介護事業における会計とは。規定を把握していないと運営基準違反に?
厚生労働省の規定を把握していないと運営基準違反になります。
(2016/06/21更新)
介護事業会計は、一般事業の会計と違い詳細に区分経理が必要となります。厚生労働省の規定には、「第38条 指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに経理の区分をするとともに、指定訪問介護の事業の会計とその他の事業の会計を区分しなければならない」とあるためです。どのように区分する必要があるのか?区分方法を解説します。
この記事の目次
厚生労働省の規定とは
「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」第38条「会計の区分」について次のように規定しています。
この基準を満たさないと運営基準違反となり指導対象もしくは取消しとなります。
第三十八条の解説
第三十八条にはこう書かれています。
「指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに経理を区分するとともに、指定訪問介護の事業の会計とその他の事業の会計を区分しなければならない。
なお、指定訪問介護事業者以外の指定介護事業者についても当該条文が準用されています。」
条文を簡単に解説すると、下記のとおりとなります。
【A社】
例えば、不動産業、訪問介護、居宅介護支援、2ヶ所でデイサービスをしている場合、
①不動産業
②訪問介護
③居宅介護支援
④A区のデイサービス
⑤B区のデイサービス
上記のように会計を5つに分けなければなりません。
さらに、居宅サービスと介護予防サービスの区分も必要となります。
「会計の区分」を行っていない場合は、実地指導に於いて運営基準違反として指導事項とされます。
運営基準を満たす会計処理方法
運営基準を満たすための会計処理方法には、次の4つがあります。
運営基準は、それぞれの法人に適用される会計基準等によって作成された計算書類の数値を介護サービス事業別に算出、表示することを求めています。
【1】会計単位分割方式
施設又は事業拠点毎かつ介護サービス事業別に独立した仕訳帳及び総勘定元帳を有し貸借対照表、損益計算書も事業拠点別に作成する方式。(一番厳密で難易度が高い)
【2】本支店会計方式
事業拠点毎かつ介護サービス事業別に会計処理で貸借対照表の資本の部は分離せず、拠点間取引は本支店勘定にて作成する方式。
【3】部門補助科目方式
勘定科目の補助コードでサービス事業毎に集計し、貸借対照表は、サービス事業別にしないで収支損益のみ区分する方式。
【4】区分表方式
仕訳時に区分せず、損益計算書から科目毎に按分基準で配賦し配分表を作成して、事業別の結果表を作成する方式。(一番容易)
小規模の介護事業者が採用する方法としては、【3】部門補助科目方式と【4】区分表方式のいずれか、又は両方式を併用する方法が一般的です。
按分基準で経費を配賦
按分(基準となる比率に応じて分けること)にて共通経費を上記の5つの区分(A社①〜⑤)に配賦する必要があります。
個別経費と共通経費の違い
経費には、個別経費と共通経費があります。
個別経費は、例えば訪問介護しかしないヘルパーさんの給料など1つの居宅サービスに直接関係する経費です。
これに対して、共通経費は社長の給料や総務・経理管理部門の人件費など1つの居宅サービスに直接関係づけられない経費です。
この共通経費は、最終的に各部門に振り分けなければなりません。その振り分けるときに使う基準が按分基準です。
按分基準の選択のポイント
按分基準は色々ありますが、按分基準の中で一番多いのが延利用者数割合です。(他には、建物床面積割合や使用割合があります。)
なお、延利用者数割合は、様式第二「居宅サービス介護給付費明細書」の「③サービス実日数」を集計して計算します。決算書を区分するということではなく、事業所と他の事業との会計について事務的経費を含めて按分等することにより明確にすることです。
なお、決算期に1年分を一括して処理する方法もあります。
こちらは、介護事業者向けの会計ソフト等も市販がありますので部門の設定を行う事も可能です。
もしくは税理士にお願いすし話し合いの上、部門設定を行いうことができます。
上記の会計処理方法と按分基準のうち、どれを選択するかについては任意ですが、一度選択したら原則として継続して適用する必要があります。
まとめ
介護事業会計は様々な特殊性があります。ここでは、会計基準及び按分基準に焦点を絞って説明しました。
この会計基準は、運営基準でもあるので満たさないと行政の取消処分になる項目です。
最初の設定がとても難しく時間も要しますが一度設定してしまえば、スムーズに行うことができます。
(監修:眞喜屋朱里税理士事務所 代表 眞喜屋朱里(まきや あかり) )
(編集:創業手帳編集部)