エシカル消費とは?企業の取り組みや導入メリット、具体的な実践例を解説!

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SDGsにも関連するエシカル消費の重要性と実施方法


エシカル消費は近年話題となり、企業や個人に徐々に浸透しつつある取り組みのことです。
SDGsにも関係が深く、推進することで社会貢献となります。エシカル消費の概念や重要性、実際の取り組みを知り、今後の事業展開の参考にしましょう。

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エシカル消費とは


エシカル消費とは、欧米を中心に広がっている消費についての考え方、取り組みです。
国際的にも話題となっており、日本でも環境省や消費者庁が中心となってエシカル消費を推進しています。

エシカル消費とはどのような考え方なのか、基本的な概念や取り組みの内容、日本での取り組みについて解説します。

倫理的な消費という概念・取り組み

エシカル消費は「Ethical Consumption」という英語を日本語に訳した言葉です。
「Ethical」は「倫理的」や「道徳的」という意味で、エシカル消費は「倫理的な消費」という意味です。
この言葉の通り、エシカル消費とは倫理的で人や社会、環境に配慮した消費行動を示しています。

例えば、地域社会が潤う地産地消・被災地産品・フェアトレード商品・寄付付き商品・エコやリサイクル品・資源保護などの認証を得た商品などを選んで購入することがエシカル消費です。
また、個人の消費だけでなく企業としてもエシカル消費を取り入れることができます。

日本ではここ近年話題になっているようですが、エシカル消費は1989年にイギリスで生まれたものです。
イギリスで創刊された専門誌『エシカル・コンシューマー』がエシカル消費という言葉を初めて使い、その後もエシカル消費をリードするようになりました。
この雑誌では、動物の権利や人権、環境汚染などについて企業を評価する取り組みを行い、価格やデザイン以外の観点から消費を見直そうと呼びかけています。

欧米を中心に注目

エシカル消費は、イギリスで提唱され始めただけあって欧米を中心に広がっていきました。
近年では国際社会全体でも話題となっており、2015年に国連で採択されたSDGsへの関心の高まりともシンクロし、注目を浴びています。

また、世界中で起こっている不平等や不公正、環境汚染への問題意識もエシカル消費の追い風です。
労働者の人権を無視することで成り立ってきた安価な商品、環境破壊につながるような生産工程などが明らかになることで、エシカル消費の重要性がより強く認識されるようになっています。

日本では環境省と消費者庁が推進

エシカル消費は、欧米など諸外国だけでなく日本国内でも推進する動きが始まっています。日本国内でエシカル消費を推進しているのは、環境省と消費者庁です。

環境省では省エネルギーやリサイクル、食品ロスカットやファッションロス削減などを中心とした取り組みを実施しています。
地球に優しい環境で作られた商品選びを進めることで、環境面からエシカル消費を支えます。
一方、消費者庁はサステナブルファッション習慣の推進をはじめとした取り組みが盛んです。

また、2021年8月には消費者庁、経済産業省、環境省によって「サステナブルファッションの推進に向けた関係省庁連絡会議」が発足されました。
これによって各省庁の連携が強化され、さらにエシカル消費の取り組みが活発になることが予想されます。

環境省のエコマガジン

環境省では、環境やエネルギー問題などエシカル消費やSDGsについての情報を発信する「ecojin(エコジン)」というサイトを運営しています。
芸能人のエコ活動へのインタビュー記事やクイズ、コラムなどを通して、身近な話題として環境やエネルギー問題を学べるサイトです。

消費者庁の特設サイト

消費者庁でも、エシカル消費の普及と啓発のための特設サイトをスタートしました。
「つくること」・「かうこと」・「つかうこと」・「すてること」に分け、個人や法人、地方自治体が実施している取り組みのPR記事を掲載し、サステナブルファッションやエシカル消費を広めています。

エシカル消費の重要性


エシカル消費は世界で注目されているというだけでなく、その意義と効果が非常に重要です。
また、企業や自営業者としてできることも多く、エシカル消費の実施は企業としての成長と消費者からの信頼を得るチャンスにもなります。

SDGsの目標にも関連

エシカル消費は、SDGsの目標の12番目である「つくる責任・つかう責任」にも深い関連があります。
SDGsは国際的な17の目標を掲げ、それを達成していくことで人権問題や環境問題などを失くし、世界を変えていこうというものです。
12番目の目標は「持続可能な生産・消費形態の確保」で、これによって貧困や人権問題、自然破壊の解決を目指します。

フェアトレード商品を選ぶこと、食品ロスを防ぐことなど、エシカル消費を意識し実践することで、自然とSDGsの目標の実践にもなります。

消費を通して全員が参加できる

エシカル消費は、全国民が課題解決者となれる取り組みです。一人ひとりが主体性を持って取り組むことで、大きな課題も少しずつ解決していけます。

環境汚染や地球温暖化などは企業や行政の問題として考えられ、ひとりの消費者レベルでは扱えない問題と捉えられがちです。
しかし、ゴミを減らしたり無駄な消費を減らしたりする小さな一歩も課題解決に向けた大切な一歩です。

また、消費者がエシカル消費を実施することで、企業や生産現場もニーズに合わせて変化せざるを得なくなります。
エシカル消費を意識する人が増えれば増えるほど、倫理的・道徳的ではない企業は減っていくことが予想されます。

労働環境の見直しの機会に

消費者としての小さな取り組みは、途上国を中心に問題となっている不公平で不平等な労働環境を改善することも可能です。
世界には労働搾取や児童労働といった問題がたくさんあります。
衣類を作る原料となるコットンや、チョコレートの原料となるカカオ豆などを作る途上国では、労働者が過酷な環境で酷使され、守られるべき人権や命までも危険にさらされています。

こうした現状を変えるために消費者ができることは、良好な労働環境で作られた商品を選ぶことです。
フェアトレード商品や認証ラベルのある商品を選んで買えば、原材料を仕入れる企業が意識を変え、その変化が生産現場を変えます。

動植物の無駄な犠牲を防ぐ

エシカル消費の取り組みでは、動植物の無駄な犠牲を減らし、動物の権利や自然環境を守ることも可能です。
エコマークの付いた商品、リサイクル素材を使った商品を選ぶ、絶滅しそうな動植物が犠牲になっているものを使わないといった行動が挙げられます。

企業のCSRの推進にも

企業がエシカル消費の取り組みを取り入れることは、CSRの推進にもつながります。企業は、社会の一員として社会的責任を果たしていくことは重要です。
エシカル消費の実施は、企業の環境対策や公平性にもつながり、エシカル消費を意識した事業活動を行うことが、すなわちCSRの推進にもなります。

企業ができるエシカル消費


エシカル消費は、消費者一人ひとりが実践するものでもあり、また、企業が製品の製造や販売においてすべきことも多いものです。
エシカル消費を企業が取り入れると、個人の消費者は安心してその企業の商品を選べて、仕入れ先にもエシカル消費が浸透します。
そのため、企業単位でのエシカル消費はより多くの成果をもたらし、SDGsの目標の達成にもより近づける方法となるでしょう。

環境に配慮した製造・販売

企業のエシカル消費の実践としては、環境に配慮した製造過程の実施、販売や販促活動、流通経路の見直しなどがあります。
オーガニック商品への変更や製造過程に再生エネルギーを使用すること、地産地消なども効果的です。
また、サービスとして使うプラスチック製のレジ袋・ストロー・カトラリーなどを止めることもエシカル消費につながります。

フェアトレードの原材料の活用

フェアトレードの原材料を仕入れることも、企業ができるエシカル消費の実践です。
適正な労働条件で労働者を雇用して作られた農作物の仕入れ、人権侵害を行っていない企業との取引など、企業自体が消費者のエシカル消費を助けることができます。

製品の原材料の調達から製造、販売までのサプライチェーンの透明性を高めることで、消費者に自社情報を知ってもらうことも必要です。
クリーンでフェアな製造、流通を実践していることを消費者に公開することで消費者がきちんと選んで買い物できます。

認証ラベルやマークの取得も

企業のエシカル消費やSDGsの実践は、認定ラベルやマークの取得で消費者に伝えられます
自社のエシカル消費の実施を広く知ってもらうことで、また一歩平和でクリーンな社会に近づくでしょう。
自社の実践に合わせて、エシカル消費の実践の指標となる認定を取得してください。ラベルやマークには以下のような種類があります。

・エコマーク
環境保全に役立つ商品に付けられるマークです。
消費者は、エコマーク商品を選ぶことで環境への負荷を減らすエシカル消費を実践できます。

・有機JASマーク
農林水産大臣の定める品質基準や表示基準に合格した製品に付けられるマークです。マークによって、化学物質ではなく自然の力で作られた食品を選ぶことができます。

・国際フェアトレード認証ラベル
生産から出荷まで国際フェアトレード基準が守られていることを証明するラベルです。ラベルの付いた商品を買うことで、消費者は開発途上国の貧困問題の解決に役立ちます。

エシカル消費を企業が導入するメリット


エシカル消費を導入することには、社会的に貢献できるだけでなく経営上もメリットがあります。
エシカル消費を導入し、企業の発展にも役立てていきましょう。

消費者からのイメージが良くなる

エシカル消費の導入で企業が得られるメリットのひとつは、消費者に良い印象を与えられることです。
エシカル消費の実践は、認証ラベルやマークを通じて消費者にも伝えられます。
そのため、エシカル消費を実践する企業は広く認知され、社会に貢献している企業として好印象を与えられるでしょう。
消費者の問題意識も高まっているため、環境や人権などに貢献する企業というイメージは重要です。

新しいビジネスチャンスを得られる

エシカル消費を実践する中で得られることもあります。エシカル消費を実践するには、現在のビジネスモデルを見直し、新しいものを作ることも必要です。
また、これまで未着手であった領域に取り組む必要も出てくるかもしれません。
こうした実践によって、新しい製品やサービスを生み、新しいビジネスチャンスを創出できる可能性もあります。

他社との差別化ができる

エシカル消費は話題になっているとはいえ、まだ始まったばかりのため、いち早く参入することで他社をリードできます。
エシカル消費は、原材料や作り手の労働環境を考えて作られた商品を選んで購入する取り組みです。
他社と同じ製品であっても、エシカル消費に基づいて作られたことで他社製品より高く評価されることがあります。

エシカル消費の実践例


エシカル消費は、大手企業でも始まっています。エシカル消費の実践例を自社の導入の参考にしてください。

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社では、容器の材料の非再生資源への依存の低減を目指す取り組みを行っています。
紙容器ではFSC認証紙使用比率100%を達成、再生PET樹脂を100%使用したペットボトルやラベルレス商品の販売も進んでいます。

株式会社マザーハウス

株式会社マザーハウスでは、途上国で作るエシカルファッションに力を入れています。
2006年にバングラデシュから始めた取り組みでは、素材開発から一貫生産を開始し、すでに6つの生産国と4つの販売国へと拡大しています。

花王株式会社

花王株式会社では、環境、社会性、ガバナンスに関する取り組みであるESG活動を実施しています。
ESG活動はエシカル消費やSDGsにも関わる活動です。環境保全や地域社会の発展などを方針に掲げ、企業活動に取り入れています。

株式会社ファーストリテイリング

株式会社ファーストリテイリングでは、取引先リストを公開し、サプライチェーンの透明性を高めることで消費者のエシカル消費をサポートしています。
フェアトレードや適切な労働環境の確保を意識した取り組みです。取引先となる主要な縫製工場や素材工場のリストはホームページで確認できます。

エシカル消費の課題


エシカル消費は世界中に広がり、日本国内でも着実に取り組みが拡大してきました。しかし、それでもまだ、エシカル消費には課題が多く残されています。
エシカル消費の実施の本格化までに解決すべき課題を知り、今後の対策のヒントにしてください。

日本国内での認知度の低さ

エシカル消費は国内でも話題となっていますが、まだまだ全体的な認知度は高くありません。
環境問題などへの意識が高い一部の人の間で話題となっているだけで、社会全体としては知らない人も多いものです。
2020年の意識調査では、「倫理的消費(エシカル消費)」という言葉を知っていると答えた人は全体の12.2%でした。
「エコ」や「ロハス」といった関連用語の認知度に比べると低く、エシカル消費が浸透し切れていないことがわかります。

見せかけのエシカル消費もあふれている

エシカル消費が話題となるにつれて、見せかけのエシカル消費も増えてきました。
一見エシカルのような商品、エシカル消費と誤解させるような商品が増えることで、消費者が正しく選択できないこともあります。
これらは、SDGsの取り組みに見せかけることを意味する「SDGsウォッシュ」とも呼ばれます。

エシカル商品は自然に手に取られにくい

エシカル消費の浸透を妨げるものには、エシカル消費の概念に基づいて作られた商品の購入されにくさもあります。
デザインに魅力がない・信用されていない・価格が高いといった様々な理由があるようです。
環境や人に優しい商品が手に取られにくくなっているのは大きな問題です。

まとめ

エシカル消費は、環境や人権などに消費行動で向き合う取り組みです。
国内での認知度はまだまだ低く、様々な課題もありますが、消費者が小さなことから始められる取り組みとして少しずつ浸透してきています。

SDGsにも通じ、世界の平和やより良い社会の構築に貢献できる取り組みとして、企業としても実施が求められています。
エシカル消費は消費者からの信頼を得られる取り組みでもあり、企業が受ける経営面でのメリットも少なくありません。

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(編集:創業手帳編集部)

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