「そのビジネスモデル、買った!!」 覚えておきたい“会社を買うための心構え”

資金調達手帳

会社を買うなんて大企業同士の話? いいえ、ベンチャーこそ主役です!

ビジネスイメージ―契約成立
「会社を買う」と聞くと、資金力にモノを言わせた大企業同士のせめぎ合いや、利益を追求するファンドの介入、利ざや目的のブローカーの暗躍・・・などというイメージがあるかと思います。

しかし実は、国内の中小企業同士のM&Aは増えていると言われています。新たなビジネスモデルを確立したベンチャー企業同士のM&Aなどは、これを読む創業家経営者にとってはむしろ身近な話題でしょう。

また、会社を買う目的も多様化しています。会社を買うことは、投資など直接的な利益以外にも、技術や顧客の獲得など多くのメリットを効率よく享受できる有効な手段となります。

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金融機関の理解もすすんで資金調達もしやすくなっており、もはや会社を買うことは特別なことではなくなってきています。

創業直後の企業でも「会社を買う」ことを常に意識しておいて損はないし、買うつもりで企業を見れば、また違った姿が見えてきます。その際、自社に有益と判断すれば迷わず「買った」と言い切れる判断力を身に着けておくべきでしょう。
 
まずは本稿を読んで、その時に備えましょう。

会社を買って得る3つのメリット

まずはM&Aという取引において、買い手が得られるメリットを整理しておきましょう。
主なものとしては以下の3つが挙げられます。その会社を買って何が得られるのか、その判断の第1基準となるものです。

会社を買って得るつのメリット

  1. 時間を買う
  2. リスクを抑える
  3. 事業の拡大や効率化

 

1.時間を買う

自分の会社で最初から資源(お金や労働力)を投入して顧客をつかみ、事業を立ち上げるにはどうしても時間がかかります。この立ち上げにかかる時間をお金で買うことができるのが、M&Aのメリットです。

2.リスクを抑える

新しく事業を立ち上げる際は、その事業がうまく立ち上がるかどうかわからず、そこにリスクを抱えることになります。M&Aではすでに軌道に乗っている事業の収益性や資産の状況を確認できることから、事業リスクを低くできるメリットがあります。

3.事業の拡大や効率化

自分の会社の経営戦略に合わせたM&Aを行っていくことで、着実な事業の拡大を推し進めることができます。また、買収した事業とクロスセルによって売上を伸ばしたり、資産の共同利用を通じて事業の効率化を図っていくことも可能であり、これもM&Aのメリットということができます。

M&Aに相場無し 高いか安いかは条件次第

Japanese currency yenM&Aの買収価格は、一般的な公式によって明確に提示されるわけではなく、双方が納得できる金額感を交渉によってすり合わせることによって決定されます
 
もちろん、議論のたたき台を作るために一般的によく用いられる買収価格の算定方法はありますが、それは別の回で解説しているので、そちらを参照してください。
 
【関連記事】あなたの会社を売ったらいくら?企業価値を高める4つのポイント

買い手にとっての関心ごとは、事業の継続性や事業の将来性、買収にかかる労力や買収後に必要となる労力、買収後の組織の姿など様々ですが、中でも経済条件というのは重要な関心ごとであることに間違いありません。さてこの経済条件について、どのように考えたら良いのでしょうか?

売却意向を持っている会社の事業の調子が良ければよいほど、あるいは将来性があると多くの方が強く信じている場合、経済条件は跳ね上がります
 
これは会社売却意向を持った方が強気に交渉をしてくるということもありますが、買収意向を示す会社も前のめりになることが多いため、経済条件が上昇します。

一方、事業の調子が悪い、あるいは事業の将来性が右肩下がりの状況にある場合、経済条件は下がります。これは前者とは真逆で会社売却意向を持っている方も弱気であり、買収意向を示す会社も興味が引き気味になることが多いことから、経済条件が下降します。

その会社 ホントに買って大丈夫?

ここからは様々な場合において、会社を買うための心構えについて考えていきます。

(1)業績の良い会社について

・シナジーを過信していないか?

「会社を買収することでシナジー効果(相乗効果)を生み出し、投資回収にかかる期間を短くできる」といった話をよく耳にします。シナジー効果はあくまでシミュレーション上の話です。また企業によっては買収後の統合コストを織り込んでいない場合もあり、買収後利益が出なくなるというケースも目にしてきました。
 
買収後のシナジー効果については、しっかりと統合コストについても織り込みながら、慎重にシミュレーションを行うように心がけてください。
 

・事業の死角を発見する冷静さはあるか?

良い会社に出会えると、前のめりになっていく買収意向会社があります。自社の事業とシナジー効果も見込め、将来性のある事業に対して興味が強くなると「この会社を買収することのメリットが大きい」という強固な前提が出来上がっていきます。
 
すると買収するために必要な良い条件を重要視し、案件を壊してしまうようなリスクについては鈍感になっていく傾向があります。このようになってしまっては、冷静な判断を行うことができない可能性が高くなるので、常に「どこかに死角はないのか?」ということを慎重に探り、冷静さを失わないように心がけてください。
 

・そもそも、なぜ買うか、何を得ようとしているのか?

非常にシンプルな問いかけですが、もっとも根本的な部分に迫る問いかけです。買収の協議をしていく中で、こういったシンプルな問いかけを自分自身に行い、その答えが自社のビジョンや戦略と整合性があるのか?という視点を失わないように、心がけてください。

(2)業績の悪い会社について

・本当に必要な事業か?

買収意向のある企業は、本当に自社にとって必要な事業や資産を含んでいますか?なんとなく買えそうだから買収したというような目的が弱い買収は、買収後の管理で苦労する場合が多いです。今一度、本当に必要な事業や資産であるかどうか、冷静に考えるよう心がけください。
 

・隠れたコストはないか?

業績が悪い企業は、会社売却を急ぐために負債などを隠している場合があります。しっかりと資産や負債状況について調査をするとともに、少しでも不明な事があれば資料や説明をキッチリと求めるようにしましょう。それによって時間がかかっても、納得できるまで実施するよう心がけください。
 

・追加で投資をする覚悟があるか?

買収完了後、想定していたように事業が回らずに追加投資が必要になるような案件もあります。買収を決断する際には、追加で投資を行うための決断や予算をしっかり確保するよう心がけましょう。

まとめ

以上、買収をする際に売却希望先の業況によって持っておきたい心構えについて考えてきました。
 
M&Aはメリットが多い取引である一方で、どうしても双方がもっている情報に大きな非対称性が生じてしまいます。この非対称性を出来るだけ小さくし、お互いが納得できるポイントを見いだいしていくために交渉を行いますが、この交渉を行う上で大切なのは、何よりも準備と心構えです。
 
ぜひしっかりとした心構えを持つことで、少しでも自社事業への貢献度の高い案件をみつけ、M&Aを実行しましょう。

(監修:株式会社共生基盤 代表取締役 中村亮一
(編集:創業手帳編集部)

 

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