女性管理職を設置するメリットとは? 社会の現状と注意点も合わせて解説!

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女性管理職を置くメリットや注意点について、実際の事例を交えて解説します。


1999年に「男女共同参画社会基本法」、その後2015年には「女性活躍推進法」が制定されました。
これらの法律が成立したことで男女問わず活躍できる機会を増やすよう義務付けられ、より女性の活躍は活発になっています。
女性管理職も続々と増えていますが、実質的にはまだ男女が平等であるとは言えないのが現状です。

今回は、女性管理職を置くメリットや注意点、女性管理職に向いている人について、事例を交えながら解説します。

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この記事の目次

女性管理職を推奨する社会の動き


女性管理職が企業で活躍できるよう推奨する社会の動きとは、どのようなものでしょう。

国が制定した法律について

国が制定した「男女共同参画社会基本法」に基づき、内閣府では「男女共同参画基本計画」を策定しています。
この計画には、男女がともに活躍の機会を持つための認識を明示し、基本的な方向性や取組みが盛り込まれています。

2022年には「第5次男女共同参画基本計画」が立てられ、主に以下の項目に分けて施策の実施を呼びかけています。

  • 基本方針
  • 多分野にわたる女性の参画拡大
  • 安全かつ安心な暮らし
  • 男女共同参画社会の基盤整備
  • 推進体制の整備

この計画の概要の中では、例えば衆議院の女性議員比率を世界で比較した時、日本は190ヵ国中167位(2020年現在)であると指摘しています。
これらを踏まえ、内閣府では2025年までの目標として、衆議院の女性割合を35%まで引き上げることを掲げました。
さらに民間企業でも、女性管理職を少なくとも30%以上にする目標が定められています。

また、働く女性のための職場環境の整備を呼びかける「女性活躍推進法」においても、以下のような観点で取組みを制定しています。

  • 女性活躍に関する状況や課題の分析
  • 課題解決のための数値目標と取組みを踏まえた計画の策定
  • 女性活躍情報の公表

 

2019年にはこの法律が改正され、より女性が活躍できる環境整備を推進する内容となっています。例えば、以下のようなものです。

  • 女性管理職登用のための数ある取組みを2つの区分に分け、それぞれの区分から1項目以上の数値目標を出す
  • ※2つの区分とは、女性労働者の就業機会の提供・職業生活と家庭生活を両立するための雇用環境整備

  • 女性活躍情報の公開について、2区分の中からそれぞれ1項目以上の情報公開を求める
  • 計画の義務が課せられる事業所について、労働者101人以上300人以下では努力義務にとどまっていたものを、労働者101人以上の事業所に対し義務とする
  • など

これらのように、法律の中で女性活躍の環境整備や機会拡大の施策を講じる取組みが進んでいます。

男女共同参画社会基本法の概要

男女共同参画社会基本法は、以下の5つの理念から構成されています。

・男女の人権尊重
男女かかわらず、それぞれを人間として尊重し、個性や能力を存分に生かすことを目指します。

・社会制度への見直し
既存の社会構造である男性はリーダーシップを取り、女性はサポートや家事に注力するといった固定観念を捨て、男女平等に能力を生かせる社会制度を見直します。

・政策への共同参画
男女が隔たりなく、あらゆる分野での政策や施策への決定に取組める機会を与えます。

・家庭生活とその他の両立
家庭内では男女が役割に囚われることなく協力し合い、仕事と家庭、その他社会活動との両立ができるよう配慮します。

・国際的な協調
男女がともに歩んでいくために、他国との協調を大事にし、男女が社会に参画する国際的条約などに協力し積極的に議論に参加できるようにします。

女性活躍推進法の概要

女性活躍推進法は、現状で社会が抱えている女性活躍の問題点を改善するために制定されました。

  • 就職の機会が少ない、就職しても思うように能力が発揮できない
  • ライフイベントである出産や育児でキャリアがストップしてしまう
  • 女性管理職が占める割合が世界水準より低い

以上の点を回避するため、前述で触れたような法律の義務適用範囲を広げ、より多くの事業所が女性活躍の場を広げる取組みを推進するよう定めています。

また、これらの取組みを行っている優良企業に「えるぼし認定」、さらに高い水準をクリアした企業に「プラチナえるぼし認定」をつけ、企業の印象アップにつなげる試みも行われています。

女性管理職の現状とは

日本の女性管理職の割合

・企業全体から見たデータ
2021年に実施されたある調査では、民間企業の女性管理職の割合平均は、前年より上昇傾向にあるものの、全体の8.9%という結果が出ています。
女性管理職の割合が30%を超える企業は、全体の8.6%にとどまり、いずれも女性管理職の登用には厳しい状況であることがわかるでしょう。
また、女性管理職の割合が増えると考えている企業もありますが、現状維持を見込んでいる企業は5割強にのぼります。

一方で、女性の活躍を推進する企業は全体の5割弱あり、企業の取組み次第では、今後女性管理職の割合が増えてくることも期待できます。

・企業規模、業界別に見たデータ
企業規模や業界別では、また異なった数値が記されています。
2020年の調査によると、女性管理職の割合が高いのは、大企業よりも中小・小規模企業の方が高い傾向です。
大企業の女性管理職は、5.4%にとどまっていますが、小規模企業では10.5%まで引き上がっています。

一方、業種別の女性管理職の割合は、小売り業が最も高く12.8%、次に不動産業で12.2%、その下にサービス業の11.5%と続きます。
割合が低い業種としては建設業があげられ、4.3%です。これらは、企業そのものの体制に加えて体力的な男女の差異も考えられます。
ちなみに、女性管理職30%以上の企業に関しては、やはり小売り業が最も多く、運輸業が最も少ない結果となりました。

参照:女性登用に対する企業の意識調査

女性管理職が求められる理由とは

女性管理職の増加が求められる理由には、女性の活躍機会を増やし男女平等に社会参画できる機会を作ると同時に、労働人口の確保という一面もあります。
少子高齢化により、国内の労働人口はどんどん減る一方であり、女性が管理職として活躍することで、労働人口やリーダーの数を引き上げる考えです。
女性は優秀な人でも管理職登用のチャンスが少ないだけでなく、非正規雇用の割合も多いです。

そこで、女性が充分に活躍できる機会を作ることで、非正規雇用などで発揮できない能力を引き出し、優秀な人材を確保していくことが求められています。

女性管理職を置くメリット


こちらでは、女性管理職を置くメリットを解説します。

企業にとってのメリット6つ

1.女性管理職のロールモデルを擁立できる

女性管理職が少ないということは、その道を切り開いたロールモデルが少ないということであり、前例がないと具体的なビジョンを持つことができません。
女性管理職を増やすことで、具体的なキャリアプランを想定でき、さらなる管理職候補を育成できるきっかけになります。

2.優秀な女性を管理職に置くことができる

国の施策としても、女性活躍に積極的に取組んでいる企業を認定したり表彰したりする制度が設置されています。
優良企業として認められた事業所には、おのずと管理職志望の優秀な女性の応募が集まり、女性管理職候補の育成の道が開けると期待できます。

3.部署内のコミュニケーションが透明化できる

男性と女性が平等に管理職として活躍していれば、部下とのコミュニケーションにおいても同性同士で密に取合うことが可能になります。
そうすれば、部署全体の風通しが良くなり、管理職も部署全体の現状を把握できてサポート体制も充分に用意することができます。

4.ダイバーシティの促進につながる

ダイバーシティとは、性別や年齢などに囚われない多様性を指します。女性管理職の登用が増えれば、男女関係なく多様な視点でのビジネス拡大につながるでしょう。

また、アイデアや考え方の多様化で作業効率がアップするといった仕事へのアプローチが広がり、ひいては企業そのものの価値を上げ事業をさらにスムーズに進められます。

5.多様な働き方が推奨されるようになる

現状、女性にとっての職場での問題は出産・育児などによる働きづらさです。多様な働き方を認めて活躍できる機会を作ることは、喫緊の課題です。

女性管理職を置くことで、それぞれのワークライフバランスを考えた働き方改革が可能になり、労働環境やモチベーション向上を図ることもできます。

6.ESG投資の対象になる確率が上がる

ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance・統治や管理)を3つの柱と据え、これらを基準として企業を投資対象とすることです。

ESGの中には、女性がどれだけ、どのように活躍しているかといった要素も組込まれています。
女性管理職の割合が高いことで投資対象企業として高い評価を得ることが可能です。

女性管理職にとってのメリット4つ

1.ワークライフバランスを確立できる

前述したように、女性管理職を置くことで企業自体が多様な働き方を認めることが期待されます。それは、女性管理職自身も同じことです。
管理職であれば自ら仕事のスケジュールを組立てることが可能になり、自身のワークライフバランスを保ちながら仕事を進めやすくなります。

2.仕事への達成感を得られる

女性管理職が男性と同様に働けるようになることで、部署内の風通しが良くなることは、前述のとおりです。
これにより、部署内での人間関係も円滑になり、チームワークも生まれてきます。

部下をサポートしながらチームで仕事を進めていき、全員で結果を出すことができれば、女性管理職としてのやりがいを感じることができます。

3.モチベーションが向上する

言われたことをやるだけではなく、管理職では部署間の連携や部署内の統制など全体を俯瞰(ふかん)して見ることが求められます。

今まで見えていなかった仕事の流れが把握でき、その仕事がどのように発展していくのかを理解しコントロールできるため、やりがいを感じられるようになります。

4.女性視点を企業に反映できる

女性は、一般的に男性にはない着眼点を持っており、既存のモデルから抜け出したアイデアを出すことができるとされています。
これにより、男性管理職ばかりの環境に新風を呼び込み、より意見交換が活発になったり、企業が抱える課題への突破口を見つけられたりといった効果を生むことが期待できます。

それでも女性管理職が少ないのはなぜか

上記のように、企業にも女性自身にもメリットが多い女性管理職ですが、それでも人数が増加しないのには理由があります。

  • 女性自身が尻込みをしている
  • 仕事と家庭の両立が難しい
  • 管理職登用の道がない
  • 管理職になるだけの能力がないと思っている
  • など

しかし、これらの根幹にある問題は企業が持つ社風や制度であり、既存の考え方を見直さなければ、上記のように管理職に立候補する女性は増えていきません。
これまでの女性の働きづらさから解放するためには、企業自体が変革をしなければなりません。女性管理職の人数を増やすには、根幹の問題解決が急務です。

女性管理職を置くにあたっての注意点


では、女性管理職を置くメリットを生かす取組みとして、注意すべき点とはどのようなものでしょう。

企業側の取組み5つ

1.働き方改革のサポート

前述のように、女性をはじめとする従業員全員がワークライフバランスを健全に保てるようにサポートするのは、企業の仕事です。
女性のライフイベントでキャリアがストップすることのないよう、時短勤務やリモートワークなど、多様な働き方ができる制度を策定しましょう。

加えて、女性のパートナーたる男性に関しても、積極的に育児などの家事に参加できるよう、育休制度の整備などのように育休を取りやすい環境を整えることも大切です。

2.人事・評価・研修システムの見直し

そもそも、人事制度で女性管理職登用を想定していない場合も多いです。そのため、まずは人事システムを見直し、正当にそれぞれの能力を見極められるようにします。
また、管理職の研修制度に関しても、女性が積極的に参加できる環境を整え、優秀な人材を育成・開発できるチャンスを増やしましょう。

これらの施策により、前述した女性管理職のロールモデルを作ることが実現し、後続の女性たちが管理職に対してポジティブな印象を持つことにつなげられます。

3.上層部の意識改革

企業の社風や制度を改革すべきと述べましたが、これが実現できない理由は上層部の意識が変革されていないためです。

例えば、部署は同じでも男女で待遇が違っている、女性は結婚・出産後に退職をすることを前提としているなど、既存の男女役割の思考から抜け出せていないことがあります。
この意識を覆すには、女性にも男性と同様のキャリアアップ制度を整備し、女性も気兼ねなく仕事に参画できる環境を整えることが重要です。

4.女性管理職を支える体制作り

女性管理職のロールモデルを作るのであれば、同じく管理職を目指す複数の女性たちに目標を設定させ、女性たちによる企業改革をサポートすることが大切です。

また、女性のワークライフバランスを守るために、企業全体が女性管理職を支え、多様な働き方を実現できるよう尽力する必要もあります。

5.女性管理職を置く目的を定める

女性を管理職に登用することで、どのようなメリットを得るか、何を目的とするかをはっきりさせるべきです。

例えば、具体的な目標値を設定し、これを達成すれば男女問わず積極的な管理職登用を行う、新しいアイデアを得るために女性に積極的な提案を求めるなどが考えられます。

女性管理職になりたい人の取組み3つ

1.ロジカルシンキングをベースにする

男性が女性への画一的なイメージを持っているとすれば、「感情的になりやすい」といったネガティブなものが多いです。
これを覆すためには、仕事をはじめあらゆる事象を論理的に考えるロジカルシンキングを身に着けましょう。

今起こっている事実と、それを解決するための具体策を講じることに集中するほうが、部下からの信頼感も増します。

2.多角的に物事を判断する

女性管理職は男性と同じ目線に立ちたいと考えがちですが、それではわざわざ女性を登用する目的が薄れます。
大切なのは、男性にはない経験を積んだことによる多角的な視点を持ち、物事を判断することです。
男性とは違った視点から提案することで、新しい風を取込むことにもつながります。

3.ワークライフバランスの改革を推進する

先にも述べていますが、女性自身がワークライフバランスの改革を行うことで様々な働き方が容認されるようになります。
そのためには、女性管理職自身が働き方改革を実施し、部下にもその環境を与えることが肝です。これにより、チーム全体の士気を上げることにもなりえます。

女性管理職の積極的な設置事例


ここでは、実際に女性管理職を置いた企業が得たメリットの実例を紹介します。

人事評価の見直しとリーダーシップの育成

ある製薬会社では、人事評価について能力や実績を重視したものにシフトし、さらに目標達成度でも評価するフラットな制度に見直しました。
さらに、現場をチーム制とし、それぞれのリーダーに女性を据えて定例会を行いリーダーシップの育成に努めて企業全体の意識改革に取り組んでいます。

優秀な女性の時短勤務での昇進

サービス業を営む企業では、出産や育児で時短勤務を余儀なくされた優秀な女性社員に対しても、キャリアアップ制度を適用しました。
時短勤務でも重要な責務を与えて目標達成させることで管理職に昇進させ、働き方に悩む女性社員とのコミュニケーションを密に取り、離職率を下げることに成功しています。

研修への積極的な参加をサポート

ある小売業の企業の取組みでは、社外の商工会議所などで開催される研修に女性を積極的に参加させ、受講費を企業負担とするといったサポートを行いました。
これにより、女性管理職候補の育成に成功し、登用への門戸を広く開けることを実現しました。また、女性管理職候補の増加で、企業風土の変革をもたらしています。

まとめ

日本国内の企業では、まだまだ男性が優位な状況にあります。その中で、女性管理職の割合を増やせば、企業体制への改革が期待できます。
女性管理職の設置は、企業側にも女性側にもメリットがある取組みであり、今回紹介した点を踏まえて、企業の体制を変えるためにぜひ一考すべき課題です。

女性管理職登用のメリットを大いに活用すれば、企業の社会的価値もおのずと上がっていくでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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