社宅を経費にすることは可能?要件・計算方法・注意点をわかりやすく解説!

創業手帳

社宅は一定の条件を満たせば経費にできる


社宅は、福利厚生の一環として従業員や役員に住居を提供できる制度であり、一定の条件を満たせば家賃や管理費などを経費として計上することが可能です。
一方で、要件を正しく理解せずに運用すると、税務調査で経費として否認されるリスクもあります。
特に、役員社宅と従業員社宅では取り扱いが異なり、賃料相当額の計算方法にも違いがあります。

この記事では、社宅を経費計上するための基本的な要件や計算方法、経費として認められにくいケースなどをわかりやすく解説します。
社宅制度を適切に活用し、税務リスクを抑えながらコスト削減につなげたい場合は、ぜひ参考にしてください。

yajirushi【完全無料】経費削減と節税につながるポイントがわかる!「経費チェックリスト」

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

社宅を経費計上するための要件


社宅を経費として計上し、従業員や役員に給与課税されないためには、いくつか要件を満たす必要があります。ここで、社宅を経費計上するための要件について解説します。

従業員から賃貸料相当額の50%以上を徴収する

社宅制度を設ければどのようなケースでも節税につながるわけではありません。
その条件のひとつに、「家賃を無料にはせず、社宅に住む従業員から一定の金額を徴収する」ことが挙げられます。
ここでいう一定の金額とは、国税庁が定める賃貸料相当額の50%以上です。例えば賃貸料が10万円だった場合、最低でも5万円以上は徴収しなくてはなりません。

賃貸料相当額の計算方法

賃貸料相当額の計算方法は、国税庁によって定められており、一般の従業員用の社宅と役員社宅によって異なります。
従業員用の社宅における賃貸料相当額は、以下の計算を合計した金額です。

①その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
②12円×(その建物の総床面積(㎡)÷3.3㎡)
③その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

①~③の合計額が賃貸料相当額となるため、会社はその50%以上を従業員から徴収することになります。

例えば、建物の固定資産税の課税標準額が300万円、敷地の固定資産税の課税標準額が500万円、建物の総床面積が60㎡だったとします。
上記の計算式に当てはめると、以下の通りです。

①300万円×0.2%=6,000円
②12円×(60㎡÷3.3㎡)=218円
③500万円×0.22%=11,000円

①+②+③=17,218円(賃貸料相当額)
17,218円×50%=8,609円

役員の場合は賃貸料相当額の徴収が必要

役員に社宅を貸与した場合、従業員と同様に一定額を家賃として徴収していれば給与課税を回避しつつ、経費計上できます。
ただし、役員の場合は建物の規模や社有社宅・借り上げ社宅によって計算方法が異なるため、注意が必要です。

例えば建物の耐用年数が30年を超えている場合は床面積が99㎡以下、耐用年数が30年以下の場合は床面積が132㎡以下だと「小規模住宅」と判断され、従業員用の社宅と同じ計算方法が用いられます。
小規模住宅ではなかった場合、社有社宅か借り上げ社宅によって用いられる計算式が異なります。

社有社宅の計算式は、以下の①と②の合計額の12分の1が賃貸料相当額です。

①その年度の建物の固定資産税の課税標準額×12%
※耐用年数が30年を超えていた場合は10%で計算
②その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%

一方、借り上げ社宅の場合は、家主に対する家賃の50%か、社有社宅の場合で算出した金額のいずれか多いほうを賃貸料相当額に設定します。
なお、豪華社宅に関しては、一般的な社宅と認められないため、一般的な市場価格の家賃と同程度の金額を賃貸料相当額として扱う必要があります。

賃貸借契約は法人名義で行う

社宅を経費として計上するためには、不動産の賃貸借契約を交わす際に法人名義で行わなくてはなりません。
もし経営者や役員の個人名義を使って賃貸借契約を交わしてしまうと、社宅が経費として認められなくなる可能性もあるため、必ず法人名義で行うようにしてください。

経費にできるのは家賃部分のみ

経費計上の要件として、経費にできるのは家賃部分のみという要件もあります。
例えば家賃とは別に駐車場代を支払わなくてはいけない場合、会社は家賃と駐車場代を合わせて経費にすることができないため、従業員に個別で負担してもらう必要があります。
駐車場代以外にも、光熱費などは経費として認められないため、家賃部分のみで経費計算を行うようにしてください。

yajirushi【完全無料】経費削減と節税につながるポイントがわかる!「経費チェックリスト」

社宅にかかる費用はどこまで経費・節税につながる?


社宅制度を活用することで、企業は住居に関する支出を経費として計上でき、結果的に節税効果が期待できます。
ただし、すべての費用が無条件で経費になるわけではなく、税務上認められる範囲を正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、社宅に関連して経費計上できる主な費用と、その考え方について解説します。

社宅関連の費用を経費計上できるもの

社宅として賃貸物件を借りている場合、会社が負担する家賃は原則として経費計上が可能です。
あわせて、共益費・管理費、更新料、火災保険料なども、社宅の使用に直接関係する費用として経費に含めることができます。
また、会社名義で契約している場合は、仲介手数料や礼金についても、支出の性質に応じて経費処理が認められます。

ただし、従業員や役員から一定額の賃料を受け取っている場合は、その分を差し引いた会社負担分のみが経費となる点に注意が必要です。
個人的な使用に該当する部分まで全額を経費にすると、否認される可能性があります。

購入した社宅は減価償却費で計上できる

社宅を購入した場合、その取得費用を一括で経費にすることはできません。
建物部分については、法定耐用年数に基づき、毎年減価償却費として計上していくことになります。
一方、土地部分は減価償却の対象外となるため、建物と土地を明確に区分して処理することが重要です。

減価償却費は、毎年安定して経費計上できるため、長期的な節税効果が期待できます。
ただし、私的利用の割合が高いと判断された場合には、全額が経費として認められないケースもあります。社宅としての実態を備えていることがポイントです。

社宅取得のための借入金利子も損金算入できる

社宅を取得するために金融機関から借入れを行った場合、その借入金にかかる利息についても、原則として損金算入が可能です。
これは、社宅が事業に関連する資産と認められるためで、支払利息は経費として処理できます。

ただし、借入金利子も損金算入する場合には、借入金が社宅購入に直接関連していることを明確にしなくてはなりません。
また、利子をどのように・どれくらい計上したのかも適切に記録を行い、税務署から問い合わせにもきちんと答えられるようにしておくことが大切です。

yajirushi【完全無料】経費削減と節税につながるポイントがわかる!「経費チェックリスト」

社宅制度の基礎知識


企業の福利厚生として取り入れられる社宅制度は、住宅手当とどのような違いがあるのでしょうか。
また、借り上げ社宅と社有社宅の違いについても知っておくことが大切です。ここでは、社宅制度の基礎知識について解説します。

社宅と住宅手当との違い

福利厚生の中でも住まいに関するものとして、社宅制度と住宅手当が挙げられます。
社宅制度の場合は会社が借りる、または購入した住宅を従業員に貸与する制度で、住宅手当は給与に家賃補助分を上乗せして支給するものです。

社宅制度と住宅手当の大きな違いとして、税金の扱い方が異なります。
社宅制度では賃貸料相当額の50%以上を従業員が負担することによって給与課税されなくなりますが、住宅手当は給与に上乗せされるため、所得税の課税額も引き上げてしまいます。
また、給与額が上がることで社会保険料の負担も増加してしまう可能性が高いです。
そのため、福利厚生の住まいに関する制度の中でも、節税効果が高いのは社宅制度といえます。

借り上げ社宅・社有社宅の違い

社宅は主に「借り上げ社宅」と「社有社宅」の2種類に分けることが可能です。それぞれの特徴は以下のようになります。

・借り上げ社宅
企業が法人名義で賃貸物件を借り、従業員に提供する形の社宅です。
法人が直接物件を所有せず、賃貸借契約を介して住居を提供することになるため、初期費用を抑えられるというメリットがあります。
法人が負担する家賃部分は損金として扱うことができ、経費計上によって法人税の課税対象となる所得を減らすことが可能です。

・社有社宅
社有社宅は、企業が所有する不動産を提供する形の社宅です。購入した物件を従業員に貸し出すことになります。
物件を購入した際に発生した金額は、減価償却費として計上することが可能です。
資産を取得しながら、その資産にかかる費用を経費として処理できることから、長期間にわたって節税効果も期待できます。
また、社有社宅は法人が所有する資産であり、将来物件の価値が高騰した場合に、資産価値を増加させることも可能です。

yajirushi【完全無料】経費削減と節税につながるポイントがわかる!「経費チェックリスト」

社宅を利用するメリットは節税だけじゃない!


社宅制度というと「節税対策」というイメージを持たれがちですが、実際にはそれ以外にも企業と従業員の双方にとって多くのメリットがあります。
社宅を利用することで得られる主なメリット3つを紹介します。

採用・人事面でのメリット

社宅を用意している企業は、求職者に対して「住居の心配が少ない会社」という安心感を与えられます。
特に新卒採用や地方からの転職者にとって、住まいの確保は大きなハードルとなるため、社宅制度は他社との差別化要素になりやすいポイントです。

また、入社後すぐに住居を提供できることで、入社手続きや引越しにともなう負担を軽減でき、スムーズな就業開始につながります。
結果として、定着率の向上や離職防止にも寄与する制度です。

従業員の経済的・通勤負担を軽減できる

社宅を利用することで、従業員は一般の賃貸物件を個人契約する場合と比べ、家賃負担を抑えられるケースが多いです。
家賃が下がれば生活コスト全体が軽減され、可処分所得の増加にもつながります。

さらに、勤務地の近くに社宅を用意することで、通勤時間や交通費の削減も期待できます。
通勤負担が軽くなることで、ワークライフバランスの改善や業務効率の向上といった効果も見込めるでしょう。

社会保険料の負担が軽減される場合もある

社宅制度の運用方法によっては、従業員の給与として扱われる金額を抑えられるため、社会保険料の算定基礎額が低くなる場合があります。
その結果、従業員だけでなく、会社側の社会保険料負担も軽減されるかもしれません。

ただし、会社が負担する家賃と従業員から受け取る賃料のバランスを誤ると、給与課税や社会保険料の対象と判断されるリスクもあります。
節税効果を期待する場合は、税務・社会保険上のルールを踏まえた適切な設計が重要です。

yajirushi【完全無料】経費削減と節税につながるポイントがわかる!「経費チェックリスト」

社宅が経費として否認されやすいケース


社宅制度を正しく運用すれば、かかったコストを経費として計上できますが、場合によっては否認されてしまう可能性もあります。
経費として否認されやすいのはどのようなケースなのかも、事前に確認しておいてください。

賃貸料の徴収が形式的・不十分な場合

社宅にかかる費用を経費として計上するためには、従業員や役員から賃貸料相当額の50%以上を徴収する必要があります。
しかし、賃貸料相当額の50%以下しか徴収していなかったり、名目上でしか徴収していない、または無償で貸与していたりする場合は経費として否認される可能性があるため、注意が必要です。

例えば、従業員に社宅を無償で貸与していた場合、従業員の給与には賃貸料相当額、50%以下で貸与していた場合は賃貸料相当額との差額分が課税されることになります。
これは、貸与した社宅は給与の一部とみなされてしまうためです。
従業員の負担も考え、賃貸料の徴収を形式的にしか行わなかったり、徴収額が不十分だったりすると、かえって従業員の税負担を増やしてしまうことになるため注意してください。

実態のない社宅運用と判断されるケース

法人名義で賃貸借契約を結んでいたとしても、実際に従業員が住んでおらず、実態のない社宅を運用していると判断された場合、経費として認められない可能性があります。
例えば、自宅とは別に従業員のセカンドハウスや別荘として運用していた場合、「社宅とする建物に生活の拠点がない」と判断できます。
そもそも社宅は、業務を行う上で必要な居住環境であることが重要です。
セカンドハウスや別荘などは業務上での必要性が低いため、経費として計上しても認められない可能性があります。

役員の豪華社宅として否認されるケース

役員社宅の場合、豪華社宅と判断されてしまうと、いくら法人名義で不動産を所有していたとしても経費として計上できません。
豪華社宅と判断されてしまう基準は以下の通りです。

  • 床面積240㎡を超えている
  • 一般住宅には設置されていないプールや内装などがある
  • 役員個人の趣味・嗜好を著しく反映した設備がある など

また、住宅の床面積だけでなく、住宅の取得価額や支払い賃貸料の金額、内外装の状況なども踏まえて、豪華社宅に該当するか判断されることになります。
ただし、タワーマンションなどに付属するプールや豪華な内装などは、入居者全員で共用する形となるため、豪華社宅には該当しないとされています。

yajirushi【完全無料】経費削減と節税につながるポイントがわかる!「経費チェックリスト」

社宅を用意する場合のポイント・注意点


社宅制度は、正しく運用すれば節税や福利厚生の充実につながりますが、運用方法を誤ると税務上の否認リスクが高いです。
ここでは、社宅を用意する際に押さえておきたいポイントと注意点を解説します。

社内規定に社宅制度を明記する

社宅を経費として認めてもらうためには、社宅制度が会社の正式な福利厚生制度であることを明確にする必要があります。
そのため、就業規則や社宅規程などの社内規定に、対象者や入居条件、賃料負担の考え方などを具体的に明記しておくことが重要です。
また、社内規定は定期的に見直し、企業の現状や法令の改正などに合わせて適宜更新していくことも大切です。

役員の社宅は豪華社宅と小規模住宅で扱いが異なる

役員社宅については、物件の規模や家賃水準によって税務上の扱いが大きく異なります。
一定の床面積や家賃水準を超える豪華社宅と判断された場合、賃料相当額が高額となり、会社負担分が給与として課税されるリスクが高まります。

一方で、小規模住宅に該当する場合は、税務上定められた計算方法に基づき、比較的低い賃料相当額での処理が可能です。
役員社宅を用意する際は、物件選びの段階から豪華社宅に該当しないかを確認し、慎重に検討することが重要です。

家具や備品の無償貸与は課税される可能性がある

社宅に設置する家具や家電、備品を会社が無償で貸与する場合、その内容によっては従業員や役員に対する経済的利益とみなされ、課税対象となることがあります。
特に高額な家具や生活必需品の範囲を超える備品については注意が必要です。
業務上必要と認められる最低限の設備であれば問題になりにくいものの、私的利用が主と判断されると、給与課税や経費否認につながる可能性があります。
備品の範囲や負担区分についても、社内でルールを決めておくと安心です。

自宅を社宅にすることはできない

原則として、役員や従業員がすでに所有・居住している自宅を社宅として扱うことは認められていません。
自宅を会社名義の社宅として経費計上すると、私的利用と判断されやすく、家賃相当額や関連費用が否認されるリスクが高くなります。

たとえ会社が家賃相当額を支払ったとしても、実態が個人の自宅である場合は、給与や役員報酬として課税されるケースが一般的です。
社宅として認められるためには、会社が契約主体となり、社宅としての実態を備えていることが大切になります。

yajirushi【完全無料】経費削減と節税につながるポイントがわかる!「経費チェックリスト」

まとめ・社宅の要件を理解して経費化・節税へつなげよう

社宅は、一定の要件を満たすことで家賃や関連費用を経費として計上でき、節税だけでなく採用力の向上や従業員満足度の向上にもつながる制度です。
一方で、役員社宅の扱いや賃料相当額の計算、社内規定の未整備など、運用を誤ると経費否認や課税リスクが生じます。
税務上のルールと実態の両面を正しく理解し、自社に合った形で社宅制度を設計・運用することが、無理のない経費化と節税を実現するポイントです。


経費チェックリスト

関連記事
福利厚生費で節税できる仕組みとは?非課税・課税対象をご紹介!
不要な会社の備品は売却しても問題ない?正しい経理処理・仕訳例を解説

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
無料冊子
創業手帳冊子版(無料) 補助金ガイド 創業手帳woman 飲食開業手帳