絵画などの美術品は経費計上できる?減価償却時のポイントなどを解説

創業手帳

お店に飾る絵画などは経費として計上できる!


オフィスや絵画をお店に飾ることによって、安らげる空間づくりや従業員の生産性向上が期待できます。
事業で使う絵画は経費として計上できるので、絵画を飾った店舗やオフィスづくりを検討してみてください。
ただし、事業で使う絵画はその取得価額によって会計処理が違います。どういった処理が必要になるのか知っておきましょう。

創業手帳では、不必要な税金を支払うことによって無駄な出費が増えるのを防ぐために「税金チェックシート」を無料でみなさまにお配りしています。また、基本的な確定申告のノウハウを解説した「確定申告ガイド」も無料配布中です。本記事とあわせてご利用ください。



※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

オフィスや店舗に絵画を飾るメリット


オフィス空間の居心地や雰囲気は、仕事の能率にも影響します。顧客が利用する店舗も、どういった雰囲気かによって与える印象が大きく変わりまります。
オフィスや店舗の雰囲気づくりにもってこいのアイテムが絵画です。初めに絵画を飾るメリットについて解説します。

会社や店舗の雰囲気を表現できる

オフィスや店舗に飾る絵画は、その会社の個性やブランディングをアピールするために役立ちます
エントランスや応接間に絵画を飾ることで、世界観や企業風土を対外的に表現できます。
取引先や顧客といった外部の人だけでなく、働いている従業員に対してもその企業の個性を浸透させる効果が期待できるでしょう。

リラックス効果が期待できる

仕事をする場所なんて必要なものだけそろっていれば十分と感じる人もいるかもしれません。
しかし、殺風景な空間で働くよりも、絵画のような彩りや遊び心がある空間のほうがリラックスできるはずです。
社員が絵画によって安らげば、クリエイティビティやモチベーションの向上にもつながります。

生産性の向上につながる

絵画やアートは人の感性を刺激する効果が期待できます。刺激を受けた社員からアイデアが生まれやすくなり、斬新な製品やサービスの創出につながるかもしれません。
一見して生産性と絵画には関係がないように思われがちですが、特に頭脳労働はどういった空間で働いたかも生産性に大きく影響します。
空間の目的やコンセプトに合わせて絵画をコーディネイトするといった活用法も検討してみてください。

コミュニケーションが活発になる場合もある

絵画からどういったことを受け取るかは人によって違います。
絵画があることによって、絵画の受け取り方や共感、意見交換といったコミュニケーションが活発化する場合があります。
これは会社内のコミュニケーションが活発になるだけではありません。
応接室やロビーに飾っておくと、顧客や取引先が来た時に絵画が会話のきっかけになることも考えられます。

集客効果が期待できる

会社に飾る絵画は、その企業の顔ともいえる存在です。店舗づくりにおいては企業が表現したい世界観を伝える手段として絵画が活用されています。
会社の雰囲気や世界観に合った絵画を飾ることによって、ほかにはない価値や個性を間接的に伝えることもできます。会社のファンを作って集客するにも効果的な手段です。

絵画などの美術品は2015年の税制改正で減価償却の対象に


絵画やアート作品は、節税対策としても活用されています。2015年の税制改正で取得価額が100万円未満の絵画やアート作品は、原則として減価償却対象と定められました。
減価償却とは、長期間使用する高額資産を耐用年数にわたって少しずつ事業の経費に計上する方法です。
つまり、絵画やアート作品を購入することで、一定期間において経費を計上できるようになるのです。

経費を計上することによって課税所得が減れば、納税する額も少なくなります。そのため節税対策として絵画や美術品が注目されています。
ただし、経費計上できるのは、あくまで事業の用に供している絵画が対象です。
会社のエントランスや応接間、オフィスといった場所で飾るための絵画でなければ対象ではありません。

絵画の取得価額別に見る経費計上


絵画を使った節税対策は、単純に絵画を購入すればよいわけではありません。適切に処理して初めて経費計上できます。
さらに絵画は購入金額によって経費計上の扱いが違う点にも注意しなければいけません。
取得価額は額縁代や配送料、運送保険料、関税といった購入にともなう経費も含めた金額で判断してください。
ここからは、絵画の取得価額別に経費計上の方法を紹介します。

1点10万円未満の場合

消耗品費は、文房具や日用品といった消耗品を購入した場合によく使われている勘定科目です。しかし、税法で明確に定義が定められているわけではありません。
消耗品として該当するのは、使用可能期間が1年未満か、取得価額が10万円未満のものです。つまり、絵画の中でも1点10万円未満のものは消耗品費で処理できます。

1点20万円未満の場合

購入した絵画が、10万円以上で消耗品費としての経費計上を諦めたケースでも、ほかの処理が可能です。
20万円未満の絵画は、少額減価償却資産もしくは、一括償却資産として計上できます。

少額減価償却資産とは、取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、費用を一括で経費計上できる制度です。
ただし、少額減価償却資産の上限は1年で300万円までと定められています。

また、20万円未満の資産であれば、一括償却資産として会計処理できます。一括償却資産とは、少額の資産の取得価額を合算して3年間にわたって均等に経費計上するものです。
少額減価償却資産と混同されることもありますが、少額減価償却資産は30万円未満の資産を一括で経費計上できる制度です。
2024年10月現在、少額減価償却資産の特例を使えるのは2025年度末(2026年3月31日)までに取得されたものとされています。

1点30万円未満の場合

絵画の取得価額が30万円未満であれば、少額減価償却資産として経費計上できます。上限300万円まで一括で計上できるため、節税にも効果的です。
ただし、少額減価償却資産の適用を受けるには条件を満たさなければいけません

まず中小企業者または農業協同組合等で、確定申告で青色申告を選択していることが必要です。
さらに常時使用する従業員の数が500人以下であることを満たしている場合に利用できます。

1点100万円未満の場合

1点100万円未満の絵画は、減価償却資産として経費計上できます。ただし、美術品は作品の材料や構造によって耐用年数が違うので計算する時には注意してください。
一般的には8年間で減価償却できます。
ただし、1点100万円未満であっても時間の経過とともに美術品としての価値が減少しないものは減価償却できません。

1点100万円以上の場合

1点100万以上の絵画は、非減価償却資産となるため、経費計上できません。
例外として時の経過によってその価値が減少すると明らかなものは100万円以上であっても減価償却できます。
つまり、100万円以上の絵画を経費として計上するためには、時の経過によって価値が減少することが明らかであることが求められます。

絵画や美術品で歴史的価値や希少価値があるものに関しては価値が減少しない資産です。珍しい古美術や古文書、出土品や遺物といったものは減価償却できません。

絵画などの美術品を減価償却するためのポイント


上記で説明したように、取得価額が100万円未満の絵画は、減価償却の対象になる資産として扱えます。
また、取得価額が100万円以上のものは原則減価償却資産には該当せず、一定の条件を満たすかどうかで個別に判断します。
絵画などの美術品を減価償却するためのポイントをまとめました。

絵画が事業に用いられているか

絵画などの美術品を減価償却するには、前提としてその美術品が事業のために使われている必要があります。
例えば、自宅に飾ってある美術品は使用のものなので経費計上はできません。
しかし、会社のロビーやエントランス、オフィスや応接室といった場所に飾る場合には美術品を経費計上可能です。

美術品によっては、季節などに応じて入れ替えをしていて使わないものは倉庫に保管していることもあります。
そういった場合でも、美術品を維持管理していていつでも展示できる状態であれば事業用として認められます。

経費を計上するために美術品を購入したとしても、単に購入しただけでは事業用に供しているとはいえません。
事業に活用していると認められるためには、展示する場所や用途も考えておいてください。

「時の経過によって価値の減少が明らかなもの」の条件を満たしているか

国税庁は、減価償却資産として扱う美術品について、「時の経過によって価値の減少が明らかなもの」と定めています。
逆にいえば、時の経過によって価値が減少しないような美術品は、減価償却の対象にはなりません。
時の経過によって価値の減少が明らかなものの条件は以下のように定められています。


①不特定多数のものが利用する場所での展示用として取得されるもの。
②移設が困難で当該用途だけで使用されると明らかなもの。
③転用すると仮定した時に、設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないもの。

償却資産税の申告・納税を行っているか

美術品を減価償却するためには、償却資産税(固定資産税)の申告と納税をしなければいけません
償却資産税は聞きなれていなくても、土地や建物にかかる固定資産税を知っている人は多いでしょう。

償却資産税は固定資産税の一種で、土地や建物以外で事業に使われている資産に課される税金をいいます。
固定資産税と償却資産税は、1月1日現在保有している事業用資産について市区町村が課税します。
しかし、固定資産税は土地家屋の法務局への登記に基づいて賦課されるため申告は不要です。しかし、償却資産税は、所有者が申告しなければいけません。
申告によって課税台帳に登録されると、納税通知書が送付されます。

絵画を含む美術品の法定耐用年数


減価償却は、その資産がどれだけの期間使えるかを見積もって償却額を計算します。この使用期間の目安が耐用年数です。
美術品のうち室内装飾品として主に金属製のものは15年、それ以外の美術品は8年間になります。

金属製の彫刻などであれば耐用年数15年となりますが、金属製でない絵画や陶磁器は耐用年数8年です。
一般的に絵画は8年間が耐用年数になるので、80万円の絵画を購入した場合は8年間で10万円ずつ減価償却することになります。

絵画を含む美術品の経費計上に関するQ&A


絵画を含む美術品は、取得価額や美術品事態の性質によって扱いが変わります。そのため、経費計上が難しく感じるかもしれません。
ここからは、美術品の経費計上に関してよくある質問とその回答をまとめました。

2014年12月31日以前に取得した絵画の扱いはどうなる?

2015年1月1日以降に取得した美術品は、取得価額が1点100万円未満であれば原則減価償却して経費計上できます。
では、それより前である2014年12月31日以前に取得した場合はどうなるのでしょう。

2014年12月31日以前に取得している美術品はそれまでの規定で減価償却する必要があります。
当時の規定では以下の2つの条件を満たす美術品は減価償却しないとされていました。

①美術関係の年鑑などに掲載されている作者が制作したもの。
②取得価額が1点20万円以上、絵画の場合は号当たりで2万円以上のもの。

しかし、美術関連の年鑑が複数あってそれぞれ基準が違っていたり、金額基準が低すぎるのではといった指摘があり、通達で改正となりました。

減価償却の計算方法は定率法と定額法のどちらになる?

減価償却の計算方法は、定率法と定額法があります。美術品の減価償却はどちらを選んでも問題ありません

定額法は、毎年一定の金額を減価償却する方法で、定率法は毎年一定割合で減価償却する方法です。
定率法は、購入した年度にたくさん減価償却できるので購入してすぐに経費を多くしたい場合に適しています。
一方で定額法は、毎年同じ金額を費用計上できるので計算を楽にしたい時におすすめです。

絵画の取得価額に含まれる費用の内訳は?

絵画を購入して飾る場合、絵画だけではなく額縁を購入する場合もあります。一般的には額縁も絵画の一部として取得価額に含まれます。
また、絵画を購入した時の費用と事業に使うために要した費用の合計額が絵画の取得価額です。
具体的には、引取運賃や荷役費、運送保険料と購入手数料、関税といった費用も取得価額に含めます。

まとめ・絵画は経費計上や減価償却も可能だが条件に注意!

絵画は、金額によって一括で計上するか、耐用年数で減価償却することができます。
しかし、絵画は購入にかかった費用やその絵画自体の性質によって会計処理が違うケースがあります。
絵画を購入する時には、経費に計上した時にどのような扱いになるのか、会計にどれだけの影響を与えるのかまで計算しておいてください。
絵画は上手に活用すれば効果的な節税手段です。計画的に利用するようにおすすめします。

創業手帳(冊子版)は、節税や確定申告の情報のように役立つ記事を多数掲載しています。事業推進のパートナーとして創業手帳をお役立てください。

関連記事
スマートフォン購入費や通信費は経費にできる?法人・個人事業主での違いや仕訳方法を解説
経費削減のアイデア:15の効果的な方法と導入のポイント

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す