円程度は必要だと思っていてください。そして、貯蓄できると言う事は経営が開始しても、しっかり利益を留保できる方だなという見方もされるでしょう。(親族支援金の金額次第で自己資金が100万円以下でも審査が通過するケースはあります)

親族などからの支援金と自分の貯金が合せて300万円以上ある

親族などからの支援金について融資の審査上はプラスになると思ってよいです。本人が飲食店経営に行き詰った時に応援してくれる人がバックにいるという見方をしてくれます。

(監修:ITA大野税理士事務所 大野晃 飲食店開業融資専門税理士
(編集:創業手帳編集部)

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