「上場」か「非上場」か?違いを理解して賢く会社経営しよう

資金調達手帳

上場企業になるための条件とメリット

(2018/11/30更新)

「上場」や「非上場」という言葉は、耳にする機会も多いビジネスワードだと思います。しかし、それぞれの違いやメリット・デメリットについて、正しく解説できる人は少ないのではないでしょうか。上場=大企業というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、上場には一定のデメリットも伴うため、誰もが知っている大手企業の中にも、あえて非上場にしている企業も多いのです。

起業するにあたって、漠然と「いつかは、会社を上場させたい」という経営者もいますが、会社の将来的な展望を考える上でも、上場と非上場を理解し、その条件を理解しておくことは重要です。ここでは、株式会社の上場と非上場について、基本から分かりやすく解説します。

そもそも上場とは何のことなのか

「上場」とは、株式を公開し、証券取引所で株式が売買されることを指し、株式を発行している会社のことを「上場企業」と呼びます。一方、投資家が株式を売買できない企業のことを「非上場企業」と呼びます。数としては圧倒的に非上場企業が多く、日本全体の会社の9割以上を占めています。

株式を買った「株主」は、資金提供の代わりに「株主総会」に参加して票を投じられる権利を得て、会社の経営に意見することができます。一方で、上場企業は、利益が出たら配当金などを通じて株主に還元しなくてはなりません。

上場企業が株式を売買する場所のことを「証券取引所」といいます。最も規模の大きい東京証券取引所を筆頭に、大阪証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所、福岡証券取引所と各地に存在しています。そして、上記はさらに細かく分かれています。各証券取引所の特徴については、後述します。

非上場企業が上場企業になるメリット・デメリット


起業するからには、上場を目指す経営者も多いはずです。しかし、上場には大きなメリットがある反面、デメリットもあります。上場する上でのメリット・デメリットを以下にまとめますので、それぞれ理解しておきましょう。

メリット

経営体制が整う

上場の基準を満たすためには、社内の経営体制を見直さなくてはいけません。その過程で、自ずと健全な経営体制に近づいていきます。

企業の信用度が高まる

上場にはたくさんの条件をクリアし、経営状態を常に公開する義務もあるので、会社としての信用度が高まります。認知度もアップし、安定している企業というイメージも与えられるので、人材確保の面でも有利に働きます。

資金調達がしやすい

上場して企業の信頼度が高まることで、投資家から資金を集めることができ、資金調達の幅が広がります。投資家から得られた資金は、融資で得られたお金と違い、返済の必要もありません。

社員のモチベーションが上がる

上場企業に務めるというステータスも得られますし、ストックオプションや持ち株制度の導入もできるので、働くためのモチベーションが上がります。

さらなる利益を得る機会が増える

投資家から資金が調達できるという意味もありますが、創業者や投資家はさらに金銭的利益を得ることができます。具体的には、創業者が保有する自社株式を売り出すことができます。また、投資家たちも配当金などが受けられ、株式の価値が上がったときに売却することでさらにお金を得ることができます。

デメリット

厳しい上場の条件をクリアするのにパワーがかかる

そもそも、上場するためにはたくさんの基準をクリアする必要があります。そのためのコストは莫大なものになります。上場のための条件は後述しますが、それらをクリアするのがいかに大変かを考えると、その厳しさは十分にデメリットと言えます。

維持コストがかかる

上場企業であり続けるためには、間接部門の人員や監査法人への報酬など、多額のコストが掛かります。

株価の変動が影響し、財務が安定しない

企業の業績や景気に左右され、常に株価は変動します。株価の変動は企業の財務にも影響を与え、安定的な資金調達ができないこともあります。

経営の自由度が下がる

株主総会では、投資家たちの意見を聞く必要があります。経営に意見する株主が現れる可能性もあるため、経営の自由度は下がると言えるでしょう。例えば、投資家は株式を売却して利益を得たいので、短期で確実に株が上がる戦略を望みがちです。その場合、中長期的な成長戦略は描きにくくなります。

買収のリスクが増す

株式を公開しているので、買い占められると会社を乗っ取られる可能性があります。買収のリスクが増すということは覚えておきましょう。

非上場企業が上場企業になるための条件


上場するためには、さまざまな条件をクリアすることになります。そして、その条件は市場ごとに異なります。ここでは、日本で一番多くの企業が属する東京証券取引所の中の、5つの市場の条件をまとめてご紹介します。それぞれの市場に特徴があり、求められる条件が大きく違います。やみくもに上場を目指すのではなく、各市場の特徴を押さえた上で目指す市場を決めましょう。

市場一部(東証一部)

一番厳しい条件を満たさなくてはいけない市場です。東証一部上場を果たせるということは、日本有数の大企業であることを指します。海外の投資家が多く占める国際的な市場です。

上場できるための要件は、以下です。
・株主数:2,200人以上
・流通株式数:2万単位以上
・時価総額:250億円以上
・事業継続年数:3年以上
・純資産額:連結して10億円以上
・利益の額または時価総額:利益が最近2年5億円以上 または 時価総額500億円以上かつ直前期売上高100億円以上

市場二部(東証二部)

中小企業など、名の知られていない企業も属します。将来的には市場一部へのステップアップを目指す企業も多いです。

上場できるための要件は以下です。
・株主数:800人以上
・流通株式数:4,000単位以上
・時価総額:20億円以上
・事業継続年数:市場一部と同じ
・純資産額:市場一部と同じ
・利益の額または時価総額:市場一部と同じ

マザーズ

将来的に市場一部へのステップアップを考える成長企業向けの市場です。高い成長性があるかどうかを判断され、ベンチャー企業が多く上場しています。市場一部や市場二部のように規模(利益額)による制限がないのが特徴です。

上場できるための要件は以下です。
・株主数:200人以上
・流通株式:2,000単位以上
・時価総額:10億円以上
・事業継続年数:1年

JASDAQ

1.信頼性、2.革新性、3.地域・国際性というコンセプトがあり、多様な業種や成長段階の企業が属します。もともとは新興株が多かったですが、今は歴史の長い企業も増えています。一定の事業規模と実績のある成長企業を対象にした「スタンダード」と、特色ある技術やビジネスモデルがあり、将来の成長可能性に富んだ企業を対象にした「グロース」の内訳区分があります。

上場できるための要件は以下です。
・株主数:200人以上
・純資産額:2億円以上(スタンダード)、なし(グロース)
・利益の額または時価総額:直前期一億円または時価総額50億円(スタンダード)

TOKYO PRO Market

2008年の金融商品取引法改正にて導入された「プロ向け市場制度」に基づいて設立された市場です。『特定投資家』(いわゆるプロ投資家)向けの市場です。

上場には数値基準がなく、取引所から認定を受けたJ-Adviserが、取引所に代わって上場審査などを行います。

各市場ごとの比較表

それぞれの市場に上場する条件を、表でまとめました。

一部 二部 マザーズ JASDAQ(スタンダード) JASDAQ(グロース) TOKYO PRO Market
株主数 2,200人以上 800人以上 200人以上 200人以上 200人以上
流通株主数 20,000単位以上 4,000単位以上 2,000単位以上
時価総額 250億円以上 20億円以上 10億円以上
事業継続年数 3年以上 3年以上 1年以上
純資産額 10憶円以上 10憶円以上 2憶円以上
利益の額または時価総額 「利益が最近2年5億円以上」または「時価総額500億円以上かつ直前期売上高100億円以上」 「利益が最近2年5億円以上」または「時価総額500億円以上かつ直前期売上高100億円以上」 直前期1億円または時価総額50億円

このように、市場ごとに特性はさまざまで、上場する条件も細かく違います。ここでは東京証券取引所のみに焦点を当てていますが、地域に根ざした企業であれば、東京証券取引所よりも上場基準が緩和されている各地方の証券取引所も視野に入れ、上場先を選ぶようにしましょう。

まとめ

上場するためにはさまざまなハードルを乗り越える必要がありますが、高いハードルをクリアした分、大きなメリットを得ることができます。大企業だけが上場できると思われていたかもしれませんが、ベンチャー企業や中小企業向けの市場もあり、市場ごとに条件は異なります。

上場を目指しているのであれば、市場ごとの特性を理解して市場を選ぶことが大切です。上場のための条件をクリアできるように会社を経営していきましょう。

<< 関連記事はこちら >>
M&AとIPOどっちがいい?ベンチャー企業のEXIT

(執筆:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す