社外取締役の報酬の決め方!相場や設置の必要性について解説

創業手帳

社外取締役の相場は?社外取締役候補者を探す方法も紹介します


取締役というと創設メンバーや社内の人間が務めるイメージがありますが、社外の人物を設置することも可能です。
中小企業やスタートアップ・ベンチャー企業でも、社外取締役を設置するニーズが高まっています。

社外取締役を設置する場合、社内の取締役と同様に役員報酬を設定しなければなりません。
そこで今回は、報酬の相場から決め方、社外取締役候補者を探す方法まで解説するので、ぜひ参考にしてください。

社外取締役とは?


社外取締役とは、どのようなポジションなのか詳しく知らない方もいるかもしれません。まずは、基本知識として、社外取締役の役割や設置が必要なケースを解説します。

社外取締役の役割

社外取締役は、会社の役員や従業員などの社内関係者以外から選出される取締役です。
社内取締役とは異なり、内部のしがらみや利害関係を持たないため、客観的に経営状況を監督するために設置されています。健全な企業経営の実現に欠かせない役職です。

社外取締役の役割は、会社や株主の意見を取締役会で適切に反映させることです。客観的に事業戦略・計画の内容に対する助言・審査・承認を担います。
また、不正行為や不祥事を防ぐために、業務執行や経営の監視をすることも社外取締役の役割です。

社外取締役の設置が必要なケース

有価証券報告書の提出が必要となる上場企業の場合、会社法に基づいて社外取締役の設置が義務付けられています。
人数の規定は特にありませんが、最低1名の設置が必要です。

社外取締役の主な設置対象は、上場している大企業が中心です。
そのため、経営者が大株主となっているケースが多い中小企業やスタートアップ企業、ベンチャー企業では、あまり設置されていません。

しかし、未上場企業が上場する際の審査でも社外取締役の設置が条件となっています。将来的に上場を目指しているのであれば、審査前から社外取締役の設置が必要です。

社外取締役の報酬事情


社外取締役を設置する場合、役員報酬を検討しなければなりません。ここで、日本の役員報酬の基本や社外取締役の報酬相場についてご紹介します。

日本では固定報酬が基本

日本企業では、役員報酬は固定制が一般的です。固定報酬の場合、毎月決められた金額で報酬が支給されます。
たとえ、監査委員などを兼任している場合でも報酬額は変動せず、一律の金額で支払われるケースがほとんどです。

固定報酬では、役員に応じて一定額を支給するシングルレート方式と、100万円~150万円というように一定幅で金額を設定するレンジ方式があります。

シングルレート方式では、役員の役割と責任から報酬の対応を明確にできることがメリットです。
ただし、同じ役割の中で差分を表せないため、報酬が変動しやすい社外取締役に対しては柔軟に対応できないことがデメリットです。

一方、レンジ方式は報酬に幅を持たせるため、報酬額の決定に柔軟性があります。客観性を担保するために、報酬額の決め方や一定の基準、条件を決めておくことが重要です。

社外取締役の報酬相場

社外取締役の報酬額が企業によって異なりますが、過去の中央値や平均報酬額を参考にすると相場は600~800万円です。
2022年度の東証プライム上場企業での報酬の中央値は840万円となっており、前年と比べて5%上昇していました。

また、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)が改定された2018年と比べると、報酬額が17%も上昇しています。
このデータから、社外取締役の報酬水準は年々上昇傾向にあるようです。

その一方で、無報酬で社外取締役を引き受けている人もいます。
無報酬で引き受ける理由は様々ですが、社外取締役の経歴や経験を積むことを目的としていることが多いようです。
試験的に社外取締役の導入したい場合は、無報酬で引き受けてくれる人を探すのもひとつの手です。

報酬は株式総会・取締役会で決定する

社外取締役の報酬を含む役員報酬の決め方にはルールがあります。
会社法や法人税法によって定款、または株式総会の決議で定めるとされているので、それに従って報酬を決めなければなりません。

多くの企業は定款ではなく、決算日から3カ月以内に実施される株式総会での決議で決定しています。
株主総会で役員報酬の総額を決めて、その後に取締役会を開いて個別に報酬額を決定する流れが一般的です。

社外取締役の報酬を決める際のポイント


社外取締役の報酬を決める際は、様々なことに考慮する必要があります。考慮したいポイントは以下の3点です。

社内取締役の報酬額とのバランスを考慮する

報酬額を考える際、社内取締役と社外取締役の間で報酬の差が大きく開き過ぎないようにすることが大事です。
社外取締役は業務執行を監督する立場であり、実際の経営や業務執行は社内取締役が中心となって担うことになります。
仕事が少ないのに、社内取締役よりも高額な報酬を設定すると不満の声が上がってしまう場合があるので、過度な金額差には注意が必要です。

社外取締役のモチベーションを保ちつつも、ほかの取締役と従業員から不満を持たれない報酬額を考えることが重要です。

社外取締役のスキルや職種に見合う金額にする

報酬を決める際は、社外取締役のスキルや職種に考慮することもポイントです。社外取締役を務める人は、経営や特定の分野に高い知見を有している場合が大半です。
そのため、能力や本職に見合った報酬を設定しないと、社外取締役を募集したところで確保は難しくなります。

選出した相手のレベルが高いほど企業間の獲得競争は激しくなるので、高水準の報酬設定が求められます。
特にほかの企業で役員をやっている人や、弁護士・公認会計士・税理士など高度な資格が必要な仕事をしている人は、本職で得ている収入に考慮して報酬額を決めるのが妥当です。

反対に社外取締役としての経験が浅い場合は、それに考慮して水準を下げたり、無報酬で引き受けてもらったりできる可能性があります。

業務の拘束時間も考慮する

社外取締役に、どれだけの関与を求めるかによっても報酬額は変わってきます。経営にどれだけ関与してもらいたいかは、会社ごとに考えは異なります。

例えば、積極的に経営へ参画してもらうことを望むのであれば、社外取締役の仕事は多くなり、その分の拘束時間は長くなるかもしれません。
そのため、拘束時間の長さに考慮して報酬も高めに設定するのが望ましいといえます。

一方、深く関与を望まず設置義務を果たしたいだけであれば、社外取締役の仕事は少ないので報酬の水準を下げることができます。

ベンチャーやスタートアップ企業に社外取締役は必要?


上場企業は社外取締役の設置義務がありますが、未上場の企業は任意での設置となります。
まだ創業から日の浅いベンチャー企業やスタートアップ企業の場合、社外取締役は設置すべきか悩みどころでしょう。
ここで、ベンチャー・スタートアップ企業での社外取締役の必要性や役割をご紹介します。

ベンチャー・スタートアップ企業でも社外取締役の需要は高まっている

近年は、ベンチャー企業やスタートアップ企業でも社外取締役を設置するケースが増えています。
社外取締役が求められている理由は、ベンチャーキャピタルの増加で企業に向けて積極的な投資が行われており、上場予備軍となる企業が急激に増えているからです。

ベンチャーキャピタルがベンチャー・スタートアップ企業に投資する目的は、企業が上場した際に株式や事業を売却して利益を得ることです。
その目的を実現するために、投資先に対して社外取締役を設置して企業統治をしてもらいたいという考えがあります。

ベンチャー・スタートアップ企業側も、ベンチャーキャピタルのおかげで株式公開を目指しやすい環境になってきました。
社外取締役の設置は上場の審査の条件にもなっているので、設置の需要が高まっています。

ベンチャー・スタートアップ企業での社外取締役の役割

ベンチャー・スタートアップ企業での社外取締役の役割は、客観的に経営状況を監視するだけではなく、企業や事業、株価の価値上昇を支援することです。
特にベンチャーキャピタルから社外取締役が派遣される場合、株主の代表として企業価値向上のためのアドバイスを求めることができます。

また、社外取締役は常駐せずに取締役会や経営者会議が開かれる際に出席し、経営陣のサポートを行うのが基本です。
経済産業省の社外取締役ガイドラインでは、ベンチャー・スタートアップ企業に求められる社外取締役の役割は以下のようになっています。

  • 経営戦略や計画の策定への関与
  • コンプライアンス・不祥事対応への関与
  • 利益相反管理への関与
  • 経営陣の指名や報酬プロセスへの関与
  • 個別の業務執行への関与

上記の中で社外取締役が特に求められる役割は、経営戦略・計画の策定、コンプライアンス・不祥事の対応です。
経営に関する知識を持つ外部の人材を招くことができれば、早い段階から安定した経営や企業価値の向上、スムーズな株式公開の実現を目指せます。

社外取締役候補を探す方法


企業統治や上場を目指して社外取締役を設置したい場合、その候補者の選出が必要です。ここで、社外取締役候補者を探す方法を5つご紹介します。

友人知人から紹介してもらう

自分の人脈を活かして社外取締役候補を探すのもひとつの手段です。見ず知らずの相手を社外取締役に選ぶのは、リスクの高い行為ともいえます。
積極的に経営へ参画してもらいたい場合、相手の人柄やビジネスに対する考え方を十分に理解しておく必要があります。

友人や知人など一定の信頼関係を持っている相手であれば、自分の考えに合った人物を候補者として紹介してもらえるかもしれません。
また、候補者も紹介者との関係性や事情を知った上での紹介となるので、好意的に引き受けてもらえる場合があります。

セミナーやビジネスコミュニティから探す

セミナーや異業者交流会、ビジネスコミュニティに参加して社外取締役候補を探す方法もあります。
セミナーや異業者交流会には経営者や役員が参加しているので、そのような人物との人脈を築くことが可能です。
そのつながりを通じて社外取締役を募集すれば、引き受けてくれる経営者や役員が現れる可能性があります。

また、ビジネスコミュニティにも様々な人材が登録されており、その中には社外取締役の採用を目指している人もいます。
コミュニティによっては、企業側と人材のカジュアル面談の機会が設けられていることがあるので、社外取締役の採用に役立つでしょう。

社外取締役専門のマッチングサイトを利用する

実績が豊富な社外取締役を採用したい場合、ベンチャーキャピタル経由でも確保できない場合があるかもしれません。
そのため、レベルの高い社外取締役を探したい時は、専門のマッチングサイトを利用すると効率良く探せます。

社外取締役専門のマッチングサービスにも様々な形態があり、インターネット上で企業側と社外取締役候補者のマッチングを仲介する形やエージェントサービスを利用できるところもあり、様々です。
その中から、自分に合ったサービスを選べます。

転職エージェントや求人サイトを活用する

転職エージェントや求人サイトは、正社員・アルバイト・パート・契約社員などの求人紹介を行うサービスですが、役員以上のハイクラスキャリア向けの求人紹介を行っているところもあります。
そのため、社外取締役候補を探す手段として活用できます。

転職エージェントや求人サイトから探す場合は、エグゼクティブ向けの求人を取り扱うサービスを利用するのがポイントです。
一般向けのサービスからも募集は可能ですが、ターゲットとは異なる人材から応募される場合があります。
採用において余計な工数を増やさないためにも、狙ったターゲットからの応募に期待できるエグゼクティブ向けのサービスを活用してみてください。

弁護士会の社外取締役候補名簿から探す

各弁護士会では、社外役員の経験者や大手・中堅の企業法務事務所の弁護士を中心に候補者名簿を作成している場合があります。
社外取締役や監査役を志望する弁護士の情報が集約されているので、こちらも候補者探しに活用できます。

最近はダイバーシティの観点から、女性の社外取締役を登用するケースも増えてきました。
日本弁護士連合会では女性弁護士の候補者名簿を作成しているので、女性の社外取締役を探したい時は参考にしてみてください。

まとめ

上場企業で設置されている社外取締役は、企業統治や上場を目的に中小企業やベンチャー・スタートアップ企業での設置も進んでいます。
社外取締役の報酬は600~800万円が相場で、水準は年々上昇傾向にあるのが現状です。
しかし、実際に設置して報酬を決定する際は、相手の能力・経験・職種だけでなく、どれだけ経営に関与するかという点を考慮してください。また、社内からの不満を生まない金額を設定することも大切です。

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(編集:創業手帳編集部)

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