新リース会計基準はいつから適用される?事業者への影響や準備・対策を解説
新リース会計基準の適用に向けて早めの準備が大切

「新リース会計基準はいつから適用されるのか」「自社にどのような影響があるのか」と、不安や疑問を感じている事業者も多いかもしれません。
新リース会計基準が適用されることで、会計処理の複雑化や財務指標への影響が懸念されており、多くの担当者も情報収取や対応への準備を進めているでしょう。
本記事では、新リース会計基準がいつから適用されるのかをはじめ、対象となる事業者や実務への影響、そしてスムーズに対応するための準備・対策のポイントについてわかりやすく解説します。
制度開始直前に慌てないためにも、今のうちから全体像を把握しておいてください。
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この記事の目次
新リース会計基準が適用されるのはいつから?

新リース会計基準は、2027年4月1日から適用が開始され、事業者は4月1日以後開始する事業年度(連結会計年度)から適用がスタートします。
例えば3月決算で事業年度の期首が4月の場合、2027年3月末日までは従来のリース会計基準が適用されますが、4月1日からは新リース会計基準が適用されます。
2025年4月1日から早期適用が開始している
新リース会計基準が適用されるのは2027年4月1日以降ですが、2025年4月1日から早期適用が開始されています。
この期間は現行のリース会計基準を適用することも可能で、新リース会計基準を適用しても問題ありません。
そのため、対象事業者に当てはまる場合、2027年4月1日を待たず早めに新リース会計基準を適用させておくことも可能です。
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新リース会計基準とは?

新リース会計基準とは、1993年に制度化されたリース会計基準を、国際会計基準(IFRS)との整合性を取るために改正したものです。
そもそもリース会計基準とは、リース取引きの種類や会計処理について定めた基準を指します。
リース会計基準は2007年に改正が行われ、国際会計基準と整合性が取れるようになりました。
しかし、2016年に国際会計基準のリースが改正され、再び日本のリース会計基準と整合性が取れなくなってしまいました。
こうした理由から改めて国際会計基準と整合性が取れるように、企業会計基準委員会によって公表されたのが新リース会計基準です。
また、新リース会計基準は単に国際会計基準と整合性を取るためだけでなく、財務情報の透明性を高めることも目的になっています。
例えば、現行のリース会計基準だとオペレーティング・リースは貸借対照表に計上されないことから、取引実態が見えにくいという問題がありました。
さらに、オフバランス処理も企業の負債・資産の実態を把握しづらいため、投資家は経営リスクの有無を正確に把握できませんでした。
このような問題を解消し、財務情報の透明性を高めて投資家が適切な判断をするために、新リース会計基準が適用されます。
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新リース会計基準における変更点

現行のリース会計基準とは異なり、新リース会計基準ではどのような変更点がみられるのでしょうか。ここで、主に4つの変更点について解説します。
定義・識別方法の見直し
新リース会計基準は、現行よりリースの定義をさらに広げています。
原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約
契約が特定されている資産を使用する権利を、一定期間にわたり対価と交換に移転した場合、この契約はリースを含むと判断されることになります。
この定義から、リース取引きかどうかを判断するための識別方法も見直され、以下の基準が設けられました。
-
- 資産が特定されている
- 特定の資産を使用することで得られる経済的利益のほぼすべてを享受する権利を持っている
- 資産の使用を指図する権利を持っている
この基準すべてに該当すれば、契約書に「リース」と記載していなかった場合でも、すべてリース契約とみなされることになります。
つまり、これまではリースの記載がなく、リースだと認識していなかった契約に関して、新リース会計基準が適用されることで、リースとみなされる可能性があります。
オンバランス計上の義務化
リース取引きは「ファイナンス・リース取引き」と「オペレーティング・リース取引き」の2種類があります。
ファイナンス・リース取引きはオンバランス計上、オペレーティング・リース取引きはオフバランス計上が適用されていました。
しかし、新リース会計基準ではオペレーティング・リース取引きも含め、すべてのリース取引きに原則オンバランス計上が義務化されます。
例えば、これまでは「費用」として処理をしていたオフィスの賃貸借契約や、複合機などのリース契約も、すべてオンバランス計上に変更となるのです。
また、仕訳時に使用する勘定科目も見直され、「リース資産」から「使用権資産」、「リース債務」から「リース負債」に変更されます。
リース期間の算定方法の変更
現行のリース会計基準では、契約書に記載された期間=リース期間としていました。
しかし、新リース会計基準だと契約書に記載された期間に加え、延長オプション・解約オプションの有無を考慮して、リース期間を算定する必要があります。
例えば契約書に2年間と明記されている場合、リース期間は2年になりますが、さらに2年間は延長する可能性が極めて高い場合、その期間も含めるのでリース期間は4年間になるのです。
また、経済的インセンティブを生じさせる要因の例示に該当する場合も、リース期間として考慮する必要があります。
- 【経済的インセンティブを生じさせる要因の例示】
-
- 延長OP・解約OPの対象期間にかかる契約条件(リース料、違約金、残価保証など)
- 大幅な賃貸設備の改良の有無
- リース解約に関連して生じるコスト
- 事業内容に照らした原資産の重要性
- 延長OP・解約OPの行使条件
財務報告での表示・開示内容の拡充
新リース会計基準では原則すべてのリース取引きがオンバランス計上となり、オペレーティング・リース取引きでも減価償却費と支払利息が計上されるようになります。
その結果、これまで販売費・一般管理費に計上されていた費用が、販売費・一般管理費の減価償却費と、営業外費用の支払利息になることで、営業損益にも影響が出てしまいます。
貸借対照表や損益計算書の数字が大きく変動することを自社で認識しておく必要があり、さらに投資家や金融機関などにも説明が必要です。
また、財務報告での開示と注記の要件が変わり、使用権資産・リース負債・利息費用を財務諸表で表示することになりました。
リースの借り手・貸し手別に求められる注記は、以下のとおりです。
- 【借り手側に求められる注記】
-
- 会計方針に関する情報
- リース特有の取引きに関する情報
- 当期・翌期以降のリースの金額を理解するための情報
- 【貸し手側に求められる注記】
-
- リース特有の取引きに関する情報
- 当期・翌期以降のリースの金額を理解するための情報
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新リース会計基準が事業者へ与える影響

新リース会計基準によって事業者は様々な影響を受けることになります。具体的にどのような影響があるのか、事前に把握することが大切です。
会計処理・管理業務が複雑化
新リース会計基準の適用にともない、会計処理・管理業務が複雑化する可能性が高いです。
まず、社内にある契約書を集めてリースの定義に当てはまるか確認し、当てはまる場合は新たにリース取引きで処理をする必要があります。
また、これまでオペレーティング・リース取引きは経費として処理していましたが、今後は対象のリース契約ごとに使用権資産とリース負債の金額を計算しなくてはいけません。
さらにリース期間が終わるまでは使用権資産の減価償却とリース負債の利息計上を行う必要があり、毎期複雑な会計処理を求められます。
これにより、経理部門の負担が大きくなる可能性が高く、手作業で管理するのも難しくなるため、会計システムの改修や新たなシステムの導入が必要になります。
会計と税務の取り扱いで差が生じる可能性
リース会計基準の改正によって法人税の取り扱いが示され、法人税法第53条が新設しました。
法人税法第53条では、法人税法上のリース取引きおよびリース取引き以外の賃貸借取引きの取り扱いは、現行から大きな変更はないと明文化されています。
例えば現行のリース会計基準でオペレーティング・リース取引きによる資産の賃借があった場合、契約に基づいて支払う金額があると、債務が確定した部分の金額については、その事業年度の損金に算入しなければなりません。
新リース会計基準では原則使用権資産として計上し、減価償却費と利息費用が費用になります。
しかし、法人税法上だと支払うリース料の金額は損金に算入することになるため、会計と税務で差が生じる可能性があります。
そのため、新リース会計基準におけるリース取引きのうち、法人税法上でオペレーティング・リース取引きに当てはまる場合は、そのリースにかかる費用として計上した会計上の金額と法人税法上の損金算入金額がどれくらい差があるのかを把握しましょう。
法人税の所得計算時に申告調整を行ってください。
自己資本比率など財務指標が悪化する可能性
新リース会計基準を適用することで、自己資本比率などの財務指標の数値が悪化する可能性があります。
これは、各種経営指標の計算式の分母に含まれる「総資産」、分子や分母に含まれる「負債」が増えてしまうためです。
例えば自己資本比率の場合、自己資本(返済する必要がない会社の資本)÷総資産×100で求められます。
新リース会計基準によって総資産が増えますが、自己資本は現状変わらないため、比率が下がってしまいます。
自己資本比率以外にも、負債比率やEBITDAの増加、総資産利益率(ROA)の低下になるかもしれません。
財務指標の悪化によって融資審査や格付け、株主からの評価にも影響するリスクも考えられます。
会計システム・IT対応が必要に
会計処理の複雑化にともない、Excelを活用した手作業での管理に限界が生じる可能性もあります。
例えばリース契約を行った場合、使用権資産の減価償却とリース負債の利息計算を一つひとつ行わなくてはなりません。
そのため、これまでExcelで対応していた事業者は、新リース会計基準に適用した会計ソフトを導入する必要が出てきます。
また、すでに会計システムを導入している企業も、新リース会計基準の適用に合わせて改修が必要となる可能性があります。
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新リース会計基準が強制適用される前に準備すべきこと

すでに新リース会計基準の早期適用は開始されていますが、2027年4月1日からは強制的に新リース会計基準が適用されることになりました。
企業側は新リース会計基準の適用に向け、具体的にどのような準備を進めていくべきなのでしょう。
対象のリース取引きを確認しておく
新リース会計基準が適用されるのは基本的に上場企業などの金融商品取引法が適用される企業です。
また、会計法上、会計監査人を置く企業も新リース会計基準の対象となります。
中小企業の適用は任意となりますが、上場企業の子会社や関連会社、会計監査人を設置する会社とその子会社は新リース会計基準が適用されます。
そのため、対象となる企業はまずリース取引きをすべて洗い出し、従来リースとして認識していなかった契約がないか確認することが大切です。
会計システム・業務フローの見直しを図る
新リース会計基準が適用されるのは2027年4月1日からですが、新たな会計基準の開始にともないアップデートなどの対応を行うかは、まだ明示されていないケースも少なくありません。
そのため、公式サイトなどから対応の可否についての発表を待ち、必要に応じて会計システムの見直しを図る必要があります。
また、新リース会計基準の適用によって経理部門の負担が増える可能性が高いため、既存の業務フローを見直し、業務効率化や負担軽減を図ることも大切です。
特に経理担当者の増員や、アナログで行っていた業務のデジタル化などを早めに進めておくと良いかもしれません。
自社に適した遡及適用の方法を検討する
新リース会計基準が適用される場合は、遡及適用が必要です。遡及適用とは、過去に遡って適用することを指します。
遡及適用の方法に関しては、自社にとって都合の良いものを選ぶことが大切です。
例えば過去の全期間に遡及適用させる場合、財務諸表の一貫性が保たれ、利用者も過去のデータと比較しやすくなります。
しかし、膨大な数の再計算が必要となることから、作業の負担が大きくなってしまうでしょう。
一方、遡及適用により適用初年度に発生する累積的影響額、適用初年度の利益剰余金によって調整する場合、適用初年度の期首に残高調整を行うだけで良いので作業の負担は軽減されます。
ただし、過去の財務諸表とは比較がしづらくなるので注意が必要です。
それぞれの方法でメリット・デメリットが異なるため、自社の状況を鑑みて適切な遡及適用の方法を選ぶようにしてください。
金融機関・株主などへの説明・情報開示の準備を進める
新リース会計基準の適用によって財務指標の悪化が懸念されることから、経営者はあらかじめ金融機関や株主などに説明する必要があります。
まずはどれくらいの影響をおよぼすのか事前に分析することで、適切な情報開示につながりやすいです。
適切に説明ができれば、悪化するリスクがあっても理解してもらうことができ、離脱を防げるでしょう。
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新リース会計基準に関してよくある質問

最後に、新リース会計基準に関するよくある質問についてお答えしていきます。
新リース会計基準はいつから対応すべき?
新リース会計基準は、原則として2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
そのため、対象事業者に該当する企業は、遅くとも2026年度内には準備を進めておく必要があります。
ただし、2025年4月1日から早期適用が開始しているので、自社の状況に合わせて適用させる時期を検討することが重要です。
早期適用はしたほうが良い?
早期適用はすでに開始していますが、これは任意であり強制ではありません。企業ごとに「早期適用が不要」と判断すれば実施する必要はないということです。
ただし、上場企業やグループ会社を多く抱える企業が親会社の場合、会計方針を揃えるために子会社も早期適用が求められる可能性があります。
十分に準備ができていない状態で早期適用を行ってしまうと、経理部門の業務負担が非常に増える可能性もあることから、体制やシステムを整えた上で早期適用をするかどうか検討することが大切です。
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まとめ・新リース会計基準の適用に向けて体制の見直しを図ろう
新リース会計基準の適用は2027年4月1日以後の事業年度から適用されることになります。
2025年現在は早期適用が開始されていますが、あくまで任意であり、強制適用となる2027年4月1日までに準備を進めておく必要があります。
新リース会計基準が適用されると、業務負担の増加や財務指標の悪化など、様々な影響をもたらす可能性が高いため、対象となる事業者は早めに体制の見直しなどを図ることが大切です。
(編集:創業手帳編集部)







