マーケティングに欠かせない「ターゲティング」とは?フレームワークや手法についても徹底解説
マーケティングに不可欠な「ターゲティング」について解説します
(2020/05/08更新)
Webマーケティングを含めたマーケティングの基本となるのがターゲティングです。
ターゲティングとは、狙う顧客を設定することです。どのようなメディアを活用するのか、どのようなメッセージを伝えていくのかなどを検討する上での起点となります。
狙うターゲット設定を間違ってしまうと、せっかく施策を実施しても無駄撃ちになってしまうことがあります。この記事ではターゲティングとはなにか、またターゲティングを進める上でのポイントなどについてご紹介します。
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この記事の目次
スタートアップや起業家にとってなぜターゲティングが大事なのか
ターゲティングは、自社のプロダクトを「購入してほしい顧客」を設定することです。多くのスタートアップや起業家の方が、自社サービスの開発や販売をするときにターゲットの設定を行っています。
しかし、ターゲットを全員に設定してしまうなど、絞り込みが出来ていない起業家やスタートアップの方は多いです。今後のビジネスを拡大していきたいという意向から、領域を限定せずにマーケティングを行ってしまい、予算を費やすわりには効果が出ないといった状況に陥ってしまうのです。
ターゲティングで重要なのはターゲットを限定的に絞り込むことです。
とくに、リソースが限られている起業家やスタートアップだからこそ、戦う領域を絞り込むことで、方向性や自社の強みが明確になり、Webマーケティングだけではなくブランディングやビジネス全体の成功につながります。
それでは、具体的なターゲティングの方法にはどういったものがあるのでしょうか。
ターゲティングの方法についてご紹介します。
マーケティング戦略の1つ「STP 戦略」とは?
ターゲティングは、マーケティング戦略のフェーズの1つである「STP戦略」を構成する一部です。STP戦略とは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字をとったもので、環境分析(※)をもとに自社が戦っていく方向性を定めるための戦略です。
※環境分析・・・事業の内外の状況を把握するための分析
ターゲティングを行うためにも、まずはSTP戦略の流れを理解しましょう。
セグメンテーションとは、市場全体を細分化することで自社プロダクトにニーズがありそうな要素(セグメント)を探すことです。セグメントの分け方としては、性別・年齢・職業などのデモグラフィックや、趣味嗜好などのサイコグラフィック、エリアなどのジオグラフィックなどが代表的です。
ターゲティングでは、セグメンテーションで細分化したセグメントから自社プロダクトにニーズがありそうなターゲットを絞り込み、選択します。そのため、セグメンテーションでどのように市場を細分化するのかという点がポイントになります。
ターゲティングでターゲットを設定できたら、そのターゲットにプロダクトを通して、どのような価値を提供するのかを設定するのが、ポジショニングです。ポジショニングのポイントは、ターゲットがどのようなことを求めているのか、どのようなニーズがあるのかを把握することによって、より的確な価値を設定できることです。
STP戦略が規定できたら、STP戦略をベースにマーケティングミックス(※)などの具体的な施策を検討していきます。このように、STP戦略はマーケティング全体のための起点となる戦略であり、特にその中でもターゲティングが重要です。
※マーケティングミックス・・・ターゲットに働きかけるためのマーケティングとツールを組み合わせた戦略のこと
よくあるターゲティングの失敗例
ターゲティングの重要性に関して解説しましたが、「ターゲットを設定しているようで設定できていない」といったケースが多いことも事実です。そこで、ターゲティングの失敗例についてご紹介します。
性別・年齢でのターゲット設定
1つ目は、20代男性、50代女性など性別・年齢のデモグラフィックだけでターゲットを設定してしまうケースです。
高度成長期以前では人の価値観が単一だったため、このようなターゲット設定が有効でした。しかし、スマホやSNSの普及などの影響もあり、価値観が多様化している中でこのようなターゲット設定には限界があります。
たとえば、ターゲットを「20代男性」とした場合には、大学生や新卒の社会人など、様々な属性の人がこの中に含まれます。同じ性別・年齢であっても、全く違う価値観やライフスタイルをもっていれば、閲覧するメディア、興味を促進するメッセージも異なってきます。
それをひとくくりに「20代男性」というターゲットに設定しても、マーケティングの効果を出すのは難しいでしょう。
現代においてターゲットの設定を行う場合には、デモグラフィックだけではなく、ライフスタイルや趣味趣向などのサイコグラフィックを加味するようにしましょう。
オールターゲットで設定
冒頭でもご紹介しましたが、ターゲットを全員(オールターゲット)として設定するケースも多いです。これは、「大きなパイで勝負したい」「ビジネスを拡大したい」という意図があるからです。
しかし、この場合にはターゲットが絞り込めていないため、ターゲットのパーセプション(認識)をきちんと理解できず、企業側からの一方通行なメッセージや施策となってしまいます。また、社内での戦略が共有しづらくなるため、それぞれが単発的な施策になってしまい、ブランド育成につながらないなどの問題が起きてしまいます。
このように、全員をターゲットにしたいといった意気込みと、実際の施策の落とし込みには大きなギャップがあります。市場を占拠したいという思いがあっても、マーケティングを行っていく上ではターゲットを絞り込むという決断をする勇気が大切です。
ターゲティングの代表的フレームワーク「6R」
具体的にターゲティングを行っていく上で、どのようなポイントを意識するべきでしょうか。ターゲティングの代表的なフレームワークである「6R」を紹介します。6Rとは、Rからはじまる6つの指標のことです。
- 市場規模(Realistic Scale)
- 競合(Rival)
- 成長性(Rate of Growth)
- 波及効果(Ripple Effect)
- 到達可能性(Reach)
- 測定可能性(Response)
1つ目は、選択したターゲットに最低限の市場規模があるのかという点です。市場規模が大きいと、競争が激しかったり、ターゲットが広すぎてターゲットとして有効ではないといった問題があります。
しかし、市場を絞り込みすぎた結果、ターゲットとなるべき人がほとんどいないということもあります。ビジネスとして最低限の市場規模があるのかを考えた上で、ターゲットの絞り込みを行いましょう。
2つ目は、選択したターゲット市場の競合状況を確認することです。マーケティングでは、競合がいないブルーオーシャン市場が理想だとされています。競合が存在する場合には、競合との差別化や競争に余計なコストがかかってしまうからです。
そのため、セグメンテーションを行う際には、競合と違う視点をもつなどの工夫をしましょう。
3つ目は市場に成長性があるのかという点です。今後市場が拡大していく可能性があるのか、それとも衰退していくのかなどを検討します。市場が大きくなれば、それだけチャンスが広がります。
市場の成長性は、Google トレンドなどを活用して見極めることができます。選択したターゲット市場が今後成長するか否かを確認しましょう。
4つ目は、選択したターゲットが他のターゲットに及ぼす影響力の有無(波及効果)を判断することです。影響力が高いターゲットを選ぶことで、より多くのターゲットへリーチすることができます。
たとえば、インフルエンサーなど影響力の高い層が利用した場合には、口コミなどで他のターゲットへと自然に拡大していくことができますよね。
5つ目は、マーケティングが到達可能なのかを判断することです。いくら競合がおらず、市場に今後成長可能性があったとしても、プロダクトを提供できなかったり、コミュニケーションが取れない場合にはターゲットから排除しましょう。
たとえば、東京で出店を計画しているときに、関西の人をターゲティングして広告施策を行っても効果が低いですよね。こういった場合には、ターゲットから排除する必要があります。
ただ施策を実施するだけで、PDCAをきちんと回していなければ、効果的な施策にはなりません。Webマーケティングにおいて、選択したターゲットが正しいのか、実施した施策が正しいのかなどを確認し、常に改善を行っていくことは非常に重要です。
そのため、選択したターゲティングが測定可能なのか、KPIが設定できるのかなども確認するようにしましょう。
上記でご紹介した6つの指標を参考に、自社にとって最も適したターゲットを選択しましょう。
ターゲティングを成功させる3つのポイント
ターゲティングのステップや参考となる指標をご紹介してきました。つぎに、ターゲティングを成功させるために欠かせない3つのポイントを解説します。
顧客視点
まず1つ目は、常にターゲット視点を意識することです。ターゲティングでよく陥りがちな失敗として、市場規模や消費者の傾向などをデータ面やビジネス上の目論見に合わせて決めてしまうケースがあります。
たとえば、データ上でカレーを食べたい層とラーメンを食べたい層がいたとします。企業としては、どちらのターゲットも獲得したいので、どちらの層も獲得できそうなカレーラーメンを販売すると決めました。その結果、どちらの層も獲得できませんでした。
これは、消費者がどのようなものを求めているのかというニーズを理解せずに、データだけでターゲットを捉えてしまった結果です。ご紹介したのは極端な例ですが、意味のない多機能商品などを市場でもよく見かけると思います。
このようなことを避けるためにも、データや企業の希望的観測だけではなく、常に顧客視点を加味した上でターゲットを選択しましょう。
ブランド戦略視点
2つ目は、ブランド戦略の視点を意識することです。市場規模が広い、または競合がいないという理由でターゲットを選んだ結果、ブランドやプロダクトとは全く違うイメージをもたれてしまうというケースもあります。
たとえば、大人向けのブランドを形成しようとしていたが、子供向け市場にも販売を進めた結果、本来狙っていた大人向けというブランドイメージを損なってしまったということもあります。
このようなことを避けるために、ブランドやプロダクトをどのようにしていきたいのかという、ブランド戦略の視点をもったターゲットの選択を行いましょう。
販促視点
最後のポイントは、販促の視点です。ターゲットを絞ると、販売機会が減るというイメージがあると思います。しかし、売上には一度のトライアルだけではなく、リピートも含めて構成されています。
ターゲットを絞り込むということは、狭く深く狙うということでもあります。市場規模を換算する際には、リピート購入率など、どのように売上を立たせるのかということも意識しましょう。
ターゲティングを施策に活用する手法
最後にターゲティングを活用した戦略立案の手法をご紹介します。
ペルソナの設定
まずご紹介するのは、ペルソナの設定です。ペルソナとは、象徴的なターゲット像のことです。
ターゲットのセグメントは市場を規定するものですが、施策を検討する上では、ターゲットがどのような人物なのかを規定することで、チーム内の共有やイメージがしやすくなります。
ペルソナで行う作業は、なるべく顧客を具体化することです。年齢、家族構成、職業、休日の過ごし方、価値観、住んでいる家など、その人が本当に実在しているかのように考えることが重要です。
このように具体化することによって、ペルソナが何を求めているのか、ペルソナの解消したい課題は何かなどが明確になり、メッセージや施策の検討に活用できます。
カスタマージャーニーの作成
ペルソナが規定できたら、カスタマージャーニーを作成しましょう。カスタマージャーニーとは、顧客が購買するまでの行動・思考などを視覚化したものです。ペルソナの行動が視覚化できることにより、どのようなメディアが効果的なのか、どのようなタイミングで施策を打つことが効果的なのかなどの検討ができます。
このように、ターゲティングを行ったあと、さらに精査していくことによって、より効果的なメッセージやマーケティング施策の検討ができます。
まとめ
ターゲティングは、Webマーケティングをより効果的かつ効率的に行う上で必須の要素です。しかし、多くの企業において、ターゲットを絞り込むことがビジネスチャンスを潰すことになるかもしれない、と抵抗があるのも事実です。
ターゲティングはマーケティングだけではなく、ビジネスやブランドを明確化していく上でも有効です。起業家やスタートアップだからこそ、勇気をもってターゲットを絞り込みましょう。
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(編集:創業手帳編集部)