物流業界で成長を遂げているスタートアップ企業5社!業界の傾向から解説!
物流業界の市場規模は拡大傾向にある!
物流業界の市場規模は年々拡大傾向にあり、急成長を遂げる企業も多いです。
物流業界には歴史のある大手企業がたくさんありますが、事業を立ち上げて年数の浅いスタートアップ企業にも注目が集まっています。
そこで今回は、物流業界で特に注目されるスタートアップ企業をご紹介します。
業界の現状や課題についても触れているので、物流業界の傾向を知りたい方はぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
物流業界の現状について
まずは、物流業界の市場はどのような傾向にあるのか、現状を解説します。
市場規模の拡大
株式会社矢野経済研究所の調査報告によると、物流業界の市場規模の推移は2019年度以降20兆円台をキープしています。
2020年度は新型コロナウイルスの影響から世界中で経済が停滞し、特に国際物流関係の市場で減少がみられ、物流市場全体に縮小につながりました。
それでも20兆円台をキープし、翌年2021年度には約23兆円にまで拡大しています。
同年には多くの産業で事業が再開されたことから、物流の取扱量も増え、市場規模の拡大につながりました。
2022年度は24兆円と見込まれており、2023年度以降も同等、またはそれ以上の市場規模になることが予測されています。
個人配送の需要の増加
物流市場でも特に需要が高まっているのは、個人配送の分野です。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響でお店が休業や営業時間を短縮したり、外出を自粛されたりしたことで、自宅から気軽に買い物ができるECサイトの利用が一気に増えました。
経済産業省の「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」では、2021年度のBtoC向けのEC市場規模は前年より7.35%増え、20.7兆円と報告されています。
日用品の購入だけではなく、食材や食事の宅配サービスの需要も増加しました。
それに加えて、フリマアプリやハンドメイド作品の販売サイトなど、オンライン上で売買を行うサービスの利用者も増えています。
このような影響で、個人が宅配便を利用する機会が増え、個人配送の需要増加につながりました。
物流業界が抱えている課題と改善策
好調といえる物流業界ですが、同時に多くの課題も抱えています。具体的にどのような課題があり、解決策はあるのかご紹介します。
物流業界が抱えている課題
物流業界で抱えている課題は、主に以下の5つです。
1.人手不足
物流業界は、深刻な人手不足に悩まされている業界のひとつです。人手が足りない企業では、業務の遅れや品質の低下が生じてしまいます。
それは、業界全体の効率性を下げることにもつながるため、重大な課題と認識されているのです。
特に配送を担当するドライバーの不足は、配送員ひとりあたりの仕事量が増え、長時間労働や求人集客率を下げるなどの問題に直結します。
しかし、物流業界は需要の増加に加えて、労働力の減少により人材の確保が難しい状況です。
また、ドライバーの年齢層は高齢化が進んでいます。
国土交通省の「トラック運送業の現状等について」では、29歳以下の若年層は10%以下なのに対して、約45%以上は40~54歳の中年層が大半を占める結果となっていました。
若いドライバーを確保できなければ、現役の中年層が高齢となって引退した際に、さらなる人手不足に陥ることが懸念されます。
2.輸送の小口化と多頻度化
物流業界では、輸送の小口化かつ多頻度化が進んでいます。輸送の小口化とは、ひとつの納品先に貨物を少量で輸送することです。
個人との取引きや企業が過剰在庫を防ぐために小ロットで注文するケースが増えているため、小口配送はメーカーや小売業などでは定番の配送方法です。
小口配送の場合、1回あたりの発注量が少なくなります。しかし、発送を行うたびに発注することになるため、全体的な発注頻度は増加するという特徴があります。
それは結果的に物流量の増加につながり、物流会社に大きな負担をかけることになるでしょう。
小口化・多頻度化によって輸送量が増えれば、トラックの燃料消費量の増加にともない、CO2の排出量も増える可能性が懸念されています。
そのため、自然環境の汚染のリスクも問題視されているのです。
3.労働環境の悪化
物流業界では、労働環境の悪さも課題となっています。
現在の通販では、翌日配送や配達時間・場所の指定ができる、送料無料で荷物を受け取れるといった付加サービスが普及しています。
消費者にとってはメリットがある付加サービスですが、配送を担うドライバーにとっては大きな負担になりかねません。
翌日配送や送料の無料によって受注数が増えれば、ドライバーの仕事量が増えてしまいます。
さらに、配達時間や場所指定に応えるとなると、配送ルートが複雑化し、長時間労働や深夜労働につながってしまうのです。
労働環境の悪化は労働者の体調や精神面で負担を与え、また求人集客がさらに厳しくなるという問題にも直結します。
4.再配達による負担増加
再配達の頻度が増えていることもドライバーを悩ます問題となっています。時間指定されていない貨物の場合、配達に行っても受取人が不在というケースは少なくありません。
受取人から再配達を要求された場合、ドライバーはそれに対応する必要があります。
再配達の頻度が増えると、ドライバーの配送ルートがより複雑なものとなってしまいます。
再度同じ場所に行く必要があるので、労働時間が増え、ドライバーの心身的な負担を増やしてしまう可能性が高いです。
また、再配達に対応してもその分に手当はつかないので、ドライバーに金銭的なメリットがありません。
個人の宅配業であれば、ガソリン代が余計にかかるデメリットもあります。
5.燃料費の高騰
配送業務ではトラックを使うため、ガソリンが必要不可欠です。しかし、石油価格の上昇によって、物流業界では燃料費の負担が大きくなっています。
高騰によって燃料費のコストが上がると、収益を圧迫する要因になってしまいます。収益の圧迫を防ぐためには、運送料金の見直しが必要です。
しかし、取引先との値上げ交渉は容易なものではなく、場合によっては契約を打ち切られてしまう可能性があり、ますます収益性を圧迫する恐れがあります。
物流会社としては燃料費を抑えたいところですが、物流量や再配達などの増加でトラックの走行距離が増えやすい現状では、コストカットは厳しいでしょう。
課題点から導き出される解決策は
物流業界には様々な課題がありますが、その解決策も提案されています。主に求められる解決策は以下のとおりです。
1.配送ルートを見直す
ドライバーの負担を軽減する手段として、配送ルートの見直しが求められます。配送ルートを見直すことで、配送にかかる時間の縮小が可能です。
効率良く配送できるルートを構築できれば、長時間労働の低減につながります。
AIやビックデータを活用すれば、最適な配送ルートの計算ができ、ルートの最適化に役立ちます。
また、AIを用いた交通渋滞を予測するシステムも開発されているので、普及すれば渋滞を避けて配送できる体制が整えられる可能性があるのです。
2.労働環境を改善する
長時間労働や深夜労働を強いられやすい物流業界では、労働環境の改善も求められます。
例えば、倉庫や荷捌きなどの施設が各地に分散されている場合、必要な工程に合わせて各拠点に貨物の輸送が必要となり、輸送効率を下げてしまうでしょう。
改正物流総合効率化法案では、配送効率の向上を目的に輸送連帯型倉庫の設立が推奨されています。輸送連帯型倉庫とは、輸送に関わる各設備を集約した倉庫です。
1カ所に各設備が集まれば、輸送網を分散がなくなり、配送量と仕事量の減らすことが可能です。結果的に人手不足の解消や配送スピードの向上に期待できます。
ほかにも、物流拠点の数や場所を見直すという方法もあります。物流拠点が少なく、拠点間の移動距離が長いとドライバーの負担が大きくなります。
各地に物流拠点があれば、長距離移動が少なくなるので、ドライバーの拘束時間が短くなって長時間労働の低減につなげることが可能です。
しかし、物流拠点の設立には膨大な初期費用や維持コストがかかるので、いきなり数を増やせるものではありません。
そのため、拠点を置きたい地域のアウトソーシングを活用し、物流業務を委託するのもひとつの手段です。
3.共同配送を行う
複数の企業が共同で配送することも、改正物流総合効率化法案で推奨されています。
通常の配送では、貨物の多寡に関係なく、それぞれ指定された場所に貨物を届けなければなりません。
個別で対応していると、載積量が少なくても自社で預かった貨物を配送しなければならず、配送業務が発生するたびにコストや手間がかかります。
しかし、共同配送では1台のトラックに同じ届け先の荷物が載積されるので、各ドライバーが配送のためにあちこち移動する必要がなくなります。
無駄のない配送が実現すれば、ドライバーの負担の軽減やコストの削減につなげることが可能です。
また、配送の負担が減れば、配送の帰りに様々な企業の集荷に対応できるようになるので、集荷も効率化されます。
物流業界のこれからを担うスタートアップ企業5社を紹介
物流業界で活躍している企業は大手企業だけではありません。市場規模の拡大に合わせて、急成長しているスタートアップ企業も多く存在します。
今回は中でも注目されるスタートアップ企業を5社紹介します。
CBcloud株式会社
CBcloud株式会社は、2013年10月に設立された企業です。東京・大阪・沖縄の3カ所に拠点を置き、配送クラウドソーシング事業を展開しています。
そのようなCBcloud株式会社は、物流に関する様々なサービスを提供しています。そのひとつが「ピックゴー」と呼ばれる配送プラットフォームです。
PickGoは荷物と届けたい人と配送してくれる人をマッチングしてくれるサービスで、2023年4月時点で軽貨物パートナーの登録数は5万人以上、一般貨物運送会社のパートナーは2000社を超えました。
また、ドライバーや管理者をDXシステムでサポートする、物流業務支援システム「スマリュー」を提供し、業界の課題解決に取り組んでいます。
大手宅配会社や通信会社などから資金を提供してもらっている実績もあり、各業界から期待されている会社といえます。
株式会社enstem
株式会社enstemは、2019年6月に設立され、東京都中央区に本社を構えている企業です。生体データを活用した製品・サービスの開発・提供をしています。
物流業界向けには、2022年6月から「Nobi for Driver」というスマートウォッチをリリースしました。
Nobi for Driverは、装着するドライバーの運転時の心拍数や位置情報をリアルタイムで計測することが可能です。
その測定データから居眠りや体調の異変が感知された場合、スマートウォッチからドライバーに警告音が鳴り、さらに危険な予兆を管理者に知らせる機能があります。
長距離移動を強いられやすいドライバーは、突然眠気に襲われたり、体調が悪くなったりする可能性があり、事故に発展するリスクがあります。
しかし、AI搭載のスマートウォッチが危険の予兆があれば知らせてくれるので、事故防止に役立てることが可能です。
また、計測したデータの振返りが可能なので、ドライバーの安全や健康意識の向上にも期待できます。
株式会社シマント
株式会社シマントは、2014年8月に設立され、東京都文京区に拠点を構える企業です。物流系ワンストップソリューションを展開しています。
物流業界や企業の課題の把握・設定から物流DXの実現までワンストップで対応しています。
課題の分析から行ってくれるので、企業側が気付けなかった課題も見つけられる可能性があります。
そして、課題解決につながるITツールの導入やシステムの構築が可能です。
TMS基盤を導入したい物流会社に向けて、配車管理システムを提供しています。業界初となる、配送計画の作成を自動化する機能が備わっています。
「どこの依頼を」「どの貨物の組合せで」「どこの倉庫・在庫から」「どの車両に載積するか」という計画を自動で作成し、配車を効率化させることが可能です。
株式会社Logpose Technologies
株式会社Logpose Technologiesは、2021年3月に設立されました。前身は2018年10月に創業された合同会社luachになります。
東京都渋谷区に本社、東京千代田区にサテライトオフィスを構えており、物流向けのソフトウェア開発・販売を手掛けている企業です。
リリースしているサービスには、AI配車アシスタント「LOG(ログ)」があります。
LOGは、運送会社を経営する知り合いから「配送の自動化がしたいけどできない」という悩みを聞き、開発が始まりました。
そんなLOGは、配車・配送計画を自動で制作する機能があり、入力された案件情報をもとに素早く配車計画を抽出してくれます。
作成された計画は指示書として出力できるので、ドライバーとスムーズに情報共有が可能です。
配送順も明記されているので、新人ドライバーも効率の良いルートで配送できます。
トラボックス株式会社
トラボックス株式会社は、2000年3月に設立され、東京都渋谷に拠点を置く企業です。物流DXプラットフォーム「TRABOX(トラボックス)」の運営を手掛けています。
TRABOXでは、荷物を運んでほしい運送企業と荷物を見つけたい運送会社をマッチングしてくれる求荷求車サービスを提供しています。
2023年3月時点で、累計運送会員数は2万社以上です。月間の平均荷物情報数は19万件以上と多くの企業で活用されています。
TRABOXの利用をきっかけに、協力会社と多数つながれたという運送会社は多いようです。
また、事業承継 M&A プラットフォームの「ビズリーチ・サクシード」と連携をスタートしました。これにより、後継者不足で悩む運送会社の相談にも対応しています。
株式会社Azit
株式会社Azitは、2013年11月に設立され、東京都目黒区に拠点を置く企業です。配送プラットフォーム「CREW Express」を運営しています。
CREW Expressの特徴は、ラストワンマイル配送に特化していることです。ラストワンマイルとは、物流の最終拠点から受取人に届くまでの区間を指します。
事務所・店舗間といった企業内の当日配送や、顧客のもとに即配送するための体制の構築とDX化をサポートしてくれます。
具体的には、ラストワンマイル配送を熟知した専属コンサルティングチームがプロジェクトを計画し、ネットワークを活用して配達パートナーが供給され、即配達・当日配達の体制が構築されます。
また、AIを活用した配送管理システムの提供で、配送管理体制を最適化させることが可能です。
物流業界で起業をするなら課題解決に向けた事業を行うのが望ましい!
物流業界は市場が拡大傾向にあり、好調な業界ではありますが、同時にいくつもの課題を抱えています。そのため、スタートアップ企業などのサービスを活用し、課題解決に取り組もうとする物流会社が増えています。
物流業界で起業を考えているのであれば、業界の課題解決に貢献する事業はニーズがあるのでおすすめです。
課題を抱える物流会社に寄り添ったサービスを提供できれば、大きなビジネスチャンスを掴めるかもしれません。
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(編集:創業手帳編集部)