スマイルワークスの創業のきっかけと理念
「株式会社スマイルワークス」 代表取締役社長 坂本 恒之 氏インタビュー
(2015/06/5更新)
「会計」「販売」「給与計算」「経費精算」「勤怠管理」など、さまざまなシステムをクラウドサービスとして提供している『株式会社スマイルワークス』。事業を通じて楽しい仕事の創造を目指すという代表取締役社長の坂本 恒之氏はどのようなことを考え、創業に至ったのでしょうか。
今回は創業のきっかけと心構えついて話を伺いました。
北海道札幌市出身。大手流通グループにて法人営業企画やセールスプロモーション、システムの企画・構築を担当。
その後、セキュリティベンチャーで事業開発、ロータス/日本IBMでビジネスパートナーマーケティングを担当。ITを活用したサービスビジネスにおける事業開発・マーケティングのエキスパートとして、各方面から高い評価を得る。
2003年に(株)スマイルワークスを設立し、代表取締役社長に就任。弥生(株)の経営に参画するなど、中小企業支援ビジネスでの実績も豊富。
自分が経営をしたらどうなるのか
坂本:僕自身、国内の大手企業にも、ベンチャーにも、外資系にもいたことがあります。
サラリーマンとして、本当にいろいろな経験をさせてもらっていました。
でもやっぱり、組織で働いていると、会社に対して不満を感じるものです。
「うちの会社は何でこうなんだろう?」とか、「うちの社長は何を考えているんだろう?」などですね。
しかし、経営層に対して不満をこぼすわりには、自分は経営をしたことがない。たしかに不満はあるけど、自分で経営をしたことがないのに、経営陣に不満を言っても説得力のかけらもない。
そこで、「自分が起業して、経営をしてみたらどうなるのか?」と考えるようになったんです。
僕のテーマは「クラウドで中小企業の生産性を上げていく」ことです。それがどこまで通用するのか確かめたくなったんです。
加えて、中小企業を支援するには、自分が中小企業経営の難しさを知らなければならない。
そういった背景があり、起業しました。
まずは楽しくすることが大事
坂本:まず「スマイルワークス」という名前がどこから来たのかという話からしますね。
僕はもともと大学生の時に塾の講師をしていました。大学2年生の時には塾長を任されていて、僕がその塾をまわしていたんです。
その時に出していたコンセプトというのが「楽しい塾」でした。学習塾と言っても進学塾ではなかったので、どちらかというとあまり勉強が得意ではない人たちが通う塾でした。
そのため、塾に来ないことや来ても嫌々やって生徒が多かったんです。
当時、新しい塾のコンセプト決めから丸投げされていたので、「楽しい塾」と決めて、講師も集めました。
「うちは楽しい塾なので、生徒さんが楽しんで勉強できるように工夫して楽しくやりましょう!」という話をしてやっていたんです。
そうすると、生徒さんたちが遊びに来る感覚で塾に通うようになったんです。生徒さんたちも塾に来て半分勉強、半分遊びで塾に楽しんで通ってくれるようになりました。
その結果、勉強嫌いだった生徒が「もっと塾に行きたい!」となり、実際に成績もあがっていったんです。
その結果、生徒が勉強をするようになり、塾は評判を呼びました。生徒数も増え、キャンセル待ちまで発生するほど繁盛したんです。
そういった経験から、社会人になっても「楽しく仕事をする」ことがモチベーションや成果につながるのでは、と思うようになったんです。
楽しいから笑顔になる。つまり「スマイルワークス」ですね。
現在、弊社は中小企業の経営者の方々に好きな仕事を楽しめる環境の提供とそのためのサービスをご提供しています。
例えば、会計・経理・経費精算や給与計算・社会保険・労働保険・源泉徴収など「絶対にしっかりやらないとならないのに煩わしい業務」をラクにし、自分たちの会社が楽しいと思える得意な仕事に集中していただけるような環境構築を支援することです。
それを、クラウドを活用してお手伝いをしています。
難しい局面であればあるほど、落ち着いて対応すること
坂本:困難な局面に直面した時、それが難局であればあるほど焦らないことです。
普通、難しい局面になると、誰でも焦ってしまうと思うんです。
しかし、焦ってしまうと逆にロクな事にならない。だから難しい局面では、一旦落ち着いて、ゆっくりしっかり考えて、慌てずに対応する。
一呼吸おいてから対応する。そうすると、たとえ時間がかかっても、良い方向にいくものだと思っています。
変に取り繕おうとしたり、その場での対処療法を試みたりすると、結果的に悪い方向に向かう場合が多くなってしまう。
クレームの対応でも、慌てて取り繕って言ってしまうと、後で話が食い違って失敗します。
難しい局面では、一呼吸おいて、じっくり冷静に対応する。それが僕の対処法ですね。
謝り侍から役員へ
坂本:あんまりネガティブなことは覚えていないんですよ。楽観的に生きているので。
あとは、局面としてはすごく大変だったけど、適切に対応したことで大変じゃなくなっているという場合が多いです。
なので、良い話にしかなっていないですね。
たとえば、前にお金を払ってくれないお客様がいて、営業担当もカリカリしていた時がありました。それで僕が担当を代わり「今から謝りに行きます」って言ったんです。
その時はうちが悪いのかどうかは知りませんけど。それで僕が行ったら、すぐにお金を払ってくれたということがありました。
謝るということで言えば、前職で役員をやっていた時、最初にした仕事がクレームの対応でした。
実は当時、あるプロジェクトが大変なことになっていて、そこの責任者として入社したんです。
全国の会計事務所の先生方がすごく怒っていて、営業担当者はみんな「何とかしてください!」と僕に言ってきました。
実際、色々なところでそういう声があがっていました。
しかし、責任者となったものの、どういったプロジェクトなのかもよくわからない。
また、会計業界のことも詳しくない。
結局、全国の営業担当に「僕が責任者です。クレームがあったら、僕が全部行きますので呼んでください」とだけ伝え、すべてのクレームを引き受けました。
すると、営業担当者が喜ぶんですよ。先方に対して、「本社から責任者連れてきました!」と言えば、営業担当者としては顔が立ちますから。
ただ僕は、本当に事情がわからないから「申し訳ございませんでした」と言って話をするだけでした。
そして相手は、ずっと怒り続けている。
でも、3時間ぐらい怒鳴り続けていると、誰でも疲れるじゃないですか。喉も乾くんですよね。
だいたい夕方頃にお邪魔するので、それで2~3時間怒られ続けていると、「じゃあ、とりあえず飲みに行こうか」みたいになるんです。「わざわざ東京から来てくれたんだから」、と。
食事の席では、雰囲気も和やかに。きっと、言いたいことを言った後だからでしょう。
さらに、お酒を飲むといい感じになってきて「いや~、君は良くわかってるね」と。僕はひたすら謝っていただけなのですが……。
さらに、「こういう事情で、こういう背景があるから、会計事務所は怒ってるんですよ」というように、その席でいろいろなことを教えていただけるんです。
それで全国行脚、謝り侍をやった結果、本社に戻ってきた時には、社内で一番会計事務業界をわかっている人になっていて。
それから、会計事務所担当役員になりました。
そういった意味では、困難があったとしても、わりと誠実に冷静に対応しています。
それが実はすごくいいリターンを生む結果につながっているんです。
(取材先:株式会社スマイルワークス)
(創業手帳編集部)
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