オフィスの電気代の5割は空調です!起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・空調の巻-
電気代を抑えて賃貸オフィスを快適な温度・湿度にたもつ空調の選び方
オフィスの快適性を大きく左右するもののひとつに温度や湿度といった空気環境がある。見栄えがよくて機能的なオフィスであっても、空調の不備で、暑すぎたり寒すぎたりしては快適に過ごすことはできず、仕事の効率も落ちる。
また、エアコンなどの空調の電力消費割合は賃貸オフィスビル全体の5割近くに達するため、コストの観点からも賃貸オフィス選びの際は、空調に注意したいところだ。
今回はオフィスの空調について、オフィス選びという観点から考えていきたい。
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まず賃貸オフィスビルの共用部の快適性のチェックから
賃貸オフィスビルに入ってまず気にしておきたいのが、共用部の空気環境の快適性だ。中小規模のオフィスビルには共用部に空調が入っていないものもあるが、エントランスはビルの顔。エントランスに暑すぎたり寒かったりしては、そこに入居する企業のイメージにも影響を与えてしまうのである。
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具体的には、温度・湿度は適切か、不快な臭いがしないかといった点が判断基準となるが、空調が入っているからといって安心はできない。夏に寒すぎたり、冬に暑すぎたりといった運用がされているオフィスビルは管理体制にも疑問を持ったほうがいいだろう。
逆に共用部にエアコンなどの空調がないオフィスビルであっても、換気などによって快適な空気環境を実現するための努力がはらわれているビルのほうが評価できる。共用部の空気環境は「来館者に与える第一印象」を意識して、ビルでどのような取り組みがなされているかを総合的に判断したい。
- 賃貸オフィスビル「空調」のチェックリスト1
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- 共用部の温度、湿度は適切か?
- ビル内に気になる臭いが漂っていないか?
「セントラル空調」と「個別空調」のメリット・デメリット
セントラル空調と個別空調のどちらが得か
さてオフィスにおける快適な空気環境を実現するためには、まずは入居するオフィスをじっくり選ばなければならない。今では空調設備を備えていないオフィスビルはまずないが、これも導入されている機種などによって性能は大きく異なる。快適なオフィスを選ぶためには、空調の選び方を知っておく必要があるだろう。
一般的なオフィスビルで導入されている空調設備は「セントラル空調」と「個別空調(ビル用マルチエアコン)」の2種類に分けることができる。それぞれの特徴を見ていきたい。
建物全体に空調を効かせるセントラル空調
一つ目のセントラル空調とは、ビル全体の空調をまとめて制御する方式。従来からの一般的なオフィス業務は始業・終業時間に大きな差がなかったため、建物内の空調も一括で制御したほうが効率的であるとの判断から採用が進んだ。
一時期は「オフィスビルの空調といえばセントラル方式」といえるまでに普及したが、空調の運転時間や冷暖房の切り替え、温度設定など基本的な運転設定がビル側の判断で制御されるというデメリットがあるため、就業時間が早朝や深夜におよぶ業種には不向きといえる。また細かい温度調節ができない場合もあり、暑すぎたり寒すぎたりといった事態を招く可能性も高い。
空調設備は基本的に共用設備であり、セントラル空調から個別空調といった交換は入居テナントにはできない。セントラル空調か個別空調かは事前に確認し、セントラル空調の場合は運転時間や個別に制御できる範囲なども必ず調べるようにしたい。
個別空調は細かい制御で快適性・省エネ性向上
一方の個別空調とは、フロアごと、あるいは部屋ごとに空調機器を設置し、個別に運転制御を行う方式。建物全体を冷やしたり温めたりする場合には不向きだが、業務時間が異なる企業が多く入居するビルなどでは効率的だ。
冷暖房の切り替えや温度設定などが全て個別に制御できるため、使用していない部屋に空調が効いているといった無駄がなくなる。また在室人数や時間帯など状況に合わせて細かい運転制御ができるため快適性の向上が見込めるのもメリットだ。
セントラル空調と個別空調で電気代にも差?
オフィスで使用される電力のうち、空調は5割ほどを占めるといわれている。オフィス内で使用した電気料金は基本的に家賃とは別に支払うが、これを削減できればメリットは大きい。
(出典:「資源エネルギー庁」の調査データをもとに創業手帳編集部が作成)
一般的にはセントラル空調に比べ個別空調の方が電気料金は安いとされている。しかし製造年に差がない限り、両者の空調効率に大きな差はない。電気代の差としてあらわれるのは、むしろ無人の部屋にも空調が効いてしまうような運転の無駄だ。
またセントラル空調同士、個別空調同士でも差はあらわれる。空調機器の技術開発がすすみ、特に省エネ効率はここ20年で平均40%も向上している。電気代に占める空調の割合を5割とすれば、最近建てられたビルと20年前に建てられたビルの電気代の差は平均2割ということになる。
さらに経年劣化によって空調機器の電気使用量は年4~5%も増加していくというデータもある。セントラル・個別ともに、新しいほうが効率が良いという認識で間違いはないだろう。
生産性を高めるオフィスの温度と湿度
「事務所衛生安全基準規則」では、温度は17℃以上28℃以下、湿度は40%以上70%以下になるよう努めなければならないとされている。
しかしこの範囲内だからといって、暑さ寒さを感じないというわけではない。快適なオフィスを実現するためには、実際の温度よりも「体感温度」を重視するべきといって過言ではない。その際留意しておきたいのが「湿度に気を配る」「直射風・直射日光を避ける」という2点だ。
一般的に、湿度が低いと涼しく感じ、高いと暖かく感じる。ビルに設置されている空調機器が適正な湿度管理ができる機種か否かもポイントとなるのである。また空調機器の設定温度・湿度が適正であっても、空調からの直射風はあまり快適とはいえない。
同様に、直射日光が当たる位置にデスクがあれば夏季は実際の気温以上の暑さを感じるだろう。直射日光のあたる窓に特殊なガラスを使用したりフィルムを貼ったりしているビルもあるが、多くはない。デスクの配置などオフィス内のレイアウトを想定し、空調の吹き出し口の位置や日の当たり方にはじゅうぶん気を配りたい。
さらに内装もチェックしておきたい。たとえば昨今、天井を抜きコンクリート打ち放しの壁と床をむき出しにした内装を見かける。こうしたオフィスは意匠性という観点からいえば高い評価を得るが、空調効率という観点からはイマイチだ。コンクリートむき出しということは、保温性のある内装材をわざわざ剥がしているということである。一般的なオフィスに比べて、冬の寒さや夏の暑さが厳しくなるし、冷暖房の電気代も高くなる場合が多いことも覚えておきたい。
(つづく)
(監修:オフィス経営コンサルタント 久保純一)
(編集:創業手帳編集部)