個人事業主でも資金繰りに困らない!売上が不安定でもキャッシュを守る方法

資金調達手帳

キャッシュを守って事業継続につなげる


個人事業主である以上、一度は資金繰りを不安に感じたり、売上の少なさを心配したりすることがあるでしょう。
このような不安は個人事業主であれば一度は悩みますが、キャッシュを守る仕組みを作ることで事業を継続しやすくなります。

この記事では、個人事業主でも資金繰りを安定させる方法を紹介します。健全な事業を運営したい人は、ぜひ参考にしてください。

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なぜ個人事業主は資金繰りに悩みやすいのか?


個人事業主の資金繰りは、将来的なお金の出入りを予想して計画的に管理することが重要です。
しかし、実際は個人事業主の最大の悩みは資金繰りになることが多いです。なぜ、資金繰りに悩みやすくなるのか解説します。

売上の波が大きい

個人事業主は、大企業とは異なり売上の安定が取りにくい傾向です。
その結果、繁忙期と閑散期の差が大きくなったり、突然の受注減少が起こったりなどに対応できない可能性もあります。
受注減少など、突然の対応ができるだけの資金に余裕がないと、毎月の売上に対する安定性に欠けてしまうからです。

また、売上の多い月と少ない月の差が大き過ぎた結果、資金繰りに直結して安定して支払い計画も立てにくくなります。
このような売上の不安定さが、資金繰りの慢性的な課題となります。

固定費が毎月発生する

固定費は、売上に関係なく毎月発生します。家賃はもちろん、リース代や人件費は売上に関係なく一定の金額が必要です。
毎月の固定費は売上に関係なく発生するため、売上が少ない月は赤字リスクとなり、資金繰りを圧迫する可能性があります。
特に変動費にできない固定費が多くある場合は、キャッシュフローに余裕がない状態が続くので注意してください。

入金までの期間が長い取引先がある

売掛金が多いものの、実際に現金が入金されるまでの時間が数カ月かかる取引先もあります。このようなことから、資金繰りに影響が出るケースも少なくありません。
このような状態は支払いが先で入金が後になる構造によって資金不足が起こりやすく、下請け業務などで発生することが多いです。

事前に売掛金の遅延表を作って管理したり、入金遅延が起こっているかをチェックしたりするために、入金予定後の表などを把握しておくことが大切です。
また、取引先ごとに支払い条件を見直し、前払いや入金サイクルの短縮について相談することで、入金までの時間を短縮できます。

突発的な出費が発生する

資金に余裕がなく、何とか一時的に支払いを済ませている場合は税金や社会保険料の納付期限周辺になると一気に出費が集中してしまい、一時的に大きな資金流出が起こります。
急な出費は突然起こることが多いです。
設備の修繕や交換、突発的な仕入れ金額の増額などは起こってしまうと、予測できない支出が続いて資金繰りがうまくいかないこともあります。
このような出来事は、予測していない時に起こるので事前に準備金などを用意しておかないと急な支出が事業の継続に深刻な影響を与える可能性が出てしまいます。

資金繰りを安定させるための5つの基本戦略


個人事業主にとって資金繰りは、大きな悩みになりがちです。
特に売上が予想していた以上に伸び悩んでいる時に支払いが立て込んでしまうと一瞬で資金繰りが悪化してしまいます。
資金繰りを安定させるには、どのようなことを実施すべきかを紹介します。

1. 資金繰り表を作成して先を見える化する

資金繰りをわかりやすくするには、資金繰り表を作成して収支について把握することです。
事前に売上や収支に支出について把握すると資金ショートのリスクを早期に知る機会ができるので対応しやすくなります。
資金繰りに関して、できるだけ可視化を意識しておくといつまでにどれだけの現金が必要になるかも把握でき、予測と管理の精度も良くなるので経営も安定しやすいです。

2. 固定費を削減する

固定費は、家賃、水道光熱費、交通費、通信費、リース代など売上に関係なく発生している経費が該当します。毎月かかっている固定費を見直す必要があります。
少しでも資金繰りを安定させるには、事務所となる店舗の家賃、通信費、交通費、サブスクリプション、広告費などの見直しを検討してください。

事務所のスペースが広すぎても、リモートワークができたりするならコワーキングスペースに変更して仕事ができます。
また、使用頻度の低いサブスクリプションサービスや契約プランを見直すことで、月々数千円から数万円の節約効果が期待できます。
通信費に関しては、必要以上のプランでないかを確認してみるのが良いでしょう。
また、交通費はリモート会議ならかからずに仕事ができるので、何気ない部分でも削減できるきっかけが見つかります。

3. 入金と支払いのタイミングを調整する

入金と支払いのタイミングを変更したり調節したりすることで、資金繰りの安定につながることもあります。
例えば、取引前に前払いをお願いしたり、カード決済の導入を行って入金を早めてもらったりも相談次第でできます。

入出金で生じるズレを調節するだけでなく、資金ショートが起こる可能性を最小限小さくできることが期待できるでしょう。
できるだけ入金は早く、支出は遅くを意識すると入金と支払いのタイミングがわかりやすくなります。

4. 緊急時に備えた資金調達手段を確保する

そこで、比較的スピード感を持ってできる資金調達方法としてビジネスローンや助成金なども活用できます。
ここで活用できる緊急時の資金調達方法は、ビジネスローン、カードローン、ファクタリング、手形割引です。

ビジネスローンは法人や個人事業主を対象とした事業資金専用の融資であり、スピード感のある資金調達ができます。
カードローンは、設定された限度額の範囲内で必要な時にATMから自由に現金が借りられる融資サービスです。

他にも売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらい、早急に現金化できるファクタリングもできます。
入金期間まで長い期間が必要な場合、満期を迎えていない受取手形でも金融機関で買い取ってもらえれば期日前に現金が受け取れます。これらの方法を試してみてください。

5. 税金・社会保険の納付を計画的に行う

資金繰りで重要なことは、出金がどのタイミングであるかを把握しておくことです。
特に出金がある場合は、事前に必要なお金がいくらなのかを把握しておかないと準備ができないからです。

所得税などは納付する月が決まっているので、事前に積み立てておくと慌てることがありません。
どうしても資金を準備するのが難しい場合は、「納付猶予制度」や「分納制度」を利用して急な出費が抑えられます。
ただし、社会保険料に関しては滞納してしまうと事業の信用に影響を及ぼすため、計画的に納付できるように資金を準備すると安心です。

創業手帳では、税金の支払いタイミングをカレンダー形式でまとめた「税金カレンダー」を無料で配布しています。こちらをご利用いただけば、計画的な支払いが可能です。ぜひご活用ください。

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キャッシュを守る具体的なテクニック


少しでもキャッシュを守るには、どのようなテクニックが必要かを紹介します。

経費の前払いで節税とキャッシュ管理を両立する

期末に必要な経費を前払いに変えるだけで、所得税が節税になるだけでなく資金繰りも調節できます。
ただし、どのようなタイミングに前払いしても良いという意味ではありません。

前払いをする際にはリース料や保険料、システム利用料などが該当するため、費用計上を前倒しにできます。
過度な前払いをしてしまうと資金ショートを招く恐れもあるので、資金繰り表などに基づいた内容で慎重に行うと安心です。

売掛金回収を早める

キャッシュを守るためには、売掛金回収を早めるのもひとつの方法です。そこで意識したいのが、売掛債権回転期間です。
これは商品提供後、売掛金入金までの平均日数を示す指標であり、期間が短いほど資金繰りの安定につながります。

売掛金を少しでも早く回収するには、請求書をできるだけ早く発行する仕組みを意識してください。
電子請求システムの導入や締め日を待たずに取引ごとに請求書の発行を行うように努力することがポイントです。

また、カード決済やオンライン決済サービスの導入によっても入金スピードが速くできます。
定期的に売掛金の回収状況を把握して、滞納をしているところがあれば随時対応するとキャッシュが守れます。

最低限必要な生活費と事業費を把握する

個人事業主となった場合、「給与」という考えが馴染まないかもしれません。その理由は、会社員のように給与明細を貰って毎月の給与が決まっているわけではないからです。
特に自分の稼いだ金額から生活費などを捻出している場合は、キャッシュを守るためにルールを設けて管理する必要があります。

事業を始めたばかりの頃によくあるのが、事業のお金は自分のお金という感覚です。
個人事業主なので、法人のように事業と個人の資金が完全に分かれているわけではありません。
しかし、混同してしまうと管理がわかりにくくなり、確定申告時に問題が生じる可能性もあります。

キャッシュを守るためには、毎月の生活費と事業費を分けた後に合算し、最低限いくら必要になるかを明確にしておくのがポイントです。
この最低限必要な金額を基準にしておくと支出削減や投資判断がしやすくなります。
また、固定費と変動費の区分を整理しておくと、資金調整できる部分も見つけやすいです。

クラウド会計ソフトで資金繰りを自動チェックする

個人事業主は、資金繰りをわかりやすくすることが重要です。見て判断できない状態のままでは、資金不足になっていることに気が付かない可能性も高くなります。

そこで利用したいのがクラウド会計ソフトです。
これらのソフトを活用すれば、資金繰りがわかりやすくなるだけでなく、入出金のデータも自動で集計できるようになります。
銀行口座やクレジットカードなどとの自動連携によって、入力する手間も少なくなり、資金状況も把握しやすいです。

さらに、資金繰り表を自動生成する機能などを活用すると、リアルタイムで資金状況も把握できて便利です。
現在のキャッシュを正しく判断するなら、クラウド会計ソフトだと利便性も高く使いやすさを感じることができます。

個人事業が安定してきたら考えるべき次の一手


個人事業が次第に安定してきた場合、次の一手に移ることも検討してみましょう。ここでは、個人事業安定後に進める方法を紹介します。

法人化を検討する

個人事業主として行ってきた事業を法人化すべきか考えるタイミングは、売上や利益の増加、取引先から法人格での契約を求められる、節税について考えたい、人を雇用したいなどの理由がきっかけになることが多いです。
ただし、個人事業主と法人では課税される税金や設立の流れ、費用などの違いがあるのでこれらを理解してから検討することが大切です。

法人化したことで、社会的な信用が高まり取引条件や融資に関する面で有利になることが増えます。
個人事業主と比べて法人化したほうが節税対策の幅が広がるので税負担も軽減が可能です。
役員に対する給与は役員報酬や役員給与として経費計上ができるので、資金管理においての柔軟性も増します。

また、法人化したことで社会的な信用もアップするので、取引先や顧客からの信頼も得やすくなるので仕事が増えるきっかけにもつながります。
これらのメリットを得たいなら、法人化を検討するのがおすすめです。

銀行との関係を構築する

法人化すると、法人口座が開設可能です。もちろん、個人事業主も屋号付きの個人口座の開設は可能ですが、法人口座に変えたことで多くのメリットが得やすくなります。

例えば、法人口座開設によって自分の事業と個人の資金を分けて管理できるので税務申告などにも有利になります。
取引先や顧客からの信頼も高くなり、法人口座の存在によって事業の安定性や信用力につながるでしょう。

さらに、日常的に取り引きする銀行を決めておき、定期的に相談をすると次第に信頼関係も築くことが可能です。
銀行に対して定期的に業績報告をすれば、将来の融資を受けやすくなるメリットもあります。
他にも、複数の金融機関との取引により、資金調達においての選択肢を増やすこともできます。

取引先や市場からの信用力を高める

法人化によって、取引先や市場からの信用力も高まります。「株式会社○○」などという社名になったことで、取引先からは組織運営がされているという印象になるからです。
これで、継続的な納期遵守や品質管理を徹底すれば、さらに取引先からの信頼を得ることができます。

また、資格取得や実績を積極的に公表することで、市場からの信用度も高まっていき、注目される存在になる可能性もあります。
確定申告や納税について適切に行えば、金融機関からも信頼される存在になるので融資がスムーズになる可能性も高いです。

まとめ:キャッシュを守る習慣が事業を長続きさせる

個人事業主であっても、資金繰り表を作成して売上変動に対応できる事業運営の基盤を作ることが重要です。
日々キャッシュを守るには、売掛金の回収や会計ツールの導入など小さな工夫から始めることが大切です。
法人化や信用力向上など、事業としての成長を意識して事業継続につながるように意識してみてください。

キャッシュを守るには、「いくら入ってくるか」だけでなく「どこに出ていくか」を正確に把握することが大切です。
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(編集:創業手帳編集部)

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