ワンオペ飲食店の始め方|一人で回すスモールビジネスの極意

飲食開業手帳

低コストで飲食店開業の夢を実現しよう


「人を雇う余裕はないけど、自分の店を持ちたい」
そのような想いから、ひとりで始められる“ワンオペ飲食店”が注目を集めています。

物価高や人手不足の影響を受ける今、開業リスクを抑えてスタートする選択肢として「ワンオペ経営」は合理的かつ現実的です。省コストで自由度も高く、うまくいけば自分らしいペースで長く続けられるのも魅力です。

本記事では、ワンオペ飲食店の開業に必要な準備や、効率的に回すためのポイント、注意すべき落とし穴まで、実践的なコツをわかりやすく解説します。

ワンオペでの飲食店経営は、効率と工夫が何より大切です。
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ワンオペ飲食店とは?どんな形が向いている?


ワンオペとは、ワンオペレーションの略語で、飲食店の営業を従業員1人で回すことを指します。
料理の調理をはじめ、接客や掃除、レジ業務までを1人でこなすスタイルです。従業員を雇う必要がないため、人件費を大幅に削減できるメリットがあります。

効率的な業務が求められる形態ですが、座席数を限定すれば回転率を上げつつ作業負担を軽減することが可能です。
以下では、1人で回しやすい飲食店の業態例を紹介していきます。

カウンター形式の専門店

カウンター席のみの構成にすれば、オーダーや配膳、片付けなどをすべてカウンター内でできるので移動時間が短縮され作業効率が良くなります。
顧客とのコミュニケーションが取りやすい点も魅力です。

専門店の内容としては、ラーメンやカレー専門店が考えられます。調理手順が確立されており、作業もシンプルなので効率的なオペレーションが可能です。
提供時間も短いので回転率が高くなり、多くの顧客が来店できる可能性も期待できます。
特にランチやディナーなど、ピーク時には効率的な回転が求められるので、カウンター形式のお店は魅力が高いです。
メニューを単品に絞ることで仕込み時間を短縮でき、営業中の作業負担を軽減することも可能です。

テイクアウト・デリバリー専門店

テイクアウトやデリバリー専門のお店は、店内での接客や清掃、飲食提供の手間が少ないので、ワンオペに向いた飲食店です。
中でも弁当やサンドイッチ販売は接客時間を最小限に抑えられるため1人でも十分対応可能です。

また、店内飲食スペースが不要でキッチンや調理器具もコンパクトにまとめれば、家賃を抑えつつ調理に集中できる環境を作れます。
事前注文システムを活用すれば、待ち時間なく商品を提供できるため効率性向上に役立つでしょう。

キッチンカー・移動販売

1つの場所にとらわれることなく、好きな場所で飲食店を展開できるキッチンカーもワンオペに向いた営業形態です。
物件を用意する必要がなく、キッチンカーを用意するだけで開業できます。
車は購入以外にも借りることが可能なので、費用を抑えたい場合はレンタルを検討してみてください。

また、イベントでの出店では短時間で高売上を狙える可能性があり、効率的な収益確保が可能です。
メニュー数を絞れば、車内での作業負担を最小限に抑えることも可能なので、効率良くサービスを提供できる形態です。

間借り・シェアキッチン営業

既存の飲食店の空いているスペースや時間帯を利用して、新しい飲食店を展開する形態を間借りといいます。
夜間のみ営業しているバーの店舗を借りて、ランチのみ営業している飲食店をオープンしたり、昼間にカフェとして営業している店舗を借りて夜間に別の飲食店を展開したりするケースが一般的です。
店舗を自分で用意する必要がないため、初期費用を大幅に節約できます。ランチタイムのみ、モーニングのみなど、限定営業によって無理のない運営が可能な点も魅力です。
設備投資が最小限で済むため失敗リスクを抑えながら飲食業に挑戦できる形態です。

シェアキッチンは複数の人が共同で利用できるキッチンスペースを指します。
間借りと同じように初期費用を抑えることができ、シェアをしている同業者とのつながりがあるので、情報交換やコミュニケーションによってアイデアが生まれる可能性もあります。

スイーツ・ドリンク専門店

スイーツやドリンクの専門店もワンオペ飲食店に向いている業務形態です。
クレープやたい焼きなどの単品スイーツは調理工程がシンプルで1人でも回しやすい特徴があります。
コーヒースタンドやタピオカドリンク店は、省スペースでも営業が可能で、高回転率を実現できる点が魅力です。
冷凍生地や既製品を活用すれば、仕込み時間を短縮し営業時間の延長も検討できます。

ワンオペ飲食店を始めるための準備


ここからは、ワンオペ飲食店を開業するために必要な準備の行程を解説していきます。どういった方法で営業を開始できるのか把握するために役立ててください。

1. 店舗形態の選定

まずは、どういった店舗で営業を行うかを決めていきます。前述したように、カウンター形式やキッチンカー、間借りなど、様々な方法で飲食店を展開することが可能です。
自分の営業スタイルや予算に合わせて選ぶことで失敗を防げます。

例えば、予算が少なく初期費用を抑えた開業を目指しているなら、キッチンカーや間借りでの開業がおすすめです。
店舗を持つ場合には、広すぎる店舗だと管理や運営が難しくなるため注意してください。調理スペースから提供カウンターまでの動線が数歩以内に収まる設計が理想的です。

また、10坪未満の小規模店舗なら家賃負担を軽減しつつ1人でも管理しやすい範囲となります。
ただし、狭すぎると動線が悪くなり、作業効率も低下してしまうため、ある程度余裕を持ったほうが営業しやすいと考えられます。

2. 設備投資は”最小限かつ導線重視”

飲食店をオープンするには冷蔵庫や調理器具といった設備も必要です。
例えば、業務用冷蔵庫や加熱機器は中古品を選ぶことで初期費用を半分程度に削減できます。
居抜き物件を活用すれば、厨房といった店舗内の主要な設備が残っているため、費用の節約が可能です。

ただし、飲食店においては導線を意識した設備投資が重要です。
食材の取出し、調理、提供までの導線を意識して設備を配置することで、効率良く作業を行えるため、満足度の上昇にもつながります。
カウンター形式やセルフスタイルを採用すれば配膳の手間と時間を大幅にカットできます。
厨房内の移動距離を最短にする配置により作業効率を向上させることが可能です。

3. メニューを決める

ワンオペ飲食店の場合、効率的に提供できるメニュー作りが大切です。
メニューが多ければ用意する食材が多くなるので保管するスペースが必要になるだけではなく、調理にも時間がかかってしまいます。
「短時間で出せるか」「冷凍・作り置きできるか」を選定基準にメニューを選定してください。

ワンオペの場合、仕込み・提供がシンプルなメニューから始めるのが基本です。
季節限定・日替わりなどは種類を増やしすぎず、売れ筋に特化して絞り込むのがおすすめです。
また、「ドリンク・ミニスイーツ付」といったようにセットメニュー化にすると、単価アップを狙えます。

ワンオペ経営を支える省力化・効率化の工夫


ワンオペでの飲食店経営を支える工夫や効率化するための方法などを紹介していきます。

1. 注文・会計の省人化

業務の負担を減らすためにもデジタルツールの活用を検討してみてください。
モバイルオーダーやセルフ会計アプリを導入することで、接客時間を大幅に削減できます。
LINEミニアプリやQRコード注文システムで顧客の待ち時間と店主の負担を同時に軽減することも可能です。

また、SquareやAirレジなどのPOSシステムは、売上管理と会計業務を自動化してくれるツールです。省人化を目指すためにも積極的に活用してください。

2. 調理・洗い物の省力化

調理や洗い物を省略可するためのポイントとして、ワンプレートメニューの採用が挙げられます。
小皿をたくさん使用するメニューや、複数の調理器具を使う料理は見た目が華やかになりますが、洗い場の作業を多くすることがデメリットです。
しかし、ワンプレートメニューであれば使う食器が限られるので洗い物の負担が軽減されます。

業務用冷凍食材やセミ調理品を活用すれば、調理時間の短縮と味の安定化の両立が可能です。
使い捨て容器の部分的採用で洗い物時間をゼロにする選択肢も検討してみてください。

3.営業時間の工夫

営業時間の工夫もワンオペ営業では必要です。ランチのみや夕方のみの短時間営業にすれば、体力的負担を軽減しつつ収益性を確保できます。
週3~4日営業のスタイルを採用すれば、仕込み日と休息日を確保することができるので、長期継続の秘訣となるかもしれません。

繁忙時間帯に絞った営業を行えば、効率的な売上確保と顧客満足度向上を実現できます。

4.仕込み作業の効率化

飲食店の調理作業では仕込みが大半を占めているといわれています。そのため、効率の良い仕込みができるよう工夫することも大切です。

営業日前日にすべての仕込みを完了させることで営業当日の負担を大幅に軽減できます。
冷凍保存可能な食材は週末にまとめて仕込むことで平日の作業時間を短縮することが可能です。

段取りとしては、時間がかかるものから仕込みをスタートし、食材を切る・下処理をするといった作業はまとめて行うことがポイントです。
調理工程を標準化しチェックリストを作成すれば作業漏れを防ぎ効率性の向上を目指せます。

5. メニュー数を限定

メニューを3~5品などに絞ると、仕込み時間を短縮し品質の安定化を図れるのでおすすめです。
メニューの幅を広げたいのであれば、トッピングでアレンジを加えてみてください。

例えば、ハンバーガーのお店であれば、トッピングとしてトマトやアボカド、チーズなどを加えれば豊富なメニューの展開が可能です。
事前仕込みと冷凍保存を活用すれば営業中の調理時間を大幅に短縮することができます。

6.在庫管理の簡素化

在庫管理は、食品ロスや適切な仕入れを行うためにも大切な作業です。
食材の発注は週2回程度に固定することで、計画的な仕入れができるので食材ロスを最小化できます。

また、スマートフォンアプリを活用した在庫管理を行えば、発注ミスや過剰在庫を防げます。
廃棄コストの削減を目指したいなら、賞味期限の短い食材から優先的に使用する仕組みを確立して作業を実施してください。

ワンオペでも集客できる!小規模店舗のファンづくり


ワンオペでの飲食店経営時に役立つ集客方法を解説していきます。

SNSを活用した情報発信

SNSを活用すれば、低コストでも広範囲なプロモーションが可能です。
リアルタイムの情報を発信できるので、新メニューやイベントの開催、キャンペーンなどを即座に共有できるため、期待感アップに役立ちます。

InstagramやThreadsでは店主の人柄や手作り感が伝わる投稿で親近感を演出可能です。
Instagramは写真との相性が良いので、料理の画像をおしゃれに発信できれば注目されやすくなるでしょう。

また、調理過程や食材へのこだわりを発信することで商品の価値を効果的にアピールできます。
定期的な投稿により顧客との接点を増やせば、リピート来店のきっかけ作りにも役立ちます。

地域密着型の顧客関係構築

ワンオペ飲食店の場合、地元密着型の運営で常連客を大切にする戦略によって、安定した売上基盤の構築が可能です。
顧客とのコミュニケーションを大切にすることでリピートにもつながります。
地域イベントへの参加や協賛によって、店舗の認知度向上や信頼関係の構築も可能なので、積極的に参加するのがおすすめです。

デジタルツールでの顧客管理

ワンオペ経営では、デジタルツールを活用すると負担軽減に役立ちます。
LINE公式アカウントとGoogleビジネスプロフィールは無料で利用できる効果的な集客ツールです。
ポイントカードアプリや予約システムで顧客の利便性向上やリピート促進を図ることもできます。
口コミレビューへは丁寧な返信を心掛けることで、新規顧客への信頼性向上が期待できます。

また、飲食店向け顧客管理ソフト(CRM)を活用すれば、顧客情報の管理や分析が可能です。
来店後にメッセージやクーポンが配布できるものもあるため、リピート客獲得にも役立ちます。

ワンオペ飲食店の注意点と落とし穴


最後に、ワンオペ飲食店を経営する際の注意点を解説していきます。

1. 体力・健康への配慮

ワンオペ営業となるため体調を崩しても休みにくい点がデメリットです。自分が休めばお店をオープンさせられないので、無理をしてでも出勤してしまう人もいます。
しかし、それでは体調がもたずに続けることが難しくなるケースも考えられます。

1人での長時間営業は体力とメンタルの負担が大きいため無理のない範囲での営業計画が必要です。
営業日数と営業時間は体調管理を最優先に設計することで長期継続が可能になります。
定期的な休息日を確保して、疲労蓄積を防いで安定した店舗運営を維持することが大切です。

2. 不測のトラブルへの備え

あらかじめ、不測のトラブルへの備えをしておくこともポイントの1つです。
体調不良時の営業中止連絡はSNSやLINEを活用して迅速に顧客へ伝達する仕組みを確立してください。

設備故障や食材調達トラブルが起きる恐れもあります。営業中に問題が発生すれば顧客を待たせてしまうため、あらかじめ代替手段を準備しておくことで素早い対応が可能です。
1人体制のリスクを最小化するためにも信頼できるサポート体制の構築が求められます。

3. 拡大判断のタイミング

売上が安定し、1人では回しきれない状況になったらパート採用を検討するタイミングです。月売上が安定して継続すれば人件費を投入しても利益確保が可能になります。

法人化による節税効果や社会的信用向上も事業拡大時の重要な選択肢です。法人化することで節税効果が期待できます。
課税所得が800万円を越えると税金が安くなる可能性が高いので、法人化を検討してみてください。

4.競合店との差別化戦略

差別化戦略を考えることも大切な要素です。
ワンオペ飲食店の場合、1つのメニューにこだわって提供するのも差別化を図るためのアイデアとなりますが、そのほかにも工夫できるポイントは複数あります。
独自の調理法や特製ソースなど、他店では味わえない「唯一性」を確立することで差別化を図ることが可能です。

メニュー以外でも、店主の人柄やストーリーを前面に出すことで商品以上の価値を顧客に提供できます。
営業時間や提供スタイルを工夫し競合店がカバーできない顧客層をターゲットにするのもおすすめです。

5. 将来的な「やめ方」も考えておく

ワンオペだからこそ、「続けられなくなった時どうするか」を考えることが重要です。
例えば、副業化・趣味化すれば、飲食店を“暮らしの一部”として続けることができます。

「負担が大きい」「体力がもたない」といった不安があれば、週に3回のみの営業やランチのみ営業など、曜日を減らしたり営業時間を短縮したりすることで負担を減らせます。
自分では続けられない場合には、事業譲渡も選択肢の1つです。常連客や知人、地元コミュニティに「後継者候補」がいれば、事業を残す形で引退できます。

「続けられなくなったときの出口」を持っておくことで、心の余裕と柔軟な経営判断につながります。

ワンオペでも「自分らしい店」はつくれる

1人経営ならすべての経営判断を自分の価値観に基づいて決定できるため自由度があります。
小規模でシンプルな運営により顧客との距離が近く、個性的なサービスの展開が可能です。
無理のない成長を続けられるよう、スモールビジネスから始めて理想の飲食店経営の実現を目指してみてください。

「資金計画やメニュー構成、集客まで…一人で全部やっていけるだろうか?」
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(編集:創業手帳編集部)

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