いまさら聞けない?!ドメインの重要性、きちんと理解できていますか?
起業時に知っておきたい「ドメイン」の機能やビジネスに活かす考え方を具体的に解説
起業やサービス開始の際、ドメインを適当に決めてしまっていませんか?
企業の活動において、ITシステムやWebサイトなどの活用は一般的になっていますが、その背景にある技術や意味を十分に理解していないと損をしてしまいます。
ドメインの役割や管理、運用について、その重要性も含めて詳しく解説していきます。ドメインの意味や利用方法を正しく理解し、ビジネスチャンスにつながる運用をしましょう。
この記事の目次
ドメインって何?どうやって取得するの?表記にルールはある?
最初に「ドメイン」とはどういったもので、どのような役割や意味を持っているのかについて簡単に解説します。
インターネット上の住所
ドメインは「インターネット上の住所」と言うことができ、ネットワークにおける「名前解決」と言われる技術で利用するものです。
インターネットなどのネットワークでは、「IPアドレス」と言われる「192.168.1.1」「2001:db8::1」などの英数字で各デバイスの位置を表します。コンピュータはIPアドレスから通信相手の位置を特定して通信しますが、IPアドレスは人間にとってはわかりにくいため、人間にわかる言葉(文字列)を割り当てるのが「名前解決」です。
そして、IPアドレスに言葉(文字列)を割り当てたものが「ドメイン」と呼ばれます。
ドメインとは「インターネット上における住所を人間にわかりやすく示したもの」であり、創業手帳のWebサイトに例えるなら、IPアドレスは「54.249.113.76」、ドメインは「sogyotecho.jp」となります。
ドメインの取得方法
ドメイン名の重複や独占を防ぐため、取得には申請手続きが必要になっています。
ドメインを取得する際は、国内のレジストラまたはリセラーを通して取得するため、それらについて知っておく必要があります。
「レジストラ」はドメインの販売業者で、ドメインの登録・管理用のデータベースにアクセスする権利をもちます。レジストラによって扱えるドメインは異なるため、希望するドメインを扱っていないこともあります。
ドメイン販売で有名な「お名前.com」はレジストラの1つです。
「リセラー」はドメイン登録代行業者とも呼ばれ、レジストラの代理店として利用者にドメインを販売する業者です。リセラーは国内外の多くのドメインを取り扱っており、レジストラと比較して安価にドメインを提供します。
「バリュードメイン」「エックスドメイン」「ムームードメイン」などはリセラーに属します。
ドメインの表記方法
ドメインには表記方法と取得のためのルールが定められており、その中で重複がなければ自由に定めることができます。ドメイン名は基本的に以下の構造になっています。
ピリオド(.)で区切られた部分は「ラベル」と呼ばれ、各ラベルは半角63文字以下と決まっています。また、ドメイン名全体の長さは、ピリオドを含めて253文字以下がルールです。
使用できる文字は、英字(A~Z)、数字(0~9)、ハイフン( – )です(日本語JPドメインに限りひらがな、カタカナ、漢字も使用可能です。ただし15文字以下)。
ドメイン名を構成する最も右側のラベルを「トップレベルドメイン」、以下左へ順に「第2レベルドメイン」、「第3レベルドメイン」、……と呼びます。
上の例なら、トップレベルドメインは「jp」、第2レベルドメインが「co」、第3レベルドメインが「example」です。そして、ドメイン取得時に登録が必要なのは「example」の部分です。
ドメインを見れば組織の属性がわかる
ドメインで「ドメインの種類」と言う場合、「トップレベルドメイン」または「第2レベルドメイン」を意味します。
ドメインの種類によって、対象の属性がわかるので仕組みをよく理解しておきましょう。ビジネスで使われる主なドメインについて紹介します。
jpドメイン(汎用jpドメイン)
「jpドメイン」というのは、トップレベルドメインに「.jp」がつくドメインです。jpドメインは「日本に存在する」ことを証明するドメインで、ドメイン取得の際には「日本に属していることの証明」が必要です。日本に住所があれば組織・個人を問わずに誰でも登録できます。
日本国内でしっかり管理されているドメインでもあり、登録料金は他の汎用ドメインと比較してやや高めです。国家として信頼性の高い日本のドメインなので、サイバー攻撃に使われやすい新興国のドメインと比べて安心感があります。
.co.jpドメイン
「.co.jp」は日本国内で登記されている会社組織であることを示すドメインです。登記済みの企業であれば管理組織であるJPRSが内容を確認して登録可否を判断します。
登記がまだの場合でも仮登録はできますが、履歴(現在)事項証明書などの書類提出を行うか、半年以内に登記を済ませることが必要です。「.co.jp」のようにドメインで組織の属性を示すものは「属性型(JP)ドメイン」と呼ばれ、組織属性の確認ができなければ取得できない仕組みになっています。
属性型ドメインには、「.or.jp(社団法人や宗教法人、医療法人など)」「.ac.jp(大学や学校法人など)」「.go.jp(政府・行政機関など)」「.ne.jp(ネットワークサービス提供者)」などがあります。
属性型ドメインは、組織としての登記の確認が必要になるため、登録料金は汎用jpドメインよりも高くなります。しかし、組織属性が法的にも明らかで、信頼できる組織であることをドメインで示すことができるのがメリットです。
.comドメイン
「.com」ドメインは商業用の汎用ドメインで、特別な条件なく世界中の誰でも取得することができるドメインです。価格も安く、リセラーでは数百円で入手できます(キャンペーンによっては100円を切ることもあります)。
何にでも使いやすいドメインですが、すでに世界中で利用されているため、希望するドメイン名を取得するのが難しいのが難点です。また、非商業目的の団体や組織でも利用可能ですが、誤解を招くこともあるので注意しましょう。
.netドメイン
「.net」は「.com」と同様に誰でも取得可能な汎用ドメインです。基本的には、ネットワークを意味するドメインなのでネットワーク関連の事業者やサービスで利用されることが多いです。「.com」ほどではありませんが、こちらも希望の名称でドメインを取得できないことがあります。
その他
その他にも、非営利組織を意味する「.org」や教育機関を意味する「.edu」、ビジネス用の「.biz」などさまざまなドメインが利用されています。また、士業などのプロフェッショナルなら「.pro」も選択肢となるでしょう。
レジストラやリセラーによっては、汎用ドメインとして「.xyz」や「.work」「.site」などのドメインが安価に提供されていることもあります。
安価に利用できるのは良いことですが、マイナーで誰でも取得できる安価なドメインは「使い捨て」されやすく、信用度が落ちるためビジネス向けではありません。現状では、個人の趣味やテスト用の利用にとどめた方が無難です。
信頼やイメージをも左右するドメインの用途
ドメインの種類についておおよそ理解できたところで、ドメインがどのように使われるのか、その用途について簡単に解説します。
- ドメインの主な用途
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- WebサイトのURL
- メールアドレス
- ブランディング
- その他
・WebサイトのURL
インターネットを使った通信ではURLを使いますが、このURLはドメインから構成されています。「https://www.example.co.jp」であれば、「https://」は通信方法を示し、「www.example.co.jp」というドメインが目的地のサーバー(example.co.jpのwwwサーバー)を示します。
・メールアドレス
よく知られているように、電子メールのメールアドレスにもドメインは利用されています。「tanaka@example.co.jp」であれば、「example.co.jp」の「tanaka」さんという意味です。
実際のシステムではメールの送信用サーバーと受信用サーバーが異なる場合もありますが、メールアドレスでの表記は省略されます。
・ブランディング
WebサイトのURLやメールアドレスは、名刺やパンフレットなどにも記載され、社内外の人の目に触れる機会も多いものです。
そのため、会社の公式サイトに会社名ではなく商品やサービスの名前をドメインに使って知名度アップやブランディングに利用する動きも広まっています。ブランディングのために「語感」や「覚えやすさ」を重視したドメインを考える企業も多いです。
・その他
システム管理の観点では、ドメインを定めることによって機器の「見かけの」アドレスの位置を変えずにIPアドレスを変えることができます。
機器を移せば、IPアドレスが変更されるため多くの利用者に周知や設定変更などが必要になりますが、ドメインを設定しておくと、システム変更時にドメインに割り当てられているIPアドレスを変更するだけで済みます。そのため、継続性の必要なWebサービスやWebサイト、電子メールなどでは必須です。
また、不審なURLや電子メールのフィルタリングにもドメインはよく使われます。一部の国のドメインや特定のドメイン名などをブロックする例も多く見られます。信頼性の高いドメインを利用することは、こうしたフィルタによるブロックを回避するためにも大切です。
ドメインでブランディングするための4つのポイント
従来、ドメインの取得や管理は主にシステム運用・管理のために行われてきましたが、現在はブランディングにおいても大きな意味を持っています。
ドメインとブランディングについて、気を付けておきたいポイントについて解説します。
- ココ重要!
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- ドメインを目的ごとに使い分ける
- ドメインの持つ信頼性と特性をうまく利用する
- ドメインパワーで検索上位を狙う
- ドメイン悪用に注意してブランドを守る
ドメインは目的ごとに持つ
現在のブランディングにおける考え方では、ドメインは目的ごとに取得するというのが一般的になりつつあります。たとえば、あるイベントや商品・サービスの紹介を目的にWebサイトを作るなら会社のドメインではなく専用のドメインを取得して作成する、といった使い方です。
こうした利用方法が推奨されるのは、対象のイベントや商品・サービスに合ったドメイン名をつけることで対象を訪問者に印象づけるためです。企業のWebサイトと切り離すことで、デザインやコンテンツの自由度が高くなることや、SEO(検索エンジン最適化)のための施策もしやすいのがメリットです。
もし企業買収や事業譲渡などがあった場合にも、Webサイトはそのまま残して運用できるため、顧客への影響を最小限にすることができます。
ドメインを数多く取得するとコストや管理の手間が発生してしまうため、目的別のサイトは「.com」などの安価な汎用ドメインで行われることが多いです。
ドメインで印象が変わることに注意
企業の公式Webサイトなどで「.xyz」「.me」などの汎用ドメインを使ってしまうと、企業としての信頼性を損ねてしまうことがあるので注意しましょう。
企業の公式サイトでは、できるだけ「.jp」「.co.jp」「.ne.jp」など、登記確認が必要で信頼できるドメインを採用するのが望ましいです。
また、「.tokyo」「.okinawa」などのドメインは地域を示すドメインです。誰でも取得可能ですが、商品やサービスによっては特化しているエリアをドメインで強力にアピールすることができます。
「.com」のように人気の高いトップレベルドメインでは、登録ドメイン名に自分の好きな名前やお店の名前をつけられないこともしばしばです。こうしたケースでも、「.pro」「.shop」などの商業上の特性を示すドメインを上手く使えば登録できることもあります。
Webサイトの上位表示とドメインパワー
ブランディングにおいて大きな影響を持つのが検索エンジンでの検索結果です。Webサイトを通してブランディングをする場合、ドメインの持つドメインパワーはSEOの重要な要素の1つです。
ドメインパワーを決める要素は明確に示されていませんが、ドメイン取得からの年数や、ドメインの種類が影響していることは間違いないと見られています。取得からの年数が長く、「.co.jp」のように確認が必要なドメインほど信頼できる組織のWebサイトとして高く評価されます。
企業名や商品名を浸透させるためにも、検索エンジンでの上位表示のためにも、ドメインは頻繁に変えず同じものを使い続けた方が有利です。
ドメインを守ることはブランドを守ること
ドメインは企業にとって大事なものであるがゆえに、しばしば悪用されることがあります。スパムメールでは有名なWebサイトやサービスに似せたドメインが利用されることが多々あります(「geogle.com」など)。
また、有名企業の「.co.jp」を「.com」などの汎用ドメインに変えたものなども多く、悪意のあるサイトに誘導するための手口として使われることもあります。類似のドメインを多数取得し、訪問者を正規サイトに転送するといった対策を行う企業もあるほどです。
ドメインは定期的に契約の更新が必要ですが、その更新を忘れてしまって、サービスが利用不能になってしまったり、他の人にドメインを契約されてしまったりすることもあります。
契約更新を忘れた隙にドメインを取得されてしまって、取得者を探し、交渉して買い戻すというケースもあります。また、悪意をもった第三者が更新忘れのドメインを取得し、高値で売りつけてくることもあるため更新忘れがないよう十分に注意してください。
企業が商品・サービスの案内のためにメルマガを配信している場合、何かの拍子にスパムメールと誤解されてしまうことがあります。企業と商品・サービスのドメイン(メールアドレス)が同じだと、メルマガとは無関係の従業員が使うメールもスパム扱いされてしまうことがあるので注意が必要です。
ドメインを巡るこうしたトラブルに巻き込まれてしまうと、積み上げた信頼が一気に失墜してしまいます。ドメインを守ることは企業や商品・サービスのブランドを守ることにつながりますので、しっかりとした管理を心がけましょう。
ドメインの取得・管理は会社の一大事と心得えよう
インターネットなどのネットワークにおける住所を示すドメインは、従来はシステム利用のためのものでしたが、近年はブランディングにおける意味合いが強まっています。
ドメインをシステム運用上のコストとばかり考えず、商品やサービスの浸透のため上手に利用しましょう。
ドメインを狙った攻撃や、ドメインに関するトラブルも多く、ドメインの取得・管理は事業経営に大きな影響を与えかねない問題になっています。システム担当者やマーケティング担当者など、関係者でよく相談して運用することが大切です。
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(編集:創業手帳編集部)