秋採用に向けて今やるべき準備と採用広報のコツ

創業手帳

秋採用はスピードと魅力発信が鍵!


就職活動と聞くと春からはじめて夏頃に終わるイメージがあるかもしれません。
しかし、秋は求職者が再び動き出す採用チャンスです。
大企業に比べて募集が埋もれやすい中小企業でも、事前準備と戦略的な発信で応募を集めることは十分可能です。

この記事では、秋採用に向けた具体的な準備と、採用広報で差がつくポイントを解説します。
スピードと魅力発信を武器にして、自社の将来を担う人材を発掘してください。

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秋採用の特徴とは?


会社によっては季節に分けることなく通年の採用活動としてひとまとめにしているかもしれません。
しかし、春から夏にかけて行われる新卒採用と9月~11月末に行われる秋採用には違いがあります。

ここでは、秋採用の特徴について見ていきます。

第二新卒・転職希望者が動き出す時期

秋は、新卒で入社した社員の“3カ月・半年離職”が表面化しはじめるタイミングです。
早期退職を決断した第二新卒層や、心機一転を図りたい転職希望者が動き出すので、企業側もこれを見越して採用枠を設けています。

大企業に入社していても、適性に合っていないと感じて就活をはじめるケースは少なくありません。
こういった応募者は、働き方について見つめなおした経験があるからこそ自分のやりたいことを見つけると意欲をもって働いてくれる可能性が高いでしょう。

内定辞退や再就職希望者が増える傾向

秋採用には春採用で他社の内定をすでに獲得している人もいます。
春の就活で内定をもらったものの「やっぱり違うかも」と感じはじめた学生や内定式に出席したもののギャップを感じてしまった学生です。
加えて、公務員試験で失敗した、就職留年を選んだ人たちも秋から再始動する傾向にあります。企業にとっては、春の採用で生じた内定辞退の穴を埋めるチャンスです。

春採用は複数企業の併願が多くて、ほかに内定が出ればそこに流れてしまうケースが多くありました。
しかし、秋採用は募集している企業が少ないため後がなく、内定者の辞退が少ない傾向があります。

企業側も人手不足補填・年末繁忙期に向けた採用が活発

秋は年末年始の繁忙期を控えた季節です。小売・物流・飲食などの人手を確保したい業界では、即戦力や若手人材の採用ニーズが高まります。
また、春の採用で満たせなかったポジションの再募集として、秋に積極的な採用活動を行う企業もあります。

春の採用で十分な人材を確保できた起業は秋には採用活動を終わらせているため、秋採用を行う企業は春採用よりも減るのが一般的です。
そのため、採用側のライバルが少なくて採用しやすい環境が整っているといえます。

秋採用に間に合わせるための具体的スケジュール


一般的に、秋採用の準備は春の採用が終わった7月ごろからスタートします。
秋採用が本格化するのは夏休み明けで採用にかけられる期間が長くないケースも多く、スケジュール管理があわただしくなりがちです。

具体的にどのようなスケジュールになるのかは、以下でまとめています。

期間 主な活動内容 詳細
7月上旬 採用戦略の策定・採用要件の定義 ・どのような人材を、何名採用したいのかを明確化
・人材に求めるスキル・経験を具体的に定義
7月中旬 求人情報の作成・掲載準備 ・ターゲット層に響く求人票を作成
・掲載媒体の選定と準備
7月下旬 選考プロセスの設計・準備 書類選考基準、面接官の選定、面接内容、筆記試験の有無などを決定
8月上旬 求人情報掲載開始・応募受付 各媒体での求人掲載を開始。応募受付体制の確立
8月中旬 応募書類の確認・選考(一次) 応募書類(履歴書・職務経歴書)のスクリーニング、必要に応じて筆記試験・Webテストの実施
8月下旬 一次面接の実施・評価 ・面接官への情報共有と、一次面接の実施
・評価基準に基づき評価
9月上旬 二次面接・最終面接の実施 ・経営層や現場責任者による面接
・入社後の配属部署とのマッチングも考慮
9月中旬 内定通知・条件提示 内定者への連絡と、給与・待遇等の条件提示
9月下旬以降 入社準備・フォローアップ 入社手続き、社内受入れ準備、入社までのフォローアップ

上記では、秋採用として一般的なケースを紹介しましたが起業の状態や応募者のニーズに応じて柔軟にスケジュールを管理してください。
秋採用は、春採用よりもスピード感があって、早め早めで動かなければいけません。
採用戦略が決まったらすぐに準備をはじめて、他社に優秀な人材を取られないようにしてください。

今からやるべき5つの“採用の土台づくり”


秋採用を成功させるためには、受け入れる企業が採用の土台を作っておくことが必要です。
今からでもスタートできる採用の土台づくりをまとめました。

求める人物像(ペルソナ)を具体化する

秋採用に限らず、採用活動では求める人物像(ペルソナ)を明確にしなければいけません。
「どのような人を採りたいのか」があいまいなままでは、求人内容も面接内容もブレてしまいます。

年齢やスキル・価値観だけでなく、「どのような働き方を求めている人か」「どのような志向が自社に合うか」までを含めて、採用ペルソナを明確にしてください。
職種や部署ごとにペルソナを分けて設計することで、よりマッチ度の高い採用が実現できます。
ペルソナを設計する時には、採用担当者だけでなく現場の声も参考にしましょう。

求人情報をアップデートし、自社の魅力を伝える準備を

求人票は、求職者にとっての企業の“第一印象”です。求人票を見て魅力を感じなければ、そもそも自社について認知してもらうこともできません。
「この会社で働いてみたい」と思ってもらうには、ストーリーのある求人設計を意識することが重要です。
単純に募集職種や事業内容を記載するのではなく、自社のビジョンや働き方、社員の雰囲気、入社後のキャリアパスなど、リアルな魅力を文章や写真で具体的に伝えてください。

職種ごとの募集要項と評価基準を明確にする

ひと口に「営業募集」「エンジニア募集」といっても、求める役割や成果は企業によって異なります。
クリアしなければならない条件として求める成果と業務範囲、必要なスキル・経験とは別に、あればなお良いスキル(WANT条件)などは職種ごとにしっかりと言語化してください。

現場でほしがっている人材と採用で評価される人材が同じとは限りません。認識が合っていなければ、採用者が入社後にギャップに苦しんでしまいます。
選考時に何を重視して判断するのかという「評価基準」を面接担当者と実際に働くことになる人が共有しておくことが大切です。

面接体制と社内の役割分担など社内連携の強化

秋採用は、規模が小さくて面接体制や役割分担が整っていないことがあります。
面接当日に「誰が面接するか」が決まっていなかったり、質問内容がバラバラだったりするケースは意外とあります。

しかし、応募者の立場で考えれば、面接に出向いたものの準備が整っていない、無駄に待たされるような会社に魅力は感じません。
準備不足は不信感を与えるだけでなく、選考の基準もブレやすくなるため、採用できたとしても入社してからミスマッチになる可能性もあります。
採用活動の役割分担を徹底して面接官の役割分担や評価ポイント、対応トーンなど、事前にしっかりすり合わせておくようにしてください。

事前にマニュアルやチェックシートを用意して、評価軸がぶれないようにするといった方法も効果的です。

入社後の育成・フォロー体制を設計しておく

採用活動は、採用して完結ではありません。せっかく採用しても、入社後のサポート体制が弱いと早期離職につながり、また新しい人材を募集しなければいけなくなります。
明確な育成計画がないまま放置してしまうと、人材は定着しません。入社後の育成やフォロー体制まで設計してから採用活動をすすめてください。

決めておくべきなのは「誰が教えるか」「どのように育てるか」「どのようなペースで仕事を任せていくか」といった点です。
採用者は、新しい会社でどのような仕事を誰の仕事で行うのか不安と期待を感じています。
入社したものの、育成担当者や育成体制が決まっていないと仕事へのモチベーションも下がってしまうかもしれません。

応募者が見ている!採用広報の工夫ポイント7つ


採用広報とは、応募者が自社で働いているイメージを持てるように企業側から行う情報発信をいいます。
企業の事業内容や基本的な募集要項だけでなく、実際の働き方や職場の雰囲気、現場の声といったコンテンツを配信して入社後のイメージを持ちやすくします。
採用広報は起業理解を促して、応募者に自社を就職先候補として志望度を高めてもらう目的です。

ここでは、採用広報でできる工夫を7つ紹介しています。

1.採用情報をまとめて、わかりやすくしよう

採用における基本的なこととして、採用情報はまとめてわかりやすいようにしてください。

企業によっては複数の媒体に採用情報を掲載しているかもしれません。
そういった場合でも仕事内容、働く環境、会社の方針、福利厚生などの情報は、媒体ごとに統一し、常に最新状態を保ちます

応募者は複数の採用媒体を見比べて企業研究をしています。情報にズレがあると、不信感につながり、応募意欲も低下してしまうかもしれません。
採用媒体や採用情報の管理は、担当者を決めておいてください。

2.働き方や社風をリアルに見せよう

「実際にどのような人が働いているのか」「職場の雰囲気はどうか」など、応募者が知りたいのはその会社の“リアルな中身”です。
採用情報だけでなく会社のリアルが伝わるようなコンテンツを用意してください。

具体的には、社員インタビューや1日のスケジュール紹介、オフィス風景の写真などを活用します。
社風をただ掲載するのだけでなく、誰かの言葉とビジュアルに乗せて自社の魅力を訴求できます。

働き方や社風はよく見えるように取り繕う必要はありません。どれだけ優秀な人材を獲得しても、入社後のミスマッチで離職してしまえば意味がないからです。
若手社員の声や、入社後に感じたギャップを正直に語ってもらったほうが誠実さが伝わって信頼感がアップします。

3.「誰と働くか」が伝わるストーリーを作ろう

最近の応募者は、「どなのよう会社か」よりも「どのような人と働くか」を重視しています。
社長やマネージャー、現場の先輩社員がどのような価値観を持ち、どのような想いで働いているのかを伝えることで、働くイメージがわきやすくなるでしょう。
このようなストーリーは適した媒体で発信するようにしてください。コラムや動画、SNS投稿などで発信することで、「ここで働きたい」と思わせる共感につながります。

4.裁量・スピード・やりがいをしっかり発信しよう

中小企業やベンチャー企業は、大手と比べてブランドや待遇で勝てないことも多いかもしれません。
大手には勝てないと優秀な人材を諦めるのではなく、中小企業やベンチャーだからアピールできるポイントに集中してください。

「裁量の大きさ」「意思決定のスピード」「仕事が会社に与える影響の大きさ」といった大手にはない魅力に惹かれる応募者はたくさんいます。
若手でも挑戦できる環境や、自分の成長が会社に直結するやりがいは、多くの求職者にとって魅力があって他社と差別化できるポイントです。

自社の魅力を言語化して伝えきれていない企業はたくさんあります。裁量やスピード感、やりがいをわかるように発信してください。

5.社長の想いやビジョンを前面に出そう

若い世代は、社会に貢献したいという気持ちが強く、就職活動でも社会的意義を求める傾向があります。応募者向けの社長や経営陣のメッセージは積極的に発信してください。
「どのような思いで会社を経営しているのか。」「なぜこの事業をやっているのか。」「どのような未来を一緒に目指したいのか。」といったストーリーが意欲に強く影響します。
応募者にビジョンを言葉にして発信することが、強い共感を生み出す鍵になるはずです。

6.入社後の未来が描けるようにしよう

多くの応募者は入社後の成長を期待しています。「入ったら何ができるようになるのか?」という成長の見通しが伝わると、応募者の意思決定はぐっと前向きになります。

例えば、「3年後にはマネージャーを目指せる」「半年でクライアント担当を任される」など、具体的なキャリアの道筋を示すと自分の将来像をイメージしやすくなるのです。
また、研修制度やOJT体制などもあわせて発信すると、入社後の安心感にもつながるでしょう。

7.世界観(トンマナ)をひとつにそろえよう

多くの企業で複数の媒体を使って求人をしています。
採用ページやSNS、求人票で言葉のトーンや写真の雰囲気がバラバラだと、「どのような会社かわからない」と思われてしまうかもしれません。
企業の特色を強く印象付けるためには、ロゴやカラー・メッセージなど、ブランドの一貫性を大切するようにしてください。

まとめ:採用は準備7割。秋の採用成功は今動くかどうかにかかっている

秋採用に応募して来る人材は多様性に富んでいます。
春からの就職活動でうまくいかなかった人材や公務員志望だった人材、留学していて就職活動のタイミングがずれた学生も含まれます。
学生は卒業までの時間が短く暇がないケースも多く、採用する企業も入念に準備して対応しなければいけません。
秋採用は「後手」に回るとライバルに埋もれがちです。社内体制の見直し、情報発信、面接設計を早めに整えて、応募者に選ばれる企業になってください。

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(編集:創業手帳編集部)

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