地方企業が採用を成功するためのコツとは?課題から具体的な方法まで徹底解説

創業手帳

地方企業における採用課題を把握した上で対策を講じよう


地方企業が抱える悩みのひとつに人材の採用が挙げられます。優秀な人材を確保することは、事業の継続や拡大には欠かせません。
しかし、人材の採用に苦戦する地方企業は多くみられます。
採用に関する課題は企業ごとに異なります。そのため、その課題を把握した上で対策しなければなりません。

そこで今回は、地方企業の採用市況や主な採用課題、採用を成功させるコツ・手法について紹介します。

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地方企業の採用市況


地方企業は、採用難に陥っている状態です。採用が厳しくなっている主な原因は以下のとおりです。

労働力人口が減少の一途をたどっている

少子高齢化の影響で日本の労働力が減少し続けていることが、採用難につながっている理由のひとつです。
総務省によると、労働力人口は2050年になると5,275万人になると予測されています。
このまま国内の労働力人口が減少していると、比較的採用しやすい都市圏の企業が積極的に地方採用を行う可能性があります。
そうなると、地方企業の採用はますます難易度が高まるかもしれません。

地方での就職を希望する人が少ない

地方での就職希望者が少ないことも採用が困難を極めている理由です。1955年以降、人口は東京圏や名古屋圏、大阪圏といった大都市圏に集中しています。
それに合わせて、2018年度の地方と都市部の雇用動向データによると、東京・愛知・大阪の入職者数は他の地方と比べて高くなっていました。
特に東京は断トツで入職者数が多いです。

首都圏にある企業は地方の学生に対して強くアプローチしていることが多いです。名高い企業が多いこともあり、首都圏に人材が流出する傾向にあります。
その結果、Uターン就職や地元企業に就職を希望する学生が減少しています。

ひとつの求人に対して集まる応募件数が少ない

2014年度以降、有効求人倍率は1.0倍を超えており、2024年11月の有効求人倍率は1.25倍でした。
有効求人倍率は、求職者数に対する求人数の割合を指します。この倍率が高いということは、求職者数よりも求人数のほうが多いというわけです。

求人数が多いということは、ひとつの求人に対して集まる応募件数が少ない状態になっていると考えられます。
地方企業が積極的に求人を出しても、そもそも応募件数が少なければ、人材を採用する機会を得られません。

地方企業にみられる採用課題


地方企業では、様々な採用課題を抱えています。主にみられる採用課題は以下のとおりです。

求める人物像がはっきりしない

地方企業の採用がうまくいかない要因には、求める人物像がはっきりしていないことが挙げられます。
求める人物像が明確な状態でないと、ターゲットとなる求職者に向けて適切なアプローチができません。

人柄や実績、スキルなど具体的な人物像を設計することで、それにマッチする人材に自社をアピールすることが可能です。
また、すでに設定しているケースでも、自社で採用できるレベルではないケースがあります。
自社のレベルに合っているのか見直し、必要に応じて修正することも大切です。

地方に住んでいる人だけを対象にしている

地方企業は、拠点がある地方に住んでいる人だけを対象に採用活動をしているケースも多いです。
地方の在住者のみをターゲットにすると、アプローチできる求職者が限定されてしまいます。
その結果、求人への応募件数が少なく、採用が困難になってしまうのです。
地方に限定せず、首都圏にいるUターン就職を希望する人やリモートワークによって遠方から働ける人もアプローチするべき人材といえます。

地方や自社で働く魅力が伝わっていない

地方や自社で働く魅力を伝えきれていないために、求職者の興味を引けていないことがあります。
求職者の興味を引くことができなければ、自社の求人に応募してもらうことは困難です。

地方には自然環境の豊かさや独特の文化や食べ物、のびのびした環境で静かな暮らしができるなどのメリットが挙げられます。
都市部にはない魅力や自社で働くメリットを伝えることで、地元で働きたい人から都市部でU・Iターンを希望する人までアプローチすることが可能です。

採用に関する部署しか取り組んでいない

採用活動を行っているのが、総務部や人事部といった採用に関する部署のみという課題を抱えているケースがあります。
採用に関する部署に丸投げするのではなく、経営陣や他部署まで巻き込んで採用活動に取り組むことがおすすめです。

例えば、経営陣や他部署の人脈の中に、自社の仕事に興味がある人や理想の人物が見つかる可能性があります。
そのような人物に求人の応募を促すことができれば、効率よく人材を確保できるかもしれません。

基本的には現場で働く人材の採用が中心となるので、現場が求める人材像を聞き、それにマッチする人材にアプローチするように戦略を立案していくことも大切です。
現場で活躍する社員の生の声は求職者の関心を引く要素となるので、自社の採用サイトなどにインタビューを掲載するのも良い手段です。

地方企業が採用を成功させるためのコツ


地方企業が採用を成功させるためには、戦略を立てるところから重要です。ここで、採用を成功させるためのコツを紹介します。

ペルソナを設計する

ペルソナとは、年齢や居住地、年収、ライフスタイルなどを細かく設定した人物像のことです。
ペルソナを設計することで、自社が求める人物像を明確にできます。
自社の人物像を社内で共有する際にもペルソナがあると、共通の認識を持ってもらいやすくなります。

ペルソナの設計によって人物像がはっきりすれば、求職者が興味を持つ求人広告を打ち出すことが可能です。
また、理想的な人材からの応募が集まりやすくなるので、ミスマッチを防げるメリットもあります。

ターゲット層を広げる

ターゲット層を広げて採用活動を行うことも重要です。もともと地方は大都市圏と比べると人口が少なく、アプローチできる数に限界があります。
採用条件に当てはまる人材が少ないので、求人を出しても応募を集められないケースが多いです。

ターゲット層を地方民に限定せず、UターンやIターンにまで広げるのもひとつの手段です。
ほかにも経験者だけではなく未経験者の応募も可能としたり、性別を問わず募集したり、シニアも積極的に雇用するというのもターゲット層の幅を広げる方法になります。

SNS・オウンドメディアを活用する

SNSやオウンドメディアを活用して採用活動に取り組むのもおすすめです。現在はインターネット上から企業や採用情報を収集している人が大半です。
そのため、オンライン上での露出を増やせば、求職者に認知されやすく、企業や求人に興味を持ってもらえる可能性があります。

SNSやオウンドメディアで自社の様子や仕事などを紹介することで、どのようなことをしている会社なのか、どのような人が働いているのか、働く環境や雰囲気などを伝えることが可能です。
コンテンツの内容次第では、親近感や共感を持ちやすくなり、求人応募のきっかけになる可能性があります。

Web面接・リモートワークなどオンライン環境を整備する

Web面接やリモートワークなどオンライン環境を整えるのもおすすめです。
採用というと対面での会社説明会や面接が基本ですが、わざわざ会場や会社に出向くことに面倒と感じる人は少なくありません。
しかし、Web会議ツールなどを活用して説明会や面接が実施できれば、求職者は気軽に応募できます。
現在、遠方に住んでいる求職者も移動の手間や交通費を省き、説明会や面接に参加できるので応募に対するハードルを下げることが可能です。

また、リモートワークができる体制を整えれば、遠方で暮らしながら働きたい人材もターゲットにすることができ、応募者が増加する可能性があります。

地方ならではの魅力・メリットを求人に載せる

地方特有の魅力・メリットを求人に載せることで、移住や入社後のイメージが沸きやすくなります。
具体的なイメージができると求職者の動機づけにつながり、地方への移住や求人へ応募する意欲が強まる可能性があります。
企業が所在する地域の環境や生活環境など、働くことのメリットなどを積極的に発信してみてください。

UIターン支援を活用する

地方企業は幅広いターゲットにアプローチすることが大切なので、UIターンも狙うのがマストです。UIターンを促すためには、支援制度を作るのが効果的です。
支援制度を提供することで、地方への移住に対する不安を解消できるので、求人への応募件数も増えるかもしれません。

また、UIターンに取り組む企業を対象に、国や自治体の助成金・補助金制度を使えることがあります。
補助金・助成金制度を利用すれば、地方採用にかかる費用の負担を軽減しながら、積極的にUIターン採用を実施できます。

社内全体で受け入れ体制を整える

会社全体で求職者を受け入れる体制を整備してください。特にほかの地方や都市部から移住してくる内定者は、会社や環境に馴染めるかどうか不安に思っています。
その不安を解消するためには、周りの人からのサポートが欠かせません。

サポート・フォロー体制が不十分だと、移住や就職を後悔して離職されてしまう可能性があります。
配属される部署だけではなく、社内全体でフォローできる体制が整っていると安心して働くことができます。
他にも定期面談で悩みを聞いたり、アドバイスをしたり、コミュニケーションを取る機会を持つことで、協力して業務を行えるようになるでしょう。

地方採用の成功につながる具体的な採用手法


採用にはそれなりのコストがかかるため、コストを抑えつつも有効な採用方法を選ぶことをおすすめします。
ここで、比較的低コストで取り組めるおすすめの採用手法を紹介します。

地方特化の求人媒体

求人媒体の中には特定の地方に特化していることがあります。
求人広告だけではなく、地元ならではの情報や働くメリットなども発信されているので、地方に魅力や愛着を感じている人を効率よく集めることが可能です。
Webサイトだけではなく、地方に密着した求人誌や地方新聞の求人欄、フリーペーパーも該当します。
ただし、若手の人材は紙媒体をチェックしていないケースが多いです。求める人物像にもよりますが、基本的にはWebサイトに広告を出稿するのが良いかもしれません。

地方大学への訪問

新卒採用を目的にしている場合、自社の活動エリア内にある大学に訪問して採用活動に取り組むのがおすすめです。
地方大学に通う生徒は、地元での就職を希望するケースが少なくありません。
そのため、学校で個別説明会や合同説明会を開催すれば、学生に自社を認知してもらえたり、興味を持ってくれたりする可能性があります。

大学で説明会を実施するとなると、就職担当者に掛け合う必要があります。
就職担当者に掛け合う中で自社の理解を深めてもらえれば、学生に自社をすすめてくれる機会が増えるかもしれません。

リファラル採用

リファラル採用とは、社員から候補者を紹介してもらう採用手法です。履歴書や面接だけで、求職者の人柄やスキルを完全に見極めるのは困難です。
しかし、候補者のことをよく理解している人からの紹介であれば、事前に自社が求める能力や人柄があるのか確認できるのでミスマッチを防げます。

求人媒体に広告を出稿するケースと異なり、採用コストを抑えられるのもメリットです。
積極的にリファラル採用につなげていくために、従業員にはインセンティブを支給するといった工夫が求められます。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、企業側から求職者に直接アプローチをかける採用手法です。
具体的には、自社が求める人物像に合う人にスカウトメールを送って応募を促します。

現在は、求人広告を出稿するだけでは、応募が集まりにくい現状です。
そのため、地方企業側が自ら求職者にアプローチを仕掛けることで、認知や応募数の増加につながる可能性があります。

まとめ・採用活動を工夫すれば地方採用の成功につながる!

地方企業は大都市圏の企業と比べて採用活動が難しい傾向にあります。
しかし、ターゲットの幅を広げたり、UIターンを希望する求職者を支援したり、地方採用に有効な採用手法を活用するなど工夫次第で応募者を集めることが可能です。
地方採用を成功させたい時は、自社の求める人物像・ペルソナを明確にして、効果的なアプローチ方法を打ち出してください。
同時に社内全体で人材を受け入れる体制づくりも重要です。

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(編集:創業手帳編集部)

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