【採択率が上がる!】小規模事業者持続化補助金の書き方は? 採択されるための経営計画書と補助事業計画書
採択されるための経営計画書と補助事業計画書の書き方
(執筆:中小企業診断士 濱口誠一)
「小規模事業者持続化補助金」は、従業員数の少ない会社や個人事業主が申し込める補助金。経営計画書や事業計画書を作成して申し込み、採択されれば最大50万円(条件を満たせばそれ以上の上限額となる場合も)の補助を受けることができます。
使い勝手がよく人気の高い補助金であることから、競争率は高いと考えられます。活用を考えられている方は、しっかりとポイントを理解して準備しましょう。
ここでは、小規模事業者持続化補助金の概要と手続きの流れ、採択率の上がる申請書の書き方のコツについてご説明していきます。
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この記事の目次
小規模事業者持続化補助金とは
そもそも「小規模事業者持続か給付金」とは何なのかと、コロナ禍を受けて新設された「コロナ特別対応型」について簡単にご説明します。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金とは、商工会議所等の助言や支援を受けながら経営計画を作成して申し込む補助金です。
詳しくは後ほど解説しますが、従業員数の少ない会社や個人事業主が申請でき、採択されれば最大50万円の支援を受けることが可能です(条件を満たせばそれ以上の上限額となる場合もあります)。
なお、これは給付金ではないため、申し込めば必ずもらえるわけではなく、審査の上で採択されることで初めて補助を受けることができます。
「一般型」と「コロナ特別対応型」
2020年からの新型コロナ感染拡大の状況を受け、2020年4月には「コロナ特別対応型」というものも公募が開始されました。これは、コロナによる事業環境への影響を乗り越えるため、前向きな投資を行いながら事業に取り組む事業者を支援するというものでした。
しかし、コロナ特別対応型は2021年3月現在、すでに公募を終了しています。現在は通常の「一般型」のみ申請を受け付けています。
小規模事業者持続化補助金の条件・補助金額・手続き方法
ここからは、実際に小規模事業者持続化補助金に申し込むための条件や補助してもらえる金額、申請の手続きの流れについて解説します。
1)対象者の条件
小規模事業者持続化補助金の対象となる条件は次のとおりです。
- 小規模事業者であること(個人事業主含む)
- (法人の場合)資本金または出資金が5億円以上の法人に、直接または間接に100%の株式を保有されていないこと
- 確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が、15億円を超えていないこと
- 商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
- 持続的な経営に向けた経営計画を策定していること
- 「令和元年度補正予算小規模事業者持続化補助金<一般型>」または「令和2年度補正予算小規模事業者持続化補助金<コロナ特別対応型>」において、受付締切日の前10ヶ月以内に、先行する受付締切回で採択を受けて、補助事業を実施した(している)者でないこと(共同申請の参画事業者の場合も含む)
※小規模事業者
・卸売業、小売業、サービス業:常時使用する従業員の数が5人以下の事業者(宿泊業・娯楽業は20人以下)
・製造業その他:常時使用する従業員の数が20人以下
上記のほか、反社会的勢力と関係を持っていないことも条件です。
また、令和2年度補正予算小規模事業者持続化補助金事業<コロナ特別対応型>と本事業の両方を採択された場合は、いずれか一方しか補助金を受け取ることができません(いずれか一方の廃止申請を行う必要があります)。
2)補助金額
小規模事業者持続化補助金に採択された場合、補助してもらえる金額は次のとおりです。
- 使用した費用の3分の2、最大は50万円まで。つまり、最大の50万円を狙う場合は、75万円以上使用することが必要
ただし、下記の場合は補助金額の上限が異なります。
- 産業競争力強化法に基づく「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者:最大100万円まで
- 法人設立日が2020年1月1日以降である会社(企業組合・協業組合を含む)、または税務署に提出する開業届に記載されている開業日が2020 年1月1日以降である個人事業主:最大100万円まで
また、原則としては個社の取り組みが対象の補助金ですが、複数の小規模事業者等が連携して取り組む共同事業も応募することができます。共同事業で応募する場合は、最大50万円~1,000万円の補助上限額となります(連携する小規模事業者等の数により異なります)。
3)対象となる費用
小規模事業者持続化補助金の対象となるのは次のような費用・経費です。
- 機械装置等費
- 広報費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 専門家謝金・専門家旅費
- 設備処分費
- 委託費・外注費
※人件費や汎用性の高い備品購入費(パソコン等)は対象とならない
4)申請の手順
小規模事業者持続化補助金の申請手続きの基本的な流れは次のとおりです。
- 「経営計画書」と「補助事業計画書」を作成する
- 「経営計画書」と「補助事業計画書」の写し等を地域の商工会議所窓口に提出し、「事業支援計画書」の作成・交付を依頼する
- 地域の商工会議所が後日発行する「事業支援計画書」を受け取る
- 受付締切までに、必要な提出物を補助金事務局への郵送または電子申請(単独申請のみ対象)で提出する
申請後、審査で採択されると補助を受けることができます。不採択の場合は、当然ながら補助金をもらうことができません。
5)申請の留意点
小規模事業者持続化補助金に申し込む際は、次のような点に注意しましょう。
- 商工会、商工会議所との連携が必須の条件となりますので、早めの事前相談を行いましょう。
- 補助金として採択された後、すぐにお金が振り込まれるわけではありません。補助対象事業を行い、経費を支払った後に、適切な書類がそろえて審査が完了した後で初めて補助金が振り込まれます。そのため、事前に補助金の対象経費の運転資金を準備する必要があります。
- 「申請対象期間内に使用した費用」のみが対象となります。例えば、申請対象期間が4月〜11月の場合は、開始前の3月や終了後の12月に使用した費用は対象外となりますので、使用する時期には注意が必要です。対象外の時期に使用すると、せっかく使用した費用が補助金の対象外となる場合があります。
採択率が上がる「小規模事業者持続化補助金」の申請書の書き方
小規模事業者持続化補助金では、申請書の様式や補助対象の内容・費目だけではなく、審査基準や記入例も公開されております。申請される場合は、公開情報をしっかりと熟読しましょう。
また、小規模事業者持続化補助金は給付金ではなく補助金ですので、申請すれば必ずもらえるわけではなく、審査で採択される必要があります。ここでは、採択されやすい申請書を作成するための具体的なポイントについて解説していきます。
また、それぞれでご紹介している具体例は、主に全国商工連合会で公開されている申請書の記載例を参考しておりますので、そちらも参照するとより理解が深まると思います。
1)経営計画書
自社の概要を紹介します。自社の提供する商品・サービスの説明に加えて、顧客の視点(顧客はどのようなニーズがあるのか?)、競合の視点(競合相手にどのような特徴があるのか?)、自社の視点(どのような強みがあるのか?)といういわゆる「3C」の視点で記載すると漏れがなくなります。
端的に言うと、「顧客の××というニーズを自社の〇〇という強みで捉えており、この〇〇は競合よりも優れている」というメッセージを伝えるということです。
1-1)顧客の視点
市場動向、自社の顧客という2点で捉えるとよいでしょう。
市場動向では自社に影響を及ぼす外部要因、例えば、地域の人口の増減などを考えます。
プラスの要因だけではなく、マイナスの要因も合わせて考えることで申請書の妥当性が増すので、両面から捉えるようにする方がよいでしょう。
顧客ニーズは、ニーズそのものに留まらず、顧客の「属性」にも注目しましょう。
代表的な属性としては年代・性別などありますが、例えば飲食店であれば、ランチ・夕食、平日・土日などと時間帯、に分けるという視点もあります。
このように顧客を一律ではなく、属性に分けて記載することで、申請書がより妥当なものとなります、採択率を上げることができます。
1-2)競合の視点
「競合のないサービス」はほとんど存在しません。前述の1-1で考えた顧客のニーズを満たす競合先はどこなのか?どのような特徴を持っているのか?を考えます。
考えるコツとしては、顧客のニーズを起点するとよいでしょう。例えばマクドナルドの競合はモスバーガーではなく、コンビニや吉野家と言われることがあります。
これは顧客のニーズを「安く手軽に食事を済ませたい」と捉えることができるからです。
小規模事業者持続化補助金の申請書の記載例でも海鮮居酒屋の競合として回転ずしが取り上げられていますね。
1-3)自社の視点
自社の強みを考えます。強みというと、圧倒的な製品力や技術力がなければならないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、もっとシンプルに「顧客が自社を選んでくれる理由は何か?」、「なぜ自社の商品・サービスを使ってくれるのか?」と考えると自社の強みが浮かびやすくなります。
また、ここでは4Pの切り口を使うと考えやすくなります。
4Pとは、Product(商品・サービス)、Price(価格)、Place(場所、立地)、Promotion(宣伝や顧客とのコミュニケーション)のことです。
4Pのどの観点が強みなのか?さらになぜ、その強みを自社が提供できるのか?を切り口に考えます。
【4Pの切り口(例)】
4Pの切り口 | 自社の強み | 強みを提供できる理由 |
---|---|---|
商品・サービス | 品質、ブランド、アフターフォロー | 技術力、仕入ルート、社長の経験 |
価格 | 低価格 | |
場所、立地 | 駅近く、商店街 | 出店戦略 |
宣伝、コミュニケーション | 知名度、接客、雰囲気 | 老舗、教育、デザイン・内装 |
小規模事業者持続化補助金の申請書の記載例では、商品の強みとして「寿司や刺身のネタの鮮度」という品質、提供できる理由として「地元漁師との専属契約」という仕入ルートを取り上げていますね。
さらに、品質の高さを証明するために「雑誌に取り上げられた」、「競合と比較して2倍の単価」というエビデンスを強調しています。
当然、商品・サービス以外の接客、雰囲気なども強みとなりますので、4Pの切り口を参考に検討されてはいかがでしょうか?
2)補助事業計画書
小規模事業者持続化補助金の対象となる事業の具体的な内容、効果が必要です。採択率を上げるためには、特に「販路をどう開拓するのか」、「本当に効果が得られるのか?」という観点をもとにしっかりと記入することが重要となります。
2-1)事業の具体的内容
下記の「事業ドメイン」の切り口を使うとまとめやすくなります。
- 誰に:どのような顧客をターゲットとするのか?
- 何を:どのような商品・サービスを提供するのか?
- どのように:どのような形態で、どのような強みを活かすのか?
小規模事業者持続化補助金の申請書の記載例では、
- 誰に:バイクで 20 分以内の配送が可能な範囲に居住のシニア世代
- 何を:鱈のすり身フライのバーガー
- どのように:デリバリー方式
と、まとめられております。
さらに、どのように販路を開拓するのか?という部分でも具体性も必要です。小規模事業者持続化補助金の申請書では、「○○市マッチングフェアへの出展・顧客へのDM発送・地域住民へのポスティング」や「口頭でのPR」が記載されています。このように多彩な取り組みが計画されていると申請書の説得力が増し、採択される可能性が高まります。
どうすれば認知度が向上するのか?どうすれば興味を持ってもらえるのか?どういう行動を取れば買う気になってもらえるのか?という観点で施策を考えていきましょう。
2-2)効果の考え方
効果については、売上高が向上する、という結論を出しましょう。
売上高は、客数×来店頻度×客単価、と分解できます。つまり、
- 新規顧客の来店数が増加する
- 既存顧客の来店頻度、リピートが増加する
- 客単価が増加する
という結論までしっかり記載することが重要です。
そのうえで、この小規模事業者持続化補助金を受ける事業にかかった投資金額、期待できる利益額を算定して、回収記載できると評価が高まり、採択されやすくなるでしょう。
まとめ
小規模事業者持続化補助金の申請書を書いたら一度、第三者に見せることをお勧めします。
どうしても自社の事業やサービスには思い入れが強くなりがちなので、初見の審査員にはわかりづらくなる傾向があります。
小規模事業者持続化補助金は書面のみで採択・不採択を審査され、口頭での補足説明などはないため、事前に第三者から意見をもらう方がよいでしょう。
その際に専門家を活用すれば、文章や構成をわかりやすくしたり、根拠の妥当性を増すためのアドバイスも受けられるので、採択率を上げるためにそちらも合わせて検討してみると良いでしょう。
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参考資料
・実際に採択された企業の紹介(外部リンク)
・より詳細な申請書の記載例(外部リンク)
(監修:中小企業診断士 濱口誠一(はまぐち せいいち))
(編集:創業手帳編集部)