情報経営イノベーション専門職大学 中村 伊知哉|AI・ロボットが台頭している今がチャンス。「超ヒマ社会」を生き残るためにヒトがやるべきこと

創業手帳
※このインタビュー内容は2019年01月に行われた取材時点のものです。

i専門職大学 学長(就任予定) 中村 伊知哉インタビュー(後編)

(2019/01/31更新)

前編では、学長を務める「i専門職大学」の概要についてお話していただいた、政策学者の中村 伊知哉氏。
後編では、約50%の仕事がAI・ロボットに取って代わられるというこれからの時代に必要な人材についてお話を伺いましたが、その際に出て来たのは「AI・ロボットに仕事をやってもらって、「超ヒマ社会」が来ればいい」という言葉。一見ネガティブな言葉に聞こえますが、その真意はどのようなものなのでしょうか?

前編はこちら→目指すは「就職率ゼロ」の大学!?中村 伊知哉が仕掛ける起業家のための”i専門職大学”

中村 伊知哉(なかむら いちや)
1984年ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送 融合政策、インターネット政策を政府で最初に担当するが、橋本行革で省庁再編に携わったのを最後に退官し渡米。
1998年 MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長。2006年より慶應義塾大学大学院教授。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳の創業者(代表取締役)
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。
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萎縮しなければ大きなチャンスに出会える

大久保:大学を作るために動いている中村さんから見て、日本の現状をどう見ていますか?

中村僕は、「チャンスが来た」と思っています。
世界のデジタル化が始まって20年経ち、その間日本は海外と比べて遅れをとってきました。
ですが、今はAIやロボットがビジネスを変化させようとしています。これまで日本が培ってきた製造業やテクノロジーの力を駆使して踏み出すことができるのです。

さらに、アメリカや中国の関係性など、世界的に見て不安定になっているポイントがいくつかあります。その間を取り持つことができるのも日本だけだと考えていますので、そこにもチャンスがあります。

今の日本の課題は、遅れを取り続けて萎縮してしまっていることです。
なんとなく漠然と不安なので、新しいことが先に進まない。キャッシュレスやシェアリングエコノミーがなかなか普及しないのもそれが原因だと考えています。
「i専門職大学」で、その空気を変えたいですし、空気を変える人材を育てていきたいですね。

大久保:「AIやロボットに仕事をさせたら人間の仕事がなくなってしまうのではないか?」とよく議論されています。その点について、中村さんはどのように考えていますか?

中村:おそらくそれも萎縮している要因の一つですね。
ですが、AIやロボットに仕事をさせたら、人間はすごく楽になりますよね。僕は「超ヒマ社会」と呼んでいるのですが、早くそういう時代になればいいと思っています。

ここで萎縮して行動できないと、AI化を進めた諸外国の下請けみたいになってしまいます。向こうが「超ヒマ社会」になっているのに、日本はあくせくしている。そんな状況にはしたくないですよね。

大久保:日本は高齢化が進んでいる影響からなのか、労働力を確保するためにAI化を進めざるを得ないという側面があります。できそうな環境は整っているので、あとは先ほどおっしゃっていた「空気を変える」ことが必要なのかもしれませんね。

中村:そうですね。この状況、僕はラッキーだと思っています。
2020年にはオリンピック・パラリンピックが開催され、2025年には万博が開催されます。それを機に空気を変える出来事を起こせたらいいですね。

「超ヒマ社会」だからこそ人間は忙しくなる

大久保:先ほど「超ヒマ社会」とおっしゃっていましたが、実は「超ヒマ社会」ほど、人間は忙しくなるのでは、と思っています。
というのも、AIがやってくれる仕事をしていた人間は、そのままでいるか、新たな何かを作り出すか、どちらかしかないと思うからです。何かを作り出すための方法を「i専門職大学」で教えるということになるのでしょうか?

中村:おっしゃっていただいた通り、僕もそう思っています。
世の中にある仕事の50%がAIやロボットに取って代わると言われています。代わりにやってもらうわけですから、生産性や収入が下がることはありません。だから、ヒマになれるワケです。

では、空いた50%を何のために使いましょうか?もしかしたら、エンタメかもしれないし、スポーツかもしれない。恋愛だったり、旅行だったりするかもしれない。多分、その中でも、違う仕事を作り出すというパターンが多くなるのではと思うのです。
自分がやりたいこと、作りたいことを見つけ出した人が勝ち、ということになるのではないでしょうか。

大久保:そう考えると、「周りの人を幸せにするならどうしたらいいか?」とか「人の役に立ちたい」とか、様々な考えができそうですね。

中村:そうですね。生き方の幅が広がっていくと思います。

「i専門職大学」ではそれを教えることはないと考えていますが、何かを作るための方法を見つけよう、作ろう、といった感じでともに動いていこうという方針にしたいですね。

必要なのは「作ることができる人」

大久保:最近は、若い年代でもすごい実力者が出てきていると感じています。大学教育でそういう人たちがさらに実力をつけていくことができると思いますが、どのような人材が今後求められていると思いますか?

中村「作ることができる人」だと思います。
「0」から「1」を作る人でもいいし、「1」から「10」にする人でもいい。コンサルや評論家じゃない、自分で作り出すという人が増えてきて、それを評価してくれるような社会になればいいですね。

大久保:「i専門職大学」での授業内容は、それを象徴している気がします。昔は座って授業を聞いているだけが多かったですが、自分自身で行動しよう、ということですね。

中村:そうですね。実は以前、株式会社ディー・エヌ・エーの創業者である南場智子さんに講義にきていただいた時がありました。
「一番伝えたいことを話してください」とお願いしたところ、南場さんは「コンサルになってはダメです。人の相談に乗っている場合じゃありません。自分で作り出す人にならないとダメですよ」とおっしゃったんです。
僕も、「どんな人材が求められているのか?」と聞かれたら、そう答えたいですね。

大久保:最後に、中村様の個人的な展望、目標を教えてください。

中村:今のところは、「i専門職大学」を開学させて、教育に一石を投じたいですね。
それ以降は、東京に特区を作りたいと思っています。新しいテクノロジーを取り入れた街を作って、大学を作って。そういったことをやりたいですね。

大久保:そこから、また新しいことが始まりそうですね。

中村:そうですね。「新しいことができる場を作る」ことをずっとやっていきたいです。
MITやスタンフォード大学がやっていたように、プラットフォームになるような場です。そういったことをやるきっかけをずっと作ることができたらと思っています。

(取材協力:学校法人電子学園 i専門職大学 学長(就任予定) 中村 伊知哉)
(編集:創業手帳編集部)



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