新入社員(新卒者)がすぐに退職する理由とは?退職を防ぐ方法をご紹介

創業手帳

新入社員の早期退職は企業にとって大きな痛手


新入社員の退職は、多くの企業で課題となっています。
新入社員が早期退職すれば、採用や育成のコストが無駄になってしまう上、新しい人材確保やほかの社員の負担増加といった問題も発生してしまいます。
新入社員の退職は、理想とのギャップや環境によるものなど千差万別です。新入社員の早期退職を防ぐための施策を実際の事例とともに紹介するので参考にしてください。

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新入社員の離職率はどれくらい?


人材活用は、どの企業にとっても将来に影響する課題です。将来を担う新入社員の採用と育成に悩む企業も多いかもしれません。

厚生労働省では、令和3年3月卒業者の離職状況を公表しています。
就職後3年以内の離職率を見ると、新規の高卒就職者が38.4%で前年度と比較して1.4ポイント上昇、新規大学卒就職者が34.9%で同2.6ポイント上昇という結果でした。

ここでは、事業所規模別、産業別の離職率についても見ていきます。新入社員の離職率から向き合うべき課題を洗い出してください。

事業所規模別の離職率

厚生労働省による新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率では、事業所規模別にもデータが公表されています。
このデータによると、事業所規模が5人未満の事業所では高卒就職者で62.5%、大卒就職者で59.1%が3年以内に離職しています。
さらに5~29人の事業所でも就職者の半分以上が3年以内に離職していました。
このデータでは、事業所規模が大きくなればなるほど離職率が下がっていることがわかります。

規模が大きい事業所は、研修のマニュアルや制度が整備されていたり、新入社員をフォローできる人材が多かったりと様々な理由が考えられます。

産業別の離職率

産業別に就職者の離職率を見ると、離職率が高い業種の上位2業種はどちらも同じでした。

最も離職率が高い業種は宿泊、飲食サービス業でした。次いで、生活関連サービス業、娯楽業、3位が教育、学習支援業です。
サービス業の中には、土日祝日、夜間でも働かなければならない仕事が多くあります。
宿泊業や飲食サービス業は24時間営業や宿泊業の夜勤のように体力を消耗する働き方になりやすく人手不足も発生しやすい環境です。
慢性的な人手不足で休みが取れなかったり、長時間勤務になっていたりすることが原因で離職率が高まりやすいと考えられます。

新入社員が退職したいと考える主な原因


新入社員の退職を減らすためには、どうして退職したいと考えたのか生の声を聴く必要があります。
ここからは厚生労働省が発表している『令和5年若年者雇用実態調査』から「初めて勤務した会社をやめた主な理由」を参考に新入社員が退職したいと考える原因を探っていきます。

仕事内容にギャップがある

初めて勤務した会社をやめた主な理由として、「仕事が自分に合わない」が 21.7%を占めていました。
志望していた業界、会社であったとしても自分が考えていた仕事内容でなかったり、得意分野ではない仕事が多かったりとギャップを感じるケースは多々あります。

入社前の理想と入社してから目の当たりにする現実のギャップは多くの就職者が感じるかもしれません。
「こんなはずじゃなかった」と落ち込んで、仕事のモチベーションが下がって退職してしまうケースです。

社ふうに馴染めない

新入社員の退職には、職場の雰囲気や社ふうも影響します。円滑なコミュニケーションを取れない、ギスギスしていて辛いといった悩みを抱えて退職に傾くケースです。
すでに会社になじんでいる人にとってはわかりにくい部分ですが、社ふうが合わないと職場の人間にも相談できないため、どうしてもひとりで抱え込んでしまいます。
居心地の悪さを感じてほかの職場に目を向け、転職するようなケースもあります。

労働条件に不満がある

厚生労働省のデータでは、初めて勤務した会社をやめた主な理由として最も多かったのは、「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」で約3割を占めています。
「賃金の条件が良くなかった」は、21.8%で3位です。

入社時に賃金などの労働条件は確認するものの、実態には提示されていた条件と支給額が違っていたり、働きに対して賃金が見合っていなかったりする事態が考えられます。
新入社員にとって、入社してからどのような働き方になるのか、年単位で仕事のサイクルを把握するのは困難です。
入社する時には、労働条件を提示するだけでなくどういった働き方になるのかまで共有しておくことが大切です。

人間関係が良くない

「人間関係が良くなかった」という回答は、全体では2番目に多い回答でした。
しかし、勤続期間別にみると勤続1年未満のケースでは「人間関係が良くなかった」と回答した割合が最も高くなっています。
人間関係と一言で片付けても、人間関係は、上司や同僚なのか、顧客、取引先なのかによって背景が異なります。
社内のコミュニケーション不足が原因で人間関係不良になる場合も想定しなければいけません。

職場は1日の大半を過ごす場所であり、職場での人間関係が良くないと大きなストレスを感じます。中でもハラスメントや暴言がある職場では心理的安全性が下がります。
新入社員がオープンなコミュニケーションができずに、孤立した結果退職に至ってしまうかもしれません。

責任やノルマが大きい

「ノルマや責任が重すぎた」との回答も15.2%の人が選択しています。
まだ育成段階の新入社員に対して重すぎる責任やノルマを課すと、負担に耐えられず退職につながります。

「なぜ間違えた」、「○○はできているのになぜ達成できないのか」といったできない理由を問い詰める上司は珍しくありません。
こういった問いかけは、働いた経験が少ない新入社員にとっては強いプレッシャーです。心身ともに疲れ果てて退職してしまうことがあります。

キャリアアップの機会が少ない

新入社員は、「仕事を通じて成長したい」、「キャリアアップして夢をかなえたい」といった願望も持っています。
しかし、会社や業種によってはキャリアアップの機会が限られています。入社してから自分が描くキャリアアップが無理であると感じるケースもあるかもしれません。

入社前に希望していた部署や職種に就けない場合などは特にモチベーションが低下します。
将来のキャリアアップや成長がイメージできずに転職や退職につながることがあります。

新入社員の退職を防ぐための方法・成功事例


新入社員の退職は、多くの企業が抱えている問題です。ここからは新入社員の退職を防ぐための方法を紹介します。
成功事例もセットにして紹介しているので導入できないか参考にしてください。

採用時点におけるミスマッチを減らす

採用ミスマッチは、企業側と就職者側の認識、ニーズのズレが原因で発生します。ミスマッチを減らすためには、自社に関する情報発信が重要です。
就職者がどういった環境でどのような社員と働くかをイメージしやすくします。

また、インターンシップや体験型入社を導入したり実際に社員と話してもらったりする方法も効果的です。

【株式会社セラビ】自社の魅力の伝え方を工夫

株式会社セラビでは、より自社の事業、働き方にマッチした人材を採用するために、求人票やホームページでの伝え方にこだわっています。
自社の就業環境が的確に伝わるように社内での議論を重ね、毎回見直しと改良を繰り返しています。
就職者目線に立った気配りで自社の応募への裾野を広げるための施策です。

学生から社会人へのマインドセットを行う

学生から社会人になるためには、意識改革が求められます。
学生時代であれば、与えられた課題に取組みますが、社会人になれば自ら課題を設定して取り組まなければいけません。
単なる知識の詰め込みではなく、主体性を身に着けるための研修やアフターフォローが企業に求められています。

【九州環境建設株式会社】充実した社内教育による人材育成

九州環境建設株式会社では、未経験者を積極的に採用して育成する方針で社員が一丸となって人材育成に取り組んでいます。
自社のYouTubeチャンネルを開設して現場で撮影した作業内容や建設機械をアップするほか、いつだれがどの資格を取得できるかを事前に計画し、社員の挑戦を促しているのです。

メンター制度を設ける

メンター制度は、年次が近い先輩社員が新入社員、若手をサポートする制度です。
新入社員の精神的な不安をケアしたり、社内コミュニケーションを活性化したりする目的があります。

また、メンター制度でロールモデルとなる先輩社員自身も責任感や指導力の向上が期待できます。

【株式会社トレンディ茨城】チーム編成での人材育成

株式会社トレンディ茨城では、業務目的ごとにチームを編成し、新人教育に取り組んでいます。
総務担当が対象者全員と面談し、各自の強みや得手不得手を理解した上で、得意なことをもとにしてチーム分けを行いました。

この取組みで育成する側・される側双方の満足度が向上し、定着率が向上しています。

メンタルヘルスのケアを実施する

新入社員に限らず、社員のメンタルヘルスケアは企業の課題です。ストレスなどの要因でメンタルヘルスの不調に陥ると、体の健康状態も悪化して仕事にも支障があります。

メンタルヘルスの不調で集中力、注意力が低下すれば通常より事故の発生率も高まります。
メンタルヘルスケアの導入によって、従業員の心身の維持、向上が可能になり、ハラスメントや事故の予防につながるでしょう。

【社会福祉法人あいの土山福祉会】機械化やデータ分析でより働きやすい職場環境へ

介護業界は、腰痛や残業、メンタル不調から退職が多い業界です。そこでこの事例では、リフトなどの機械を積極的に導入して身体の負担を軽減しました。
さらに作業をマニュアル化して作業効率の向上を行うことで、残業の固定化を防いでいます。

メンタルヘルスケアとしては「トーキング」と呼称する面談を実施し、各従業員の悩みや問題を把握しています。

労働時間や評価制度を整備する

企業の労働時間や評価制度といった制度も新入社員の退職を防ぐために重要です。新入社員は、自分がどのように評価されているのか、公平な評価であるかを重視します。
評価基準が明確でなかったり、評価者のスキルが不足している感じれば、仕事の納得感がなくなってしまいます。

また、労働時間も企業によってはあいまいになりがちです。労働時間を正確に把握しなければ賃金計算も正確になりません。
長時間労働による心身の負担を予防するためにも労働時間は大切な意味を持ちます。労働時間制度を整備するには、法令順守や正確な記録のほか、適切な人員配置も必要です。

【株式会社シアンス】請負事業からの脱却で働き方の調整が可能に

株式会社シアンスは、創業以来大手情報通信会社からの請負いを中心として事業を進めてきた情報通信会社です。
労働時間が長引くことが常態化していたため、大手企業の再委託先から脱却し顧客と直接契約を結ぶ形の事業運営を目指しました。

自分たちで受注量、仕事を選ぶようになることで働き方、労働時間の調整が可能になり、残業時間も削減しました。

キャリアデザイン研修を取り入れる

新入社員の中には、将来への不安や不透明感から退職に至るケースがあります。そこで導入されているのがキャリアデザイン研修です。
キャリアデザイン研修は、自己認知と組織方の期待を踏まえて、現状のスキルと将来のキャリアについて考えるための研修プログラムです。
研修を通じてやりがいを持って働けるようになり、意欲向上や行動変容が期待できます。

【株式会社シニアライフアシスト】キャリアアップを促進する制度設立

従業員のキャリアアップを応援する制度として、「シニアライフサポーター制度」を創設した事例です。
指定した研修への参加や資格取得、社内試験合格で等級と給与が上がるようにした制度で資格合格者には報奨金も支給しています。
未経験からスキルアップして管理職になったり、パートから無期雇用社員に転換した事例もありモチベーション向上に貢献しています。

上司やOJTトレーナーの教育も行う

OJTは、業務を通じて知識や技術を教える育成方法です。しかし、上司やトレーナーとなる社員の経験が浅いと、業務の目的や意味を正確に伝えられないことがあります。

人に何かを教える仕事はいきなり誰しもできるものではありません。厳しすぎれば新入社員の負担が増し、甘すぎると知識や経験の定着が進まないことがあります。
人を育成させる立場になった人材には、育成するスキルを高めるための教育や研修も実施するようにしてください。

【株式会社ホテル末広】リーダー職を設置して定着率向上

この事例のホテルでは、人員配置を業務内容を変更し、少ない人員でも運営できる組織を目指しました。そこで部門統合に当たってリーダー職を配置しました。

リーダー職は、円滑なマルチタスクで指揮する役割を果たしています。
設置することで現場の希望や不満を把握できる上、リーダーの気配りによって定着率が向上しているようです。

まとめ・新入社員の早期退職を防ぎ、定着率を向上させよう

新入社員が退職しやすい会社は、労働条件や職場環境に問題を抱えているケースが多くあります。
新入社員の早期退職を防ぐために、コミュニケーション向上や制度の改善を目指せば、既存の社員も働きやすくなるでしょう。
新入社員が長く働きたいと思えるような会社の実現は、長期的な会社の成長にもつながります。まずは現状を把握してできることからスタートしてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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