個人事業主が従業員を雇う際に必要な手続きを解説!雇用するメリットや採用方法も紹介

創業手帳

個人事業主でも従業員を雇って事業を拡大しよう


事業の拡大によって人材不足が懸念される場合には、個人事業主でも従業員を雇うことが可能です。
しかし、従業員を雇用するためには、保険や税金などの様々な手続きをしなければいけません。
必要な手続き内容を事前に理解しておくと安心です。

今回は、個人事業主が従業員を雇う前に知っておきたい基礎知識を解説するとともに、必要な手続きの内容や従業員を雇うメリット、採用方法などを紹介していきます。
事業拡大を考えている個人事業主や従業員の雇用で悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。

創業手帳では、従業員の雇用を検討中のかたにぜひ知ってほしい国の制度である「助成金」について、よく使われているものを厳選して紹介した「雇用で差がつく助成金10選」を無料でお配りしています。ぜひあわせてご利用ください。


雇用で差がつく助成金10選

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

個人事業主が従業金を雇う前に知っておきたい基礎知識


個人事業主が従業員を雇用する際におすすめできる雇用形態や、必要な費用の目安について解説していきます。

どのような雇用形態がおすすめ?

個人事業主が初めて従業員を雇う場合は、パートやアルバイトなどの短時間勤務の雇用形態がおすすめです。
人件費を抑えつつ業務の一部を任せることができ、負担の軽減に効果的だとされています。

また、業務量や収益が安定すれば、契約社員や正社員への切り替えを検討することも一案です。
正社員は長期的な育成が可能ですが、社会保険料や賞与の支給義務などのコストも増えるため、慎重に判断する必要があります。
事業の成長段階に応じて、柔軟に雇用形態を選ぶことが成功のポイントです。

雇用にかかる費用の目安

従業員を雇用する場合、給与以外の様々な法定費用(社会保険料や雇用保険料など)が発生します。
給与が月20万円であれば、事業主はその約15~20%程度(約3~4万円)の追加負担を見込んでおく必要があります。

また、採用活動や教育・研修などのコストもかかるため、年間でみれば一人当たり数十万円単位の経費が発生することがあるかもしれません。
雇用前にしっかりシミュレーションを行い、無理のない人件費計画を立てることが重要です。

個人事業主が従業員を雇う際に必要な手続き


ここからは、個人事業主が従業員を雇用する際に必要な手続きの詳細について解説します。

労働条件通知書の交付

従業員を雇う場合、労働基準法によって労働条件を通知する義務が発生します。
そのため、採用が決まれば労働条件通知書を作成して従業員に交付しなければいけません。
通知書に記載すべき事項は、労働基準法によって定められています。

  • 契約期間
  • 就業場所
  • 従事する業務内容
  • 始業時刻と終業時刻
  • 休憩時間
  • 休日と休暇
  • 交代制ルール
  • 賃金決定方法
  • 賃金の支払い時期と支払い方法
  • 退職や解雇に関する事項

アルバイトやパート、契約社員であれば、昇給や賞与、退職手当、雇用に関わる相談窓口についても記載する必要があります。
また、有期雇用労働者を雇う際には、更新業減の有無や内容、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件に関する事項の記載も必要です。

雇用契約書の締結・保管

従業員を雇用する場合、契約自体は会社と従業員で合意があれば口頭でも成立します。
しかし、入社後のトラブルを防ぐためにも雇用契約書を結び、保管しておくと安心です。
雇用契約書とは、事業主と労働者の間で雇用契約の内容を明らかにするために取り交わす書類を指します。

  • 給与
  • 就業場所
  • 就業時間
  • 業務内容
  • 昇給
  • 退職 など

労働条件に関する重要事項を書類に記載し、会社と従業員双方が署名・捺印をして締結する仕組みです。

給与支払事務所等の開設届出書の提出

個人事業主が初めて従業員を雇う場合、税務署に対して給与支払事務所等の開設届出書を提出する必要があります。
届出書は、従業員を雇用した日から1カ月以内に提出します。

ただし、開業届に給与支払事務所等を開設する旨を記載していれば、開設届出書の提出は必要はありません。

雇用保険の手続き

雇用保険は、従業員の雇用や生活を安定させるための保険制度です。
個人事業主が従業員を雇用する際、要件を満たせば雇用保険に加入する必要があります。
加入要件は以下の通りです。

  • 雇用期間が31日以上
  • 1週間の労働時間が20時間以上

手続きは基本的に事業所を管轄している公共職業安定所(ハローワーク)です。
初めて従業員を雇う場合には、雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格届を提出します。
雇用保険適用事業所設置届は、雇用した日の翌日から10日以内での提出が必要で、雇用保険被保険者資格届は雇用した日の翌月10日までに提出しなければいけません。

労災保険の手続き

個人事業主が従業員を1人以上雇った場合には、労働保険に加入させなければなりません。
加入手続きは、労働基準監督署もしくはハローワークで行います。

労働保険関係成立届と労働保険料算定基礎届を提出する必要があり、事業主の所在地や賃金総額の見込み額といった内容を記載します。
保険関係が成立した日の翌日から10日以内に提出する必要があるため、忘れないようにしてください。
なお、年度更新時には、労働保険料申込書も提出する必要があります。

健康保険・厚生年金保険の手続き

常時5人以上の従業員を雇用することになれば、健康保険や厚生年金保険への加入義務が発生します。
最寄りの日本年金機構もしくは健康保険組合に連絡をし、事業所登録申請書や被保険者資格届といった書類を準備してください。

書類提出時には、事業主の印鑑証明書や所在地を証明する書類、従業員の個人情報を記載した書類などが必要になります。
なお、加入後は、毎月の保険料納付が必要になり、納付額は給与に基づいて計算されます。納付漏れや遅延のないように注意してください。

源泉徴収の準備

毎月の源泉徴収のためにも、従業員には給与所得者の扶養控除申告書を記載・提出してもらう必要があります。
記載してもらった内容を基にして従業員の給与から税金を天引きし、事業主が税務署に納めなければいけません。

本来は毎月納付する必要がありますが、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出すれば納付は年に2回のみで済むため、事務処理の負担を減らせます。

法定三帳簿の作成

従業員を1人でも雇用した場合には、労働基準法で法定三帳簿の作成が義務付けられています。
それぞれに必要な記載項目があり、3年間保存する必要があります。法定三帳簿は以下の通りです。

  • 労働者名簿:従業員の氏名や生年月日といった個人情報を記録しておく帳簿
  • 賃金台帳:従業員一人ひとりの賃金支払い状況をまとめた帳簿
  • 出勤簿:従業員の出勤日や労働日数など、出退勤に関する状況を記録した帳簿

これらを作成・保管しなかったり、労働基準監督署からの指導を受けたにも関わらず従わなかったりした場合には、30万円以下の罰金を科せられる可能性もあることに注意してください。

個人事業主が従業員を雇うメリット


個人事業主として働いている人の中には、「1人で事業をしたほうがメリットも多いのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし、従業員が増えればいくつかのメリットを得られます。
ここからは、個人事業主が従業員を雇用する上で得られるメリットについて解説します。

業務負担が減る

従業員を雇わずに1人で事業を行う場合には事務作業も必要です。書類の作成や電話対応、メールの返信など、様々な業務があります。
書類の手続き漏れやミスがあれば、手間が増えて本業に影響を与えるかもしれません。

一方、事務員がいれば、書類の作成や会計処理、確定申告の手続きなど、様々な作業を任せられます。

事業拡大を目指せる

従業員を雇えば事業拡大を目指せます。店舗経営がメインの飲食店であれば、従業員を雇用して時間的な余裕が生まれ、オンラインショップをスタートできる可能性があります。
将来的に事業拡大を考えているのであれば、採用をする段階で従業員に求める経験やスキルを明らかにしておくと効率的に作業を進められ、事業拡大に向けた準備ができます。

生産性が上がる

従業員が増えれば、その分だけ生産性もアップします。1人では抱えられない案件を受注することも可能になり、受注件数を増やせれば売上アップにつながります。

また、業務の分散やマニュアル化を進めていけば、仕事の属人化も解消できるでしょう。
さらに、急用や傷病など、どうしても休まなければいけない時でも従業員に仕事を任せられ、調整をしやすくなります。

優遇措置が受けられる

従業員を雇用できれば雇用に関する助成金を受けられるようになります。
例えば、高齢者や障害者をハローワークの紹介などで雇用する場合、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)を活用ですることが可能です。
60歳以上の高齢者や母子家庭の母などを、週20~30時間未満で働くパートとして採用すれば30~40万円、フルタイムであれば50~60万円支給されます。

ほかにも、特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)やキャリアアップ助成金、トライアル雇用助成金などがあるため、要件に当てはまっているか確認してみてください。

個人事業主が従業員を雇う際の採用方法


最後に、個人事業主が従業員を雇う際に活用できる採用方法について解説していきます。スムーズな採用を目指すためにも、ぜひ参考にしてください。

ハローワーク

国が設置している職業紹介機関がハローワークです。職業安定法に則って運営され、国民に対して雇用機会を提供することが目的です。
ハローワークを活用すれば、無料で求人を掲載できます。

ハローワークと聞くと窓口での職業紹介をイメージする人もいますが、近年はインターネットサービスも提供されており、インターネットを活用した職探しができます。
そのため、多くの人に求人票を見てもらえるかもしれません。

求人を出したい場合には、自社の地域を管轄しているハローワークで事業所登録を行ってください。その後、求人申込書を記載して提出します。
入社後の働き方をイメージしやすいよう、具体的に記載するのがポイントです。申込書を提出すれば、ハローワーク側で求人票を作成してくれます。
作成してもらった求人票と事業所確認表を受け取ったら手続きは終了です。ハローワークの端末や掲示板、インターネットサービスなどに反映されます。

求人情報サイト

Web媒体となる求人情報サイトで人材を募集する方法もあります。スマートフォンやパソコンを活用してインターネットで職業を探す人は多いです。
検索すればすぐに情報が出てくるため、求人情報サイトに掲載すれば多くの人の目に自社の求人票が留まる可能性があります。
スカウト機能を搭載した求人情報サイトであれば、事業主側から気になる人材にコンタクトを取ることも可能です。

また、求人情報サイトには総合型と特化型があります。
総合型には幅広い業種の求人票が掲載されていますが、特化型であれば女性向けや運送業、建設業やIT・エンジニア系など、特定の業界や職種、求職者層に特化しています。
自社の職種に合わせて掲載するサイトを選んでみてください。

求人情報誌や折込み広告

求人情報誌や新聞の折込み広告などの紙媒体も活用できます。
地域を限定して人材募集ができる点が強みで、地域に密着した事業を展開している個人事業主に向いている方法です。

ただし、コストがかかる点がデメリットで、予算によっては掲載が難しい可能性があります。

まとめ・従業員を雇用するなら手続きを忘れずに行おう

従業員を雇用するとなれば、労働条件通知書や雇用契約書といった手続きだけではなく、保険の手続きや源泉徴収の準備など、あらゆる作業が必要になります。
前もって必要な手続きを把握しておけば、申請忘れを防ぐことに役立ちます。
授業員を雇うとなれば様々なメリットがあるので、今回紹介した方法を参考にして人材募集を行ってみてください。

創業手帳では、従業員の雇用を検討中のかたにぜひ知ってほしい国の制度である「助成金」について、よく使われているものを厳選して紹介した「雇用で差がつく助成金10選」を無料でお配りしています。ぜひあわせてご利用ください。


雇用で差がつく助成金10選

関連記事
雇用契約と労働契約の違いは?原則や契約締結のポイントなども解説
採用活動に使える助成金・補助金14選!申請方法や利用の注意点も解説!

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す