M&AとIPOどっちがいい?ベンチャー企業のEXIT
創業当初から考えよう!会社をどう成長させていくか…
(2016/02/02更新)
投資資金の出口、という意味でベンチャーの現場ではEXITという言葉がよく用いられます。
会社の創業からわずか数年で会社がM&A(合併・買収)され、創業者が大きな利潤を得る…このようなEXITが日本でも増加しています。
今回はM&Aに詳しい株式会社ストライク アドバイザーの永岡弁理士にお話を伺いました。
株式会社ストライク アドバイザー
1984年生まれ大阪府出身。ベンチャーキャピタルにて国内外のベンチャー投資に従事した後、M&A仲介のストライクに参画。ベンチャー企業を中心としたM&Aのサポートに携わる。弁理士。
ベンチャー企業のEXIT
ベンチャー企業のEXITというと、日本ではまずIPO(新規株式公開)を想像されることが多いかと思います。
ジャスダックやマザーズといった新興市場が整備され、90年代からベンチャーのIPOは増加してきました。
いわゆるリーマンショック等の影響で2009年には19社まで減少したものの、それを底にして2015年は92社にまで回復しています。
ベンチャービジネスの中心地である米国でも90年代まではIPOがEXITの主流でした。
しかし、2000年頃から流れが変わり、現在はM&AがEXITの圧倒的な主流になっています。
(NVCA YEARBOOK 2015をもとにVEC作成)
国内ベンチャー企業のM&Aが増加
日本においても若手経営者を中心にM&Aへの抵抗が少なくなっていることや、米国に倣ってM&Aに対応した種類株式(優先株式)でのベンチャー投資も増えている中、ベンチャーのM&Aが増加しています。
最近話題になった事例では、2014年にキュレーションメディアを運営する設立から2年のペロリと、設立から1年足らずのiemoというベンチャー2社が、合計50億円でDeNAに買収されました。
また2015年には、チケット売買サイトを運営するフンザが設立から2年でmixiに116億円で買収されるといった、設立から間もない中での大型の買収事例が出てきています。
通常の企業価値評価では弾き出し辛い金額に思えますが、特定のサービス領域の中で尖った特徴を持つベンチャー企業に対して、買い手企業が有するメディアとの連携や、マーケティング手法を活用することで、爆発的にユーザー数、ひいては売上・利益を伸ばせると考え、当該金額に至ったと考えられます。
海外企業による国内ベンチャー企業のM&Aも
また買収する企業が国内企業とは必ずしも限りません。
2010年の米Zyngaによるウノウ買収、2013年の米Googleによる東大発ロボットベンチャーSHAFT買収、2015年には、米IAC傘下であったMatch Groupによるマッチングサービス等運営のエウレカ買収、バイドゥ(Baidu(中国)の日本法人)による東大発ITベンチャーpopInの買収など、外国資本の企業が日本のベンチャーを買収する例も増加しています。
EXITへの入口
上記のようなベンチャー企業のM&Aがどういった経緯で始まったかについては、例えばベンチャー企業の経営者が大手企業の経営者/M&A責任者と直接接点があったり、そのベンチャー企業に投資しているVCがそういった買収候補先企業を紹介したり、といったことが挙げられます。
そのような機会がない場合は、M&Aの仲介会社を利用することも一つの手だと思います。
弊社にもベンチャー企業の経営者の方がEXITについて相談が来られることが増えています。
創業してすぐにご相談頂くケースとしては、起こしたい事業が複数あるため今の事業を売却して次の事業に投入したい、あるいは大きな資本の下に入ってそのリソースを活用しながら事業を大きくしたい、といった事例があります。
最後に
創業して間もない経営者の方々向けのメディアに、M&A でのEXITの話とは気が早すぎると思われたかもしれません。
もちろんどの会社もM&Aを目指すべきということはなく、会社をどう成長させていくかについては、そもそも何のために起業したのか、という経営者の思い次第です。
自社単独でサービスを拡大することこそに重きを置かれる経営者もいらっしゃると思います。
しかし、事業の立ち上げが得意でその後の拡大は他の人に任せたいと考えているシリアルアントレプレナーや、どのような手段を使っても生み出したサービスを一人でも多くの人に使ってもらいたい経営者、あるいは創業者利潤を追求したいといった経営者の方については、創業当初からM&Aを一つの選択肢として考えておくことも重要なのかもしれません。
(監修:株式会社ストライク アドバイザー 永岡 清秀(ながおかきよひで) )
(編集:創業手帳編集部)