スマートフォン購入費や通信費は経費にできる?法人・個人事業主での違いや仕訳方法を解説

創業手帳

スマートフォン購入費は経費にできるが注意点もあり!


仕事のためにスマートフォンを購入した場合、原則として経費計上できます。
ただし、法人か個人事業主かによって会計処理が違う場合もあるので、あらかじめどういった処理になるのか調べておくようにしてください。

スマートフォンにかかる費用は、スマートフォンを購入するための費用だけでなく毎月かかる通信費、壊れた時には修理費もかかります。
スマートフォンに関係する費用についてどういった会計処理が必要になるか、紹介します。

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スマートフォン購入費の経費処理は法人と個人事業主では異なる


スマートフォンや携帯電話といった通信機器は私たちの生活の中で切り離せないものになっています。仕事でスマートフォンや携帯電話を使う人も多いでしょう。
ここでは、スマートフォンや携帯電話を購入した時の経費処理について紹介します。

法人の場合|全額計上できる

業務で使用するスマートフォンや携帯電話は、法人であれば全額を経費計上可能です。
スマートフォンや携帯電話の本体料金はもちろんのこと、通信費や通話代金もすべて経費計上できます。

法人は、仕事で使用しているスマートフォンや携帯電話が事業用であることを証明しやすく、スマートフォンの経費計上が認められやすい立場です。
具体的には、法人契約でスマートフォンを購入して社員に支給している場合には契約書や領収書に記録が残るため、税務署からも指摘を受けるケースはあまりないでしょう。

また、社員の名刺に法人契約の電話防号を記載しておくと事業で使用していると証明しやすくなります。
契約書や領収書などの通信機器にかかわる書類は保存しておくようにしてください。

個人事業主の場合|家事按分を行う

スマートフォンや携帯電話を法人と個人事業主が使用している場合、仕事とプライベートの両方で使っているかもしれません。
仕事とプライベートで併用している時には、その割合に応じて費用を按分しなければいけません。これを家事按分と呼びます。

個人事業主としてスマートフォンを使う時には、仕事をプライベートの境界があいまいになってしまうことがあります。
経費として明確に切り分けるには、仕事用のスマートフォンを用意しても良いかもしれません。
個人事業主であっても、業務用のスマートフォンを購入することは可能です。業務用のスマートフォンであれば、全額経費計上できます。

個人事業主が、仕事用のスマートフォンを購入する場合には「個人事業の開業・廃業等届出書」と「確定申告書」、さらに「営業所の住所確認書類」といった書類の提出が求められることがあります。
申込時には必要書類を事前に確認してください。

スマートフォン本体と周辺アクセサリーの購入費の仕訳方法


スマートフォンや携帯を利用する時の費用は、大きく通信機器、端末代と通信費に分けられます。ここからは、実際にどのように経費計上するのか仕訳について紹介します。

スマートフォン本体の購入費は消耗品費もしくは工具器具備品で計上する

スマートフォンや携帯電話を購入した時には、本体代金、端末代が発生します。支払い方法には一括払いと分割払いがあり、それぞれ違う会計処理をしなければいけません。

【例】
5万円の端末を現金一括払いで購入する。

借方 貸方
消耗品費 50,000 現金 50,000

端末1台当たりの購入代金が10万円未満であれば、消耗品費として仕訳して購入した年の費用に計上できます。
もしも複数台購入して総額が10万円以上の場合でも、1台当たりの端末代が10万円未満であれば消耗品費として処理できます。
後から1台当たりの購入価額を確認できるように摘要欄に「スマートフォン〇台」といった記載を残しておいてください。

1台当たり10万円以上の端末を購入した時には、工具器具備品として仕訳します。工具器具備品は資産として管理が必要な上、減価償却の処理が求められます。
減価償却とは、発生した費用を一括ではなく一定期間に配分する会計処理です。
例えば12万円のスマートフォンを耐用年数4年間で減価償却するのであれば、1年あたりの減価償却費は3万円です。

分割払いの場合は購入時に未払金で計上する

端末代金は、一括で支払う場合だけでなく、分割払いすることもあります。分割払いの時には、購入した時に未払金を計上して月ごとに取り崩す処理が必要です。
購入時と取り崩し時それぞれの処理を紹介します。

【例】
5万円の端末を10回の分割払いで購入する。支払いは口座振替で行う。

〈購入時〉

借方 貸方
消耗品費 50,000 未払金 50,000

〈取り崩し時〉

借方 貸方
未払金 5,000 普通預金 5,000

分割払いしたケースでも、一括払いの時と同様に端末1台当たり10万円以上の場合には工具器具備品として資産計上し、減価償却が必要です。

周辺アクセサリーの購入費は消耗品費で計上する

スマートフォンや携帯電話を仕事で使う場合、本体以外にも費用が発生することがあります。
具体的には、スマートフォンケースや保護フィルムといったアクセサリー類のほか、故障した時の修理費用などです。
スマートフォンのアクセサリー購入費は消耗品費として処理できます。

【例】
2千円のスマートフォンケースと保護フィルムを現金2,000円で購入した。

借方 貸方
消耗品費 2,000 現金 2,000

スマートフォンの通信費や修理費も経費にできる


スマートフォンは、本体を購入した後にも費用が発生します。スマートフォンで通信するためには通信費がかかり、故障した時には修理が必要です。
通信費や修理費の会計処理をまとめました。

スマートフォンの通信費の経費処理

スマートフォンは、毎月継続的に発生する通信料(インターネット利用料)が発生します。
業務で使用しているスマートフォンで通信費が発生した場合の仕訳について紹介します。

法人は全額経費に計上できる

法人が業務用に使用しているスマートフォンの通信費は全額経費として計上できます。勘定科目は、通信費とするのが一般的です。

【例】
法人契約しているスマートフォンで毎月1万円の通信費を口座振替で支払う。

借方 貸方
通信費 10,000 普通預金 10,000

個人事業主は家事按分して計上できる

個人事業主が、仕事とプライベートで使用しているスマートフォンの通信費は、家事按分して経費計上します。
家事案分するために、事業とプライベートのそれぞれどの程度の割合で使用しているのか家事按分する比率を決めます。
スマートフォンの利用時間や使用目的を基準に定めるのが一般的です。
あらかじめ決めた比率で費用を按分し、事業用は通信費、プライベート分は事業主貸で処理してください。

事業主貸は、事業用のお金をプライベートの支出に使った時に計上する勘定科目です。例えば、事業用口座のお金からプライベートのものを購入した場合に事業主貸といいます。

【例】
業務用とプライベートで使用しているスマートフォンで毎月1万円の通信費を口座振替で支払う。家事按分の割合は事業用6割、プライベート4割とする。

借方 貸方
通信費 6,000 普通預金 10,000
事業主貸 4,000

スマートフォンの修理費は修繕費などで計上できる

業務用にしているスマートフォンが壊れて修理した場合、多くの場合は修理費用が発生します。
修理費は一般的には修繕費で経費処理をします。しかし、絶対に修繕費と定められているわけではなく通信費や消耗品費として処理しても問題はありません。

ただし、修理費はイレギュラーに発生する費用であり、後で会計帳簿を見返した時に何の費用を支払ったのかわからなくなる可能性があります。
混乱することがないように摘要欄に「スマートフォン修理代」といった形で費用の内容を記載しておいてください。

個人事業主がスマートフォン購入費や通信費を計上する際のポイント


個人事業主は、スマートフォンの購入費や通信費を計上する時に家事按分のような処理が必要になることがあります。
ここからは、スムーズに会計処理するために押さえておきたいポイントを紹介しています。

スマートフォンの用途を明確にする

スマートフォンに関する費用を経費にする場合、そのスマートフォンの用途を明確にするようにしてください。
経費として計上しても、事業に関係しているスマートフォンの費用であると証明できないと税務調査で指摘を受ける恐れがあります。
スマートフォンが業務用であることを客観的に証明するための手段としては、通話履歴や送受信履歴といった明細を残しておいてください。

また、自分の名刺には業務用のスマートフォンの電話番号を記載する、書類などに電話番号を書くといった方法もあります。

領収書がない時は出金伝票を活用する

通信費や修理費用を支払った場合、その都度領収書が発行されないケースもあります。
スマートフォンにかかる費用の領収書がない場合、出金伝票を使って経費計上する方法を使うことができます。
出金伝票は、個々の取引きについてその場で記録するための帳票書類です。企業からお金が出ていく時に使う書類で領収書が発行されない取引きで使われます。
出金伝票は以下の情報を記載してください。

  • 日付
  • 支払先情報
  • 勘定科目
  • 摘要
  • 金額
  • 起票者

出金伝票を残さずに経費計上していると税務署から経費の架空計上を疑われる恐れがあります。書式を定めて、必ず摘要欄に取引きの内容を詳細に残すようにしてください。

家族が役員の場合は家族分のスマートフォン代も経費に計上する

個人事業主もスマートフォンを法人契約して利用できます。また、家族が役員であれば家族の分もまとめてスマートフォン代を経費として計上可能です。
特にスマートフォンをよく使う事業である時には、役員である家族が使うスマートフォン代も大きくなっているかもしれません。
法人契約でお得になるプランが利用できないか調べてください。

法人契約を検討する

法人契約にすることによってスマートフォン代や通信費といった費用をすべて経費として計上できます。
プライベートと家事按分する必要もなく経費処理も簡便にできる方法です。

法人契約にすることで業務が効率化されるほかに、法人だからこそ得られるメリットもあります。
通信会社によっては、法人向けプランとして社員間通話無料や専用割引といったサービスが利用できます。
どういったプランがあるのか調べて経費削減できないか考えてみてください。

個人携帯を業務で利用するとセキュリティ面でのリスクもあります。
法人向けのスマートフォンにはセキュリティに力を入れているものも多くあるので、選ぶ時にはセキュリティもチェックしてください。

スマートフォンを法人契約する際の注意点


スマートフォンを法人契約にすると、業務の効率面や会計処理でも多くのメリットがあります。
しかし、何も考えずに法人契約してしまうと、思っていたほどの効果を感じないかもしれません。
スマートフォンを法人契約する時に覚えておいてほしい注意点をまとめました。

初期費用と月額費用を確認する

スマートフォンを導入する時には、初期費用と毎月のランニングコストを確認するようにしてください。
最安の料金プランのスマートフォンを契約したとしても、保証やセキュリティサービスといった付帯サービスを追加すると、月額費用が大きくなってしまうかもしれません。
無計画に法人契約するのではなく、事前にプランを調べて自分にとって必要な付帯サービスは何か、付帯サービスを追加して毎月いくらかかるのかを調べてください。

加えて、初期費用として契約事務手数料が発生したり、乗り換えの際に違約金がかかったりするケースもあります。
スマートフォンにかかる費用は、長期的に経費に影響します。
スマートフォンを法人契約する時はある程度の相場や費用感を把握した上で、見積もりをとってから検討したほうが良いでしょう。
複数のスマートフォンで検討している場合には、相見積りで比較してください。

オプションや保証サービスを確認する

スマートフォンを契約する時には、契約する通信事業者のオプションや保証サービスもチェックしてください。
提供されているサービスとして代表的なものを以下で紹介します。

・MDM (モバイルデバイス管理)
 契約しているスマートフォンやタブレットを一元管理して位置情報の把握やリモートロックができる機能

・共有電話帳
取引先のリストなどを利用者間で共有して利用可能なサービス

・現在位置検索システム
スマートフォンの現在位置を把握して、地図で確認できるサービス

・紛失携帯捜索機能
紛失したスマートフォンの位置を把握したり音を鳴らして場所を知らせたりする機能

スマートフォンの保証サービスは、故障した時や初期設定で困った時に利用する場合があります。どういったサポートが用意されているのか確認してください。

利用明細の管理に徹底する

法人契約したスマートフォンは、法人口座・カードから支払うようにすると管理や会計処理が効率的で手間も減らすことができます。
法人契約したスマートフォンの支払いは、利用明細の保管を徹底してください。
大手キャリアでは、利用明細をWebサイトで印刷、もしくは支払証明書を発行できるようになっています。
確定申告時にも使うことになるので、必ず利用明細を確認して保存しておくようにしてください。

まとめ・スマートフォン購入費や通信費は正しく経費計上しよう

業務で使用するスマートフォンは、スマートフォン購入費などの初期費用や月額費用を経費計上できます。
法人と個人事業主では、会計処理が違うため、どういった処理が必要になるのかあらかじめ把握してください。
個人事業主で手続きが煩雑になる場合には、スマートフォンを法人契約する方法もあります。かかるコストと処理する手間の両方で考えて導入を決めてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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